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きょうの社説 2010年6月18日
◎参院選マニフェスト 「大風呂敷」の反省足らない
民主党が発表した参院選マニフェストは、「大風呂敷」を広げ過ぎて身動きが取れなく
なった昨夏の衆院選マニフェストの反省から、現実路線に大きくカジを切る内容になった。税制や外交・安全保障などで、民主党と自民党の公約がかなり接近した印象を受けるのは、二大政党政治の特徴でもあるのだろう。マニフェストの多少の見直しはあって当然だが、1年足らずのうちに、これほど大きく 変えざるを得なかったのは、衆院選のマニフェストが非現実的だったことの証左である。特に増税をせず、税金のムダ遣いを無くすなどして財源を捻出するとしていた公約をあっさり取り下げ、財政健全化の重要性を前面に打ち出した変わり身の早さには、あ然とさせられる。 なぜマニフェストの見直しに踏み切ったのか、国民への説明も反省も不足している。国 民に十分な説明とともに、まず不明をわびる必要があるのではないか。 民主党はマニフェストに、消費税を含む税制の抜本改革に関する超党派協議の開始を盛 り込んだ。菅直人首相は会見で「自民党が提案している10%という数字を一つの参考にしたい」と消費税率にまで踏み込んだ発言をした。民主党と自民党はともにマニフェストに、法人税率の引き下げについても明記しており、税制改革でほぼ足並みがそろった格好である。 民主党の衆院選マニフェストでは、税金の無駄遣い排除や予算の組み替えなどで、13 年度に16・8兆円の財源を生み出すとしていた。新旧のマニフェストを比べると、衆院選向けがいかに現実離れしていたかが分かる。衆院選マニフェストは結局、政権奪取の「方便」だったと言われても仕方あるまい。 鳩山由紀夫前首相は、消費税について「4年間の任期中は上げない」と明言していた。 首相が代わったからといって、封印されていた消費税引き上げが、いきなりマニフェストに盛り込まれた理由も分かりにくい。自民党がマニフェストに10%の消費税引き上げを明記したのを奇貨として、増税を打ち出してもさほど票は減らぬと高をくくったのではないか。だとすれば随分と国民をなめた話である。
◎海外協力隊の就職支援 政府、自治体が率先して
菅直人首相が、先に開かれた青年海外協力隊員の帰国報告会で、隊員の帰国後の就職支
援に力を入れる考えを示した。青年海外協力隊員の応募者が近年、減少傾向にある原因の一つに、帰国後の就業不安があるといわれる。海外でのボランティア経験を生かせる仕事に就けるよう支援することは、隊員派遣事業の継続に不可欠であり、それを民間に促すためには、まず政府、自治体が率先する必要があろう。青年海外協力隊の募集は毎年2回行われており、多い年は1回の募集で6千人を超える 応募があったが、最近はその3分の1程度に減っている。減少要因として、雇用や産業構造の変化、国際協力活動の形態の多様化、若者の内向き傾向などが指摘されている。 海外協力隊員の派遣事業を行う国際協力機構(JICA)北陸支部によると、北陸から は現在、富山県15人、石川県24人、福井県21人の計60人の青年隊員が派遣されている。自治体もJICAの隊員派遣を後押ししており、各県とも職員が現職のまま協力隊に参加できる制度を整えている。 さらに富山、福井県は帰国後の就職支援策として、教員採用試験で、協力隊員の実績を 持つ人に第1次選考試験を免除する特別選考制度を取り入れている。北陸以外では、教員だけでなく、自治体職員の採用で隊員経験者を優遇する自治体も出始めている。 岡田克也外相は今年1月、隊員の就職支援の拡充を全国の自治体に要請しており、これ にこたえることが県や市町村に望まれるが、政府開発援助(ODA)による青年海外協力隊派遣事業を日本の重要な国際貢献活動として拡充するのであれば、政府自身も隊員の帰国後の採用にもっと積極的に取り組まなければなるまい。 また、民間のNGOやNPOなどによる国際協力活動が活発になっており、ODAによ る海外協力隊の在り方を見直すべきという主張も聞かれる。国内の多文化・多民族化も念頭に置きながら、国際協力活動を担う人材の教育、育成と帰国後の活用策を国家戦略として考え直すときであろう。
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