2010年06月09日

第一弾その1

大学に入って3度目の桜もとうに散り、俺は世間の人々が5月病と呼ぶ倦怠感に悩まされ、4月には毎日通っていた大学への足もいつの間にか遠のいていた。
火曜の昼過ぎ、心地よい惰眠から僕を引きずり出したのは地元に両親と暮らす高3の妹からメールであった。

「週末に◯◯大学のオープンキャンパスに行くからアパートに泊めて」

相変わらず年頃の女の子とは思えないような無機質な文面である。そんな妹も同じ高校の男子には絵文字や顔文字を入れたメールを送っているのかと思うと、まだ幼い頃の妹と比べた時の違和感とちょっとしたジェラシーのような感情で、寝起きの僕はほんの少し喉の奥につっかえを感じた。

「いいけど、俺の部屋ベッドひとつしかないぞ。知ってるだろ?」

少し経ってまた携帯のバイブ。

「ソファがあるじゃん。」

これは、俺がソファで寝ろ、という意味である。実家を離れてもう3年目に入るが、こういうときの妹の言いたい事は不思議とよくわかる。

2年かけて築きあげてきた居心地のよい我が城であるが、おととし買ったソファは生地がくたびれ、寝るのには少々辛いと言わざるを得なかった。

億劫なので返信せずに寝ようとすると、またバイブ。

「とにかく土曜日、オープンキャンパス終わって夕方6時頃にはそっちに着くから、駅まで迎えに来て。」

相変わらずの強引さである。
中学生の頃同級生に告白され、断りづらいからという理由で学校を休んでいたような、言いたい事をなかなか人に言えない妹であるが、こと俺に関してはその限りではないようだ。兄としての威厳などあったものではない。

「あー」

了解とも拒否ともとれないようなメールを返し、また僕は眠りに落ちた。

平日は寝ているので休日くらい外に出かけるのかと言えば、そうでもない。休日も昼間まで相変わらずの爆睡である。平日の惰眠に付随するぼんやりとした罪悪感がなく、いつもなら何も考えずに眠り続けられる土曜の朝であったが、その日はけたたましいチャイムの連打で目を覚ました。最悪の目覚め。
いつもなら無視して眠り続けるのだが、俺は執拗な連打に耐える事ができず、玄関の覗き穴から訪問者を確認した。

雨上がりの土曜の朝の日差しの中、小さな手鏡で髪型を整える華奢な妹がそこに立っていた。

~つづく~

floatzel0123 at 05:25│Comments(10)TrackBack(0)この記事をクリップ!妄想小説第一弾 

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この記事へのコメント

1. Posted by ばうあー   2010年06月09日 21:31
^^;;;;;
現実の妹は役割もてませんぞ・・・・
2. Posted by p   2010年06月09日 21:33
ものすごい頑張って夕飯作ったのに「今日遅くなるから」って言われて強がるけど泣いちゃうシーンも頼む
3. Posted by ^U^   2010年06月09日 21:33
エロシーンはありますか><
4. Posted by r   2010年06月09日 21:34
めざせ書籍化
5. Posted by ろみんぐ   2010年06月09日 21:39
エロゲ化はいつですか?
6. Posted by @by論者ちゃん   2010年06月09日 21:41
このラノベはどのレーベルから発売予定ですかなwww
7. Posted by サク   2010年06月09日 21:57
とりあえず、妹が上に乗って、無理やり起こしに来る展開期待^^
8. Posted by リク   2010年06月10日 01:24
5 妹は二次元と妄想に限り、かわいいですなww
9. Posted by ^^   2010年06月10日 02:37
フローゼル氏の妄想妹が読めるのはイモートゲキッスだけ!
10. Posted by フローゼル   2010年06月10日 13:48
>ばうあー氏
リアル妹持ちとは一生分かり合えそうにないですな・・・
いざ戦争となったらいつでも槍を持って戦う覚悟はできています

>p氏
料理を作る場面は構想練ってありますなww楽しみにしてくれですぞw

>^U^氏
僕の気分と精神状態によってはありえるか~もね!ハイッ!

>r氏
201X年に電撃文庫から出版予定ですなw

>ろみんぐ氏
自分の妄想がエロゲになるなんて・・・そんなの実現したらもう死んでもいいですな・・・

>論者ちゃん氏
ラノベに明るくないのでよくわかりませんが、電撃文庫ですなwww

>サク氏
あなたも話がわかりますな・・・メモメモ

>リク氏
リアル妹・・・それは我が一生触れる事のできない高嶺の花・・・

>^^氏
気に入っていただければ幸いですぞw

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