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きょうの社説 2010年6月19日
◎政府の成長戦略 法人税減税を先行させたい
民主党政権下で策定された初の成長戦略で、期待したいのは諸外国に比べて著しく高い
法人実効税率の引き下げである。日本の法人実効税率40・7%を中国(25・0%)や韓国(24・2%)並みに引き下げることができれば、製造業の海外移転が減る一方、海外企業の日本進出が増え、内需が大いに刺激されるだろう。法人税減税は、一時的に税収減をもたらし、国家財政をますます苦しくする。消費税の 増税とセットにすれば税収は減らないが、この場合、「消費者を犠牲にして企業を優遇するのか」との批判は免れない。これまで法人税減税がいわばタブー視されてきたのは、こうした事情からである。 しかし、経済産業省の試算によれば、法人税を仮に5%引き下げた場合、年1兆円の税 収が減る一方で、3年間の累積でみると、企業の設備投資の活性化などにより経済成長が押し上げられ、2兆1千億円もの増収効果があるという。成長戦略の切り札として、法人税減税を先行実施してみる価値は十分にあるのではないか。 法人税減税が成長を促す実例として、経済産業省が挙げているのは、1995年から2 007年にかけて税率を37・7%から28・7%までに段階的に引き下げた欧州連合(EU)である。国内総生産(GDP)の名目値に占める法人税収の割合は、税率が大幅に下がったにもかかわらず、2・2%から3・2%に増えたという。EU内の投資意欲が高まり、海外企業の直接投資が増えためである。 グローバル競争が激しさを増すなかで、日本企業が生き残っていくには、外国のライバ ル企業に比べて著しく不利な税制を見直し、競争力を取り戻す必要がある。法人税を下げれば、生産拠点の海外移転をやめ、国内にとどめる企業も増えるだろう。国内で雇用を守り、産業の空洞化を防ぐためにも法人税減税は必要である。 減税の幅について、政府は「主要国並みに引き下げる」としている。これは25%程度 を想定していると見て良いのだろう。引き下げ時期については明示されていないが、来年度の税制改正でまず5%の引き下げを実施してはどうか。
◎能登牛の生産拡大 公共牧場見直しの機会
石川県は県産ブランド和牛「能登牛(のとうし)」の生産体制強化の一環として、県農
業開発公社が管理する内浦放牧場を全農県本部に貸与する方針を決めた。本来、畜産農家から乳用牛や肉用牛を預かって肥育する公共牧場の新たな活用方式といえる。自治体や公的な機関・団体が運営する公共牧場は全国的に減少し続けているが、輸入穀 物飼料の高騰などで、その存在意義はむしろ増している。輸入飼料の価格不安のなかで、各地域のブランド和牛の生産・販売競争が激化しているいまは、公共牧場の役割、機能を見直す良い機会である。 農林水産省の調査によると、最盛期で1200カ所ほどあった全国の公共牧場は、20 09年度で842カ所に減少している。新潟を含む北陸地域は26カ所で、利用率は全国平均(70・4%)を下回る66%にとどまっている。畜産農家と飼育牛の減少が最大の理由であるが、その一方、農家のコスト削減や飼料の自給率引き上げという要請から、地域の飼料基盤である公共牧場での放牧肥育に期待する声も高まっている。 県の計画では、農業開発公社が管理する辰口、富来放牧場の牛舎を拡張して内浦放牧場 の肥育牛を移し替える。その上で、全農県本部が来年から内浦放牧場を能登牛専用の生産拠点にするという。経営の合理化・効率化が求められている公共牧場を機能別に再編、強化するものともいえる。 公共牧場の整備に合わせて、放牧による肥育技術や牧草の管理技術の改善、向上にも一 層努めてもらいたい。そのことが、肉用牛の品質に大きな影響を及ぼす。口蹄疫はむろん、さまざまな病気から乳・肉用牛を守る衛生管理体制の強化は当然である。 県は09年度で約500頭だった能登牛の出荷頭数を、14年度までに1千頭に増やす 目標を立て、畜産農家への新たな助成制度を設ける方針である。肉用牛のブランド化、高品質化の確立には、受精卵移植による繁殖から肥育、販路拡大までさまざまな課題があり、総合的な戦略・計画に基づいて取り組むことも重要である。
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