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タダより怖いものはない (2010/06/18) 昔から、「タダより怖いものはない」と言われている。これは現代社会において、私達が再確認しなければならない標語ではなかろうか。タダということは、それ以外のどこかで収益を得ている(若しくは得る為の布石)わけだ。問題なのは「それが隠されていて、軽度であれ重度であれ、早い話が私達は騙されている」ということである。ここが「怖い」とされる所以だろう。 利用料が無料のサイトというのはエンドユーザーに優しいという面もありながら、重大な問題点を抱えている。それは、「ではどのように収益を得るか」ということだ。最近では大手SNSサイトなどで「有料追加アイテム」の問題なんかが多発している。 メイド喫茶のレポサイトが軒並み信憑性のない不透明な癒着情報ばかりを垂れ流す理由のひとつがこれだ。利用料が無料だから、広告収入でサーバー代などを維持するしかない。広告代を取ってしまうと、広告主に有利な捏造情報を載せざるを得ない。 私達エンドユーザーが欲しいのは、「紐のついていないクリアな情報」のはずだ。スポンサーの意思が、善悪を超えて内容に反映されることは誰も望んでいないのである。 私がこのサイトを作るにあたり、ヤフーの無料サーバーを選んだのはこういう理由があるのだ。維持費が無料なら広告費をとる必要がない。だからバナーの掲載も全てタダ、掲載する情報もクリア、こういう運営が出来るようになるのである。もう一つ方法があるとすれば、利用料を有料にすれば広告費以外から維持費を捻出することが出来るので、こうした問題は起こらないと思う。まぁそれだと誰も見ないだろうけどね。 無料サーバーだから信憑性がないということはないだろう。世界中であれだけ売れた「ポケモン」だって、最初は白黒画面のゲームボーイで出たじゃないか。白黒だからつまらないということはない、モノの良さというのは「何をするか」で決まるからだ。もしも有料サーバーを使っているサイトは無条件で信憑性があるというのなら、オタクはカネをかけて全身トータルコーディネートさえすれば今日からモテモテということだよね。 こうして積み重ねていくと、サイト・ブログはまだ方法があるとはいえ、現物の「フリーペーパー」はもうどうにもならないということがよく分かる。少し前、某フリーペーパーのメイド喫茶に関する記事が一気に減った。これは決して不人気コーナーだからではなく、カネを積んだ一部店舗に対する恣意的な扱いが問題視され、多数のメイド・コスプレ系店舗が派閥を組んで情報提供を拒絶し一斉離脱したのだが、、離脱の音頭をとったのが「アノ人」だったことが業界にとってはせめてもの明るいニュースだったのではないだろうか。 マドンナと生ゴミ (2010/06/17) メイド喫茶のメイドさんは、店の中ではさながら「マドンナ」みたいな存在だ。お客さんは老若男女関係なくそのほとんとがメイドさんを求めてメイド喫茶へやってくるわけだから、比較的ポジティブな評価を受けることが前提となっている。ちょっとした失敗も「萌え」で済むし、妙ちくりんなキャラクターも「個性」と喜ばれる。常にちやほやされ、それに快感を見出してしまう女の子も少なくない。 ところが、ビラ配りに立たされるメイドさんはまるで生ゴミを見るような目で見られ、通行人からは常に邪魔者扱いをされる。中にはつきまとわれたと警察に通報する人もいるなど、犯罪者と紙一重の存在だ。両方の業務を兼任させられているメイドさんは、「外はイヤだ、出来る限り中に居たい」と願っていることだろう。 どう考えても、店内での業務と外でのビラ配り業務は、店内の方が楽だし気分もいい。それなのに給料はビラの方が安く、バランス感覚に欠けると言わざるを得ない。ハイリスクローリターンの典型だ。辞めてしまうメイドさんのほとんどが、ビラをやらせた時に辞めるというのも頷ける。 また、店内でメイドさんとして人気が出る技術と、ビラを路上で受け取ってもらえる技術は全く別と考えるべきだろう。例えて言うなら、プログラマーに営業へ行かせるようなものだ。兼任させるのもおかしいし、接触させることもおかしい。結論を言えば、両方をメイドさんと呼ぶのがそもそもおかしい。ビラをやらされたメイドさんはこう思っていることだろう、「これのどこがメイドさんなんだ?」全くその通りである。営業をプログラマーとは呼ばないからね。 秋葉原の路上でビラを配っているメイドさん達は、他店同士であっても毎日同じスペースで配るわけだから、個人的には仲がいいというパターンも多い。しかし彼女らの会話はほとんどが「いつ辞める?」、「そっちは給料いくら?」、「そっちは店内でメイドさんをやらせて貰えるの?」などと現状に後ろ向きなものである。彼女らが店のために身を粉にして客を呼ぼうなんていう素振りは一切ない。人間というのは、例え集団に属していてもまずは自分ひとりの利益を優先して考えるものであるから、これは当たり前のことだろう。もう少し、努力が店の為になり、客の為になり、そして自分の為になるようなシステムには出来ないものか?今のビラ配りのほとんどが、店の為にはなれど客の為にも自分の為にもならないようなものばかりじゃないか。 こういう店はそろそろ、メイドさんにとって「頑張ろう!」と思えるような環境の構築をしてみてはいかがだろう。このままじゃ若い女の子を使ってオタク相手に焼畑農業していると揶揄されても仕方ないよ。 総選挙商法 (2010/06/16) ある人は宗教的だと言い、ある人は詐欺的だとも言う。「AKB48」の商法は何故、批判されるのか? #175でも書いたが、キャラクタービジネスとは、"本当に欲しい「主商品」を買うためには、欲しくもない「従商品」を買わなければいけない、というものだ"と定義することが出来よう。AKBは欲しくもないシングルCD(従商品)を、オマケの握手券(主商品)目当ての客に不当に売りつけていることが批判されているわけだが、ならば握手券だけを売ればいいのか?そんなことをしたら、どう考えてももっと批判されるぞ? これを「主と従のバランスが崩壊しているから」「露骨すぎるから」等と説明する人がいるが、私はどれもズレていると思う。正しくはこうだ、「彼ら(ファン)は騙されているから」。あれは総選挙でも何でもなくただの「集金システム」であるわけだが、問題なのは「彼らがその事実を知らされていない」というただ一点に尽きるのである。 握手券を主商品にCDを売っていること(つまりキャラクタービジネス)が悪いのではない。おばさんたちを虜にしている「韓流ブーム」も、オタク達を虜にしている「アニメグッズ」も、根は全て同じようなものだ。バランスが崩壊していると言われても、どのバランスが普通なのかという決まりごとなど何処にも無い。そこでAKBだけ批判されるのは、この「総選挙商法」がマズかったとしか考えられないのである。 メイド喫茶では、女の子と話したい、会いたいが為に、別に食べたくも無い冷凍食品を注文する人は数多い。しかしこれといって特に批判されないのは何故か。それは「嘘はついていないから」だ。それどころか、このシステムが無いと店はガタガタになる。 「エアー萌えっと(2007年12月28日閉店)」という店が在った。ここはお金を払って「座るだけ」。水もおしぼりもメニューもなく、メイドさんと会話するだけという横紙破りな店だった。キャラクタービジネスにおいて「いらないものを売りつけるのが無条件で非」であるなら、この店こそがユートピアということになるわけだが・・そんなわけなかろう。ネット上では「擬似風俗」などとバッシングを受け、潰れた。 「ミフレ(2007年9月21日閉店)」という店では軽食類一切なし、ジュースしか置いていなかった。先ほどの店と比べるとだいぶマシな気もするが、やはりなんというか、「これでいいんでしょ?」みたいな「やっつけ感」を味わうのである。他にも理由はあっただろうがやはりお客さんの支持を得ることは出来ず、結局メイドさんのメイド服代すら縫製店に払うことなく夜逃げした。 こう考えると、「モーニング娘。」はだいぶマトモだったと感じるね。何せちゃんとCDが売れていたからね。 ポイントカードの魔力 (2010/06/15) メイド喫茶の常連には、やたらと偉そうにする奴が多い。通称「痛」常連、彼らには共通するある特徴がある。それは#143でも書いた通り、「通い具合」を自慢してくる、ということだ。そしてそれは#157でも触れたが、「ポイントカードの進行具合」で計られるというのが定番である。 このコラムの#001からずっと私のメイド喫茶観の根底にあり続けていることなのだが、実はこの「ポイントカード」、非常に秀逸な「メイド喫茶がガタガタにならない為のシステム」だったりするのだ。 人は、混沌の中に秩序を作りたがる生き物である。誰だって枠組みの中で自分に有利な流れが出来れば面白いと思うものだ。ではメイド喫茶というローカル・スペースに於いて一体誰が一番偉いのか?それを推し量るための最良のツールが「ポイントカード」なのだ。 人間は集団を形成する時、階層を作りたがる。その時、誰の目にもはっきりと分かる「差」が必要だ。それがポイントである。ポイントカード無き場合のメイド喫茶で誰が偉いのかは結局、ただの「人気投票」になってしまうだろう。これほど「彼ら」にとって恐ろしいものは無い。人気投票は実力主義だ、それじゃ例えプレオープンから一日も休まず通っていたスーパー・常連でも、昨日初めて来たばかりの話の面白い一見さんに負ける可能性があるじゃないか。そして問題なのは、「この層がやたら多い」ということ。だからポイントカードが無いメイド喫茶は何となく「メイド喫茶イズム」を水で薄められたような印象を受けるという逆転現象すら起きている。これはミクシィにおいてマイミクを、ツイッターにおいてフォロワーを、数字として集める行為に快感を覚えるのと同じだ。 人の「快感」とは一体何か?そのトップに君臨するのは、他人と比べることで沸々と湧き上がってくる「優越感」という感情であろう。それが目に見えて分かるポイントカードは、メイド喫茶に通うことを気持ちよくさせる魔法のアイテムなのである。これが無いと安心して通えないのだ。 痛常連は誰も頼んでいないのに、テーブルの上に満タンになった過去のポイントカードを一枚ずつ並べ出し、他のお客さんがチラチラ見るたびに目を瞑ったまま頷いたりしてその快感を貪っているような奴が多い。あれはもはや「儀式」だ。簡単に言えばこの発想は「年功序列」であるわけだが、ところが彼らは「体よくカネを集められるシステム」にハマったに過ぎない。「偉くなりたきゃ、カネ使え」というメッセージにホイホイ飛びついたのだ。私はこの光景を見るたびに、所謂「メイドブーム」の仕掛け人はホント、罪作りだなぁと感じる。 このように、薬局やスーパーのポイントカード導入は「値引き戦争」かもしれないが、メイド喫茶のポイントカードは一味も二味も違うのだ。恐らく彼らは、ポイントで何が貰えるかなんてどうでもいいのだろうね。 ちょっと吸血されてきた (2010/06/14) コスプレ飲食店の「コンセプト」もそろそろ出尽くしてきた感がある。いや、アイディアそのものは無限大だとは思うのだが、「それを飲食店にした時、面白いかどうか」はまた別の話であるからだ。 先日、先月28日秋葉原にオープンした「夜宴迷宮」へ少し遅れて行って来た。コンセプトは「ヴァンパイア」である。無論、何をモチーフにしようとも「それがシステムにどう組み込まれているか(=それでどう楽しませてくれるのか)」こそが重要になって来るわけだが、その点においてもこの業界が今後どのような道を辿るべきかを示唆しているような、きちんと練り込まれたものであったことに明るい希望を抱いた。 店員さんが扮するのは4種類、「ヴァンパイアメイド(女性)」、「伯爵(男装の女性)」、「男爵(男性)」、「美モンスター(女装の男性=男の娘)」となっており、様々な属性の人を迎え入れてくれる。私は2時間ほど滞在したが、その間に出入りしたお客さんの割合が男性のみ、女性のみ、男女混合でほぼ1:1:1であった。これは秋葉原のコスプレ飲食店でも類を見ない成功例ではないか。また深夜営業にも力を入れており、「お昼の時間帯より夜の時間帯の方が値段が安い」というのも特徴のひとつだ。割安なボトルキープやポイントに応じた「かなりマトモな」割引サービスなどもあるので、アキバで朝までゆっくり呑みたい人は選択肢に加えてみては如何だろうか。数年前までは「夜7時を過ぎたら誰もいない」とまで言われていた秋葉原の街だが、こういったお店の増加によって「アキバならでは」の有意義な過ごし方が出来るようになるのは大歓迎だ。 勿論、全てが良かったとは思わない。オープンから日が浅いのもありまだまだ店内は手作り感満載で、それを接客で補っていた部分は否めない。またメニューも文字だけで少々分かり辛く、誤字なども見られた。とはいえ、母体は同ビル内「ピンキーカフェ」の運営会社である。お昼のメイド喫茶の営業でお客さんのニーズを分析し蓄積してきたノウハウを生かした営業形態は、無駄がほとんど無く文字通り「さすが」の一言だった。当然今後更なる改善が期待できるだろう。中でも偉いなと思ったのは、「単にピンキーカフェと同じような店を増やしただけではなかったところ」だ。それならサルでも出来るからね。こういった「考える葦」のような店がこれからどんどん増えてくれることを私は願っている。 余談だが、カウンター席に座ると目と鼻の先で料理しているところを見られるのも楽しかった。フードメニューには「気まぐれ」系が多くあり飲み会などにはピッタリなのだが、一体何を入れるのかをその目で確かめてみてはいかがだろうか。厨房には「わさび」と「練乳」が並んで置いてあったのが目に入ったのはナイショにしておこう。ってもう遅いけど。。 奇妙な符号 (2010/06/13) 2008年の無差別殺傷事件以来中止されていた秋葉原の歩行者天国が7月中旬あたりに再開する見込みらしい。しかし現状では、一部の悪質なメイド喫茶の違法な客引き行為に関するクレームが相当数出ている。こんなことじゃまさかこのまま何もなしに復活なんてことは到底夢物語だろう。#155でも触れたが、国民の不満はどのように噴出したとしても、最終的には「アキバの警察は何してんの?」という結論に行き着くのだから。 こんな時は「アリバイ」が欲しい。「いやいや、我々はこのように日夜努力している。ホラ、ちゃんと成果も出ているじゃないか」と主張出来るアリバイが。だがアリバイを作るだけならちゃっちゃとどこか一軒取り締まればイイだけのこと。ところがそれでは完璧とは言えない。実はもっとずっと前から用意していたのではないか?粛清しつつ、「みすみす見逃していたワケじゃないのよ」とシッカリ認知してもらえるような確固たるアリバイをね。 ある業界人はこのことをこう例える。「これは言ってみれば毒入りまんじゅうの配給ですね。そろそろ消化して毒が回り始める時間。しかしその中には毒の配分が悪くて、特に何もなく腹を満たし、おいしい思いを出来た奴もいれば、ピンポイントで毒が入っているところにあたって倒れた奴もいる。」至言であろう。 最近の秋葉原の街は毎日のようにパトカーが徘徊し、時には警察官が複数立って、路上での犯罪行為に目を光らせており、通行人への職務質問などもそこかしこで見られる。素行不良のメイド喫茶はこのお陰でかなり身動きが取り辛くなってきて、外見上はとりあえずだいぶ大人しくなったと見る向きもあるほどだ。そして「強引な客引き行為で売上を出していたメイド喫茶は、売上が落ちた」という事実が浮上した。そこで彼らのとったのは、「店に入って来た客から今まで以上に強引に、ガッツリ取る」という手である。すると、そのうち今度は店内でモメ事が起きるだろうね。 私が多くを語らなくとも、何を言いたいか分かるだろう。「それ」は今月2つも起きた奇妙な事件だ。それも外と、中で。警察はやはり全てお見通しだったわけだ。相当「データ」を集めていたというからね。私は常々思っていたんだ、どうして何も動きがないのだろうか、それなのにどうしてデータだけは集めているんだろうか、そして何もなしに歩行者天国が復活するとはどういうことか、って。これでようやくこの全ての符号が合致したような気がする。彼らは、昨今の事情にだいぶ精通していたんだ。 勿論これに焦るのは「問題のある店」であろう。さっさと「業態変更」でもしたら?もう無理だよ、そのやり方は。そして秋葉原の街は一刻も早くあの傷ましい事件の爪痕を癒し、安心して遊べる楽しい街に、あるべき姿に、戻ってもらいたい。 恋愛禁止 (2010/06/12) インターネットは可能性の新次元である。そしてそれは、「言い訳」の概念をも覆した。 例えば、歌手を目指して現在くすぶっている女の子は、「でも発表する場がないし・・」という言い訳も、インターネットさえ無ければ出来たわけだ。しかし今そんなことを言えば、「じゃあまずニコ動から行ってみようか!」と言われるだろう。そこでアクセス数が稼げなければ、やはり「負け組」の烙印を押されることは避けられない。このように、本来なら技術革新により「発表の場が与えられた」というのは素晴らしいことのような気もするが、当人たちにとっては「残酷」でもあったりする。この1+1が2にならないファジーさこそが「人」というものなのではないだろうか。だから、「"iPad"があるから本屋はいらない」というのはまだ極論の域を出ないわけだ。 この社会において、真の「平等」とは何だろうか?「発表する場がある」のが望ましいのだろうか、それとも「発表する場がないし」と言い訳出来る曖昧な状況が望ましいのだろうか。ここで前者を選ぶ人は、ここから先の問題でも前者を選べるだろうか? メイド喫茶はほとんどの店で、メイドさんとご主人様の間での「恋愛禁止」というお約束がある。このことについて異を唱える人もいるだろうが、実はこれほど便利な「建前」もない。じゃあ逆に想像してみて欲しい、もしも全てのメイド喫茶が、「恋愛、どうぞご自由に!」となっていたらどうだろうか?付き合えない人は負け組じゃないか。きっとギスギスして"癒し"どころじゃないぞ。この「恋愛禁止」というルールは、メイド喫茶というビジネスがガタガタにならない為の「秘密兵器」なのではないだろうか。 残念な話かもしれないが、もし仮に「どうぞご自由に!」になったとしても、メイドさんと恋愛出来るご主人様の全体的な数はきっと変わらないだろう。ある程度は変化があるかもしれないが、劇的な変化は何ひとつ起こらないはずだ。それは、「禁止されていたとしても、フラグが立てばそれを乗り越えてしまうのが恋愛だから」だ。つまり、禁止されている時点で成立していないものは、禁が解かれても成立しないと断言できる。私は様々なメイドさんに、「もしお店が恋愛禁止じゃなかったら、付き合っちゃったかもしれないご主人様はいた?」と聞いたことがあるが、「いた」と答えたメイドさんはゼロだった。この辺の詳しいことは#054を読んでもらいたい。 人はアリバイを欲しがる。ダメだった時、「でもこんなに頑張ったんですけどね」と言える"逃げ道"が欲しい。アインシュタインが相対性理論を提唱した頃から、科学的根拠一切なしのオカルトを信じる人も爆発的に増えたという。メイド喫茶にとって、こういった気持ちこそがメシの種なのではないか。 偶然 (2010/06/11) メイドさんの会話には明確なマニュアルなどは無い(店による)とはいえ、ある程度の「ルール」はあるものだろう。「本名は?」と聞かれたら「これが本名です」、「年は?」と聞かれたら「10万歳です」、「何処に住んでるの?」と聞かれたら「ナントカ星に住んでます」などとジョークで返すテクニックはもはや「お約束」である。これは当然、ストーカー防止の為だ。不用意な発言は本当に危ないのだ。その昔、「このお店まで片道2時間かかるんですけど、メイドさんになりたくて頑張って通ってるんです」で通していた某メイドさんは、徒歩5分のところに住んでいたりした。世の中そんなものである。 これを読んでいるご主人様の中には、「別に危なくないよ、一部のストーカーが危ないだけで、全部をそう見られたら困っちゃうな」という方もいるだろう。しかし、だ。ストーカーするのでないのなら、「プライベートを聞く」ということそのものがナンセンスなのだ。そもそも、「別に危なくない、寧ろプライベートでも積極的に関わりたい魅力的な」ご主人様なら、聞かなくても自発的に教えてくれるんじゃないか? 恋というのは、「好き」と言ってしまってはお終いで、向こうから「好き」と言いたくなるような自分になることが大事なのである。 これはあるメイド喫茶のメイドさんが、出勤初日に逢ってしまった憂き目の話。 彼女はご主人様との軽い会話といってもまだ何を話していいか要領を得ておらず、大きなミスをしてしまった。一体どこがミスか、文面を読んで当ててほしい。 「えっと、今日が初日なんですけど、17時に終わるんで、帰りに○○駅の駅ビルにあるサーティーワンでアイスを食べようって決めてるんです。どうしても食べたいのがあって。。」 さて仕事も終わり、帰りに宣言通り駅ビルに向かった彼女を待っていたのは、偶然を装った常連のBさんだった。「よぉ!偶然だね!」どこがじゃ。 この発言の何がミスだったかって、それは「真実」を話したことにあるだろう。具体的な駅名を出したこともアレだが、「本当のことを喋った」というのが最大の失敗だ。メイドさんはあくまでも、プライベートについて聞かれた時は、「さも本当のことのように聞こえる上手な嘘」を用意しておかなければならない。その点では冒頭で触れた「2時間」が秀逸なのである。 もしも喋ってしまった場合は、すんなり帰って今度行こう。 17000円 (2010/06/10) ポイントカードを貯めるとメイドさんとチェキが撮れる店、というのがある。これは「チェキ=とりあえずのゴール」であり、通っているお客さんの大半にも「チェキの為に通っている」という共通認識がある。 このタイプの店での「ポイントでチェキが撮れるまでの金額」は「2万円(分のポイント)」が相場となっている。即ち、お客さんからしてみれば「2万円でチェキを買う」ようなものである。そう、チェキは「サービス」ではなく「2万円の商品」なんだ。 ここで3年前、「これがメイド喫茶だ!」と言わんばかりの出来事があったので記しておきたい。 ある日馴染みのメイド喫茶へ遊びに行った私。ドアを開けるとメイドさんが一人だけ。店長が出てきてこう言う。「ごめんねー、今日3人だったはずなんだけど、風邪とかなんとかで2人も休んじゃって、1人しかいないの。だから、エミちゃん(メイドさん、仮名)がトイレに行く時とか休憩の時とかは、俺が接客するからよろしくね!」 そこで私は特に何も考えず、反射的にこんなことを口走った。これが全ての引き金になるとは・・。「オカマさん(仮名)、来たらいいのにね。」 オカマさんとは、このエミちゃんの大ファンのご主人様である。店に入ってエミちゃんがいなければ、コーヒー飲んで5分で帰るという徹底ぶり。メイドさんにも常連にも店長にも、「俺はエミちゃん親衛隊だから」と公言する人である。 この何気ない発言を店長は聞き漏らさなかったらしい、また後ろから出てきてこう言った。「あくみさんさぁ、オカマさんのメアド知らない?」そういや先日、「メイド喫茶について語り合おうよ!」と半ば強制的に赤外線通信させられた記憶がある。「ああ、知ってますけど。」「あくみさん、チェキ集めてたよね?」「ええ」「エミとツーショットしない?」「え?ポイント貯まってないですけど・・」「いいよタダで!」「なぜ」「その代わりさ、撮ったチェキを写メに撮って、オカマさんに送ってよ。」 実はこのお店、ポイントをどんなに貯めてもツーショットは撮れない。「その場にいるメイドさん全員と」がチェキの決まりとなっていた。しかし今日なら「全員=1人」だから必然的にエミちゃんとツーショットになる。オカマさんには垂涎のチェキだろう。店長は続けた。「あの人、確か満タンのカードを先週使ったから、今3点くらいなんだよね。だから今日来てもらえれば、17000円遣うんじゃないかなって。」 まさか、と思ったけど、メールしてから30分後、汗だくで到着した彼は眉一つ動かさず18000円分(実は2点だった)のオーダーをしていた。 さすがと言うか、何と言うか。でも楽しそうだった。 手作りケーキ (2010/06/09) メイド喫茶でご主人様がメイドさんに振る話題で最も多いものは、アニメの話でもゲームの話でもミリタリーの話でもなく、「小難しいうんちく」だそうだ。これは要するに「俺はこんなに賢いんだぞ」というセックス・アピールだろう。中には「メイドさんを落とすとか、一切興味がない(キリッ」という人もいるが、話している内容がうんちくの時点で「興味ある」わけだ。いい年こいて自分の欲望すらよく分からないなんて、「ウケない」よ。 しかしうんちくは、扱いが難しい。メイドさんも人間である、全く興味のない話を延々とされても、仕事とはいえ面白いわけがない。ではメイド喫茶で話すのに向いている話題とは一体何か? 若い女の子にウケる話と言えば、「食事」、「美容・ダイエット」、「旅行」、「占い」と相場は決まっている。美味しいレストランの話や旅行の話は「遊び人アピール」にもなるだろうし、女性向け雑誌では占いや心理テストに必ずページを割いているといってもいいほどの人気コーナーだ。また、メイドさんがオタクであれば、オタ話に花を咲かせてもいいかもしれない。しかしメイド喫茶で「ダイエット」の話はオススメ出来ない。女の子の体型をとやかく言うのは失礼だとか、そんな次元の話じゃない。メイド喫茶のご主人様がどんなに語っても、「説得力がない」からだ。 前にこんなことがあった。ダイエットについてメイドさん2人が少し喋ったところ、あるご主人様が食い付いた。「俺、生活習慣病、詳しいよ?」そしてそこから、水を得た魚かの如く彼のマシンガントークが始まった。食生活がうんたらかんたら、俺は栄養士の資格も持ってるetcetc..。メイドさんも飽きてきて、後半は「ほぅ、ほぅ」と眠いフクロウのような相槌である。 言っちゃ悪いが、メイド喫茶に来るご主人様は、「会話がつまらない時のメイドさん」を見抜く力に乏しいと言わざるを得ない。目が死んでいる「へぇーすごいですねぇ!」、顔も見ないで「あー、あるあるぅ!」、とりあえずアウェーな空気をもっと読んで、自分が今ウケているのかどうか考えてみた方がいいだろう。 10分ちょっとして満足したのか、彼が「行ってらっしゃいませ」したので、メイドさんに聞いてみた。「今のどう?」するとこんな答えが返ってきた。 「メイドさんの手作りケーキ1000円を、4人いるからって4種類全部注文して、ポイントカードがあと1ポイントで満タンだとか言い出してさらにもう1個追加しちゃって、1時間で5個もケーキを完食していくようなご主人様に、食生活と病気の関係を語られても・・ねぇ」。 精神異常者 (2010/06/08) 混乱の真っ只中にある「めいどりーみん池袋店」、社長は相当慌てているようだ。 ご存知ない方に説明をすると、今月5日、めいどりーみん池袋店店内に於いてトラブルが起こり、お客さんがメイドさんに暴力を振るったという。で、それについてめいどりーみんを運営する株式会社ネオディライトインターナショナルの鈴木社長は6日、自身のブログでこの事件のことについて触れた。 視点を変えるとこの判断は評価できる。というのも、このようなマイナスイメージが付いて回るような事件をわざわざ社長自ら公式リリースするメイド喫茶というのは他に見当たらないからだ。この行為は業界の透明性を確保する追い風になるのではないか。意外と思う人もいるかもしれないが、これもめいどりーみんの一つの「姿」なのだろう。 しかし一方で、書いてあることはムチャクチャだ。現在はさすがに表現がマズいと思ったのか記事が修正・削除されてしまったが、アップロード当初はこのような内容だった。「犯人は精神異常者だったようで、警察に逮捕された後病院に連行された」。これはおかしい。被疑者の身柄をどうするかは裁判所が決めるものである。カレンダーを見ると5日は土曜日、6日は日曜日であるから、裁判所から命令が出るはずがない。被疑者が怪我をしているなら治療に連れて行くことはあっても、文面から察するに「精神異常者だったので収容先は監獄ではなく病院」といった内容である。しかし「警察が」「独断で」病院に移送すると決定することは出来ないのだ。 となるとこのブログが意味することは唯一つ。社長はとにかく、「客が暴れたのは、そいつの頭がおかしかったから。店は何も悪くない。」ということを一刻も早く発表したかったのである。#180の通りじゃないか。しかも慌てすぎて削除する箇所を間違えてしまい、今残っている記事を読んでも「何があったのかさっぱり分からない」という有様だ。言いたいことが全部削られてしまったのだから仕方ない。 つまり、だ。このお客さんは異常者ではなかったのではないか。となるとさすがにどんな局面であれ暴力が許される行為だとは思わないが、メイドさんとの間で余程「何か」揉めたと考えるのが妥当だ。消された社長のブログ記事によれば「来店2回目」だったとのこと。それなら直の事「急に暴れだしたわけではない」ことは明白である。再発防止に努めるとのことだが、相手のせいにするのではなく、めいどりーみんが「どう」するのかが重要になってくるだろう。それなのに何より先に、メイドさんや他のお客さんを心配しているように見せかけて店のイメージアップを図ろうという魂胆が明け透けなのは、その場にいた客や警察に対して失礼じゃないか? それからもう一つ。この社長はそろそろプロのライターを雇うべきだ。 フランチャイズのススメ (2010/06/07) マーケット論争において重要になるのは、成功した前例をデータとして算出することではなく、「それが何故成功したのか」を分析することにある。 例えば、コンビニ最大手「セブンイレブン」のフランチャイズになったところで潰れる店は続出しているわけだ。最大手の名を冠したとしても、潰れる店は潰れる。それはつまり、「客はセブンイレブンだから遠くからでも来る」という状況には無いということの証左であろう。新規参入を目論んでいる事業主には「成功したセブンイレブン」と「失敗したセブンイレブン」の違いを分析する必要性があるわけだ。となると同じセブンイレブンが別々の場所にあって差がついたとしか説明が出来ないわけだから、コンビニの勝敗を分けるのはやはり「立地」が全てになる。これはどういうことを指しているのかというと、コンビニの客というのは店名や商品で店を選んでおらず、「便利な場所にあるかどうか」だけが全てなのだ。それは一体何故か? よく考えてみて欲しい。セブンイレブンの「のり弁」が新しくなった!というCMを見たとする。丁度小腹が空いていたところだ。そこで家から徒歩1分のところに「スリーエフ」があって、徒歩20分のところに「セブンイレブン」があったら、貴方はどうするだろうか?どう考えても「スリーエフ」で似たようなお弁当を買って誤魔化すんじゃないか?何故ならコンビニというのは明確な目的を持って行っても、絶対に在庫があるという確実性がない。そんなものに期待して「待つ」ことは出来ない。空腹は本能であるから、どうしても近い店を選んでしまう。 このことを、フランチャイジー(加盟者、加盟店)は一切考えていないわけだ。客の気持ちになったことがない奴に、商売が上手く行くはずがない。 ではメイド喫茶ではどうだろうか?メイド喫茶を立地で選ぶ人はまずいない。何故ならメイド喫茶は商品の在庫に関して「不確実性」がほとんど無い。たとえ遠くても行けば確実に商品が手に入るわけだ。人というのは、そういう時は「待てる」ものなのである。また、メイド喫茶というものは空腹だから入るわけではない。「外食産業」のようでそうではないのだ。その証拠に、「ランチ」サービスのあるメイド喫茶で、ランチで黒字を叩きだせるほどの集客が出来ているというデータはどこにも無い。寧ろランチを食べるのに割高につく「メイド」ほど邪魔な記号もない。だから、満腹でも明確に「欲しい!」と思わせなければ客は来ない。「指名して貰える圧倒的な価値の創造」が重要になってくるのだ。つまり、強いのはコンビニとは対極で「ブランド」である。ある意味で、メイド喫茶はフランチャイズ化に向いているビジネスモデルなのかもしれない。 シビアな仕事人 (2010/06/06) まだ利用したことの無い方もいるかとは思うが、「メイドガイド(観光案内)」という業態はこの業界における「台風の目」と言ってもいいだろう。現在秋葉原だけでも10店舗以上が軒を連ねており、何といっても喫茶・リフレと比較して人件費や家賃などが圧倒的にかからない点が強い為、「廃業」数が極端に低い。 最近は秋葉原の街を歩いていても、そこかしこでメイドさんと歩くご主人様を見かけるようになった。また#123でも触れたが、「私服オプション」を選ぶお客さんが多いので、単純計算でも見た目よりもっとたくさんの利用客がいることだろう。 これらは基本的には、何かのお店にメイドさんと一緒に入るなどする場合の出費は、お客さんの負担となる。最も多い利用先はやはり「食事」らしい。仕事帰りにメイドさんと1対1でお話しながらご飯、こういうニーズは思いのほか高い。 これは某喫茶店(非メイド喫茶)での出来事である。 色々買い物を済ませ、ちょっとコーヒー飲んで一息ついたら秋葉原を出ようと思い、あるお店に入った私。ふと見ると、対面の席にはメイドさんをゴージャスに2人もはべらせたご主人様が楽しそうに着席していた。スグに頭の中で電卓を叩く。今日はビシっと遊ぶつもりなんだな、と。 コーヒーと一緒においしいパンを頂く。余談だがここはパンのテイクアウトも出来る。それなりにくつろげたので満足してお店を出ようかと思ったのだが、「彼ら」の席で面白そうなムーヴメントが巻き起こったのでしばし観察してしまった。 「ご主人様ぁ、ここのパン、ほんっと美味しいですよねぇ〜!」 「美味しいよね!○○ちゃん、ここのパン好きなの?」 「うん、大好きです!お店の子もよくここ来るんで、たまにテイクアウトで買って来て貰うんですよ〜」 「へぇ、じゃあ今日いるお店のみんなに買ってく?何個か好きなの、選んできなよ。奢ってあげるよ。」 「えっホントですか?じゃあ、お言葉に甘えて、選んできますっ!△△ちゃん、行こ!」「ウン!」 ・・数分後・・ 「あのぉ、、お店の子とぉ、それからぁ、店長さんとぉ、あっ、店長さんホントにいい人なんですよ!それから、おうちのおばあちゃんと、それからそれから、学校の友達の分も、オーダーしちゃいましたっ!全部で1万3千円」 仕事人、という言葉が浮かんだ。仕事にシビアなメイドさん、やるじゃないか。 新手の手口 (2010/06/05) メイド喫茶のメイドさんといっても、キャバ嬢に比べたら遥かに「ヌルい」。いや問題はそこじゃない。メイド喫茶のご主人様は、キャバクラのお客さんに比べたらトンでもなく「ヌルい」のは間違いない。即ち、キャバ嬢がメイド喫茶のご主人様を客にすることが出来れば「鬼に金棒」なのは言うまでもないだろう。私がナニを言いたいか、分かるだろうか?この記事を最後まで読めば、「分からない」とは言わせない。 これは私が、先日秋葉原の某メイド喫茶で見た戦慄の実話である。 友達と3人で軽くランチを食べに来た私。この店のフードは値段も内容も納得の範囲内で「良店」だと認識している。だがそこで「事件」は起きた。 メイドさんが隣に座っているご主人様に話し掛けた。手には、紙?を持っている。 「ご主人様っ、これ私が描いたんですけど、、何の絵だか分かりますか?」 「え?○○ちゃんが描いたの?うーん、、そうだなぁ、、ライオン?」 まぁ、他愛もない「よくある会話」に過ぎない。しかし、ここからが本題である。 また来た。「今度は、これですっ!何を描いたか分かりますかぁ?」「うんとねぇ・・」 その時、「チラっ」とその紙が見えた。何やらカドが丸いトランプのようなカードのようである。 そしてまた。「これはなぁ〜んだ?」「これ?えーっとねぇ・・」 すると3度目にして「何か」に気付いたご主人様がこう尋ねた。「ねぇ、ところで、このカードに書いてある「コスプレキャバクラ・モエモエキング(仮名)」って何?」そう、紙はカードではなく、キャバクラの名刺の裏だったのだ。それからメイドさんは急に饒舌になって、こんなことを言い出した。 「あっ、気が付いちゃいましたか!これは皆にはナイショなんですが、実は私が夜働いているお店なんです。学費が足りなくて・・あ、でもコスプレキャバクラっていっても、メイド喫茶と全然変わらないですし、働いてる女の子もコスプレ好きなオタクの女の子ばっかりですごく楽しいですよ!」 「へぇ、キャバクラかー。でも高いんでしょ?」 「全然!キャバクラより高くつくメイド喫茶なんてたくさんありますしね!夜だったら私も普通にメールアドレスとか電話番号とか交換出来ますし、気になったら1セットだけ冷やかしに来てみてくださいよ〜。3千円もあればなんとかなりますからっ」 ナイショの割には隣の席の私に筒抜けの大きな声だったんだけど。 それゆけ!ニート大作戦を見た (2010/06/04) 先日注文していた「それゆけ!ニート大作戦」が手元に届いた。 メイド喫茶がこれまで発売してきたDVDなどの映像作品といえば、「メイドカフェ発表会」なんかが有名だろうか。一応全て持っているが、ぶっちゃけると中身は素人丸出し、「オキニのメイドさんが出ているから買う」という常連さん向けのキャラクターグッズに過ぎなかった。映像としても、何というか、「テレビ通販で型遅れのDVカメラを買っちゃったお父さんが、日曜日に自宅のベランダで適当に回したわが子の成長記録」の域。あれを定価で買うのは、ポイントカードを貯めたいとか、メイドさんを喜ばせたいとか、そういった理由しか思いつかない。 今回「それゆけ!〜」を買ったのは、先日「あきばふみもみポリス」で気になった女の子が出ていたから、というのが正直な理由だった。メイドカフェ発表会のこともあり、あまり中身には期待していなかったのだが、今回は見事に裏切られたと言っていい。「社会派」と銘打つだけあって、これは間違いなく「問題作」だ。動画と名のつくものなら何でも集まる「ユーチューブ」「ニコニコ動画」でも見たことのない斬新な衝撃を受けた。 作品のテーマは「この国のおかしな制度にメスを入れる」といった本格モノ。お堅い内容なので笑いが無かったかといえばそんなことはない。特に「受付のお姉さん」の合成は必見モノだ。それから「爪」。私はこのDVDのほとんどの時間を、この爪の凝視に費やしてしまったかもしれない。 当初は純粋にお店の宣伝を兼ねた販促グッズなのだろうと思っていたのだが、全編通して一切そのようなシーンが無かったのも好印象だ。お金を払ってまで宣伝など見たくないからね。 残念なところも無かったわけじゃない。ひとつは「オチ」。これから買おうという人の為にネタバレしたくないのであまり触れられないが、もう少し何かあったら面白かった。もうひとつは「もっといい方法がある」。けど、これら2つは「わざと明確に見せなかった」のかもしれない。映像作品というのは、何でも見せればいいというもんじゃないから。松本人志の「しんぼる(松竹)」のラストシーンにネット上では文句が噴出しているようだが、私はあのラストシーンには「やられた!」と思ったものだ。あそこで「見せる」のは簡単だが、見せてしまえばそれはそれで「違う!」と言われるだろうしね。あえて見せないことで、「考える余地」を残すというのは、作品の締めくくりにおいてとても大事なエッセンスにもなるのである。 何はともあれ、メイド・コスプレ産業の歴史において、この「それゆけ!〜」は異形のアプローチになったのではないだろうか。金額以上の価値があるかどうかは人によるだろうけど、正真正銘「初めて見た」。 デジタルデータが爆発的には売れない理由 (2010/06/03) アナログとデジタルの転換期はある時を境に劇的に訪れる。例えばVHSとDVD、インスタントカメラとデジタルカメラなどがある。これらは「成功例」であろう。 反対に、「失敗」もある。ダウンロード販売が音楽CDに取って代わる脅威かといえばまだまだ全然そうなっていない。音楽CDは確かに死んでいるが、かといってダウンロード販売だけで売上が上がるかというと「まだ完全には立ち上がっていない」としか言いようが無い。 書籍も一緒だ。ケータイで読めるマンガが人気を博しているとはいえ、紙の「本」の需要はなかなかしぶとい。確実に「逝き」つつはあるが、電子書籍が一気に逆転するということは今後もないだろう。それは何故か。 DVDは「モノ」である。デジタルカメラも「モノ」だ。それに対して音楽のダウンロード販売もケータイ書籍も「データ」だ。私達は、「モノ」→「モノ」の世代交代にはすんなり納得出来るのだが、「モノ」→「データ」には強烈な違和感を覚えるのだ。DVDだって中身はデータだが、データを入れる「モノ」があった方が俄然手を出しやすい。また、モノは売却することも可能だがデータはほぼ不可能。リセールバリューを考えると損なのである。 メイド喫茶では基本的にメイドさんの写真を撮ることは禁止となっており、有料オプションの「チェキ」を買うのが定説というか「通過儀礼」になっている。この「チェキ」、メーカーのフジフィルムではポラロイドフィルムが2008年に生産終了しており、チェキもまた将来性のない商品であって、これがメイド喫茶オーナーの悩みの種のひとつであることは間違いない。「データに移行すればいい」という単純なものではないからだ。現に、「メイドさんとチェキ・・1枚500円、貴方のケータイでメイドさんとツーショット撮影権・・500円」というサービスを実験的に展開しているお店でも、売上はチェキの方が断然良いという。写真という「モノ」を買うのは納得が行くのだが、撮影「権」と「データ」を買うのは納得がいかないのだ。だってチェキはその「権」も含めての値段であるし、自分のケータイを使う以上、お店の備品が減るわけでもないのに同じ値段というのはおかしいんじゃないの?と思われるわけだ。また、チェキなら大抵の場合メイドさんの落書きも付いてくるが、ケータイ撮影ならそれもない。つまり、データというのは大義名分としての「モノ」に入れない限り、今までのアナログ商品と全く同じ利益は出せないということである。 チェキの代わりになる商品を探せとなれば、メイド喫茶では「チェキと同サイズのカードサイズの光沢紙に、デジカメで撮影した画像をプリントして落書きして渡す」などの措置を迫られるであろう。それくらい、モノからデータへの移行の「溝」はまだまだ深いのだ。 サブリミナル・インプレッション (2010/06/02) 「ホームページビルダー(IBM)」という、ホームページを作成する為のアプリケーションがある。このソフトがどうしてシェアナンバーワンになれたのだろうか?私は、「名前」にひとつの秘密が隠されていると考えている。 ホームページを作るソフトで「ホームページ○○」というネーミングは些か単純に見えるかもしれない。しかし、初心者からすればこれほどありがたい名前はない。一目で「ホームページを作るソフトだ」と分かる。そもそも、ホームページを作るソフトというのは初心者向けなわけだから、このネーミングは神懸っているといえよう。また、略して「ビルダー」であるところも素晴らしい。ダサかった「ホームページ」の部分がすっ飛んでしまい、二つの濁音が重厚感を与え、何か「凄いソフトなんじゃないか」ということをアピールしてくれるのだ。 商品のネーミングというのは商売においてとても重要なものである。ネーミング次第では同じ商品でも全く伸びない可能性だってある。世の中には名前をつけるだけで大金を取る仕事もあるんだ。「フレッツひかり(NTT)」と聞くとなんとなく「通信速度が速そう」な印象を受ける。これは、音に濁音が無くクリアな感じがするからだ。これもプロの仕事だろう。 貴方がもしメイド喫茶を立ち上げるとしたら、店名は何にするだろうか?「シャッツキステ」は公式ホームページによればドイツ語で「宝箱」を指すそうだが、公式ページを見ずにいきなり意味を知っていたという人はほぼ皆無であろう。しかも「宝箱」と聞いてもメイド喫茶なのかどうかすら分からない。こんなに分かりにくい名前なのに何故、店はマニア達にウケているのか? これはSEO対策も含めた話なのだが、メイド喫茶ないしそれに順ずるお店のネーミングとして最適なのは、「メイド○○」という名前であろう。「単純すぎるだろ」と思うなかれ、まず検索サイトでメイド喫茶を探す人は「メイド・・」と入力するわけだ。その際「メイド○○」にしておけば、即引っかかる可能性があるので美味しい。またメイド○○と聞けば、初心者であっても「メイドさんのお店なんだな」とすぐ理解できるという利点がある。手広く客を獲りたいならこれで決まりだ。逆に、マニア層に向けた店であることを発信したいなら、隠れ家的な意味でメイド○○とは付けず、わざと覚えにくい名前にして「知ってる奴は通」くらいが丁度いい。 「アット」「シャッツ」「ハニハニ」「エルアール」「キュア」「メイリ」「アフィリア」「てんすた」etc、、メイド喫茶業界では濁音の無いクリアな音が出る店名がヒット店の条件のようである。これは可愛いメイドさんがいるお店というイメージからだろう。勿論それだけじゃないが、こんなことを、少し考えてみてはいかがだろうか? 何故メイド喫茶は割高に感じるのか (2010/06/01) カラオケ店でフード類を注文すれば、所詮「チンもの」が雑に出されるだけだが、それについて文句を言う人はあまり見ない。同じように、マンガ喫茶やインターネットカフェでもフード類を注文できるところは増えているが、出てくるモノは更にランクの落ちる「チン」ばかりだが、それについて文句を言う人は同じくあまり見ない。それなのに、メイド喫茶が冷凍モノを出すと文句が出る。それは「形態(システム)」に問題があると言わざるを得ない。 カラオケはカラオケこそがメイン商品であり、ネットカフェも同じくマンガ本やネット環境がメイン商品であり、扱っているフードで店を選ぶようなお客さんはほぼ皆無である。「それじゃあメイド喫茶だって、メイドさんがメイン商品だろう?」と思うかもしれない。その通りだ。だが、決定的に違うところが一つだけある。それは「カラオケもネットカフェも、メイン商品のお金は時間制で先に取っておいてフードは二束三文の値段で叩き売っているが、多くのメイド喫茶はメイン商品であるメイドさんを無料と位置付けて、オマケ商品であるフード類を高値にすることを収益構造の核としている」という点である。このせいで、「いらないものを割高で買わされている感」が強まり、結果として「あんな高くて不味いものを食べに行くなんて理解できない」と言われてしまうのだ。 もしもカラオケが、「歌うのはタダだけど、1皿1000円の冷凍エビピラフを1時間に一回は頼まないといけない」なんていうルールだったらどうだろうか?少し考えただけでおかしいし、積極的に行きたいとは思えない。やはりこのような商売は、時間制にしてエビピラフは280円程度に抑えておくのがベストなのだ。 メイド喫茶がこの状況を脱するには、これらと同じようにやはり「時間制」を積極的に用いていくことがキーとなるのではないか。時間制にすれば金額次第ではお客さんに割安感を抱かせることが出来るし、店側からすればドリンク一杯で粘られることも無い、粘ろうとすればするほどお金もかかるのでそれなら問題ないだろうし、何より計算がしやすい。マンガ喫茶と同じくフリードリンクならばメイドさんがバタバタする必要もないのでお客さんの満足度は上がるし、メイドさんの頭数がいらない。そして何よりもキャバクラ形式でなくなれば風営法の許可がいらないし、それなら大手を振って18歳未満が雇えるではないか。メイド喫茶の時間制化は、現在業界が抱えている様々な問題を自然な形でクリアしてくれるのではなかろうか。 高い値段を取るならいいものを出す、そうでないなら安くても回るシステムを。お客さんは何が欲しいのか?「納得したい」のである。納得できるもの=いいものなのだ。こんなことは私が言わなくても当たり前のことなのだが、どうもそうでもないらしいので。 妄想の押し売り (2010/05/31) 秋葉原に「BL(ボーイズラブ)バー」というのがオープンしたそうだ。どうやらホモっぽいイケメン店員がイチャイチャするところを見せ付けるバーらしい。これが「腐女子」的にどれだけ滅茶苦茶なものかお解かりいただけるだろうか?怖いもの見たさで一回は冷やかしに行く人もいるかもしれないけど、最終的にこんな店は絶対に腐女子達には受け入れられない。 昨今における「腐」ブームはさておき、彼女らがどうして「BL」、「受け、攻め」といった思考にハマるのかを考えた時、考えれば考えるほどこういった形態の「BLバー」という発想は出てこないはずである。 私はメイド喫茶において「萌え萌えキューン」ほど意味の分からないものはないと感じている。「萌え」というのはメイドさんのちょっとした仕草などから客が「勝手に感じ取る」もののはずである。だから、大声を出して「萌え萌え〜・・キューン!はい、萌えましたね!」なんていうのは全く見当違いなのだ。「萌え」が売っている?という珍妙な現象は、商売人たちが全く萌えというものを理解する気がないことの表れであろう。 この「BLバー」も同様、腐女子たちがハァハァしているのは「勝手に脳内設定で萌える」というものが根底にあるのだ。あのコンビ芸人はあんな話があったんだ、実はもしかしてデキてるんじゃないの?あのキャラとあのキャラはおかしな素振りをたまに見せる!絶対怪しい!などと勝手に妄想するのが楽しいのだ。つまりBLは先ほどの萌えと一緒で、「これでお前たちは萌えるんだろ?ホラ!さあどんどん萌えろ!」とやられればやられるほど萎えるのである。 「萌え」とも「腐」とも全く関係のない話なのだが、以前とある月刊誌で新宿2丁目のオカマバーの「ゲイ」の方を取材させていただいたことがある。その時、こんなことを言っていた。「ゲイにモテる男の子っていうのは、ノーマルな子。ゲイに「あなた、男が好きなの?」と耳元で囁かれて、「い、いえ、違いますよぉ・・!」などともじもじしちゃうタイプがウケるの。決して「そうなんです」じゃダメ」だそうだ。 恋愛感情において、最も楽しいのは「追いかけている時」でファイナル・アンサーだろう。その中で暖簾に腕押しかと思っていたところに「あれ?もしかして向こうもこっちに気があるんじゃないだろうか?これってフラグ?」なんてことを感じ取った瞬間こそが感情の起伏のピークなのではなかろうか。 腐女子に人気があるのは決して「BLですよー!」というメッセージを積極的に出しているものではない。あの「アンパンマン」ですらBL同人誌が作られるのだ。アンパンマンの何処にそんなメッセージがあったのか?だからこそ妄想する楽しさがあるんじゃないか。 みのもんた (2010/05/30) 男性の中には、「小銭払うだけで女の子に"カッコイイ"って思われるなら、安いモンだ」と考えている人も少なくない。雰囲気のいいバーなどでは「奢るよ」などというナンパもそこかしこで見られるだろうが、似たような現象はメイド喫茶でも見られる。といっても、お嬢様(女性客)に奢るわけではない。「メイドさんにカッコイイと思ってもらう為に、お客さんに奢る」のである。私は過去、両手では足りないほどこういうご主人様を見てきた。その中でも最も記憶に残っているトンデモご主人様の話を書こうと思う。 某メイド喫茶に、「メシア(救世主)さん」と呼ばれている常連のご主人様がいた(彼の名誉の為に少し仮名)のだが、この人が凄い。もし今後メイド喫茶に関する本を書くことがあれば、少なくとも彼の為に4pは割きたいと考えている「伝説の人物」だ。 彼は所謂「オタク」である。しかもどちらかというとキモいオタク、「キモオタ」だ。メイドさんに振る話題は専ら「エロゲー」の話ばかり。しかし出入り禁止なんかには絶対にならない。その理由はこの先を読めば分かるはず。 毎週土曜日、定時になると必ずご帰宅するのだが、店内に入ってくるや否や、その時いるお客さん全員に「どうぞ、飲み物1杯ずつ注文してください。お会計は僕につけてくださって構いませんから」と言って回る。これだけでも十分「奇行」だが、まだまだこんなもんじゃない。「えっと、フライドポテトを、、そうだな、5セット。これを小皿に分けてお客さん全員に均等に配ってよ。」「チェキを10枚、これもお客さん全員と一人ずつツーショットしてあげて。」「ポイントカードのポイントも、僕はいらないから、全員に分配してあげてよ。」 彼は一度の帰宅で1時間も店に滞在しないのに、それでいて必ず2〜3万は店に落としていく。メシアというニックネームはオーナーがつけたそうだ。「お店の救世主」という意味らしい。彼は一体何の為にこんなことをしているのか。そこでSちゃんというメイドさんに彼がトイレに行っている隙にコッソリ話を聞いてみると、「あの人、オーナーに「メイドさんにモテるには、どうしたらいいでしょうかねぇ?」って聞いたらしくて、「男のかっこいい"遊び方"っていうのは、パーッとカネをばら撒いて、サッと帰ることだね。"みのもんた"知ってるでしょ?アレだよ。アレで女の子はイチコロだよ!」みたいなことを吹き込んだら、翌週からああなんですよ」と半笑いで説明してくれた。みのもんたも罪な男である。まさかメイド喫茶で名前が出るとは、本人も「想定外」だろう。 途中から彼が気の毒になって来たのだが、「大丈夫、さっきジュース頼んだんで」と笑顔で断っても「それじゃ男が下がります!」とか言って一歩も譲らないから止めようがない。彼のお陰でこの店のチェキ18枚をタダで手に入れポイントカード2枚が満タンになったのは私のせいじゃない。はず。 情報弱者 (2010/05/29) テレビには全部でどれくらいの「やらせ」があるのか?製作側は他番組を見ているだけで、これが「やらせ」かどうか大体判るものだそうだ。だって「やらせを作っている側」だもの、河豚が自分の毒で死ぬわけがない。 例えば、「着メロ」。以前手品の番組で、某有名ストリートマジシャンが一般人のケータイを借り(た風に装って仕込みの役者から借り)てゲレンデの氷の上に置き、そしてその上から手をかざしケータイを一瞬にして分厚い氷の中に埋める、、というものを披露していた。「さあ、この埋まっているケータイが本当に彼(一般人)のモノか!?彼女(彼の連れ)、電話をかけてみて下さい!」と煽り、彼のケータイを鳴らすと「着メロ」が流れるわけだ。しかしそれを聞いただけで、「彼」がやらせの役者であることが判るのである。 着メロには音楽の著作権が発生する。もしもこれが本当に素人を捕まえて出させたケータイだったら、予想だにしない着メロが鳴ってしまい、見知らぬアーティストの権利を侵害してしまう可能性がある。そこで権利問題をクリアしている無難な着メロに「予め」設定しておく必要がある。つまり、「同機種のケータイが番組側によって予め用意され、既にそこに埋められていた(=彼も彼女も役者)」と考えるのが妥当だ。 そもそも、そんなことが出来るならケータイなぞ瞬間移動させずに日銀の金庫から現金を自宅に転送すればいいじゃないか。テレビの仕事を請けなくて済むぞ。というより、そんなおちゃらけたバラエティ番組ではなく、定時のニュースのトップで流せ。今日の科学を全否定する大事件だ。新聞も一面に載せろ。それをしないでバラエティでやるということは、作っている側も「これは嘘だ」とハッキリ理解しているのだ。 以前、某メイド喫茶がある深夜番組の取材を受けた、と「していた」が、あれもやらせだ。正しくは、カネを払って取材「させた」。「させた」と「受けた」には公園の砂場とサハラ砂漠くらいの違いがあるので決してごっちゃにしないように。 それがハッキリするのがこのシーン。常連らしき男性(番組内では「建設業の男性」と表記)に「普段どれくらい(ここでお金を)遣いますか?」と取材班が尋ね、男性が証拠としてレシートを財布から出すのだが、、よく見ると、彼は二つ折りの財布を使っているにも関わらず、映っていたレシートはついさっきロール紙から切り取ったばかりで丸まっていた。彼(レシート)は、撮影用についさっき店側が用意した「やらせ」だったのだ。そして「人気があるから取材した」のではなく、「人気があるように見せかけるためにお金を払って取材させた」のである。 確かにテレビは面白いし暇つぶしになる。だが「映像のマジック」は思っているより根が深い。「テレビが言ってるから」をソースにすると思わぬ所で恥をかくだろう。 システム>コンセプト (2010/05/28) お客さんは新しいメイド喫茶が出来て、それを一通り体験した後、どのような感想を持ち、どのように心の中で格付けするのだろうか。「今ウケているもの」を追いかける在り来たりなマーケティング活動では、この「意識」の部分に足を踏み入れるのは難しいだろう。 私が#192で「まずシステムに凝るべきだ」としたのには、深い理由がある。 新しい店が出来た、誰かがその店へ行ってきた、さあ、感想は?「あの店に似ていました」。こんな風に説明されて興味を持つ人がいるだろうか?このように説明が付く店というのは、その時点で泡沫として消え行く運命にあると考えて差し支えない。 お客さんに「コンセプトとシステム、どちらでお店を選びますか?」などとアンケートを取れば、恐らくコンセプトに票が集まるだろう。しかしこの答えを単眼的に判断しては決して優れた店と評価されることはないはずだ。 コンセプトの違いというのは確かにあれど、そもそもどんなコンセプトであれ「どれもメイド喫茶の仲間だ」ということは既に知れ渡っている。そしてどんな衣装を着ても、接客にこだわっても、「ただ着ただけなのか、そうでないのか」は、「コンセプトがシステムにどう反映されているのか」から推し量られるのである。そして反映なき場合は「ただ着てるだけ」「世界観がちぐはぐ」などといった低い評価を受けることとなる。つまり、「システム上不都合の出てくるコンセプトは良くない」=「システムから考えるべき」なのだ。 となると、例えば純粋に「メイド喫茶」であれば、お客さんは「主」、メイドさんは「従」の関係にあるわけだから、「1時間ワンオーダー制、1時間経つごとにメイドさんが各テーブルを回ってオーダーを聞きに行きます」というシステムはちょっとおかしいわけだ。「従」のメイドさんが「主」のお客さんに対してオーダーを強制するような状況というのは、「これのどこがメイドなの?」という疑問を抱かせてしまう。結果としてシステムがコンセプトを破綻させてしまい、お客さんはガッカリする。その意味では、「ご主人様・お嬢様が帰って来る第2の家」という位置付けであるメイド喫茶に帰宅して、「席料」を取られるというのもスタートから躓いているような気がしてならない。別に客単価を上げるのは一向に構わない(イヤなら行かなければいいだけ)のだが、それは#161のように「システム内に組み込んで上手く処理」すれば何の問題もない。 せっかくの「メイド喫茶」である。優雅な気分を味わうためにも、また癒しを堪能するためにも、「居心地のいい空間」を作り上げて欲しい。 違法性阻却への道 (2010/05/27) この社会、「美味しそうな市場なのに、何故かまだほとんど手付かず」な商材には、必ずといっていいほど「裏」があるものだ。 よくよく考えれば、何故そんなに美味しい市場が放置されているのだろうか。そんなに凄いなら、大手企業が潤沢なカネとコネをもって席巻してこないのが不自然じゃないか。 メイド喫茶はどうして個人営業がメインで大手に荒らされることがほとんどなかったのだろうか?これにはメイド喫茶の業態を考えた時、違法性の阻却が極めて難しいという側面があるのだ。それは風営法でいうところの「2号営業」、つまり「接待」についてである。 法律で定められている「接待」行為とは、次の5つだ。1・談笑、お酌。2・踊り。3・歌唱。4・遊戯。5・客の口許まで飲食物を差出す。この5つのうちどれにも該当しない店(健全営業)もあるが、全てに該当するような店(灰色営業)もある。そこで問題は「該当しているのに何故平然と営業している店があるのか」ということだ。 あるメイド喫茶のオーナーが私にこう言ったことがある。「ここの所轄はその点緩いから」。これほど理解不能な理論は無い。同じ日本国内において地域によって法律が違うなんてことはあるはずが無いのだ。では「あそこではセーフ、でもここではアウト」という明文化された条例でもあるのか?無いだろう?しかし「地域性」が存在する「ように見える」のも事実。この不可思議な現象は一体どういうことなのだろうか? 結論から言えば、「運がいいだけ」である。警察というのは、「違法行為を迅速に取り締まらなければならない組織」ではない。つまり、違法行為を見つけても、摘発する「ことができる」という立場なのだ。従って、大きな問題に発展してお客さんから被害届がバンバン出ているわけではないからまだ「見て見ぬフリ」をしているだけに過ぎない。逆に、警察が「やる」と言えば終わり、それがこれらの「危うい」サービスなのである。 重要なことなので口語的に補足しておくと、これらは「違法」であり、「この地域ではセーフ」というのは「無い」。警察の指導の入っていない地域では、「たまたま(所轄の)担当が指導する気になっていないだけ」か、「担当が業界に対して物分かりがいい」か、「そもそも担当が無知で違法性を認識していない」のいずれかであり、この現状というのは担当の「異動」で急激に変化することもあり得るのだ。だから「あそこはセーフ」という担保に営業を依存するのは本当に危険なのである。ここをきちんとクリアしておく(該当しない形態を追求するか、風俗営業の許可を取る)というのは、遵法営業において要となるはずだ。 注意: ・当ページの内容の無断複製、転載は有料・無料問わず全て禁止とします。 |
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