終息の兆し見えず 疑い確認1カ月

(2010年5月19日付)


 口蹄疫問題は都農町で1例目の感染疑いを確認してから19日で発生1カ月を迎えた。後半2週間で感染疑いは爆発的な拡大を続け、18日午後9時時点で126例、11万4177頭と、ついに10万頭を突破。終息の気配は見えない。特に激震地・川南町は10万9千頭が殺処分対象となり飼育頭数(15万5千頭)の3分の2を超える。国は17日に現地対策チームを発足させるなど、ようやく本腰を入れ始め、「畜産王国・宮崎」の命運は国主導の防疫対策に託された。

 4月末での感染疑い確認は12例、殺処分対象4369頭。大型連休中に急増し、今月6日には12農場、7日に8農場で確認。50例を超えたのは発生20日目の9日だったが、100例はそれからわずか1週間後の16日に突破。現場では懸命な防疫作業が続く中、感染拡大は急加速している。

 県産ブランドへの影響は深刻。県内一円に和牛の精液を供給していた県家畜改良事業団(高鍋町)は種雄牛55頭のうち、エース級6頭をのぞく49頭が処分対象となった。次代の主力種雄牛を失ったことで、宮崎牛の進歩は停滞を余儀なくされる。ハマユウポークの品種改良に取り組んでいた県畜産試験場川南支場(川南町)も被害を受け、7年以上かけた原種豚改良の成果が無に帰した。

 JA宮崎中央会の試算では、殺処分対象が8万2千頭だった15日現在の被害額は160億円。内訳は家畜の評価額60億円▽出荷遅れによる餌代などの諸経費20億円▽農家の生活費や事業再開資金80億円。すでに11万頭を超えたことから、被害額はさらに膨らむことが予想される。

 「終息宣言」は最速で防疫終了から3週間で可能だが、現在は兆しすら見えない。県内8カ所の家畜市場は5、6月の閉鎖を決めており、家畜を出荷できず、餌代がかさむ農家への経済影響は深刻さを増している。