2010年06月17日
勇者「やいやいやいっ!まおう!!!」【前編】
301 :創る名無しに見る名無し:2009/11/24(火) 21:03:40 ID:FYRxUGqF
―――――――――――・・・・・
―――――――――・・・・・
―――――――・・・・・
ピチチチチチ・・・・・
ピチチチチ・・・・・・・
魔王「・・・・・」
勇者「・・・・・」
魔王「・・・うそだ・・・」
勇者「・・・・・」
魔王「・・・このわたしがまけるなんて・・・」ズーン…
勇者「Winner〜☆(*´∀`*)ノ」
302 :創る名無しに見る名無し:2009/11/24(火) 21:07:25 ID:FYRxUGqF
魔王「し、しかもなんかいけどりにされてるし・・・ここ、どこ」キョロ...
勇者「いや〜片腕しかないから運ぶの大変だったよ!あんた結構おm」
ぺしっ!
魔王「・・・・・」
勇者「す・・・すみません・・・」じんじん
魔王「くそっ!なんとゆーくつじょくだ!」たんっ
勇者「やっぱりまだ麻痺してる?」
魔王「おまえなにがもくてきだ!よーがないならさっさところせっ!」
勇者「そんなに急がなくても・・・」
魔王「ほんもうなのだろ!?わたしをたおすことが!」
魔王「わたしをたおしたらもうじゅみょーにおびえることもなくなるんだぞ!?」
勇者「まぁそうなんだけどさ・・・」
魔王「ゆうしゃにまけるなんてまおうしっかくだ!」
魔王「もうわたしはいのちなどおしくないっ・・・」ハァッ...ハァ...
勇者「・・・・・」
魔王「・・・なんだおまえ、このごにおよんでためらっているのか」
勇者「いや・・・そのぉ・・・・・」
魔王「・・・、しかたない・・・・・」
魔王「おまえがわたしにとどめをさせないのなら」
魔王「じぶんでこののどをかっきってやる!!!」バッ
勇者「!? ちょっちょっと待ちなさいっ!!!;」パシッ
魔王「っ・・・なんだ、なぜとめる」
勇者「とっ・・・取りあえず、落ち着いて・・・」ぷるぷる
魔王「・・・・・」
ぱしっ
魔王「・・・いったいなにをかんがえてるんだおまえは」
勇者「え、えぇっと・・・」ぽりぽり
魔王「うじうじしてないでっさっさといえっ」ぺしっ
勇者「うっ・・・わ、わかった・・・ぃ言います・・・」ごそごそ
魔王「まったく・・・さっきまでちょこっとおとこまえだったのに・・・」ブツブツ
勇者「て、手を・・・」ドキドキ
魔王「?」
スッ...
魔王「・・・? ゆびわ?」
勇者「ぶ・・・文化の違い・・・?」
勇者「ぇ、ええっとですねぇ」
勇者「人間には結婚を申し込むとき、」
勇者「指輪を送る習慣があるんです、ょ・・・」
魔王「ほぅ」
勇者「・・・・・」
魔王「・・・・・」
勇者「・・・・・」
魔王「・・・っ、」
魔王「はぁ!!??」
魔王「結婚っ!?」
勇者「ぅ、うん・・・」
魔王「ということはこれはプロポーズってことなのか!?」
勇者「きゅ、急に饒舌になったね・・・」
魔王「アホかお前っ!!」
魔王「魔王にプロポーズする奴がこの世の何処にいる!?」
勇者「あんた・・・されたこと無いんだ?」
魔王「ましてやお前勇者じゃないかっ!!」
魔王「死ぬぞお前!?あと10年後くらいには死ぬぞ!!?」
勇者「うん」
魔王「分かってて言っているのかっ!?」
勇者「分かってるよ」
勇者「それでも、良いんだ」
勇者「もし俺がここであんたを殺しても」
勇者「そうすることで、俺の寿命が延びても」
勇者「この先俺が幸せになることは一生ない」
勇者「絶対に、無い」
勇者「それなら残りあと10年を、あんたと過ごしたい・・・」
魔王「・・・・・」
勇者「好きなんだ、魔王・・・あ、愛してる・・・」
勇者「俺の妻になってくれませんか・・・?」
魔王「・・・っ、ばかがっ」
勇者「・・・・・」
魔王「っ・・・・良いだろう」
魔王「こっちは負けた身だ」
魔王「従って・・・やる」
勇者「! やったぁ!!!」ぎゅうっ
魔王「っ!」
勇者「・・・w・・・w」
魔王「全く・・・形無しだな、お前」
勇者「何とでも言えっ」にこにこ
勇者「あ、ちなみに浮気は無しだかんなっ」
魔王「ふんっ浮気されるほどの甲斐性なしならするさ」
勇者「させませんっ」キリッ
魔王「・・・10年間女禁か・・・キツイな」
勇者「あんた何処のオヤジだよ・・・」
魔王「我慢できなくなったら代わりに化けてくれ、女に」
勇者「い、いやだーっ」
側近1「まおーさまー結婚おめでとうございますー」ひょこ
勇者「うおっ」
魔王「お前はいつも私の居場所を把握してるな・・・」
側近1「これでも魔王様を守る身の上ですので」にこ
勇者「そういえば一切俺達の戦いに手を出さなかったな・・・何で?」
側近1「そんな、たとえ主が危険に晒されようとも決闘に割り込む様な無粋なマネは致しません」
魔王「そういうことだ」
勇者「そうなのか」
側近1「それにきっと勇者は魔王様を倒すことは無いと思ってましたし・・・」
勇者「おおぅ」
魔王「・・・?」
側近1「ここ何年間魔王様の身の上を随分調べていらっしゃいましたが・・・」
魔王「な、なにぃっ?」
勇者「あぁうん・・・だって素で魔王に勝てるなんて思ってなかったし」
魔王「何故知らせなかった側近1!」
側近1「魔王様は強いので少しくらいハンデがあっても大丈夫かな、と・・・」
魔王「な、なんだとぉおっ!」
側近1「それに最近『皆相手にならなくて詰まんない』と零してたので・・・」
魔王「そんなの忘れた」
勇者「ご都合主義もいい加減にしなさい」ビシッ
魔王「私でも知らないことをこいつは調べてたのか・・・」
勇者「魔王だけに大変だったんだぜ?もーあんたを観察してどの種族の特徴があるか見つけるしかなくってさ・・・」
魔王「いきなり玉ねぎ投げつけたり、百合を投げつけるからびっくりしたぞ・・・」
勇者「いやぁ結構猫っ毛だし、釣り目だから化け猫族の血でも混ざってるかなぁって」
魔王「ちょっとだけキツかったから、もしかしたらそうかもな」
勇者「お、効果あったのか(笑)」
魔王「少しだけだけどなっ!」ふんっ
勇者「あと、黒髪だけど光に反射したら赤くなるところと、炎系の攻撃が得意なところから火山付近の妖精の血でも混ざっているのかと」
魔王「何だこいつ、本当に細かく調べてやがるな」
勇者「あんたに昔、言われたことを実行したまでです」にこ
魔王「ああ・・・確かに学べとは言ったが・・・」
勇者「くっくっくっ・・・それに好きな人のことを知るのって何か楽しくってさぁ、つい夢中に」
魔王「ストーカー予備軍がいるぞー」
勇者「あと妖精ちゃんにもご協力いただきまして・・・」
魔王「なぬっ!?思わぬところにスパイが!?」
勇者「ほら、女の人って月に一度くらい弱る日があるじゃない?ちょっとその日を聞きだして・・・」
魔王「よぉーせいーっっっ!!!;」
側近1「もう立派なストーカーじゃないですか」
魔王「う・・・うぉう・・・今のはかなり大ダメージだ・・・」よろ...
側近1「実はその妖精についてお話があるのですが・・・」
魔王「ん・・・? 何だ」
側近1「魔王様が勇者と三日三晩戦っている間に・・・・・」
側近「攫われてしまいました」
魔王「なっ・・・なんだとおおおおおおおおおお!!??」ナンダトーナンダトー…
側近1「まあ詳しく言えば、駆け落ちしてしまったのです」
魔王「なぁにぃ!?何処のどいつだソレは!!!」
側近1「さぁ、良くは分かりませんが・・・彼女は嬉しそうだったので・・・」
魔王「なななななな・・・」
勇者「そういえば片思いの相手がいるって言ってたなぁ・・・」
魔王「なぬぬぬぬぬぬぬ・・・・・」
側近1「白馬の王子ならぬ銀狼の王子でしたが、とても感動いたしました、私」
側近1「きっと彼女は幸せになるでしょう」ホロリ
魔王「と、止めやがれぇえええええええええっっっ!!!!!(涙)」
魔王「うっ・・・うぅっ・・・うぉう、うぅ・・・」ひっくひっく
勇者「うわ・・・俺に負けても泣かなかったくせに・・・男泣きしてるよ・・・」
側近1「実の娘の様に可愛がっていましたからねぇ・・・」ホロリ
魔王「ううっ・・・うっうっ・・・」ずずっ
勇者「まおー元気出せよー妖精ちゃんも笑って暮らすさー」
魔王「うううっ・・・私の妖精・・・私のふぇありー・・・うっ」ひっく
側近1「大丈夫です・・・しばらくしたら泣き止みますよ」
勇者「そうかなぁ・・・」
側近1「立ち直りは早い人です、今はそっとしてあげましょう。・・・それより」
側近1「あなたに、これを」ぷらーん・・・
勇者「! 俺の腕!」
側近1「魔王様に切られた後、取っておきました」
側近1「何本か指がありませんが・・・壊死しないよう魔力で保存していたので、まだくっ付きますよ?」
勇者「本当かっ?」ぱぁっ
側近1「”治癒魔法”」
ぱああっ
勇者「おぉっ!」くいっくいっ
側近1「やっぱり魔王様の旦那様になるのなら、五体満足であって欲しかったので」
勇者「ありがとうっ恩に着る!」
側近1 にっこり
。o0○
魔王「・・・・・」すー・・・
勇者「泣き疲れちゃったみたい、だな・・・」
側近1「・・・・・」
ひょいっ
側近1「ベットに運びましょう・・・この家の寝室は何処です?」
勇者「・・・おっ俺が運ぶよっ!」ぐいっ
側近1「・・・・・」
勇者「・・・・・」
側近1「・・・・ぷっ」くすくす
勇者「・・・っ」かあぁ・・・
側近1「初々しいですねぇ、若いなぁ」くすくす
勇者「・・・///」
側近1「では旦那様、奥様を丁寧に寝室へお運びくださいまし」
勇者「お、おくさま・・・/////」しゅぽんっ
○森の中の小さな家:寝室○
ぽすっ
魔王「ん・・・」ごろ...
勇者「こいつ・・・傷の治り早いなぁ。さすが魔王というか・・・」まじまじ
側近1「初夜はさっさと済ませてくださいね?でないと魔王様、待ち切れなくなりますよ」
勇者「う・・・う、うん・・・」かぁあっ
側近1「ふぅ・・・これから魔王様が色々とお世話になりますが何卒よろしくお願いします、勇者」ぺこり
勇者「あ、いや・・・こっちこそ我侭言ってごめんな。あんた達の主なのに・・・」
側近1「10年くらい大丈夫ですよ、仕事に差し支えはあまりないでしょうし」
側近1「それに・・・これは転機だと思っています」
勇者「転、機?」
側近1「ええ」にこり
側近1「魔王様は、過去の出来事にまだ捕らわれ続けているのです」
勇者「過去の出来事?魔王は継承する時全てを忘れるんじゃないのか?」
側近1「全てを忘れるわけじゃないですよ・・・ただ一定のラインを超えた感情を持った記憶は消えますけどね」
側近1「そもそも”記憶を消す”こと自体まだ実験段階なのです」
勇者「実験段階・・・?」
側近1「勇者と違って魔王は寿命が長いですから、実はまだ三代目までしか歴史が無いのです」
勇者「うわっ俺もう五十何代目かなのにっ!」
側近1「人間ですからね、仕方ないですよ。今の魔王様はちょうど四代目になります」
側近1「だから魔界は、まだ政治について試行錯誤の状態です」
側近1「どのやり方が一番良いのか・・・世代が代わるたびに魔王達はあれこれと試しているのです」
勇者「へぇー・・・」
側近1「一代目魔王の時は人間が好物なので人間ばっかり狩っていました」
側近1「結果、”勇者”という魔王最大の敵が生まれ、一代目の魔王は勇者に倒されてしまいます」
側近1「二代目魔王は今のやり方は良くないと、依怙贔屓無しに平等に餌を狩っていましたが」
側近1「結局、家族を勇者に人質として取られ殺されてしまいます」
側近1「三代目魔王は二代目魔王の過ちを繰り返すまいと情を捨て、政治一心に家族も作らず魔界をまとめました」
側近1「一番長く続いたのはこの魔王ですね。この方のおかげで随分と魔界が纏まりました。歴史上ではもっとも名君だと思います」
側近「そして今・・・私達の魔王様が今に至るわけです」
勇者「・・・・・」
側近1「魔王は勇者と違って生まれた時から”魔王”というわけではありません」
側近1「魔王が死んだ時に、死んだ魔王が現存している魔物達の中から次の魔王を決めます」
勇者「すごいなそれ・・・そんなことが出来るのかよ」
側近1「私は体験したことが無いので何とも言えませんが・・・何でも『お告げ』の様なものが冥界から来るそうですよ?」
側近1「だから今の”情を持つ記憶を消す”法は三代目だけじゃなく、二代目が取り決めた可能性もあります」
側近1「”自分は情を持っていたために、勇者に家族を捕られ殺されてしまった”」
側近1「”だから次の魔王になる奴は情を捨てろ”と」
側近1「魔王様は二代目の魔王と交友関係を持っていましたので・・・」
勇者「ええっあいつどんだけ生きてんだよ」
側近1「少なくとも千年は超していると思いますよ。私は魔王様が”魔王”になった時に知り合ったので良くは知りませんが」
勇者「うわ・・・年齢差はげしー・・・・・」
側近1「今更じゃないですか」にこり
側近1「魔王様は強いお方ですからね。二代目魔王とも色々と通ずるとこがあったのでしょう」
勇者「じゃあ何であいつが二代目魔王にならなかったんだ・・・?」
側近1「前魔王がその存在を知らなければ選ばれないのだと思います」
勇者「じゃ何故に三代目にも」
側近1「・・・・・」
勇者「あ・・・いやまぁ、俺的にはうれしい限りなんだけどさぁ」
勇者「今、魔王が”魔王”じゃなかったらめぐり合うことも無かっただろうし・・・」
側近1「・・・私は、」
勇者「・・・」
側近1「私はこの法を無くすべきものだと思っています」
側近1「私達の魔王様は、苦悩しておられます」
側近1「昔友人が殺され、その殺された友人が取り決めた法を破るまいと努力するが」
側近1「どうしても燻る情を上手く抑え切れずにいる自分に」
側近1「確かに、前魔王はこの法によって善政を行えました」
側近1「しかし情を捨てるということは理性も同時に無くなりかねない行為です」
側近1「そんな諸刃の剣、何時までも続くとは思えない・・・」
勇者「・・・・・」
側近1「あなたと出会ったことによって、魔王様はさらに苦悩するようになりました」
側近1「今まで仕舞い込んできた情が、少しずつ顔をだすようになったからでしょう」
勇者「え・・・いつも結構容赦ない感じがするんですけど・・・」
側近1「そんな。あなたに会う以前はあんなにころころ表情が変わるようなお方じゃなかったですよ」
勇者「そ、そうなの・・・?」
側近1「やっぱり母性って凄いですよねぇ。少しずつ魔王様の心の氷が解けてゆくのが感じられます」ホロリ
勇者「ぼ、母性、なのか・・・・・」
側近1「これは良いことだと思っています」
側近1「そもそも感情を捨てること自体、無理な話なのです」
側近1「前の魔王は元々淡白なお方だったのでしょう」
側近1「今の魔王様はどちらかと言うと濃ゆーいお方なので全ての情を捨てることは」
側近1「はっきり言って、絶対無謀なことだと思います」キッパリ
勇者「まぁ・・・俺はあいつから愛を貰ったからこそ、惚れたわけだしなぁ」
側近1「魔王様の手には愛情が感ぜられましたか?」
勇者「う、うん・・・少なくとも俺にはそう感じられたよ・・・」かぁ
側近 クスクス
側近1「・・・それにね、」
勇者「・・・?」
側近1「二代目魔王が今の魔王様を選ばなかったのは」
側近1「やっぱり捨てて欲しくなかったのだと思います、情を」
勇者「・・・・・」
側近1「だから、次の”魔王”に魔王様を選ばなかった」
側近1「そんなの・・・情まみれじゃないですか」
側近1「だから良いんだと思うんです、情があっても」
勇者「・・・・・」
側近1「自分が出来ないことを、他に押し付けんなって感じです」
勇者「まぁ・・・確かにな」
側近1「勇者様」
勇者「・・・」
側近1「あなたと出会ったことによって魔王様はきっと、何かが変わります」
側近「今までそうだったように・・・・・四代目魔王も何か変わる、時が」
側近1「それが良い方へか悪い方へかは分からない」
側近1「しかし、きっと私は良い方へと変わることを信じています」
勇者「・・・・・」
側近1「・・・残り少ない命ですが・・・どうか、魔王様を」
勇者「・・・うん」
勇者「きっと魔王にとっては、俺と過ごす時間なんて瞬きするほどの間かも知れない」
勇者「その間だけでも・・・俺と過ごして良かった、て言ってもらえるように、」
勇者「精一杯、愛するよ」
いつかきっと忘れられる時が来るだろう
でも悲しくない、愛する人と過ごせるだけでも
とても幸福なことなのだから・・・・・。
〜翌日〜
ピチチチチチ・・・
ピチチチチ・・・・・・
魔王「・・・ふっ・・・」
勇者「・・・・・」
魔王「まあいいさ・・・妖精が幸せになってくれるのなら、それで・・・」
勇者「ほれ、氷嚢。これで目を押さえとけ」
魔王「う・・・」ぴと
魔王「たとえ妖精が893とかマフィアとかに惚れてても私が更正させれば問題ないし・・・」
勇者「それ調教と違う・・・?;」
魔王「結婚祝いに何送ろうか・・・やっぱり蛇の干物かな・・・」
勇者「ま、魔界にはそんな風習があるのか・・・?;」
魔王「精力剤にもなるし、いざとなったら首絞めることも・・・」
勇者「ここには持って来るなよ」キッパリ
魔王「・・・はぁ」
勇者「・・・・・」
魔王「・・・なんだ、夫なら妻が落ち込んでる時は慰めろ」
勇者「あ、う、うん・・・」
ぎゅうぅ
魔王「・・・・・」
勇者「・・・・・」
魔王「・・・負けたんだなぁ、私」
魔王「あーぁー・・・」へこ
勇者「・・・今頃になってキた?」
魔王「今まで一度も喧嘩に負けたことなかったんだ・・・それなりにショックさ」
勇者「・・・抵抗しないの?」
魔王「負けは負けだ。私は潔くお前のものになるよ」
勇者「・・・・・」
魔王「はぁ・・・でも魔王失格だな・・・勇者に負けるなんて・・・」
勇者「いや、あんたは良くやったと思うよ。すごく強かったし・・・」
魔王「やっぱ情があったのかな、消したつもりだったのに」
勇者「・・・・・」
魔王「・・・でも私が死なない限り、魔王は変えられないから・・・」
勇者「・・・別にさ、良いと思うよ」
魔王「ん?」
勇者「優しい魔王がいても」
魔王「・・・よくない」
勇者「家族だってさ・・・ほら、もう俺が夫だから人質を取られることもないし・・・」
魔王「たった10年だろ・・・」
勇者「まぁ、そうなんだけど・・・」
魔王「・・・・・」ぎゅぅ
勇者「・・・魔王?」
魔王「充電中だ」
勇者「・・・・・」
魔王「しばらくしたら復活するー・・・」すり...
勇者「・・・・・」ぎゅぅ
魔王「よし、離せ」ぐいっ
勇者「え、早っ・・・もうちょっとくっ付いてても・・・」
魔王「うじうじするのは性に合わんっ、段々イライラしてきた・・・」ライライ
勇者「えぇっ俺は癒されてたのに・・・」ガーン…
魔王「きっと腹が減っているから気が弱くなるんだ。何か狩ってこう・・・」スタスタ
勇者「いや、ちゃんと食料あるから一緒に食べようよ」ぐいっ
魔王「食べるもんあるのか」
勇者「うん」
魔王「そういえばここは何処なんだ?森の中のようだが・・・」
勇者「あー俺、しばらくしたら指名手配されるだろうから、隠れ家として魔界の隅に家を・・・」
魔王「いつの間に・・・」
勇者「だからこその隠れ家ですので」にこ
もぐもぐもぐもぐ
魔王「ふむ、なかなか美味いな」もぐもぐ
勇者「そーかー? ありがとう」にこ
魔王「ぶっちゃけ普段は生肉ばかり食っているから、私は料理出来んのだ」もぐもぐ
勇者「はいはい、料理は俺が作りますよ・・・何となく分かってたことさ」
魔王「違う、教えてくれ。一度は挑戦してみたかったことなんだ」
勇者「・・・。えー・・・出来るかなぁ魔王に。不器用そうだしなー」ニヤニヤ
魔王「む・・・刃物の扱いは得意だぞ」
勇者「まな板切っちゃいそう」
魔王「ひ、火の扱いだって・・・」
勇者「鍋溶かしちゃいそう」
魔王「・・・・・ムー・・・」ぷくー
勇者「あはは、ちゃんと教えるよ。一緒に作ろーなー」にこにこ
。o0○
魔王「はー・・・食った食った」すりすり
勇者「食った後って何か眠くなるよなぁ・・・」ふわぁ...
魔王「いや、さっき眠ったから眠くない」
勇者「そぉかぁ・・・?」ゴシゴシ
魔王「睡眠欲も食欲も満たされた・・・後は」ガシッ
勇者「ん・・・? 何?」
魔王「性欲だけだ、勇者」
勇者「・・・、へ?;」
魔王「さぁさっベットに行きましょう!ダーリンv」ぐぐいっ
勇者「キャラ変わってるっ!?;」
魔王「何だ、眠たいのだろう?ならベットに行こうじゃないか」ぐいぐい
勇者「ちょっ・・・絶対眠らせないつもりだろあんたっ!;」
魔王「もちろん」サラリ
勇者「堂々と言うなっ!;」
魔王「命懸けで戦った後って性欲溜まらんか?実はさっきから体が熱くて・・・///」はぁん...
勇者「赤裸々過ぎますっ!;少し自重して下さいっ!;」
魔王「男なら据え膳は食え!」
勇者「あんたは据え膳じゃねぇよ!!!;」
ぽいっ
勇者「ぅぐわっ!!?」どさっ
ビリリリリリリッ
勇者「おっ俺の服・・・っ!;」
魔王「勇者殿は褥ではどんな姿を見せてくれるのかしら・・・?」ペロリ
勇者「ちょ・・・っ!?待ちなさいっ!;こういうのはしばらく付き合った上でっ・・・」
魔王「人間の事情なんて知るかぁっ!」ぬぎっ
勇者「ちょっまっt」ブッ
勇者「・・・・・」
魔王「・・・お前・・・鼻血出してぶっ倒れるとはどういうことだ・・・・・」
勇者「う・・・」ダクダク
魔王「何と言う情けない・・・」はぁ...
勇者「む、むねが・・・ぴ、ぴ・・・」ダクダク
魔王「全く・・・お前は私がいなかったら童貞こじらして死んでるとこだな」もぞもぞ
勇者 ビクッ
魔王「別にもう襲わん、こんなんじゃ襲う気力も失せるわ」
勇者「・・・・・」
魔王「ただ一緒に寝るだけ・・・それも駄目か?」
勇者「・・・いや・・・」
魔王「なら良いだろう」もぞもぞ
魔王「大体何だこのベットは。あまりにも小さすぎるぞ」もぞもぞ
勇者「あっちにあんたのベッドがあるだろう・・・」
魔王「夫婦になったのに別々で寝ろと言うのか?何て冷淡な夫」
勇者「そ、そういうわけじゃ・・・」
魔王「夫婦ならやっぱり一緒に寝るべきだろう。明日、私のベットを持ってこよう・・・」ネムネム
勇者「いや絶対この部屋に入んねぇよ、あんたのベット・・・」
ホー・・・ホー・・・・・
勇者「・・・・・」すー・・・
魔王「・・・・・夜だ・・・いつの間に」
魔王「まだ疲れが残ってたのか・・・私も年を取ったんだなぁ・・・」はぁ
魔王「前は一週間ぶっ続けで戦っても平気だったのに・・・・・」
魔王「・・・・・」
魔王「・・・・・ふっ」
魔王「年を取っても寝顔はあんまり変わらないんだなぁ・・・」くす
勇者「・・・・・・」すー・・・
魔王「・・・・・あの時はこんなことになる何て思わなかったのになぁ・・・」
勇者「・・・・・・」くー・・・
魔王「・・・穏やかな、寝顔」
魔王「私は救われたのかな・・・・・」
勇者「・・・・・」すー・・・
魔王「・・・えぃ」ぷに
勇者「ぅう・・・・・ん?」ぱち
魔王「起きたか」にこ
勇者「・・・ぉはよ・・・」ごしごし
勇者「・・・よる、か・・・」
魔王「おはようではなかったな」
勇者「ん・・・」ぎゅうぅ
魔王「・・・起きないのか」
勇者「もう夜だし・・・このまま寝ても良いだろう」
魔王「だらだらだなぁ・・・」
勇者「いいんじゃない・・・だらだらでも」
魔王「明日は仕事せねば・・・」
勇者「魔王は忙しいねぇ・・・」
魔王「いいよなぁ、勇者は。仕事投げ出しやがって・・・」
勇者「報酬料を貰ってるんでーす・・・」ぎゅうぅ
魔王「・・・・・」
勇者「しあわせ・・・」すり...
魔王「・・・本当に、良いのか?」
勇者「んー・・・?」
魔王「このまま・・・でも」
勇者「んー・・・」
勇者「・・・・・幸せってさ」
勇者「何も長生きすることだけじゃないと思うよ」
魔王「・・・・・」
勇者「確かに生きたいという気持ちはあるんだけどさ」
勇者「こうやって、好きな人とだらだら一緒に」
勇者「過ごせることって、最高の幸せだと思う・・・」
旅をしている中で考えた。
魔王を倒しちゃえば
そしたら、俺の寿命が延びて
新しい恋をして、結婚して
子供を作って、年を取って
孫にでも囲まれて死ぬ
そんな幸せな一生を送れるのかもしれない
・・・そこまで考えて、止めた。
ばっか、ばっかしい。
初恋の人を殺すなんて、一生苛む羽目になるだろうし
そもそもそんな人生が送れる保障なんてどこにもない
恋人だって作れるかどうか分からんし
もしかしたら病気であっという間に死んでしまうかもしれないし
大体、自分が何時死ぬかなんて誰も分からないのだ
世界では幸せを見つけられずに死ぬ人もいる
なら俺は見つけただけでもう、十分幸せな奴なんじゃないんだろうか?
それを壊すなんて、どこの阿呆だろう。
勇者「・・・暇な日はさ、一緒にベッドの上でワインを飲みながらチーズでも食べよう」
勇者「そして、一緒に本でも読んで、眠くなったころにそのまま一緒に寝る」
勇者「うん・・・最高な過ごし方だ・・・」
魔王「・・・・・鈍りそうな過ごし方だな・・・」
勇者「別にいいんじゃない?・・・俺はもう、剣を持つことも無いだろうしさ」
長生きしたいと思う理由。
昔はただ『死ぬのは怖い』としか考えられなかった
でもそのうち『まだ見つけたいものがある』って考えて
今は『愛しい人ともっと過ごしたい』と考えるようになった
・・・まあそれは無理だから、俺の旅は終わり。
見つけたいものは、もう見つけたし。
魔王「・・・・・」
勇者「まおー・・・」ふわぁ・・・
魔王「・・・なんだ?」
勇者「これからよろしくなー・・・」ネムネム
魔王「・・・ああ」
魔王「よろしく、勇者」
――――――――..............
ウオオオオオオオォオオオッ!!!!
オォオオオオオォオオオオッ!!!!!
魔王を倒せ!!!
魔物何かに怯むな!!!突撃ーっ!!!
ガキィインッ!
ザクッ!ザクゥッ!!
魔王「・・・おーおー今日もやってるなー」
側近1「よく飽きませんよねぇ、かれこれ一ヶ月になるんじゃないですか?」
魔王「本当になぁ、まるで蟻んこのようにどんどんやって来る」
側近1「殺虫剤でも撒いときますか?」
魔王「いや・・・殺虫剤じゃ死ななそうな奴もいるから私が直々に手を下そう」バッ
側近1「お気を付けて」
魔王「ああ。無関係な者は避難させといてくれよ」
・・・・・バシャッバシャッ
バシャンッバシャッ
魔王「・・・・・」ぽたぽた
側近1「魔王様、タオルをお持ちしました」すっ...
魔王「ありがとう、そこに置いといてくれ」
側近1「・・・今日も見事にマーブル色でしたねぇ」
魔王「ああ・・・魔物の血は落ちにくいから困るよ」
側近1「まさか反魔王派の魔族が出てくるとは・・・」
魔王「しょうがないんじゃないか?前の魔王の方が優秀だったんだし」ふきふき
側近1「しかし・・・」
魔王「私に反抗してくる奴が出てきても可笑しくは無いだろう」
魔王「ま、大人しく倒されるつもりは毛頭もないけどな」
側近1「・・・・・」
魔王「・・・勇者を倒そうとする過激派が出てないだけ、マシか・・・」
側近1「最近、会ってます?」
魔王「3日くらい前に一度家に帰ったよ」
側近1「新婚なのに・・・大変ですねぇ」
魔王「家を出るときに寂しそうな顔をするのがちょっと辛いな」
魔王「まぁ人間が騒ぎ出したのは、半分自分の所為だって分かってるから耐えてくれるだろう」バサッ
側近1「昨日人間界では遂に勇者がお尋ね者として全世界で手配されたようですよ」
魔王「ふっ・・・魔界にいるのにとんだ無駄足だな」くっくっ
側近1「その額なんと10億」
魔王「某海賊顔負けだな」
側近1「人類の存亡をかけてますからねー」
魔王「人ひとりに何を背負わせているんだか」ハッ
魔王「・・・よしっ、すっきりしたことだし報告書を纏めるか」ザッ
側近1「大丈夫です?少し仮眠取りませんか?」
魔王「大丈夫だ。・・・纏めたら、家に帰る」
側近1「愛しのダーリンのところに?」
魔王「ダーリン、か・・・いまだに不思議な感覚だ、家族がいるということは」
側近1「幸せなことですよ」にこ
魔王「・・・ふっ・・・そうだな」にこ
――――――――..............
・・・シュンッ
魔王「っと・・・ただいま〜、勇者ーいるかー」
ひょこっ
勇者「っおお!おかえり!!!」ぱたぱた
魔王「疲れたー・・・」ぎゅう
勇者「飯できてるぞー」ぎゅうぅ
魔王「ハーブの匂いがする・・・」くんくん
勇者「鶏肉の香草焼き・・・あとスープとか、サラダとか」
魔王「おいしそうだな」にこ
勇者「一緒に食べよう」にこ
魔王「・・・でな」もぐもぐ
勇者「・・・・・」もぐ...
魔王「・・・ゆうしゃ〜?聞いてるかぁ」ぺしっ
勇者「あ、う、うん・・・」もぐもぐ
魔王「?・・・」
勇者「・・・・・」もぐ...
。o0○
魔王「ふはー・・・」ばふっ
勇者「・・・・・」
魔王「このベットもそろそろ慣れてきたな」すりすり
魔王「ん・・・?どした、寝ないのか?勇者」ぼふぼふっ
勇者「・・・・・」
魔王「・・・・・」
勇者「・・・・・・・」とさ...
魔王「・・・・・・・やっと手を出す気になったか」にやにや
勇者「う・・・で、でも、疲れているなら止め」
魔王「いい加減にしろ」べしっ
勇者「あぅっ」
魔王「少しくらい強引になりなさい。・・・私にそういうこと出来るの、お前だけなんだぞ・・・?」にこ...
勇者「じゃ、じゃぁ・・・・・」しゅるっ・・・
魔王「・・・・・」しゅるっ・・・
勇者「・・・・・」じー・・・
魔王「・・・そんなまじまじと見るな」ばさっ
勇者「ご、ごめんなさい・・・」かぁ
勇者「・・・・・戦場を駆け抜けてきた体には見えないなぁ」じー・・・
魔王「・・・お前は傷だらけだな・・・」するっ...
勇者「傷跡は男の勲章さ」にこ
魔王「そうか・・・・・・」ぴちゃ・・・
勇者「! わっ・・・」
魔王「・・・」ちゅ...
勇者「う・・・///」かぁ
魔王「ゆうしゃ・・・」ぐいっ
勇者「ま、まおう・・・」ぐっ
魔王「・・・・・」
勇者「・・・・・」ちゅっ...
魔王「・・・」
魔王「・・・・・、!?」
魔王「ちょっ・・・勇者っ!」ぐいっ
勇者「へ?なに・・・・・」ぼたぼた
魔王「また出てるっ!血っ、鼻血っ!」べしっ
勇者「えぇっ・・・・・うん?」ぼたぼた
魔王「まさか家に帰って来てまで血を浴びることになろうとは・・・」ふきふき
勇者「ご、ごめん・・・」しゅん...
魔王「お前・・・本当にあがり症だなぁ・・・」はぁ
勇者「ううう・・・」ずーん...
魔王「・・・。よし・・・わかった」
勇者「ん・・・?」
魔王「後ろ向け、勇者」しゅる
勇者「?? ・・・そ、その手に持っているものは・・・?」
魔王「お前の目を隠す」しゅるっ
勇者「へ」
魔王「そしたら少しはマシになるだろっ」ぐいっ
勇者「!? ちょっ・・ちょっと待てよっ!」ばっ
魔王「ん・・・? なんだ、大人しくしてろ。隠せないだろう」ぐいぐい
勇者「さ、最初からそんなっ・・・マニアックな・・・・・」すごすご...
魔王「マニアックぅう?目隠しごときがぁ?」
勇者「だだだってっ 初めはやっぱり好きな人の姿を見ながら・・・」
魔王「それが出来ないから縛るんだろうっ!」ぎゅっ
勇者「うぇえええっ・・・あ、いたっ」
魔王「ほらっ大人しくするっ!」しゅるっしゅるっ
勇者「うああっそんなっ・・・!」
魔王「よしっ」ぎゅっぎゅっ
魔王「準備完了!・・・・・えぃっ」どんっ
勇者「うわぁっ」どさっ
魔王「やっぱりこっちの方が向いているのかも知れないなぁ、私達はv」ちゅっ
勇者「は・・・・・はは・・・・・・・」
ピチチチチチ・・・
ピチチチチ・・・・・・
勇者「・・・・・」
勇者「・・・う゛・・・ぅん・・・・・」ごろ...
勇者「・・・?・・・あ゛・・・れ゛・・・・・」
勇者「ま゛お゛ー・・・い゛な゛い゛・・・・・」キョロ・・・
勇者「じごどい゛っだの゛がぁ・・・・・あ゛ー・・・・・」ごろ...
勇者「・・・・・・・」
勇者「・・・ずっごぐごえ゛がれ゛でる゛・・・・・・・」ズーン・・・
側近1「お水をお持ちしました」すっ・・・
勇者「あ゛り゛がどー・・・」ごくごく
勇者「! なんであんだごごに・・・・・」
側近1「魔王様に様子を見て来い、と言われましたので・・・」
勇者「そ、そう・・・・・」
側近1「で、一夜明けてのご感想は?」によによ
勇者「う゛ん・・・・・」
側近1「・・・」
勇者「・・・・・・俺っで性別な゛んだっげ・・・・・」ズーン・・・
側近1「まぁまぁ」ぽんぽん
側近1「仕方ないですよ、魔王様は百戦錬磨どころか千戦くらいしてそうですし・・・」
勇者「あ゛あ・・・俺本当に男? 男な゛のか・・・?」シクシク
側近1「でも愛しい人を抱けたのだから胸いっぱいでしょう」ニコニコ
勇者「抱いたどいうより抱かれだに近いような・・・・・」ガクッ
勇者「め・・・飯食うか・・・・・」よろっ...
側近1「大丈夫ですか?まだ寝ていた方が・・・・・」
勇者「だ、だいじょ・・・うぁっ」ふらっ
側近1「わっ」
どさっっっ
側近1「・・・う・・・・・」ヒリヒリ
勇者「ご、ごめんっ・・・ていうかあんた結構非力・・・」
カッラーンッ・・・・・
魔王「・・・(°Д°)」
勇者「! 魔王・・・? 仕事から帰ってきたの?」
魔王「し・・・・・」
勇者「?」
魔王「しんじてたのに・・・ま、まさかうわきするなんて・・・・・・」
勇者「は・・・はあ?;」
魔王「し、心配して帰ってきたら・・・ヤモリの缶詰も買ってきたのに・・・そんな・・・・・」
勇者「あんたまた変なものを・・・・・え? ていうか、浮気って?」
魔王「純情そうな顔をしときながら私の部下と・・・不倫を・・・っ!」わっ
勇者「あ、あのー・・・この人?男ですよね?俺も、男ですよね?」
側近1「魔王様はバイですよ?そんなの関係ありません」
勇者「あそっか。・・・・・・へ?」
魔王「ゆっ・・・勇者の浮気ものぉおおおおおおおおおおお!!!」
ドガアアバキイイイイィイイッッ!!!!!
勇者「俺はあんたじゃね゛ぇえぇえ゛ええうわあ゛ああ゛あああ゛ああああ」
。o0○
魔王「はぁっ・・・はあっ・・・・・うっ・・・」じわぁ
側近1「魔王様っ魔王様っ! 勘違いです、泣かないで下さい・・・」あせあせ
魔王「か、かんちがい・・・?」
側近1「実はかくかくしかじかでして・・・・・・」
魔王「・・・え?なに?よろけて押し倒されただけ?・・・なぁーんだ、そぉかぁ!」ぱぁあっ
側近1「勇者様は決してあなたを差し置いて愛人を作ることはありませんよ」にこ
魔王「そうだよなぁっ!あんな甲斐性無しにそんなこと出来るわけないよなぁ!!あははっ・・・」
勇者「・・・・・・」チーン・・・
勇者「大体あんたは早とちりが多すぎんだよ、前にもこんなことあったじゃねぇか・・・」ブツブツ
魔王「お・・・怒るなっ 怪我なら治してやったろう・・・?」あせあせ
勇者「ふんっ」ぷぃ
側近1「では私は仕事に戻りますね、魔王様」タッ
魔王「あ、う、うん・・・後で行く」
側近1「お待ちしてます」シュンッ
魔王「・・・・・」
勇者「・・・・・」ぷいー
魔王「・・・勇者・・・」くい
勇者「・・・・・」
魔王「・・・す、すまん、勘違いしちゃって・・・」
勇者「・・・ホント・・・勘弁してくれよ」
魔王「・・・・・」
勇者「まるで俺があんたのことを愛してないみたいじゃないか・・・」
魔王「・・・・・すまん・・・」
勇者「・・・否定、しないのか・・・・・」
魔王「・・・疑ってた縁もあるから・・・」
勇者「な、なぜ・・・? 俺、愛は伝えてたよね・・・?」
魔王「だって、何時まで経っても私に触れてくれなかったし・・・」
勇者「い、いやだって、そういうことはしばらく付き合った上でするものであって・・・」
魔王「昨日だって、私が少しでも変な反応したら止めるつもりだったろ・・・」
勇者「だって嫌がっているのに無理やりしたら可哀相じゃんか・・・」
魔王「・・・あんまり必要ないんだな、私は」
勇者「そっそういうわけじゃあっ・・・・・」
魔王「しかも目隠しプレイの後はちゃんと抱いてもらおうと思ってたのに、してこないし・・・」
勇者「え、えっとそれは・・・・・俺にそれだけ精力が無かっただけであって・・・・・」ズーン・・・
魔王「・・・・・」
勇者(あ、あれ・・・?;立場がいつの間にか逆転・・・)
魔王「・・・よくわかんないな」
勇者「・・・え・・・?」
魔王「こうやって誰かと愛し合ったことなんて、なかったんだ」
魔王「家族だって作ったこと無いし、恋人だって作ったこと無い」
魔王「もしかしたらかつて居たのかもしれないけれど・・・・・」
勇者「・・・・・」
魔王「そういうものがどんなものなのか、私にはわからない・・・」
勇者「・・・・・」
魔王「・・・もう、少し、体も愛してくれるものだと思っていたんだが、な」
魔王「我がままだったみたいだ、すまない」
魔王「そろそろ行かなければ・・・・・・、・・・っ!」
どさっっっ!
魔王「っ!? 勇者っ?」
勇者「わかった。・・・もう少し、貪欲に生きるよ」しゅるっ・・・
魔王「へっ・・・? い、いやっそんな無理しなくてもっ・・・・・!」
勇者「無理じゃないっ!こっちの方が愛が感じられるんだろうっ?なら・・・」
ばさっ・・・
魔王「・・・・・」
勇者「・・・抱くまでだ」ごそごそ
魔王「し、仕事が・・・・・」
勇者「そんなの後回しにしろ」
魔王「!」
勇者「最近、傍にいないから寂しかったんだ・・・傍に、いてくれ・・・・・」
魔王「・・・・・」
魔王「・・・・・・・・ふっ・・・」
勇者「・・・・・」
魔王「・・・・・また鼻血、吹くなよ?」にや
勇者「う・・・ど、努力する・・・・・」もぞもぞ
魔王「・・・根は変わらないんだから・・・・・」
――――――――..............
・・・かつっ こつっ
魔王「勇者ーただいま〜」
・・・しーん・・・
魔王「・・・ゆうしゃー?」
・・・しーん・・・・・
魔王「・・・・・留守、か・・・」
魔王「珍しいな・・・何処にいったんだろう」
魔王「もうすぐ夕食の時間なのに・・・」
魔王「・・・」
魔王「・・・よし・・・たまには私が作るか!」にこっ
魔王「この前勇者に教えてもらった”シチュー”なるものを作ってみよう」
魔王「ふむ・・・まずは材料を集めなくては」とことこ
がさごそ がさごそ
魔王「たしかここに野菜があったような気が・・・」がさごそ
魔王「あ、あった!ジャガイモ、にんじん、たまねぎ・・・」
魔王「・・・」
魔王「た、たまねぎは・・・やめとこ・・・」ごと・・・
魔王「け、決して好き嫌いでは無いぞ!」
魔王「ただ何かやっぱり臭いと触感と見た目と味と食感が・・・な・・・」ブツブツ
魔王「た、食べられるんだぞ!でも今日の料理の支配者は私だから何を入れるか決めるのは私だ!」
魔王「・・・」
魔王「代わりにジャガイモを増やそう・・・こいつは美味しいしな・・・」ごそごそ
魔王「次は肉・・・かな」とことこ
魔王「・・・・・」じー
蛙「・・・・・」
魔王「・・・えぃっ」バッ
蛙「グエッ!」バタバタ
魔王「よしっ・・・一匹ゲットーッ!!」キラキラ
魔王「・・・ら・ら・ら〜♪」ごとっ
魔王「ふぅっ・・・近くに池があってよかったな」にこ
魔王「蛙肉と鶏肉って似ているし・・・大丈夫だよな・・・?」
魔王「さて、肉もそろったことだし・・・さっそく、作るか!」
魔王「まーずーはー・・・野菜の皮を剥いて〜」さくさくさくさくさく・・・
ザクッ
魔王「・・・・・」ぽたぽた...
魔王「以外と難しいな・・・野菜剥くの・・・」さくさくさくさく・・・
ザクゥッ
魔王「・・・いたい・・・」ぽたぽた
魔王「”治癒魔法”」ぱああっ
魔王「・・・よしっ続きだ」さくさくさくさく・・・
・・・ザクッ!
魔王「・・・・・」ぽたぽた
魔王「・・・〜〜〜っ、あ〜っ!もう!!」イラッ
魔王「皮剥かないで入れちまえっ!」トントントントン
魔王「どーせ味は大して変わらないだろうっ!」トントントントン
ぽちゃぽちゃぽちゃ・・・
魔王「・・・よしっ」
魔王「あ、肉も入れなきゃな」
魔王「えいっえいっ」ぽちゃんぽちゃん
魔王「”火炎魔法”」ボオッ!
ぐつぐつぐつぐつ・・・
魔王「・・・ふぅっ」
魔王「次はホワイトソースだな・・・」とことこ
魔王「確かバターを溶かして小麦粉を入れるんだったな・・・」
魔王「”火炎魔法”」ボオッ!
魔王「えいっ」ぽと
魔王「・・・・・」
魔王「・・・うおっバターが焦げるっ!」あたあた
魔王「ちょっと水をかけて火を弱めよう・・・」ぽたぽた
魔王「・・・・・そろそろ小麦粉入れてもいいかな〜」
魔王「えいっ」ざばっ
魔王「〜♪」まぜまぜ
魔王「ん・・・あれ・・・?」
魔王「だまになってる・・・?」
魔王「まぁ、牛乳入れれば何とかなるだろ〜♪」ふんふん
魔王「火を止めて牛乳を入れる・・・」
魔王「”消火魔法”」シュウゥゥ・・・
魔王「えいっ」だばだばだばだば
魔王「〜♪」まぜまぜ
魔王「ん・・・あれ・・・?」
魔王「だま消えないな・・・」
魔王「まぁ、全て一緒に混ぜたら消えるだろ〜♪」ふんふん
・・・さくっ
魔王「・・・お、野菜炊けてるな?」
魔王「ホワイトソースを入れて・・・」だばだばだば
魔王「ふふふ・・・」ニコニコ
ぐつぐつぐつぐつ・・・・・・
。o0○
・・・かつっ こつっ
勇者「ただいま〜・・・」ひょこっ
魔王「おかえりー」ぱたぱた
勇者「ん・・・?何か良い匂いがする・・・」くんくん
魔王「この前教えて貰った料理を作ってみたんだ」にこにこ
勇者「へぇっ・・・作れたの〜?」ニヨニヨ
魔王「むっ馬鹿にするな。バッチリ作ったぞ」ふんっ
勇者「ははは・・・お腹空いた、早速食べよう」にこ
勇者「・・・これ・・・なに・・・?」ひょいっ
魔王「ん?蛙だが?」もぐもぐ
勇者「か、かえる・・・?」
魔王「食べたこと無いのか?」もぐもぐ
勇者「・・・美味しいの?」
魔王「私は好きだが?」もぐもぐ
勇者「・・・・・」
ぱくっ
勇者「あっ・・・意外といける・・・」もぐもぐ
魔王「だろ〜?」にこにこ
勇者「少しだまがあるけど、美味しいよ。ちゃんと出来たんだなぁ」もぐもぐ
魔王「フフフ・・・」
魔王「そういえばお前、何処に行ってたんだ?こんな遅くまで・・・」
勇者「ああうん・・・ちょっと」
魔王「?」
勇者「・・・後で一緒に散歩でもしない? お風呂入った後に」
魔王「別に良いが・・・」
勇者「・・・・・」
○0o 。
魔王「星が沢山見えるな・・・」
勇者「すごいよなぁ・・・」
魔王「・・・・・あ・・・流れ星」
勇者「・・・消える前に3回願い事を唱えると願いが叶うらしいよ」くす
魔王「人間にはそんな言い伝えが?」
勇者「ああ」
魔王「へぇ・・・」
勇者「・・・あれは獅子座かな・・・」
魔王「人間は星にも名前をつけているのか」
勇者「うん・・・名前を付けて、その星の場所を確認するんだ」
魔王「・・・・・空の地図か・・・」
勇者「神話もあるんだよ?」
魔王「ほう」
勇者「あの星は、勇者に倒された獅子が星になったと言われているものなんだ」
魔王「へぇー・・・」
勇者「まぁその勇者は、浮気して妻に殺されるのだけど・・・」
魔王「おお・・・結構ドロドロしているな・・・」
勇者「死んだ後は星になって神様の仲間入りしたらしい」
魔王「変なの・・・」
勇者「俺も死んだら・・・星になるのかなぁ・・・」
魔王「・・・・・」
勇者「おっと・・・そんな話をしに来たわけじゃないんだった」ごそごそ
魔王「・・・・・」
勇者「魔王」
魔王「ん・・・?」
勇者「目、瞑って・・・」
魔王「?・・・」しぱ
スッ...
勇者「おお・・・・・」
魔王「? 何付けたんだ・・・?」ぱち
勇者「ティアラだよ。似合ってるなぁ・・・やっぱり伊達に女王勤めてるわけじゃないんだなぁ」うむうむ
魔王「ティアラ・・・?なぜ・・・」
勇者「まぁ贈り物したかったんだ。・・・5年、経ったし」
魔王「・・・・・」
勇者「本当に綺麗だ・・・」すっ...
魔王「勇者・・・」
勇者「あんたが奥さんで本当によかったよ・・・毎日が幸せだ」
魔王「・・・私も」
勇者「ん?」
魔王「お前が、夫でよかった」
勇者「・・・・・」
魔王「・・・・・」
勇者「・・・・・」ぎゅ...
魔王「・・・・・・・これ買うために出かけてたのか・・・」
勇者「・・・うん」
魔王「高かったろうに・・・」
勇者「人間の金は手元に結構残ってたから・・・」
魔王「ていうか危険じゃないかっ お前指名手配されてるのにっ」
勇者「うまく変装したから大丈夫だよ・・・」
魔王「・・・まったく・・・」ぎゅ...
魔王「もう・・・人間界には行くな・・・」
勇者「・・・・・」
魔王「宝石より、傍にいて欲しい・・・・・」
勇者「・・・・・魔王」
魔王「ん・・・?」
勇者「愛してるよ」
魔王「・・・・・」
勇者「・・・もし」
勇者「願いが叶うなら・・・」
魔王「・・・・・」
勇者「あんたの傍にずっといて」
勇者「誰よりもあんたのことが知りたい・・・」
勇者「・・・ま、それは寿命が延びたって無理な話なんだけど・・・」
魔王「・・・・・」
勇者「・・・戻ろっか、寒いし。風邪を引いてしまう」
魔王「・・・・・」
勇者「・・・ベッドに入って・・・久しぶりに熱い夜を・・・」フッ...
魔王「・・・・・・暖めて、くれるのか・・・?」にこ
勇者「そりゃあもう・・・溶けちゃうくらいに、熱く」にこ
魔王「今夜は離さないぞ・・・?」
勇者「今夜どころか何時までも離さないでくれよ」
魔王「・・・言ったな〜?」ニヨニヨ
勇者「俺も慣れたもんだ・・・最初頃は骨抜きにされて死んでしまうと思ってたのに」
魔王「なんだ、もう骨抜きにされているだろう」
勇者「まあ、そうなんだけど」くす
魔王「明日は仕事もないし・・・」
勇者「そうなのか?」
魔王「最近は落ち着いてるからな、そんな忙しなく働かなくても良いんだ」
勇者「・・・じゃあ、明日はだらだらと過ごすか・・・」
魔王「いつものあれか?ワインを飲みながらチーズでも食べて」
勇者「一緒に本を読んで、一緒に寝る」
魔王「だらだらだなぁ・・・」
勇者「でも最高に幸せだよ」
魔王「・・・そうだな」ふっ...
勇者「君がいれば、どんな時でも幸せ――――――」
――――――――..............
魔王は この先の未来のことを考えて泣いたことはなかった
それは 俺に気を使っていたからなのか
それともやはり 法の籠の中にまだ閉じ篭っていたからだったのか・・・
心は読むことが出来ないから それはわからない
でも 俺が死んだ後に 少しでも泣いてくれたら・・・
・・・好きな女に泣いて欲しいだなんて 最悪な男だと思うけど・・・
そしたら・・・俺は安心して眠れる
ああ 俺の愛はちゃんとあんたに伝わっていたんだって
ああ 俺はちゃんとあんたに愛されていたんだって
それは あんたにとって良いことなのか悪いことなのかわからない
でも あんたの温もりは決して消えて欲しくないから
初めてくれたその手の温もり 綺麗な笑顔
それが永遠に消えないことを 願ってる
―――――――――――五年後・・・・・
・・・・・カッ カッ カッ カッ・・・
魔王「・・・・・・」
側近1「・・・お帰りなさいませ、魔王様」
魔王「・・・・・、だたいま・・・」にこ...
魔王「部屋が綺麗でびっくりしたよ、ずっとあの部屋には入ってなかったのに」
側近1「新しいメイドを入れましたので・・・」
魔王「ほう・・・今度のメイドは大人しい奴なのか?」
側近1「はい、少々おっちょこちょいですが毎日元気に働いてますよ」
魔王「そうか・・・そうか」にこ
ぬりぬりぬりぬり
魔王「〜♪」
側近1「・・・? 何ですか?それは」
魔王「ジャムだ」
側近1「いえ、そのジャムの中に、入れたのは・・・・・」
魔王「・・・勇者の、灰だ」
側近1「・・・・・」
遂に明日だ 魔王
・・・ほんと 瞬きするくらいの間だったなぁ
魔王「勇者が死体は食べてくれって言うんでな」
魔王「しかし人間の肉はあまり好きじゃないから・・・」
側近1「・・・・・」
魔王「こうして灰にして、ジャムの中に入れて食べることにした」
魔王「そしたら味もなくなるだろうし・・・・・・」
いつかは忘れてしまうんだろうけど・・・・・・・・
っ あいてっ 何するんだっ
魔王「・・・・・よしっ・・・いただき、ます」さくっ
魔王「・・・む・・・・・やっぱり、何か、不味いな」もぐもぐ
覚えててくれるの?・・・嬉しいな
俺がいなくなっても あんたの中で生き続けるのかな
魔王「心なしか、何故か・・・しょっぱいし・・・・・」つぅ...
側近「・・・・・」
あ 亡骸はさ どこでもいい 少し食べてくれて欲しい
そしたら あんたの傍にいつでも居れる そんな気がするから
魔王「灰って、しょっぱいもんなのかな?」
魔王「あれ? おかしいな・・・ジャムの中に、入れてるのにっ・・・」ぽたっぽたっ
本当に幸せだった ありがとう・・・
魔王も自分の幸せを考えて
生きて下さい
魔王「・・・っ・・・うっ・・・ゆう、しゃ・・・」
魔王「な・・・なんでっ・・・こんな・・・・・」
側近1「まおう、さま・・・・・」
魔王「・・・ぅっ・・・ぁ・・・っ・・・っ・・・・!」
冬も近い凍える秋空の下
勇者は静かに息を引き取った
――――――――..............
魔王「・・・っ・・・はぁ・・・・・」ずっ・・・
側近1「・・・大丈夫ですか、魔王様・・・」
魔王「・・・あぁ・・・だいじょうぶ、だ」
魔王「思いっきり泣いたら、すっきりしたよ・・・」すんっ・・・
側近1「・・・・・」
魔王「あー・・・・・目ぇ腫れてるんだろうなぁ・・・」
側近1「・・・冷やしたタオルお持ちしましょうか?」
魔王「いや、いい。そのうち治るだろう」すんっ
側近1「・・・・・勇者は、幸せだったでしょうねぇ・・・」
魔王「幸せじゃなきゃ困る。何のために今まで付き合って来たんだ」
側近1「あなたは、どうですか?」
魔王「ん・・・?」
側近1「幸せでしたか?勇者と暮らして。・・・救われましたか?」
魔王「・・・ああ・・・」
側近1「・・・・・」
魔王「楽しかったよ・・・・・幸せだった・・・救われた」
側近1「なら・・・よかった」にこ
側近1「これから・・・どうしますか? また、勇者が来るのを?」
魔王「・・・・・・」
魔王「・・・・・いや」
魔王「人間界は、私の夫を殺したんだ」
魔王「黙っているわけには・・・いかない・・・っ」ダンッ!
側近1「! ・・・何を、されますか・・・」
魔王「絶望と憎悪を。・・・私を苦しめてきたものをアイツ等に、くれてやるっっっ!!!」ギラッ
――――――――三年後。
―――――――――とある国の小さな村にて。
・・・・ぉぎゃあっ
・・・おぎゃあっ おぎゃあっっ
助産婦「・・・う、生まれました・・・っ! 男の子ですっ!!」
赤ん坊の父「おおっ!!男かぁっ!!やったなぁ!!!」ぎゅうぅ
赤ん坊の母「はぁっ・・・もー疲れたよー・・・私は・・・」にこ...
赤ん坊の祖父「ほっほ・・・どれどれ、早く孫の顔を見せとくれ」
助産婦「少し待ってて下さいねぇ、今、産湯を・・・・・・・・」
助産婦「・・・!!・・・こ、この子っ・・・・・」
赤ん坊の祖父「ん・・・? どしたんじゃ、そんな目ん玉大きくして・・・・・」
赤ん坊の祖父「! な、なんとっ・・・!」
赤ん坊の父「ん・・・? どうしたんだ、父さん」
赤ん坊の祖父「ゆ、勇者じゃっ・・・勇者じゃっこの子はっ!!」
赤ん坊の父「!? なっ・・・」
赤ん坊の母「・・・え・・・?」
赤ん坊の祖父「な、なんということじゃ・・・我が一族に、勇者が・・・」
赤ん坊の父「・・・・・」ゴクッ・・・
赤ん坊の母「・・・・・」
赤ん坊の祖父「・・・勇者が、魔王を倒さなければ・・・我が家は・・・・・」
赤ん坊の父「・・・・・くっ・・・」
赤ん坊の母「そ、そんな・・・」
赤ん坊の祖父「・・・今なら、まだ間に合う」シャキンッ
助産婦「! メ、メスで・・・何を・・・・・」
赤ん坊の祖父「赤子を殺す」
助産婦「なっ・・・」
赤ん坊の祖父「今なら誰にも勇者が生まれたことを知られていない」
赤ん坊の祖父「赤子は死産だったことにして・・・・・何もなかったことに、するぞ」
赤ん坊の父「・・・っ!」
赤ん坊の母「やっ・・・止めてぇ!!」
赤ん坊の母「私の赤ちゃんよ!?何故殺さなきゃいけないのっ・・・!」
赤ん坊の祖父「うるさぁいっ!!!」バシッ!
赤ん坊の母「キャアッ!!」ドサッ
赤ん坊の父「っ何をするんだ、父さんっ!」
赤ん坊の祖父「喧しいっ!!大体そいつが勇者を生まなければ良い話だったんじゃ!!!」
赤ん坊の祖父「そいつをよこせっ!!!」ぐいっ
助産婦「あっ・・・!」
赤ん坊の祖父「せっかくの跡取り誕生じゃが・・・・・・次に期待させて貰うっ!!!」ヒュッ・・・!
赤ん坊の母「イヤァアアアアアーーーーーッッッ!!!!!」
・・・・ザクッ!!!
赤ん坊の祖父「・・・!? なぁっ・・・・・」ぼた・・・ぼた・・・
赤ん坊の母「!? な、なに・・・・・・赤ちゃんが・・・いなくなって・・・」
ザッ・・・
魔王「・・・この子は私が貰い受けよう」バサッ・・・
赤ん坊の母「! あ、あなたはっ・・・・・・だ、れ・・・・・」
魔王「あなた方がこの世でもっとも憎んでいる者だ」ふっ
魔王「おい、お前らっ! 突撃しても良いぞっ!!」パチンッ!
バッ! ババッ!!
人食い鬼「ぃよっしゃぁ!! 人間っ!人間っ!」ドタドタ
人食い鬼2「喰うぞぉ!!!人間、喰うぞおおお!!!」バタバタ
魔王「残さず喰えよっ・・・勇者がここで生まれたという事実を少しも残しちゃ駄目だ」
人食い鬼3「分かってますぜぇっ!!!魔王様!!!」
人食い鬼4「あっしら食べ残しはしない種族で有名なんですぜっ???」
人食い鬼5「血の一滴残らず喰ってしまいやすよ!!!」
人食い鬼達「げっへっへっへっへっ・・・・・」
赤ん坊の母「あ・・・あ・・・・・」ガタガタ
赤ん坊の父「っ・・・ちくしょうっ!」ジャキィンッ
バキッ・・・!
赤ん坊の父「!? なっ・・・!?」
人食い鬼6「オジサーンそんなんじゃ俺達に一生かけても勝てないぜ?」チッチッチッ・・・
人食い鬼7「そん前に喰っちまうから意味ねぇだろwww」
人食い鬼6「あそっかwww」
人食い鬼8「まずは柔らかい女から・・・」じゅるりっ
ガシッ!
助産婦「っ!? ぃっ・・・イヤアアアアアア!!!!!」じたばた
人食い鬼8「おうおう、威勢いいねぇ姉ちゃん。美味そうだぁ・・・」
ガブリッ!!
助産婦「あ・・・・あぁ・・・」ガクッ・・・
赤ん坊の母「じょ・・・じょさんふ、さん・・・・・」
人食い鬼9「キャッキャッキャッキャッ!!!やっぱ美味いねぇ!!!人間は!!!」バリバリッ!
誰かの腕「・・・・・」ぷらーん・・・
人食い鬼10「めっちゃうまっ!!めっちゃうまっ!!!サイコーッ!!!」むっしゃむっしゃっ
誰かの顔「・・・・・」ゴロ・・・
赤ん坊の母「あ・・・あ・・・・・・」ガクガクブルブル
人食い鬼11「・・・おっ、あっちの女美味そうだぜーっ!!!」
人食い鬼12「産後の女かぁ・・・油のってて、うまそー・・・」じゅるるるる・・・
赤ん坊の母「い、いやぁ・・・た、助けて・・・だれかっ・・・・・、ぁ」
バリバリバリバリッ ボキンッッ
。o0○
魔王「・・・・・」
赤ん坊「・・・・・」きょとん・・・
魔王「・・・・・」じー・・・
赤ん坊「・・・う・・・」えぐ
魔王「! や、睨んだわけじゃないんだ!すすすまんっ!泣くなっ!」あせあせ
赤ん坊「ぇっ・・・えっ・・・!」
魔王「あああああすまんっ!!目つきが悪いのは昔っからなんだよ〜〜〜っ;」あたあた
赤ん坊「ぅ・・・」ぐす
魔王「ふぅ・・・何とか止めてくれた・・・」
赤ん坊「うー・・うー・・・」ぱたぱた
魔王「・・・・・」
魔王「・・・・・ふふ・・・かわいいなぁ、お前」ぷに
赤ん坊「ぅー・・・」ネムネム
魔王「ゆっくりおやすみー・・・今日は散々な日だったんだからなぁ・・・」
赤ん坊「・・・・・」すー・・・
魔王「・・・・・」
魔王「・・・そして明日から、一緒に」
魔王「生きて、ゆこう・・・」
―――――――――――・・・・・
―――――――――・・・・・
―――――――・・・・・
――――――――月日は、流れ―――――。
・・・・・バタバタバタバタッ バタッ!
勇者「キャーっ!鬼メイドが追いかけてくるよー!!!」バタバタッ
メイド「こらーっ!あんたまた勝手におやつ食べたでしょうっ!待ちなさーいっ!!」バタバタッ
勇者「よしっ・・・あの角を曲がってぇっ・・・・・」とたとたとたっ・・・
ぼすっっっ
勇者「っ! うわぁっ」どてっ
魔王「ん・・・? 勇者じゃないか」
勇者「ま、まおー・・・・・」
魔王「駄目だろう、廊下を走っちゃあ」こつんっ
勇者「あいてっ」
・・・バタバタバタタッ バタッ!
メイド「あっ・・・! 魔王様・・・!」ぴたっ
魔王「メイド、お前も廊下を走ってぇ・・・」こつんっ
メイド「えぅ・・・す、すみません・・・」しゅん...
魔王「次からは走らないように。・・・二人ともっ!」
勇者「はーい」
メイド「はいぃっ!」
魔王「勇者、威勢が足りぬ!」ぐいっ
勇者「! はいぃっ!」びくびく
魔王「まったく・・・・・最近生意気になってきたな、お前は」ぷに
勇者「あぅ」
魔王「見ろっ 花が少し散ってしまっただろうっ!」ばさ...
勇者「うー・・・ごめんなさい・・・」しゅん...
魔王「・・・まぁいい、ちゃんと反省しているようだしな」なでなで
勇者「・・・あのお墓のとこに行くの・・・?」
魔王「ああ・・・そろそろ誕生日だから・・・」
勇者「・・・俺も行くー」ぐいっ
魔王「ん・・・行くのか?」
勇者「うんっ」にこっ
魔王「そっか・・・じゃあ一緒に行くか」にこ
シュンッ
魔王「よっ・・・と・・・」とさっ...
勇者「わっ・・・すすきがいっぱい・・・」
魔王「大丈夫か?足元、見えるか?」
勇者「む、馬鹿にするなよっ!これでも大きくなったんだぞっ」ふんっ
魔王「ふふっ・・・そうか」にこ...
ザッザッ・・・
魔王「・・・・・」
―第・・・勇者、ここに眠る―
魔王「・・・・・」
勇者「・・・ねーねーまおー」
魔王「っ・・・な、なんだっ?」ぐしっ
勇者「いっつも思うんだけどさーこの首飾り趣味悪くない?新しいのかけてあげたら?」
魔王「いっ・・・いいんだよっ これは、私の夫が死ぬまで大事に持ってたものなんだからっ・・・」
勇者「えー・・・」
魔王「子供にはわからないの!愛なの!・・・大体、カッコいいじゃんか・・・この首飾り・・・」ちゃら・・・
勇者「魔王は趣味悪いよ」
魔王「むむむ・・・お前に言われる日が来るとは・・・」
・・・・・今だにお前の夢を見ることがある。
私が触れた頬、腕、手、唇、
私に触れた肌、体温、吐息を思い出すために。
勇者「前から言ってるもん、・・・魔王が聞いてないだけで」
魔王「なぬっ・・・そうなのかっ」
勇者「大人はいつも子供の話を聞かない・・・」ぷぃっ
魔王「! す、すまん・・・」
勇者「・・・むーっ」ぷくー
たった10年間一緒に暮らしただけなのにな!
私にとっては確かに瞬きする間の出来事だ!
・・・・・なのに瞼の裏にはお前の、笑顔が。
勇者「いーもんっいーもんっ慣れてるもんっ 無視されることはぁっ」ぷぷくー
魔王「ほらほら飴ちゃんやるから機嫌なおせ」ひょい
勇者「! わぁいっ!ありがとうっ!」ぱぁあっ
魔王「・・・な、なんて単純・・・・・」
私にとっては大ダメージだ!
まさかこんなにもただ一人の人間を愛してしまうなんて!
・・・”勇者”は、だんだん強くなってきているのかもしれないなぁ・・・
勇者「まおー」ぐい
魔王「ん?」
ちゅっ
魔王「!」
勇者「へへへっ・・・お礼のきすー」にこぉ
魔王「・・・この、ませガキ」くす
・・・もしかしたら何時の日か、この子が私に刃を向ける日が来るかもしれない。
それが勇者の宿命。勇者の運命。
たとえじわじわと追い詰めていく呪いがかかってなくとも・・・・
でも、私はこの子の幸せを願うよ。
ただ、”勇者”の幸せを願う。それだけ。
勇者「まおー・・・大好きー・・・」ぎゅうぅ
魔王「・・・どうした?今日は。やけに甘えただなぁ・・・」なでなで
勇者「だってぇ・・・」ちらっ
魔王「?」
勇者「この人の誕生日が来ると、魔王どっかいっちゃいそうな顔になるんだもん・・・」ぎゅう...
魔王「・・・っ」
情に振り回された魔王だって、お前は笑うのだろうか?
法も守りきれず私情で人間を襲った魔王だって、嘲笑う?
・・・そんなことありえないってわかってるから、
勇者「・・・・・」
魔王「・・・・・私は何処にもいかないよ」
勇者「・・・ほんとぉ?」
魔王「もちろんだ」にこ
勇者「絶対だかんねっ ・・・俺を置いてったりしたら許さないからねっ!」
魔王「はいはい」なでなで
まだ分からない
この先何が起こるのか
人間から”勇者”を奪い続けたら
また新しい勇者が生まれる?
それともゆっくりと忘れられて・・・・・
”勇者” は伝説になる?
魔王「・・・・・そしたら、私も伝説になるのかもな・・・・・」
勇者「なにー?」
魔王「いいや・・・何でもないよ・・・・・・・・・」
・・・・どんなことがあったって
今の私は幸せだって 胸を張って言えるから・・・・・・
魔王「・・・・・さぁてっ・・・帰ろう・・・勇者」にこ
勇者「うんっ」
笑顔で また会おう 私の愛した人
魔王「・・・・・・帰って仕事だな・・・」
勇者「・・・ねねー?まおー?」
魔王「なぁに、勇者?・・・・」
勇者「俺ねー・・・・」ごにょごにょ
魔王「・・・ふっ・・・あはははっ・・・・・」
勇者「わっわらうなよーっ」
魔王「ふふふっ・・・わいいなぁ・・・・」
勇者「ま、またっ・・・」
魔王「・・・ふふふふふふふ・・・・・・・・・・」
・・・・勇者「やいやいやいっ!まおう!!!」〜終〜
勇者「やいやいやいっ!まおう!!!」
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男が女並みの快感を手に入れる方法を真剣に話し合おうぜ
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コメント一覧
なるほど、あのミネバ様がね‥
こんなほのぼのして胸にきゅんとくる話とか久しぶりだ
もっとやれ
ホント勇者と魔王のこういう話って見てて飽きねーわめちゃめちゃ感動した
乙!
崇高な目的とかでなく、私情でやってるってのがでてていい
勇者魔王ものはもう完全に1つのジャンルだよな
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