県の回避主張認めず 種雄牛49頭処分

(2010年5月17日付)

 県は16日、県家畜改良事業団(高鍋町)で飼育する肥育牛に口蹄疫の感染疑いを確認したと発表した。高鍋町での確認は初めてで、肥育牛259頭はすべて殺処分される。県は敷地内で飼育する種雄牛49頭について国と協議したが不調に終わり、殺処分が決定。県は肥育牛と種雄牛とでは管理者が異なるとして種雄牛の殺処分回避は可能と考えていたが、国の「同一農場」という見解を覆せなかった。西都市に避難させている主要な種雄牛6頭については1週間の経過観察とする。また、同事業団を中心に家畜の移動・搬出制限区域を追加した。

 県口蹄疫防疫対策本部(本部長・東国原知事)によると、人工授精用の精液を採取する種雄牛49頭は現役か、次代を担う若い牛がほとんど。宮崎牛のブランド力向上に大きく貢献し、引退した「安平」なども含まれる。

 14日に事業団から宮崎家畜保健衛生所に通報があり、立ち入り検査で症状が見られたため、感染疑いを確認。16日未明に動物衛生研究所海外病研究施設(東京)の遺伝子検査で陽性反応を確認した。

 同事業団は優秀な血統の牛を交配させた種雄牛55頭を一元的に管理。その精液を使い、誕生した子牛を敷地内の後代検定センターで肥育し、肉質を検査して種雄牛の能力を見極めている。

 県は同センターで感染牛が発生しても種雄牛に影響がないよう、感染疑い1例目が確認された4月20日以降、両部門の飼育管理者を分けるなど隔離措置を実施。今回の感染疑いを受け、県は「農場を分離した」と主張したが、農林水産省が「敷地が同じである以上は同一農場」との見解を示し、殺処分を決めた。

 また、家畜の移動制限区域に含まれた同事業団から特例として6頭の種雄牛を避難させた対応について、県は農水省に打診したのは今月8日だったと明らかにした。了承を得て避難に着手したのは13日で、残り49頭についても区域外に避難させる方針だったが間に合わなかった。

 県農政水産部の高島俊一部長は「最大の防御策を取ってきたが、本県肉用牛生産の要である種雄牛を失うこととなり、誠に申し訳ない」と陳謝した。

 同事業団は種雄牛の精液を凍結保存した人工授精用のストローを県内一円に供給しており、備蓄量は1年分に当たる15万3千本。

【写真】県家畜改良事業団で口蹄疫感染疑いが確認され、落胆した表情で会見に臨む高島俊一農政水産部長(左から2番目)ら県幹部=16日未明、県庁