10キロ内全頭処分 新たに20万5000頭対象

(2010年5月20日付)

 政府は19日、本県での口蹄疫の感染拡大を防ぐための追加対策を発表した。川南町を中心に発生が確認された農場から半径10キロ圏内のすべての牛や豚に20日にもワクチンの接種を開始、その後殺処分して感染拡大を封じ込めるほか、半径10〜20キロ圏内は一度牛や豚をすべて出荷させ「緩衝地帯」を設定する。国内でのワクチン使用は初めて。ワクチンは19日午後8時半ごろ、動物検疫所神戸支所から宮崎市佐土原町の宮崎家畜保健衛生所に届いた。

 新たな殺処分対象は牛約5万頭、豚約15万5千頭の計約20万5千頭。処分対象は18日までの分と合わせ約32万3千頭。政府や県の初動の遅れが批判されそうだ。

 鳩山由紀夫首相は「当面やるべきことはすべて迅速にやる。これで十分拡大を防げると思う」と述べ、自信を示した。東国原知事は「政府の英断に従っていきたい」と評価した。

 ワクチンは動物検疫所神戸支所から移送し、接種。農林水産省によると、全頭への接種には3〜4日かかる見通し。接種後に殺処分する牛1頭につき約60万円、豚は約3万5千円を支払う。

 ワクチンは、接種しても感染を完全には防げないが、症状を抑えることはでき、感染拡大のペースを遅らせる効果がある。感染拡大の速度を遅らせつつ、殺処分を進める方針だ。

 川南町を中心とした発生地域の10〜20キロ圏内では、すべての牛や豚の早期出荷を農家に要請。牛や豚は食肉処理し、民間会社が買った上で市場に流通させる。これらの牛や豚は、感染拡大防止の観点から移動を制限しているだけで、その食肉の安全性に問題はない。未成熟状態での出荷による農家の収入減は国が全額補てんする。経営再開支援金も交付。対策に必要な予算額は300億〜400億円を見込む。

 ワクチンの接種や殺処分には1週間以上かかる見通し。処分完了後、3週間以上新たな感染がなければ正常な状態に戻ったと判断する。

 口蹄疫はえびの市でも確認されているが、沈静化しつつあると判断。同市の10キロ圏内に該当する熊本、鹿児島両県も含め、全頭処分や早期出荷の対象からは当面外す。

【写真】口蹄疫対策本部の会合であいさつする鳩山首相=19日午後、首相官邸