今週の木曜にUstreamとニコニコ生放送で、孫正義氏と夏野剛氏と3人で「光の道」について話すことになった。日本の通信産業が危機的状況にあり、これを打開するには思い切った政策が必要だという点では3人とも同じ意見なので、多くの人の期待に反して「対決」にはならないと思うが、気になった点を一つだけ:
以前の資料でも「情報アクセス権」を基本的人権と位置づけているが、これはどうかと思う。基本的人権というのは憲法で定める概念で、勝手に創設するわけにはいかない。すべての地域で同じサービスを同一料金で提供するユニバーサル・サービスは、政治的スローガンとしては受けがいいが、経済的には非効率だ。
わかりやすい例でみてみよう。東京都は小笠原海底光ファイバーケーブルに100億円を投じ、そのうち66億円を政府が補助する。八丈島から父島・母島まで約800kmにわたって敷設される光ファイバーを利用する人口は約2500人。一人あたり400万円の税金が投入されるわけだが、これは小笠原諸島の人々にとっていいことなのだろうか。
もし父島で、光ファイバーと400万円の現金を選択させれば、ほとんどの人が現金を選ぶだろう。つまり彼らにとっては、光ファイバーに400万円の価値はないのだ。彼らに政府が特定の通信インフラを押しつけることによって、そのコストを負担する東京都民(および日本国民)も小笠原島民も損をするのである。
つまりナショナル・ミニマムは、通信インフラや子ども手当のような裁量的な支出ではなく、ルールにもとづく税の還付で保障したほうがいいのだ。これが負の所得税やベーシック・インカムの考え方である。日本の社会保障給付は、一般会計と年金会計あわせて年間80兆円ぐらいあるので、これをBIとして頭割りで配ると、一人あたり年60万円ぐらい。4人世帯で240万円だから、まずまずだろう。その代わり生活保護も公的年金も、土木事業や農業などの補助金もすべてやめ、厚労省と農水省を廃止すれば、財政は大幅に改善する。
「情報アクセス権」というのは、郵政のユニバーサルサービスと同様、効率を無視して地方に過剰なインフラをばらまき、その負担を都市部の住民に「課税」するものだ。総務省のいう「デジタル・デバイド」も、この同類である。いま日本に求められているのは、田中角栄以来の「あまねく平等」に地方に税金をばらまく政治を卒業し、個人が地域や組織から自立して新しい職場を求め、働き方を変えることだ。それを阻害する情報アクセス権は有害である。
わかりやすい例でみてみよう。東京都は小笠原海底光ファイバーケーブルに100億円を投じ、そのうち66億円を政府が補助する。八丈島から父島・母島まで約800kmにわたって敷設される光ファイバーを利用する人口は約2500人。一人あたり400万円の税金が投入されるわけだが、これは小笠原諸島の人々にとっていいことなのだろうか。
もし父島で、光ファイバーと400万円の現金を選択させれば、ほとんどの人が現金を選ぶだろう。つまり彼らにとっては、光ファイバーに400万円の価値はないのだ。彼らに政府が特定の通信インフラを押しつけることによって、そのコストを負担する東京都民(および日本国民)も小笠原島民も損をするのである。
つまりナショナル・ミニマムは、通信インフラや子ども手当のような裁量的な支出ではなく、ルールにもとづく税の還付で保障したほうがいいのだ。これが負の所得税やベーシック・インカムの考え方である。日本の社会保障給付は、一般会計と年金会計あわせて年間80兆円ぐらいあるので、これをBIとして頭割りで配ると、一人あたり年60万円ぐらい。4人世帯で240万円だから、まずまずだろう。その代わり生活保護も公的年金も、土木事業や農業などの補助金もすべてやめ、厚労省と農水省を廃止すれば、財政は大幅に改善する。
「情報アクセス権」というのは、郵政のユニバーサルサービスと同様、効率を無視して地方に過剰なインフラをばらまき、その負担を都市部の住民に「課税」するものだ。総務省のいう「デジタル・デバイド」も、この同類である。いま日本に求められているのは、田中角栄以来の「あまねく平等」に地方に税金をばらまく政治を卒業し、個人が地域や組織から自立して新しい職場を求め、働き方を変えることだ。それを阻害する情報アクセス権は有害である。
コメント一覧
「個人が地域や組織から自立して新しい職場を求め、働き方を変えることだ。」
仰る通りです。
「情報アクセス権」は恣意的で不自然な権利です。日本国民は「居住移転の自由」があるのですから情報にアクセスしたければ情報にアクセスしやすい場所に引っ越せばいいのです。何でも現在の居住地にいながらにして手に入るようにすべきという考え方はナンセンスです。
例えば「日本国民は誰でも豊かな自然環境を享受する自然環境享受権を持つべきだ。都市部にも田舎に匹敵する豊かな自然環境を!」などと主張しても、「何を馬鹿なことを。自然を恵みを享受したければ田舎に引っ越せばいい。」と一蹴されるだけでしょう。逆もまたしかり。「田舎にも都会と同様の情報アクセス環境を!」などと主張するのは愚の骨頂です。
>例えば「日本国民は誰でも豊かな自然環境を享受する自然環境享受権を持つべきだ。都市部にも田舎に匹敵する豊かな自然環境を!」などと主張しても、「何を馬鹿なことを。自然を恵みを享受したければ田舎に引っ越せばいい。」と一蹴されるだけでしょう。
これはその通りですね。
池田先生も指摘されてましたが、日本には移住権がある。
話は違いますが、「地球温暖化で氷が溶けている
ヒマラヤの民族」も何故移住しないのでしょうか。
移住=立ち退き=人権の侵害=情報アクセス権
というような連関が見えてなりません。
ある意味人権教育の成果でしょうね。
孫正義氏が我田引水を試みようとしているようにしか見えないのだけど。
以前、「みんなのためにわしは死んでもええ」といったようなことを言っていたけど、「光の道」については、まるで政治家のように発言と行動が一致してないと思った。
はじめまして。
池田先生の超現実的な指摘にいつもハッとさせられております。
理想と現実のビジョンがそれぞれあるとは思いますが、現在の日本の財政状況との折り合いをいかにつけるか、といったところの決断なのでしょうか・・・
木曜日の鼎談当日は私も一取材者として現場へ参ります。終了後などぜひコメントなど頂きたいと思っております。何卒よろしくお願い申し上げます。
なお、ネット生放送以外でこの日の模様は、スカパー!262chシアター・テレビジョンにて放映させていただきます!ノーカット、ノースクランブルで、より多くの人に…ネット回線(光の道?)が届いてない人にも観てもらいたいと考えております。
6月26日(土) 25時〜
7月3日(土) 25時〜(リピート)
詳細 → http://www.theatertv.co.jp/movie/4223
どうぞよろしくお願い申し上げます。
シアター・テレビジョン高谷
昨年の民主党マニフェストには「郵政事業における国民の権利を保障」とあります。国民の権利は今や大安売りの状態ですね。
何かにつけて「人権」を建前にするのはよろしくない。左翼の常套句である「命を守る」に通じるもんがあります。大抵の場合、何かを「人権」であるという人は、それが実は不合理であることを知ってると思います。
1. 経済効率から言って、情報が集まる都市に税をつぎ込め。
2. 自然豊かな田舎は都市には合わないけど、この国には居住権があるんだからそっちに住めばいいジャナイ。
こんなかんじでおk?。
田舎からネットやってるよこっちはね。さあ、都市に住んでる次の世代が荒れないかオイラは心配だね。