関連記事
【連載企画】殺処分の現場から(下)
73%処分月内完了めど 発生自治体調査
来月上旬終了へ 山田農相、埋却作業の目標修正
予備費227億円追加 全額国負担を閣議決定
命の重み感じて 牛と豚10万頭のパネル展示
リハビリ、家族支援むなしく伊東さん(新富)きょう“別れ”
疲労によるうつ心配 加藤寛医師に聞く
【相談】心のチェックシート
口蹄疫対策費426億円可決 県議会
畜産農家へ要請自粛を 県選管、陣営に求める
豊後大野市の施設利用制限、農相も「行き過ぎ」
未発生地域も消毒徹底を 県庁で防疫対策会議
非常事態宣言の解除時期触れず 知事会見
ワクチン接種牛処分と埋却開始 新富
県産品通販で支援 宮銀など商品募集
延岡市の口蹄疫対策 市議会一般質問
串間市の口蹄疫対策 市議会一般質問
人員や物資相互提供 都城市と三股町応援協定
農家の再開願う 高鍋西小児童が町長へ千羽鶴
公共施設を閉鎖 国富町

それでも畜産の仕事を 高鍋農業高感染疑い
(2010年5月26日付)
同校の「舞鶴牧場」で朝の搾乳時に牛の異常が見つかったのは23日午前。24日に感染が確認された。発生農場から半径10キロ圏内のためワクチン接種、その後に殺処分される予定だったが、直ちに殺処分されることになった。
生徒に感染疑いと処分が伝えられたのは24日。「尊い命を奪うのだから無駄にしてはいけない。早く終息させ、舞鶴牧場を元に戻そう」。岩下校長が涙ながらに語りかけると、生徒らは分娩(ぶんべん)の立ち会いから一緒に過ごした牛や豚を思い、涙を流したという。
同校は全寮制で、実家が畜産を営む生徒はウイルス拡大を防ぐため、ほとんど寮にとどまっている。殺処分が行われた25日は休校となったが、牧場が寮に近いことに配慮して、生徒らを学校に移動させて作業を実施。処分した牛や豚は牧場の一角に埋却した。
生徒らは4月28日に畜舎へ立ち入りを禁じられるまで、朝は牛の引き運動、放課後はふん尿処理やわら敷き詰め、調教に汗を流し、ブラシをかけたりして濃密な関係を築いてきた。2007年県畜産共進会・肉用種種牛の部で「みねこひめ3号」が高校初のグランドチャンピオンという栄誉に輝いたが、その子牛も含めて、すべて殺処分された。
美郷町の実家が牛の繁殖農家という畜産科3年甲斐博子さん(17)は「頭が真っ白になり涙が止まらなかった。牛たちとずっと一緒にいた。いなくなるのはめっちゃつらい」。それでも「高校で牛に触れて興味がわいた。将来は絶対畜産の仕事をしたい」という決意は変わっていない。
同校は心のケアのため臨床心理士2人を配置するほか、殺処分した家畜の魂を慰める機会も持つ予定。岩下校長は「牧場に牛や豚が1頭もいない現実に直面した生徒は衝撃を受けると思う。『畜産復興の原動力になるのは君たちだ』と伝えたい」と今後について語った。
【写真】品評会に出す子牛を丁寧に洗う高鍋農業高校の生徒=2008年5月