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種雄牛助命へ「何でもする」 ブランド崩壊危機感
(2010年5月23日付)
種雄牛の感染疑いが確認された22日未明、会見を開いた県農政水産部幹部は「40年にわたって築いたブランドが崩れていくことを申し訳なく思う」と話し、憔悴(しょうすい)した表情を見せた。それだけ、6頭の中に感染疑いが出たことのショックは大きかった。
中でも、感染疑いとなった「忠富士」は、人工授精用の精液ストローの供給本数が最多。市場評価も高く、影響は県内にとどまらない。
本県産子牛が約4割を占める松阪牛。約500頭を飼育する三重県多気町の瀬古清史さん(61)は「購入する子牛の約9割が宮崎県産で、半数近くが忠富士の子。肉質、肉量ともにすばらしかった。経営にも大きく影響する」と動揺を隠せない。
残る主力5頭に感染が広がれば、主力候補の49頭が殺処分対象となっている本県の和牛ブランドはゼロからの再出発を強いられる。
49頭には本県が生んだ伝説的な名種雄牛「安平」の後継として期待される「安秀勝」など多様な特性を秘めたホープが多く含まれており、ある人工授精師は「特例が認められれば、多様な血統が残り未来が開ける」と、助命する意味の大きさを口にする。
宮崎市田野町の和牛繁殖農家曽我政範さん(50)は「49頭は将来、6頭に匹敵する可能性を秘めている。ブランド維持の最後の希望。署名、嘆願書。大臣や副大臣に会えるなら直談判でもいい。この気持ちが伝わるなら何でもする」と声を震わせる。
ワクチン接種、全頭殺処分の対象となった都農町川北の和牛繁殖農家、黒木伸市さん(53)は「苦渋の思いでワクチンを受け入れざるを得ない。再開には宮崎の優秀な種雄牛がどうしても必要だ。これ以上、希望を奪わないでほしい」と訴えた。
【写真】口蹄疫の感染疑いが確認された「忠富士」。本県種雄牛の主力6頭のうちの1頭で、県内外の関係者は大きなショックを受けている=2007年4月12日、高鍋町・県家畜改良事業団