宮崎県での口蹄(こうてい)疫発生を受け、5、6月の家畜競りが中止となった県内で、県外の購買者が牛舎などで子牛を直接取引する「庭先売買」が行われている。県は市町村などを通し「庭先売買」を自粛するよう農家に文書で通知しているが、「違法ではなく、取り締まることもできない」という。農家は「競りを中止しているのに、県外の購買者が入れば防疫対策が形骸(けいがい)化する」と危機感を強めており、防疫の徹底と、競りの早期再開を求めている。
今帰仁和牛改良組合の平山良智組合長によると、家畜市場での売買がなくなってからも、購買者が県外に牛を運んでいる。餌代など現金収入が必要な農家が、通常の競りより安値で子牛を売るケースもある。石垣島でも6月に約60頭の子牛が船で県外へ搬送されたという。
県やJAおきなわによる繁殖農家への支援も「焼け石に水」の状態。宮良操石垣島和牛改良組合長は「余裕のない農家が背に腹は代えられず、足もとを見られ、安値でたたかれている。このままでは多くが廃業してしまう」と不安を隠せない。
平山組合長は「庭先売買の購買者が県外に牛を運ぶのはOKなのに、なぜ競りを再開しないのか。農家は暴動寸前。牛は毎日エサを食べる。先行き不透明で、限界は近い」と話した。
JAおきなわ畜産部は防疫体制を敷いている中での事実把握は難しいとした上で「事実かどうかは別として、そのような話しが出ると農家の不満が高まる」と懸念を示した。
県畜産課は競り再開を模索するが、「宮崎での感染が止まらない状況では難しい」。赤嶺幸信課長は「競り再開を望む農家の気持ちは痛いほど分かるが、仮に発生した場合は甚大な被害が出る。状況が好転したらすぐにでも臨時競りを開きたい」と話した。