2009.6.2
今週登場するのは、NHK 総合『地頭クイズ ソクラテスの人事』に出演の神田愛花アナウンサーです。神田さんが仕事でぶつかった壁とは? またそれをどう乗り越えられたのかをお届けします。
vol.70 神田愛花 アナウンサー
Profile
1980年生まれ。神奈川県出身。2003年、NHK入局。初任地の福岡放送局から、2007年東京アナウンス室へ。「爆笑オンエアバトル」などを担当し、現在は「地頭クイズ ソクラテスの人事」「ワンダー×ワンダー」「アレ今どうなった?」など。

地頭クイズ ソクラテスの人事
私は勉強に関してはダントツ数学が好きで、黙々と計算しているのが好きだったんです。ほんとにひたすら何時間でも解いてられるんですよ。大学受験のときからアナウンサーになりたいという希望はあって、それなら文系の方がいいのかな、とも思ったんですが、なれるかどうかなんて分からないじゃないですか。だったらやりたい数学をやろうと思って数学科に入ったんです。(今では、論理的な考え方や、理系の専門知識など、当時勉強したことが仕事に役に立っていて、学生時代に好きなことを学んでおいて良かったなと感じています。)

私はファッションが好きだったので、大学の4年間、アルバイトはアパレル関係をずっとやってたんです。なので、就職活動が始まる3年生の夏にはアパレル業界を目指そうと思ったんですが、当時アパレル関係の就活は4年生の5月ぐらいからで他よりもちょっと始まるのが遅かったんです。それまで時間があるので、数学科に入っちゃったいまとなっては受かる自信はますますなくなっているけれども、賭けみたいな感じで、やりたいと思っていたアナウンサーを受けてみようと思ったんです。

NHKの1次試験には筆記と面接があるんですけど、筆記はもうボロボロでした。それに、そのころはどっちかって言ったら民放を良く見ていたので、面接のときに「どの番組が好きですか」と聞かれて、当時有名だった『プロジェクトX』って答えたんです。見てないんですけど、ネットで過去の放送だけ調べておいたんです。そうしたら、やっぱりわかるんですね。「君、見てないだろ。敵がどういう番組を作ってるか、ちゃんと見てこないとだめだ」って怒られたんですよ。「もうお手上げだ~。やっぱりNHKって厳しい~」と思って、「すみませ~ん」って謝って面接が終わったんです。

それで受かったのが不思議でしょうがないんですけど、東京に転勤したとき、その時の面接官に会って「私怒られたんですが、どうして1次試験通していただけたんですか」って聞いたんですね。そうしたら「怒ったことは覚えてないけど、とにかく印象に残ったから」って言ってたんです。就職活動ってほんとに縁なのかなって思いましたね。採用の電話をもらったのは、地方局の採用試験で駅前の交差点を歩いてたときなんですけど、涙が出てきて、「NHKやるじゃん!わかってくれているじゃん!」みたいな感じで、ほんとに嬉しかったです。

私の初任地は福岡でした。新人がはじめてテレビに出演する時期って、赴任する局によってそれぞれ違うんですよ。私が同期のなかで1番テレビデビューが遅かったんです。はじめて放送で話すことを‘初鳴き’っていうんですけど、「テレビで初鳴きしてすごい緊張したよ」とかっていうのを同期のみんなで連絡取り合うんです。一方で私は延々とラジオブースのなかで、ベテランの方と一対一で原稿を読むトレーニングをしていました。「まだまだ読ませられない」って言われてすごく焦ってたのを覚えていますね。

普通初鳴きではその県だけの放送にまず出るんですが、私は遅いかわりに全国放送でした。『おはよう日本』の中継で、博多湾にある和白干潟に生息している蟹が繁殖期を迎えているのを、「蟹がたくさんいます。こんなに元気です。福岡は暖かいです」みたいに伝えたのが初めてのテレビでした。先輩から手取り足取り教えてもらったおかげで、「東京でも『初めての中継にしては良かった』と言ってる。これを糧に頑張りなさい」って言われたのですが、なかなか次の放送がなかったんです(笑)。

福岡では、ずっと報道の仕事をしていたんです。2年目には中継の枠が与えられ、ひたすら取材をしなさいと言われました。上から信頼されると嬉しいですよね。仕事が楽しくなり、頑張るようにもなりました。

福岡県の西方沖でマグニチュード7.0の大きな地震が発生したとき、大きな被害を受けた玄界島の方々が福岡市に避難して体育館での生活を余儀なくされていました。その現場からの中継を担当しました。避難生活も4日目ぐらいになると風邪が流行りはじめ、みなさんに疲れが重なっていることが表情をみても明らかにわかりました。将来への不安も、私などが想像することが申し訳ないほどに重くのしかかっているにちがいありません。そうなると声をおかけするのもためらわれます。でも、今みなさんがどんな思いで避難生活をおくっているのか、そしてみなさんを支えるため何が必要なのかを放送で伝えていくことも私たちの使命です。取材者としてどのように声をおかけし、お話をきけばいいのか、とても悩みました。
私もニュースを見てて「インタビューって大変だなあ」と思うときがありますが、やっぱり現場でも悩まれることがあるんですね。後半も報道の現場で葛藤する神田さんのお話へ続きます。