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【ドラニュース】

「できることをできる範囲で」…立浪の姿勢に学べ 竜復活へ緊急提言

2007年9月3日 紙面から

 もはや敗色濃厚となった8回裏。左翼方向に視線をやると意外な光景が目に入ってきた。守備に入る直前、外野手同士のキャッチボール。左翼ファウルゾーンには背番号「3」が立って、左翼・森野とキャッチボールをしていたのだ。

 この種の練習のアシストは若手が務める。今のベンチのメンバーなら堂上剛だ。立浪ほどのベテランがやるなど、私は初めて見た。なぜこんな行動を取ったのか。自らの体を動かしたいということもあったろう。ただ、それ以上に、ゲームでの出番がないのなら、自分のできる限りの仕事をしよう−そんなチームを思いやった考えからではないか。

 グラウンドに立つのが、キャッチボールではなく「代打・立浪」。そのコールを聞きたいシーンがあった。6回表2死満塁の場面だ。この試合、劣勢を一気にはね返す絶好のチャンスだった。5回にエラーに2つの暴投がからみ、1安打で2点が入った。もらったも同然の得点で、その差は2点に。6回のチャンスにしても、2死無走者から中村紀以下、3者連続の四球という転がり込んだもの。そこを今度は力でものにしてこそ勝利の扉が開いたはずなのだ。

 その場面、広島は左腕・佐竹にスイッチし、中日は動くことなく、李が打席に。前の打席で右前に快音を響かせたことから、期待を寄せたのだろう。だが、私にすれば、そのヒットは偶然に近い。第1打席ではボール3から3球見逃しで三振。直前の2試合も最初の試合で幸運な内野安打だけで、タイミングはことごく狂っていた。案の定である。緊急登板した佐竹に対し、ワンバウンドのボール球を空振り。苦しいはずの投手を助けてしまうところに、“心”のタイミングさえ失っている。最後もボール球に手を出しての3球三振は必然的ともいえた。左投手も苦にしない百戦錬磨の立浪だったなら、と思ったのは私だけではないだろう。

 それにしても、中継ぎ投手陣の不安が尾を引いて、ことごとく後手に回っている。7回には中田が打席に立った。中田と中継ぎとをてんびんにかけたのか。だが、2死無走者ではあっても、負けているなら代打を出して攻めるべきところ。皮肉なことにその直後に、ホームランを浴びるなど致命的な2失点だ。

 現状で自らのベストを−。立浪がその姿勢を見せたが、実はもう1人いる。井端だ。肩の具合はかなり悪いとみる。送球はすべてサイドから。オーバースローで矢のような球は、この3連戦1球もなかった。痛々しいとも思える光景ながら、本人にすれば現状で「100%」の力を出してプレーしているのだ。

 そう、何も100%以上の力を出す必要などないのだ。チャンスで3球三振した李は「150%」を出そうとしたのだろう。できることをできる範囲で。立浪、井端の見せた姿勢を選手それぞれが心がけれることこそが、苦境脱出の方法だ。

 (本紙評論家・木俣達彦)

 

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