「耕畜連携」ピンチ 堆肥ふん尿埋却、農家負担増

(2010年5月28日付)

 口蹄疫の発生地域で、家畜のふん尿を使った堆肥(たいひ)と飼料作物を交換する「耕畜連携」の維持が危ぶまれている。家畜伝染病予防法に基づき、発生農場では感染の疑いのある牛や豚と一緒にふん尿を埋却処分しなければならないからだ。さらに、ワクチン接種後、全頭殺処分されれば牛、豚の畜産農家からの提供がストップする。関係者は「堆肥が高騰し(耕作)農家の負担が増える可能性もある」と懸念している。

 県畜産協会によると、県内の家畜排せつ物発生量は推計で年間約447万トン(2006年、県調査)。このうち、牛が227万トン、豚が193万トンで全体の94%に上り、川南、都農町など全頭処分が決まっている児湯地区はその20%を占める。

 新富町日置、農業長友識暁さん(72)は、国産稲わらの普及を推し進める国の方針を受け10年前に鬼付女地区水田利用組合(28人)を発足。飼料用稲の生産を続け、栽培面積は発足時の2倍に当たる16ヘクタールに増やした。

 組合員の中には3戸の畜産農家があり、牛ふんを提供してくれていたが、全頭処分が決まった。長友さんは「深刻な影響が出てくるのはこれから」と嘆く。

 個人で耕畜連携に取り組む同所、ピーマン農家福山三義さん(60)は、2ヘクタールの畑に3、4トンの牛ふんを入れ土壌改良に努めてきた。わらと交換することで、畜産農家は無償で堆肥を運搬・提供してくれた。「土づくりが始まる8月まで(牛ふんを)動かせない状況が続けば、施設園芸の経営に影響が出るのは必至」と危惧(きぐ)する。

 全頭処分後の畜産農家の再建にも暗い影を落とす。同町新田の畜産業長友淳さん(30)は農場内でふん尿を発酵させ、牧草など飼料作物の堆肥に使っていた。「再開までの間、餌を作るための堆肥のめどが立たない」と悩む。

 県畜産協会経営生産部の前畑嘉里次長は「化成肥料の値も上がっており(耕作)農家の負担がさらに大きくなる」とみる。感染が終息しても、経営を再開する畜産農家の数が分からず、以前のように堆肥を提供できるまでには「1年か2年か、見当がつかない」という。

 今後、鶏ふんの需要が高まることが予想されるが、「窒素量など性質が違うため、施肥設計を見直す必要がある。土壌分析を行った上で使用してほしい」と話す。