【空誘い】Opus Octopus

<オープニング>


 端然と佇む古民家の眼前で、リヴィの弾丸が1体目の飛魚妖獣を貫いた。続けざま、響の電光剣が妖獣の横腹目がけて振り下ろされる。一閃。瞬きの間に妖獣は残り1匹となっていた。
「もろいな」
 宗司の吐息が夜気に溶ける一方で、ガラス細工のように砕け散った妖獣の羽は地面に落ちる先から消えていく。とどめはひらりと翻った円の経典、それと遥姫の操る花めいた結晶輪による二撃。
 真矢は開きっ放しの玄関から中を覗き込んだ。古い木造住宅からはかびた匂いが漂ってくる。
「どうやら、このまま潜入してしまえそうだな」
「そんじゃ調査開始といくか」
 宗司と螢が並んで足を踏み入れる。その後に響、遥姫、円。リヴィ、マチェイ、弥鶴、真矢と続いた。
「消えたアレキサンドラの事も気になりますし、何か手がかりが得られたいいのですが――」
 リヴィが言いかけた時だ。
 背中でぱたんと玄関が閉まる音がする。誰も手を触れていないのに、だ。
「え……?」
 マチェイと弥鶴が首を傾げた。その時、ぐらりと視界が揺れる。眩暈かと思うほどの大きな振動。洗濯機の中に放り込まれたらきっとこんな感じだろう――それほどまでに凄まじい、四肢がばらばらになってしまいそうな激痛と酔い。
「お、おめめがぐるぐるなのー」
 だから、それが収まってもしばらくは身動きが取れなかった。うめく遥姫の隣で、円は顔をしかめながら立ち上がる。ゆっくりと取り戻す視界に移るのは、もはや古びた民家の内部ではない。
「どこだ……ここ……?」
 呆然と立ち尽くす能力者達を出迎えたのは、果ての無い青空。やがて、彼らは自分達のいる場所を知って驚愕する。
 空のただ中に浮く、古民家の集合体。
 その中ほどに組み込まれた民家の瓦の上に、彼らは呆然と立ち尽くしているのだった。

 まるで積み木遊びのように積み上げられた数多の古民家。下は雲に遮られて何も見えない。螢は呆然と辺りを見回した。響もそれに習う。
「どういう事だ……? こんな所に、あの妖獣はゴーストを誘いこんでたっていうのか」
「ここ、もしかして全部の古民家から繋がってるのかね。だとしたら他の仲間もどこかにいそうだけど――」
 これだけでかいと合流はまず難しいだろう。
「……おや、どうして生きた人間がこんなところにいるのかな」
 聞き慣れない男の声がしたのは、その時。
 振り返る能力者達の視線を受け止めて、長髪を背に流した若い男が肩を竦めた。古風な着物を身に纏っている。
「おかしいな。『視肉』のところへ新しいリビングデッドを届けなきゃならないのに……。これは予定外だ」
 男はやれやれとため息をつく。
 リヴィが油断無く問いかけた。
「あなたは何者ですか?」
「僕? 僕は案内役だよ。『視肉』を食らい、腐敗を留めているゴーストの1人。さて……どうしようか」
 男の瞳に剣呑な光が宿ったのを、螢は見逃さなかった。身を翻してその腕を強引に掴み上げると、ちょうど持っていた縄跳びで拘束する。遥姫がぱちぱちと拍手を贈った。それを真似して、弥鶴も笑顔のまま手をたたく。
 真矢が男の脇に跪き、尋ねた。
「取り合えず、この場所についてお尋ねしたい。一体ここは何なのですか?」
 すると、男の唇に薄い笑みが浮かんだ。
「――マヨイガ」
 隠れ家の異名をそらんじる。
「ここはゴーストが集まる異世界。脱出するのは不可能ではないが、難しいぞ」
「もーっ、いいから早く方法を教えなさい!」
 頬を膨らませた遥姫にせっつかれて、男は続けた。
「出口は最下層にあるが、そこに至る道には必ず地縛霊の門番がいる。例えそれを倒して進んだとしても、最下層を守る門番を倒す事ができるかな? あれは強いぞ。しかも、とてつもなくでかい」
 短い笑いが乾いた空気を震わせる。
 不安を感じたマチェイの手はいつの間にかロザリオへと伸びていた。
「人間が迷い込むなんて珍しい事もあるもんだが、まあいい。この世界にいればお前らもいずれゴーストとなるだろう。そうしたらこの楽園で永遠に暮らす事ができる――」
 だが、男は最後まで言い切ることができなかった。いつの間にか指先を上げていたリヴィが、穢れの弾丸によって彼の胸を貫いたからである。

「……私たちは必ず脱出してみせます」
 リヴィは立ち上がり、雲に隠れた最下層を透かし見ようとする。……だが、遥か彼方に埋もれた最下層はここから望むべくもない。
 円は心を決めたように呟いた。
「取り合えず下、か」
「そうだな。ここに留まっていても仕方ない。移動しよう」
 宗司は屋根のへりに捕まって、その下に連結した別の古民家へと飛び移る。こうやって一軒一軒下っていく他に方法はなさそうだ。
 彼らは互いに手を貸し合い、ゆっくりとマヨイガを降りていく。聞こえるのは自分達の足音と風の音だけ。
 茫々と吹き荒ぶ風が、頬を冷たく撫でながら通り過ぎていった。

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参加者
竜胆・螢(銀夜の守護竜・b02371)
鷹來・遥姫(春色兎姫・b11253)
神凪・円(守護の紅刃・b18168)
梓原・真矢(スタットコール・b23584)
桐嶋・宗司(深黒晦冥・b25663)
リヴィ・フランケン(はぐれ花嫁・b31446)
桐真・響(アゲート・b56476)
マチェイ・ノヴァク(血呑み児はネリネを抱く・b62429)
NPC:仰木・弥鶴(グリーンスリーヴス・bn0041)




<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

竜胆・螢(銀夜の守護竜・b02371)
マヨイガ……迷い家ね、さながら彷徨える家、ってとこか。
にしてもゴーストの集まる異世界な、地縛霊の特殊空間かなんかなのか……?

【対門番】
桐真と鷹來が少女たちの気を引いてる間に少年を倒す
「女子供のゴーストか、ちっ、やりにくい」
とはいえ、手を抜いてる暇はない
旋剣の構えを使いながら桐嶋と共に前に出て戦線を構築
壁として出来るだけ後衛への射線を遮るように立ち回り、紅蓮撃で攻撃する

少年撃破後はそのままベランダを駆け抜けて最下層へ
少女たちが追って攻撃してくるなら一番近い敵から1体ずつ集中攻撃で倒していく
少女に対しては黒影剣で攻撃


【対タコ戦】
旋剣で強化し、なるべく固まり過ぎないように注意しながら前線へ
基本は紅蓮撃で攻撃しつつ、アビが切れたら黒影剣に切り替え
体力に注意しながら、危ないと判断したら一旦退がって旋剣を使いながら回復を待つ
近くで戦闘不能者が出たら、タコとの間に割って入って壁になり、退がらせる時間を稼ぐ

【調査】
時間の許す範囲で出来るだけ情報を集めたい
元々調査に来たのに行って帰ってきましたって訳にもな
『視肉』ってのは一体何なのか
案内役の言葉から察するに『愛情を示してくれる人』の血肉の代りか?
けど、何故リビングデッドを『視肉』の所に届ける必要があるのか。『視肉』を維持するのに必要なのか、それとも単に自我を残したリビングデッドを集めているのか
直接『視肉』を確認出来りゃ早かったんだけどな

鷹來・遥姫(春色兎姫・b11253)
◆心情
大きなゴーストホイホイの中は、異空間に繋がっていました…ってビックリ!
『視肉』なんて初めて聞いたけど何だろうー?
これがあると腐敗しちゃうの?
よくわからないけど
とりあえず下に行けば帰れるのね!
ハル早く帰りたーい!
さ、行きましょー!

◆門番戦
「あれ?ちびっこがいる…?」
ちょっと、いきなり戦闘ってズルイ!

ハルは女の子地縛霊とお話しなきゃいけないから
女の子の近くにいくのね

◆コイバナ
コイバナが好きな地縛霊だなんて…話がわかるのね!
ハルもコイバナ大好きvv
響ちゃんがお話してる間は少年を射撃攻撃
でもお耳は全力でコイバナ聞いてます

交代のため響ちゃんに呼ばれたら、戦闘放り出してすぐに参戦!

「はいはーい!今度はハルがお話するのね♪」
見て見てー!ハルの左手の薬指!
じゃーんvこれは彼氏さんから16歳の誕生日に貰った
指輪です!
指輪といえばプロポーズv
綺麗な夜景の見える場所でハルの目を見て
『ずっと僕の傍に居て下さい』って…きゃー!
なーんて言ってくれたらいいんだけど
掴みどころのない人だからなー(ぶー

◆タコ戦
前衛

「お、大きい…!」
タコを見つめて唖然

黒燐奏甲で攻撃力をあげて氷の吐息でタコを攻撃
「今ぐにゃって、ぶにょってした…!」
やーん、気持ち悪ーい

前衛さんの体力が減ってきたら奏甲で回復
他の回復担当と回復対象が被らないように確認する
「大丈夫、ハルが回復してあげます!」

タコになんて負けません!
最後まで頑張るのねー!

神凪・円(守護の紅刃・b18168)
心情
大好きな親友、大切な仲間、それに…(なんとなく頬を染め)
とにかく!
皆で無事に帰る…その為に全力を尽くすだけだ!

戦闘共通事項
※重複せぬよう声を掛け合い体力半分以下で回復
優先順位:回復手>前衛>低体力者
※自己強化目的の祝福は不使用

戦闘
少年少女戦
前衛担当
近接全周攻撃対策:前衛は連携し一撃離脱タイミングをずらす

優先度:少年>少女

少女恋話中に少年攻撃

通常攻撃→少年自己強化後呪詛呪言(以後:呪言)
※麻痺中・アビ切れ後通常攻撃
※麻痺無・麻痺回復後→呪言(4発まで)

少女優先順位
※攻撃して来ない時は基本放置
攻撃された時は
近い位置の少女(判断つき難ければ一人指さし集中攻撃)から
順次一体ずつ撃破:通常攻撃のみ

少年少女(少年優先・少女にも一応)に戦闘中等に質問
・視肉とは何か・その何の為に・何処に・いつからいるのか
・マヨイガの在る位置と時代
・家を取り込むことで自由に時代や場所を行き来できるのか
※応えがなければ戦闘に集中

戦闘後少し休んで体力の回復と皆の元気付け
「さぁ、もう一踏張りだぜ!気合入れなおして頑張ろーぜ!」

タコ幼獣戦
立ち位置:後衛
※攻撃方法とその範囲・対処(爆発・直線等に対する立ち位置等)・攻撃予備動作等の観察→全員に伝達

初手から呪言2発→必要な回復や仲間状況を確認し→繰り返し→アビ切れ後は前に出て通常攻撃(全力勝負だ!)

戦闘不能者は攻撃範囲外へと連れ出し元気付け攻撃に戻る

戦闘後
戻る前に可能なら情報収集を提案

梓原・真矢(スタットコール・b23584)
■心情
ここがゴーストの世界…死の気配が濃密で居心地が酷く悪い
早く帰ろう、この世界には居るべきじゃない!

■目的
少年撃破→タコ撃破

■移動中
奇襲を警戒して周囲に注意を払う
アレクサンドラの件があるからな…

気になるものを見付けたら、持ち運びできるサイズなら入手する

作戦のすり合わせも忘れずに

■戦闘
対少年、対タコ通して後衛で回復役を務める

初手は前衛の強化目的で祖霊降臨
以降、体力が2/3以下の仲間が出た時に使用
一番体力が少ない人を優先
この時、回復が重複しないよう声の掛け合いをする

どうかこの人に癒しを、『謹みて勧請し奉る』…

仲間全体の体力が3/4以下に減るか仲間がBSに侵された場合は赦しの舞を使用
大丈夫か!?今、治しに行く!

戦闘中は戦場全体を観察
敵の攻撃前のパターンや状況の変化を皆に伝えよう

■少年戦
戦闘中に出来るだけ情報収集
「最近、おばさ…女性が来なかっただろうか」など

■タコ戦
仲間に回復が届き、タコの攻撃範囲からは外れる位置に立とう
神凪さんが戦闘不能者を下げて来た時は範囲ギリまで迎えに行って保護
皆で帰るんだ、誰も倒れさせない

■仰木さんへ
攻撃主体で動いて頂けますか
位置は後衛
アビは森王の槍改×8
蜘蛛童は無印膨に退化お願いします

■仰木さんの蜘蛛童、細雪への指示
対少年:
後衛から粘り糸で少年の締め付けを狙う

対タコ:
前衛で猛毒噛み付き使用
HP半分以下になったら後衛位置まで下がらせ、粘り糸使用
HP2/3以上回復で前衛に戻り攻撃

桐嶋・宗司(深黒晦冥・b25663)
マヨイガ、ゴーストの世界、視肉、か…。
気になるとはいえ時間は無いんだよな。
…とにかく、今はさっさと抜けるか。

空間内の観察は頭の隅に留めるくらいにして先を急ぐ。
少年地縛霊との遭遇までは、出会い頭の奇襲を避けるために常に警戒。

戦闘時は前衛。
狙いの優先順は少年>少女ゴースト。
初手は少年に接近しつつ旋剣の構え、その後は黒影剣奥義で攻撃。
少女の相手は、少年への攻撃を妨害してくる時のみ応戦。
仲間と連携して一気にたたみ掛ける。
『…通らせねぇなら沈めるまで、ってな』

少年の吹き飛ばし攻撃時、足を踏ん張るなどして抵抗を試みる。
少年撃破後は残っている少女の撃破に移り、手近の弱っている者から攻める。
『……邪魔すんなら消すぞ』

ここまでは黒影剣奥義の使用は10発までに抑える。
10発以内で殲滅できない場合、気魄近接攻撃で対応。
仲間のアビリティでHPが半分以上まで回復しなければ旋剣を使用。
それまでは攻撃に専念。


タコ妖獣戦も前衛担当。
密集は避け、複数で攻撃に巻き込まれない程度に間隔を空ける。
エンチャント効果が切れていたら、移動しつつ旋剣を使用。
黒影剣奥義で攻め、使いきったら気魄近接攻撃。
仲間と連携して火力を集中させる。
『…こんな場所、留まる気は更々ないんでな』

仲間のアビリティでHPが2/3以上まで回復しなければ旋剣を使用。
2/3以上の余裕がある限りは攻撃重視、戦闘不能者がいたらタコとの間に割って入る。
『…文字通りの化け物、だな』

リヴィ・フランケン(はぐれ花嫁・b31446)
◆心情
マヨイガ……ゴーストの集まるところ。
長居は無用ですね。
全員、一丸となって脱出しましょう。
情報を学園に持ち帰らなければならないですからね。

◆戦闘配置
常に後衛。不用意に前に出ないように注意。

◆門番の地縛霊
「恋バナ」は担当者に任せ、わたしは攻撃主体で。
残念ながら、あまり経験が無いので相槌も打てませんので。

ヤドリギの祝福で強化後、穢れの弾丸にて攻撃。
「悪いですが、あまり時間は掛けたくありませんので」
速攻で少年の撃破を狙う。

「恋バナ」担当者が攻撃を受けるようなケースに陥った場合は、全力で援護して危機を回避。

少年の撃破後、ベランダを突っ切って移動。

◆最下層の門番
散開して布陣。
「なるほど、大きいですね。ですが、突破します」
他のチームと連携が取れるようなら、連携して攻撃。
穢れの弾丸での攻撃は余力のある場合だけにとどめ、ヤドリギの祝福による回復主体に動く。
特に、同じ回復役の味方の状態は確認し、危険な状態に陥っていたら優先して治療する。

◆警戒
移動中、そして最下層の門番撃破後は周囲を警戒。
原初の吸血鬼が潜んでいる可能性がありますからね。
不意打ちは食らいたくないです。

◆脱出
無事に最下層の門番を撃破して脱出できるのなら問題はありませんが、不測の事態には備えておく。
最悪は数人だけでも脱出させ、その際は脱出メンバーの援護を行う。

◆脱出後
周囲の状況を確認。
何か発見したら、仲間に報告。

桐真・響(アゲート・b56476)
必ず帰るよ
マヨイガ体験話を披露せずに死ねないし!


少女への恋話語り部役1
1番手

少年の射程から外れる距離に移動しつつ語り開始
「甘いお話を御所望の女子諸君!此方へおいで」
語りは時間稼ぎも考え全体的に身振り手振りを加え身体全体を動かし芝居がかった感じで行う

幼少期在米時の話

恋に恋してるようだった今より昔
街の一角、骨董品に囲まれた店で彼と出会った
小さい頃の僕が背伸びしてやっと手が届く位には高い人
当時の僕に彼はとてもきらきらと輝いて見えた
お得意様だったから…かもだけど、仲良くなった
一緒に居てくれた
彼はとても甘い癒しの一時をくれたんだ
週に1度位しか逢えなかったけどよく大人の(少女達を見回し)…キスもくれたよ
どんなものかは御想像にお任せ
今はどんな関係かって?…それは秘密です

語り交代
「じゃぁ次は此方の女性の恋話を御堪能あれ!」
大声で鷹來さんに呼びかけ交代
鷹來さんが話してる時は少女達側にすぐ駆けつけられ、かつ射撃を少年に当てられる位置迄移動し雑霊弾で少年攻撃

少女に話が通じなくなり攻撃を受けたら戦闘
少女達の足止めに勤める
攻撃アビはデモンを4回迄使う
HP1/2以下で自己回復アビ使用

少年を倒した後少女達が居る場合は恋話を続けつつベランダから出て最下層に進む
敵がべランダ出て追ってくるなら一体ずつ集中攻撃

・タコ戦
アビ使って全力攻撃
範囲攻撃を警戒し最初は味方となるべく隣接しないように
HP1/2以下で後方に下がり自己回復アビ使用

マチェイ・ノヴァク(血呑み児はネリネを抱く・b62429)
マヨイガの調査と、各門番の撃破、元の世界への帰還を目的とする
※プレイング内に他参加者との齟齬がある場合は、より多数意見に従う

■心情
奇妙な世界に身震いするも、待っている人の為に必ず帰ると強く誓う
周囲を見回して、自分が飛んでいるような錯覚を覚える
「…とり、みたい。?」

■調査
古民家を下りていく途中、変った物・妙な物があれば近づいて調べる
また小さいものなら持ち帰る
「…これ、なに?」

■少年戦
後方の通路からブラッドスティール(血盗)で少年を倒す
恋話には参加せず、興味も抱かない
「…そこ、どいて」
『視肉』の話を少年がしたら、攻撃の手を緩め情報を得る
少年を倒した後少女が襲ってきたら声掛けをして一体ずつ撃破
ただしアビリティ残量が16を切るなら温存のため前衛で直接攻撃
襲ってこないなら無視して先に進む

■タコ戦
大きさに驚き、無意識にロザリオに手を伸ばす
後衛から血盗で攻撃
味方の回復範囲内で、隣接しないようバラけて配置
「……おおき、…でも、まけない…!」
アビリティが尽き、妖獣を倒せそうなら、決死の覚悟で直接攻撃
「………!」
味方の声掛けを常に聞き逃さないよう注意
HPが半減したら、タコの攻撃が届かない範囲まで後退し回復を待つ
「…あり、がと」

撤退はせず、体力を調整しつつ敵を撃破
撃破後、他の参加者との接触を試みる
また、全体を通して吸血鬼の気配がないか周囲を警戒

■口調
単語を途切れつつ発する
通常発言は全て平仮名
他人はナマエ呼び

仰木・弥鶴(グリーンスリーヴス・bn0041)(NPC)
 このキャラクターはNPC(マスターのキャラクター)です。プレイングはありません。




<リプレイ>

●カライザナイ〜4〜
「案内役の言葉から察するに、『視肉』ってのは『愛情を示してくれる人』の血肉の代わりか?」
 竜胆・螢(銀夜の守護竜・b02371)は複雑に絡み合った古民家の、埃を被った雨戸を引き開ける。無数の古民家がひしめき合ったマヨイガの全貌たるや、蓑虫の棲家を連想させた。
 横倒しになって連結された古民家の床は即ち壁。螢の引き開けた雨戸の向こうにはまた別の古民家が連なっている。
「んー、ハルよく分かんないんだけど。『視肉』があると腐敗しちゃうの?」
「いや、どっちかというと逆じゃないかな。『視肉』がないと腐る……」
 鷹來・遥姫(春色兎姫・b11253)の疑問に答えていた神凪・円(守護の紅刃・b18168)の台詞は途中から悲鳴に変わる。着地した先の廊下が腐っていたらしく、足で踏み抜いてしまった。仰木・弥鶴(グリーンスリーヴス・bn0041)が手を差し出す。
「大丈夫?」
「随分古い民家のようだな……」
 梓原・真矢(スタットコール・b23584)は細雪を先に行かせ、自らは細心の注意を払って周囲を見渡した。もしかしたらあの吸血鬼――アレクサンドラが来ているかもしれない。
「ん……?」
 廊下の端に何かが転がっている。拾い上げてみると小さなベーゴマだった。おそらく、この古民家に住んでいた持ち主のものだろう。
 先頭を突き進んでいた桐嶋・宗司(深黒晦冥・b25663)が肩越しに振り返る。
「おい、観察はそれくらいにして急ぐぞ」
「ええ。長居は無用です。古民家の先がこのような異世界に繋がっていた……この情報を早く学園へ持ち帰らなければなりません」
 続きをリヴィ・フランケン(はぐれ花嫁・b31446)が引き継ぎ、桐真・響(アゲート・b56476)が自信ありげな微笑みを唇に乗せた。
「必ず帰るよ! こんな体験、帰ったら自慢しないともったいないしね」
「さんせーでーす! ハルも早く帰りたいのねー」
 ぴょん、と階段を飛び越えながら遥姫が申告。マチェイ・ノヴァク(血呑み児はネリネを抱く・b62429)も無言の頷きを返した。複雑に連なった階段をひたすら下に下る。窓の外から見えるのはどこまでも続く空。
「……とり、みたい。?」
 マチェイはきゅ、とロザリオを握り締める。
 こんな所ではぐれたら永遠に帰れないような気がする。と、俯いた先に何かが転がっているようだ。突然立ち止まった彼のお尻に弥鶴の蜘蛛童がもぎゅっと頭をぶつけた。
「……これ、なに?」
 マチェイの手には鋳鉄製の小さなコマがある。真矢が先ほど拾ったのを同じものらしい。
「ベーゴマっていうんだ。紐を巻きつけて回す、子供のおもちゃだな」
「なんかこの辺、やけにそれ転がってるけど……」
 宗司に続いて階段を下りていた響が訝しげな声をあげる。それから幾らも経たないうちに階段は古民家二階のベランダへと能力者達を誘い込んだ。再びマヨイガの表層部に顔を覗かせた能力者達の耳に届く、少女の甘ったるい笑い声。
「あら、あらあら誰か来たわよ」
「聞けるかしら聞けるかしら? 心躍る恋のお話を」
 くすくすと繰り返される甘い嘲笑は3人分。
 ――そして、あともう1人。
「来るぞ」
 宗司の隣に並び立ちながら、螢は愛用の斬馬刀を振り上げる。同じく宗司も旋剣の構えを発動。ベランダの奥から放たれた黒い弾丸のような物体を強化した兇冥の刃で受け止めた。
「前は頼んだぞ……!」
 真矢はベランダの端に留まり薙刀を振るう。結ばれた五色の布が翻る先で細雪が粘り糸を放ち、それに従うように弥鶴の蜘蛛童も後方に足場を構えた。
「ちょっ、いきなり戦闘ってズルイのね!」
 遥姫の結晶輪はマヨイガの空を花びらのように飛翔。向かう先にいたのはまだ幼い1人の少年だ。その手にはベーゴマを回すための細い紐が握られている。
「……通しちゃ、だめ」
 それだけが使命だと言わんばかりの、低い呟き。
「悪いけど、通してくれないなら通るまで……!」
 円の手元で経典が紐解かれ、真矢の薙刀に祖霊が降りた。敵は四人か――刃を向けられかけた少女のゴーストがけたたましい笑い声を上げる。
「あら、あらあら? 聞けないのかしら恋のお話?」
「それは残念。残念残念残念……!!」
 遥姫と響が互いに顔を見合わせた。
 もしかして、と少女達を眺める。
「あなた達、ただ恋話を聞きたいだけ?」
 返るのは先ほどと同じ高らかな笑いだけ。試しにやってみようか。二人の少女は互いに目配せを送り、小さく頷き合った。
 
●カライザナイ〜5〜
 大して広くもない民家のベランダが一呼吸の間に戦場へと様変わりする。ベーゴマに風の力を宿した少年の目前で円が紡ぐ、呪詛呪言。少年の動きが一瞬だけ止まった。その隙をついて、螢と宗司が左右から同時に斬りかかる。あどけない悲鳴が耳をつんざいた。
「ちっ、やりにくい」
「……だが、沈めてみせる」
 まずは螢の炎が少年の全身を包み込んだ。そこへ垂直に叩き込まれる宗司の黒影剣。開いた脇を狙って少年のベーゴマが高速回転を始める。
「来る……っ!」
 遠距離攻撃を使用していた円は何とかその難を逃れた。直前に声をかけたものの、乱戦状態にありながら逐次離脱するのは難しい。防御に徹するのならば可能かもしれないが――同じく最下層を目指す他の仲間の事を考えればあまり時間をかけてはいられないはずだ。
「謹みて勧請し奉る……」
 少年の一撃は宗司ですら体力の三分の一近くを持っていく。真矢がすかさず祖霊を降ろしてこれを回復。隣では祝福によって確実に戦闘能力を上げたリヴィが青薔薇を真横に振った。
「悪いですが、あまり時間は掛けたくありませんので」
「……そこ、どいて」
 更に後方からはマチェイのブラッドスティールが発動。薔薇の花芯より射出された弾丸が少年の肩口を貫き、マチェイの指図によって引き抜かれた赤い液体が彼の体内に吸い込まれた。
 激しい戦闘音を背景に、響は場にそぐわないほど明るい声を張り上げる。
「甘いお話を御所望の女子諸君! 此方へおいで」
 両手を広げ、ベランダの手すりに腰掛けた少女達の注意を引きつける。さすがに一戸建てのベランダ内だ。少年の射程から完全に外れるのは不可能だが、今のところ少年は戦闘に集中している。
 今のうちに、と響は演技がかった声色で甘酸っぱい思い出話を語り始めた。
「――僕がまだ、恋に恋してるようだった頃。甘い癒しの一時をくれた人がいたんだ」
 手のひらでその頃の身長を再現する。次に、自分の頭よりも高い位置へ移動させて『その人』がとても背の高かったことを示した。
 その途端、3人の少女はぴたりと動きを止めて響の話に耳を傾ける。遥姫も結晶輪を投げる手は止めないままに、こっそりと聞き耳を立てた。
「週に1度位しか逢えなかったけどよく大人の……」
 響はもったいぶって少女の顔を見渡す。続きは、と彼女らが身を乗り出すのを待ってから甘く囁いた。
「――キスもくれたよ」
 とろける様な甘い話に少女達はほう、とため息。
 対照的にリヴィやマチェイは表情ひとつ動かさずに少年を攻撃し続ける。螢が円の祝福を受けている間に宗司の剣先が少年の背中を突いた。ようやく、半分まで削った所か。
 血生臭い戦いと相反する甘い恋話。
 それでどうしたの、と小首を傾げてねだる少女達の前で、響は人差し指を唇に押し当てた。
「悪いけど、ここから先は内緒。――代わりに次は此方の女性の恋話を御堪能あれ!」
 響は大声で遥姫を呼びつつ、少女達の前から退散。立ち位置を入れ替わる形で電光剣を構えた。呼ばれた遥姫はさっさと持ち場を離れて少女達の前に姿を現す。
「はいはーい! 今度はハルがお話するのね♪」
 そして、じゃーんと自慢するかのように左手の甲を突き出した。
「これは彼氏さんから16歳の誕生日に貰った指輪です! 『16歳』『指輪』『彼氏』と三拍子揃ったら、もう言わなくても分かるはずなのね」
 にっこりと得意げな笑みを浮かべる遥姫。
 その肩越しで、真矢が赦しの舞を踏んでいる。後方より戦況を把握しながら、隙をついて少年に話しかけた。
「最近、おばさ……女性が来なかっただろうか」
 けれど、門番である少年は興味など沸かない様子でただベーゴマを繰る。続けて円が尋ねる。空いている方の手で指を三本立てた。
「聞きたいことが三つあるんだ。視肉についてと、このマヨイガの在る位置と時代。それと……って、うわっ!」
 皆まで聞かず、ベーゴマを竜巻のようにまとわりつかせた少年が突っ込んでいた。追撃は嵌ると痛い。
「大丈夫か?」
 真矢の問いに円は頷きだけを返す。
「何も知らないのかな?」
「……そんな、感じ……?」
 マチェイもまた、首を傾げた。
 それならそれで、遠慮なく倒すだけだ。幸い少女達の足止めは成功している。遥姫は楽しげに指輪を見せつけながら恋話を続けた。
「……で、綺麗な夜景の見える場所でハルの目を見て。『ずっと僕の傍に居て下さい』って……きゃー!」
「「「「きゃー!!」」」
 合わせて少女のゴーストも黄色い悲鳴をあげる。
「……なーんて、言ってくれたらいいんだけど」
 小さく付け足した真相になど気づく様子もない。そうこうしている間に、リヴィの弾丸と響の雑霊弾があと一歩というところまで少年を追い詰めていた。幾度目かでようやく締め付けに成功した蜘蛛童の隣から、弥鶴の森槍が放たれる。けれど止めにはやや足りない。
「……そこ、どいて」
「通らせねぇなら沈めるまで、ってな」
 マチェイの呟きと宗司の宣告が同時に被さる。
 血を奪われ、闇の剣に切り裂かれた少年は愛用のベーゴマと共に姿をかき消した。よし、と円が拳を握る。早くと促したのは螢だ。
「一機に駆け抜けるぞ」
 ちょうど少年が立っていた後ろの手すりが壊れ、その向こうに別の古民家の屋根が連結しているのが見える。
「……邪魔すんなら消すぞ」
 通り過ぎざま、宗司は満足したように笑っている少女を横目で睨んだ。だが少女達は彼らを阻む気は特にないようだ。
 ひらりと手すりを乗り越えながら、リヴィが浅く頷いた。
「いけそうですね」
「よーし、今のうちなのね! あ、響ちゃん。ハルあのお話に出てくる男の人の事もっと詳しく聞きたいです……!」
「ふふ。そうだねぇ……何せきらきら輝いてるような人だったからね。鷹來さんのいい人とどっちが格好いいかな」
 さりげなく続けられる恋話に少女ゴーストは夢見心地。
 難なく最初の関門を突破した彼らは最下層への道を急ぐ。調査や問答にやや時間を割いてしまったかもしれない。他の仲間達はもうそこまでたどり着いているのだろうか――。
「さぁ、もう一踏張りだぜ! 気合入れなおして頑張ろーぜ!」
 円の激励を受け、肩に入った力を一度抜き直す。彼女の提案で少しの休憩を挟んだ後、彼らは再びマヨイガを降下し始めた。

●カライザナイ〜6〜
「あ、そこ……」
 とにかく下へ。
 通り抜けられるような廊下や襖を片っ端から通過した先に、赤い吸盤のような物が見えた。マチェイが指差した先は突き当たりの和室に取り付けられた窓の外。
 窓枠を乗り越えて広間の上に降り立った螢は、目の前にある『物体』の正体を知ってうめいた。古民家と古民家の間に埋まるようにして極太の『脚』が蠢いている。
「もしかしてタコ……か?」
「だとしたら相当でかいな」 
 同じく、宗司が眉をひそめた。
 目の前に見えるのは脚が1本とその付け根から続く胴体の一部だけ。耳を澄ませばそれほど遠くもない場所から剣戟や爆発音が聞こえる。
 どうやら、『これ』はもう他の仲間達と交戦中らしい。
「しかも、佳境のようです」
 リヴィの言葉に応じるように、彼らは出来るだけ扇状に広がる陣形を取った。少しでも敵の攻撃を集中して受けないために。けれど敵の大きさからすればその程度の距離は零に等しい。
 ぐるり、と体の向きを変えたタコの妖獣は黒い墨のようなものを辺り一面に噴射する。その動きは緩慢で随分弱っているように思えた。同じく最下層までたどり着いた他の仲間が健闘してくれたのだろう。
「到着が遅れた分、こっから挽回しないとね……!」
「ええ、必ず突破してみせます」
 響の剣閃と共に雑霊弾がタコの脚に突き刺さった。リヴィは他の仲間達の気配を探りつつ回復援護を担う。
「目視できない距離での連携は難しそうですね……」
「各自で頑張るしかないってことか」
 円は初手から遠慮なく呪言を紡いだ。その両脇を二匹の蜘蛛童が駆け抜け、タコの脚に直接噛り付く。既に森王の槍を使い果たしていた弥鶴は射撃に切り替えて援護射撃。
「やーん。今ぐにゃって、ぶにょってした……!」
「ったく、嫌な手ごたえだな」
 黒燐奏甲を纏い氷の吐息を当てに行った遥姫と、旋剣の構えから紅蓮拳に繋いだ螢。両者はまるで示し合わせたかのように同じような感想を吐き出した。真矢は乱戦状態の前線を慎重に見定めようとするが、入り乱れる前衛とタコ脚はほぼ密着状態。完全に敵の射程外に逃れつつ彼らのバックアップを行うのは至難の技だ。
「それでもできるだけ後方から……!」
 ジャケットの裾が翻り、石畳紋がささやかな主張を果たす。
 その祖霊を受けた宗司が渾身の黒影剣を突き込んだ。
「……こんな場所、留まる気は更々ないんでな」
「同意! 大好きな親友や大切な仲間達が待ってくれてるんだ」
 ……そして、多分あの人も。円の頬が僅かに赤みを帯びた。不思議と力が沸いてくる。
 百名以上の能力者に取り囲まれた最下層の番人は明らかに翻弄されていた。視界内の敵を毒に侵すスミ攻撃の射程は視界内。ぐるりと一周するだけで脚の数よりも多い手数を消費してしまう。
「まけ、ない……!」
 マチェイは左手でロザリオを握り締め、もう片方の指先で妖獣から血を盗む。タコの脚がいよいよ力を失ったように地面へ横倒しになった次の瞬間、それは悶えるように激しい扇動を繰り返した。
「斬撃の音――?」
 前後して一際激しい戦闘音が遠くで鳴り響く。
 おそらくはそれが止めだったのだろう。
 瞬時に妖獣の姿が消滅するのと同時に床が眩しい輝きを放ち始めた。
「きゃっ」
 思わず遥姫は目を覆う。特に原初の吸血鬼の存在を案じて周囲を見渡していたリヴィとマチェイも例外では無かった。光に視界を奪われ、ようやくそれが収まった時。彼らは揃って山の上に投げ出されていた。
 余韻も何もあったものではない。
「視肉についても分からずじまいだし、たいした調査もままならないまま脱出かよ」
 地面に座り込んだまま、螢は肩を竦めてみせた。
 首を巡らせた真矢はすぐ隣に細雪の姿を見つけてほっと息をつく。どうやら山の頂上付近にいるらしい。
「それにしても、どこだここは……?」
 帰還先となったのは、宮崎県高千穂峰。
 宮崎県と鹿児島県の県境にそびえる複合火山の名称である――。


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参加者:8人
作成日:2010/06/17
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
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