農水副大臣「緩衝地帯」断念へ 食肉処理施設に限界

(2010年6月17日付)
 政府の口蹄疫現地対策チーム本部長・篠原孝農水副大臣は16日、記者会見し、川南町を中心に発生農場から半径10〜20キロ圏(搬出制限区域)ですべての家畜を早期出荷し、感染の「緩衝地帯」を設ける防疫策を断念する方針を明らかにした。対象となる家畜頭数と、出荷を受け入れる食肉加工施設の処理能力がかけ離れていることなどが理由。一方、都城市での発生を受け、操業停止中の「ミヤチク」高崎工場は防疫態勢が整い次第再開する方針で、早期出荷は農家の自主性に委ねる意向を示した。

 緩衝地帯の設定は、発生農場から半径10キロ圏内(移動制限区域)の家畜に対するワクチン接種と連動する対策として5月19日に政府が発表。発生地域と非発生地域との間に家畜がいない緩衝地帯をつくり、感染拡大を食い止める計画だった。

 緩衝地帯化を進めるため、同31日には移動制限区域内にある都農町の「ミヤチク」都農工場を特例で再開。しかし、月齢が出荷適期に達していない家畜への補償や、対象農家に対する支援策が固まっていなかったこともあり、食肉処理を終えたのは牛90頭にとどまっている。

 篠原副大臣は「食肉処理施設の加工能力が限られ、早期出荷で緩衝地帯をつくるのは簡単ではない」と説明。緩衝地帯に代わる今後の対策については「殺処分して感染源を絶ち、早く埋却して消毒作業をすることに尽きる」と述べるにとどまった。

 早期出荷をめぐっては、農林水産省が今月15日、農家などへの追加支援策を発表したばかり。支援策と方針転換の整合性については「緩衝地帯は少しでもできた方がいい」と家畜密度を下げる意義を挙げた上で「(早期出荷を)やるという意思のある人はバックアップする。(国は)条件を整えるだけで、やれということではない」とした。

 都城市高崎町の「ミヤチク」高崎工場の再開へ向け、会見に同席した小川勝也首相補佐官は「車の乗り継ぎや噴霧装置の設置など、これでもかという(防疫)基準を提示できないかまとめている。ウイルスを侵入させず、関係者に安心を提供できるよう準備を進めている」と語った。