車両消毒や家畜市場閉鎖… 緊張続く九州各県

(2010年5月21日付)

 本県の口蹄疫問題で、ウイルスの侵入を防ごうと近隣県が主要道路で車両の消毒など防疫活動を強化している。イベントの中止が相次ぎ、家畜市場も閉鎖。畜産が盛んな九州で緊張が続く。

 本県との県境にある熊本県人吉市。国道221号沿いでは通行車両のタイヤ消毒を実施。牛乳を運搬して本県と熊本を行き来しているというトラックの男性運転手は「熊本の農家は、いつウイルスが入ってくるかと戦々恐々としている」。人吉市の畜産農家の女性は「とにかく一日中、農場の敷地を消毒しています」と話した。

 熊本のブランド牛「あか牛」の種牛を飼育する熊本県農業研究センター(同県合志市)にある畜産研究所。ウイルスが車を通じて持ち込まれる可能性があるため、職員には最大約1キロ離れた駐車場を利用してもらい、飼育エリアに入る前には消毒マットを踏んで靴底の消毒を徹底。「何としても侵入を食い止める」と稲葉孝二所長は言う。

 鹿児島県では、県内18カ所の家畜市場すべてが5月いっぱい閉鎖。一部が搬出制限区域にかかっている同県さつま町では、町主催イベントがすべて延期か中止になった。

 5月下旬に予定していた「ホタル舟」運航の担当者は「水害でホタルが激減した年も何とか実施したのに、今回は残念」と肩を落とした。

 長崎県でも、6月にかけて開かれる予定だった家畜市場の競りが次々と中止に。畜産関係者は「いつまでも開催が延期になれば子牛が育ってしまい、価値が下がる恐れがある。飼料代はかかるのに、市場が開かなければ農家は収入がない」と嘆いた。