関連記事
【連載企画】殺処分の現場から(下)
73%処分月内完了めど 発生自治体調査
来月上旬終了へ 山田農相、埋却作業の目標修正
予備費227億円追加 全額国負担を閣議決定
命の重み感じて 牛と豚10万頭のパネル展示
リハビリ、家族支援むなしく伊東さん(新富)きょう“別れ”
疲労によるうつ心配 加藤寛医師に聞く
【相談】心のチェックシート
口蹄疫対策費426億円可決 県議会
畜産農家へ要請自粛を 県選管、陣営に求める
豊後大野市の施設利用制限、農相も「行き過ぎ」
未発生地域も消毒徹底を 県庁で防疫対策会議
非常事態宣言の解除時期触れず 知事会見
ワクチン接種牛処分と埋却開始 新富
県産品通販で支援 宮銀など商品募集
延岡市の口蹄疫対策 市議会一般質問
串間市の口蹄疫対策 市議会一般質問
人員や物資相互提供 都城市と三股町応援協定
農家の再開願う 高鍋西小児童が町長へ千羽鶴
公共施設を閉鎖 国富町

「耕畜連携」ピンチ 堆肥ふん尿埋却、農家負担増
(2010年5月28日付)
口蹄疫の発生地域で、家畜のふん尿を使った堆肥(たいひ)と飼料作物を交換する「耕畜連携」の維持が危ぶまれている。家畜伝染病予防法に基づき、発生農場では感染の疑いのある牛や豚と一緒にふん尿を埋却処分しなければならないからだ。さらに、ワクチン接種後、全頭殺処分されれば牛、豚の畜産農家からの提供がストップする。関係者は「堆肥が高騰し(耕作)農家の負担が増える可能性もある」と懸念している。
県畜産協会によると、県内の家畜排せつ物発生量は推計で年間約447万トン(2006年、県調査)。このうち、牛が227万トン、豚が193万トンで全体の94%に上り、川南、都農町など全頭処分が決まっている児湯地区はその20%を占める。
新富町日置、農業長友識暁さん(72)は、国産稲わらの普及を推し進める国の方針を受け10年前に鬼付女地区水田利用組合(28人)を発足。飼料用稲の生産を続け、栽培面積は発足時の2倍に当たる16ヘクタールに増やした。
組合員の中には3戸の畜産農家があり、牛ふんを提供してくれていたが、全頭処分が決まった。長友さんは「深刻な影響が出てくるのはこれから」と嘆く。
個人で耕畜連携に取り組む同所、ピーマン農家福山三義さん(60)は、2ヘクタールの畑に3、4トンの牛ふんを入れ土壌改良に努めてきた。わらと交換することで、畜産農家は無償で堆肥を運搬・提供してくれた。「土づくりが始まる8月まで(牛ふんを)動かせない状況が続けば、施設園芸の経営に影響が出るのは必至」と危惧(きぐ)する。
全頭処分後の畜産農家の再建にも暗い影を落とす。同町新田の畜産業長友淳さん(30)は農場内でふん尿を発酵させ、牧草など飼料作物の堆肥に使っていた。「再開までの間、餌を作るための堆肥のめどが立たない」と悩む。
県畜産協会経営生産部の前畑嘉里次長は「化成肥料の値も上がっており(耕作)農家の負担がさらに大きくなる」とみる。感染が終息しても、経営を再開する畜産農家の数が分からず、以前のように堆肥を提供できるまでには「1年か2年か、見当がつかない」という。
今後、鶏ふんの需要が高まることが予想されるが、「窒素量など性質が違うため、施肥設計を見直す必要がある。土壌分析を行った上で使用してほしい」と話す。