国民の最低限度の生活基準を見直す長妻昭厚生労働相の「ナショナルミニマム研究会」は18日、就労支援を受けた若者が正規社員として65歳まで働き続けた場合、支援を受けず65歳まで生活保護を受けた場合より、最大1人当たり1億円が国や自治体のプラスになり得るとの推計を発表した。貧困による損失を数値化した初の推計。研究会は、中間報告もこの日まとめた。
推計は研究会メンバーの阿部彩・国立社会保障・人口問題研究所部長らが、07年国民生活基礎調査などを使い、数種のパターン別に行った。65歳まで賃金上昇率などがゼロという前提では、18歳男性が2年間で458万円の就労支援を受け、その後正規社員として65歳まで働き社会保険料や税金を払った場合は、支援を受けずに保護を65歳まで受ける場合に比べ、最大1億1005万円が国や自治体にプラスになり得るとした。納める社会保険料と税金5115万円、不要となる生活保護費6347万円の総計から就労支援費を引いた。
一方、中間報告は、最低限度の生活基準を「生活保護だけでなくあらゆる社会保障制度や雇用政策の設計の根幹」と表明。食料や被服、消費財などの最低生活費と、生活に不可欠な医療など社会サービスで構成するとした。また、「地方自治体の判断で下回ることのできない最低基準」とし、国が最低限度の生活基準を設定する責任を明確にした。【野倉恵、東海林智】
毎日新聞 2010年6月18日 21時43分(最終更新 6月18日 21時48分)