「農家ないがしろ」 トップダウンに首長ら

(2010年5月21日付)

 「地元との協議がないままでは賛同できない」「補償内容も示されていない」―。川南町など2市7町の首町が20日、政府現地対策チームの山田正彦農林水産副大臣と県庁で会談し、地元への説明がないまま示されたワクチン接種と殺処分方針に異を唱えた。一方、山田副大臣は理解を求める姿勢を示しつつも、直後の会見で「地元の同意がなくてもできる」と発言。トップダウンで事態の収拾を急ぐ国の姿勢には批判も出そうだ。

 「一方的な決定は国と県、地元の信頼関係を壊す行為。農家の割り切れない思いをないがしろにする対応だ」。山田副大臣との会談後、都農町の河野正和町長は怒りをあらわにした。

 ワクチン接種対象地域の中心地である川南町の内野宮正英町長は「地元の同意の取り付け方を具体的に示してほしい」と求める。

 西都市の橋田和実市長は「感染していないのにワクチンを接種して殺処分となると、(これまでの防疫活動などが)何だったのかということになる」と強調した。

 「補償がしっかりしていなければ農家の説得はできない」とするのは高鍋町の小澤浩一町長。ワクチン接種が示された一方、具体的な対象範囲や生産農家への補償内容は不明確なまま。「懸命に防疫作業にあたっている農家にかわり、私たちが主導権を持って要求していく」と力を込めた。

 一方、山田副大臣は首長との会談で「急がなければならない問題。理解してほしい」と説明。19日の記者会見では、「首長も国が方針を決めれば、住民を説得したいと話していた」と同意の取り付けに自信をのぞかせたが、会談後には「(ワクチン接種は)地元の同意がなくても可能。後は理解していただくしかない」と話した。

 会談に同席した東国原知事は「鳩山首相には大枠でいいので地元が納得のいくような補償を明示してほしい。そのようなものが担保されなければ到底地元の同意は得られない。法的には同意がなくてもワクチン接種はできるが、全自治体から同意を得なければ無理だろう」と話した。

【写真】ワクチン接種をめぐる問題で、山田農水副大臣に要望を伝え現地対策本部を退出する首長たち=20日午後、県庁