21日、ウイルス性家畜伝染病の口蹄疫(こうていえき)の疑いがある牛が確認された宮崎県川南町の畜産農家。20日に確認された都農町の繁殖牛農家から南南東へわずか3・4キロしか離れていないところにある。関係者による必死の感染封じ込め作業や措置が講じられているが、牛の競りや精液供給の取りやめなど、周辺への影響も広がっている。
■競り、精液供給取りやめも
「町全体が制限区域となりますので、家畜の移動はできません」。21日正午すぎ。どんよりと曇った空に川南町役場からの防災無線が響いた。町によると、町内で肉牛、乳牛、豚を飼育する畜産農家は335戸。飼育頭数は計約13万4千頭を超えるという。
感染が疑われる牛が見つかった畜産農家の周辺道路は、県警などが封鎖。消毒液を積んだ軽トラックや殺処分された牛を埋める穴を掘る重機が次々と運び込まれ、物々しい雰囲気に。周辺農家のなかには、自主的に農場に石灰をまくところもあった。
同町対策本部で指示を行っていた県立農業大学校(高鍋町)の後藤俊一副校長は「家畜伝染病予防法では、処分された家畜には補償が出るものの、患畜で評価の3分の1、疑似患畜で5分の4」と指摘。「すべてが補償されるわけではなく、農家の経済的ダメージは大きい」とおもんばかった。
地元の市場などもマヒ状態に。児湯郡市畜産農業協同組合連合会(新富町)の奥野福見参事は「競りは、少なくとも発生から3週間は中止しなければいけない」と苦渋の表情を浮かべた。「家畜の移動制限区域内では人工授精もストップし、授精師も営業停止状態」と話した。
畜産農家から約2キロしか離れていない県家畜改良事業団(高鍋町)。宮崎の牛の精液を管理・供給するのが業務。川田洋一常務理事によると、同日午前から精液の供給も中止したが「8カ所あるサブセンターなどには、まだ在庫が確保されていると思う。しばらくはそれでしのいでもらえれば…」と閉鎖された入り口の柵越しに語った。
=2010/04/22付 西日本新聞朝刊=