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【支援策】緊急融資など県内金融機関対応
(2010年5月20日付)
口蹄疫問題で運転資金が枯渇する畜産農家の経営は日に日に逼迫(ひっぱく)し、金銭的な支援も急務となっている。県は緊急対策として先月28日、運転資金を必要とする農業者向けや一般事業者向けの融資制度を創設したほか、畜産農家などに対する融資の利子負担分や防疫対策費などを含む総額33億円の補正予算を専決処分。今月12日には県内全域の畜産農家が金融機関から借り入れる生活費に対し、利子を無担保で全額補てんすることも決めた。九州財務局も県内金融機関に対し、取引先の経営再建への協力を要請するなど、金融的側面からの支援は拡大している。県の緊急融資窓口にもなる各金融機関やJAグループの対応状況をまとめた。
■JAグループ
県内13の単位JAは、国や県の家畜疾病経営維持資金を借り入れている農家に対して最大1千万円を独自に融資。さらに、この際の利子1%をJA宮崎信連(宮崎幸雄理事長)が負担する。
13JAと同信連が金融窓口で受けた相談件数は163件(4月20日〜5月14日)。当初、口蹄疫の発生地域からの相談が多かったが、長期化に伴い現在は県内各地から相談が寄せられている。このうち、79件(約2億2500万円)で既に融資が行われた。
相談の内訳は、出荷停止に伴う当面の運転資金や生活資金などへの新規融資が139件で全体の約8割を占めた。このうち、77件(約2億100万円)で融資が実行され、金額は数十万円から数百万円と幅広い。このほかの相談内容は融資条件変更(12件)や支払い猶予など(同)。
同信連は「再建のための資金というよりも、残された家畜の餌代や当面の生活資金を望む声がほとんど。今後、件数はさらに増えるだろう」としている。
■宮銀
宮崎銀行は19日、口蹄疫感染拡大に伴う県の非常事態宣言を受け、小池光一頭取が本部長を務める緊急対策本部を設置した。物資運搬や消毒の補助作業を行う行員6人を県農政企画課に登録し、今後20人程度に増員する予定。県内各店舗入り口には消毒マットと消毒液を備え置く。また、同行主催の各種セミナーは延期や中止にする方針。
また、先月26日から農畜産業や食品製造業者を対象にした上限3千万円の緊急対策融資の取り扱いを開始。児湯、西諸地区で18日までに20件の相談があった。「売り上げがなくなり、経費の支払いができない」という内容が中心。金額が多い場合でも柔軟に対応しており、同行営業支援部は「畜産農家のほか、小売業や運送業などへの支援体制も整えておく必要がある」と他産業への影響拡大に備える。
■宮崎太陽銀
宮崎太陽銀行(宮田穂積頭取)は高鍋、都農、西都、佐土原、小林、都城の6店舗に専門の相談窓口を設置。県の制度融資の取り扱いを行うほか、農業従事者向け融資商品の相談に乗るなど幅広く対応している。
19日には、口蹄疫で被害を受けている個人を対象に、用途を生活資金に限定した個人向け融資を始めた。限度額は100万円。通常の個人向けローンの約半分に近い4・3%の金利(保証会社金利含む)を適用する。畜産農家をはじめ、運送業、飲食業、商業関係者らの利用を見込んでいる。
■高鍋信金
高鍋信用金庫(井手口健二理事長)は県内27店舗の窓口で相談を受け付け、公的な融資制度の活用についての相談が寄せられている。業務推進部の近藤真司営業企画担当主任調査役は「児湯地域で大きくなった金庫。公的な制度融資の取り扱いや独自の融資制度の適応など、できる限り迅速に対応したい」と話した。
■農林中金宮崎支店
農林中央金庫宮崎支店(吉田光支店長)は19日現在、畜産関連の農業組合や農業法人から3件の相談があった。出荷の遅れによる当面の運転資金や当座の生活資金などに関する相談が多く、このうち1件は今月末に融資を行う予定という。
同支店の井野真吾次長は「新規貸し出しや金利の減免措置、償還条件変更などを通じて、当面の生活費や従業員の給料、追加の餌代などを支援したい」と話している。
■日本公庫農林水産事業
日本政策金融公庫宮崎支店農林水産事業(瀬戸口彰事業統括)には19日までに畜産農家からの相談が120〜130件寄せられた。連休明けから急増。「売り上げがなく返済猶予してほしい」「運転資金がない」「経営を再建するためにはどうしたらいいか」など差し迫った内容。
同事業は全職員で相談に当たり、即効性のある1年間の返済猶予などの条件緩和措置のほか、運転資金融資、経営再建に向けた融資などで対応している。事態の深刻化を受け「4月末は乗り切ったが、今月、来月には苦しくなる農家が増えてくるだろう。ほかの対策と組み合わせながら金融でできることはやっていきたい」としている。