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はやぶさ支えた技術、受注に弾み NEC開発のエンジン

2010年6月15日5時0分

写真NECが開発した「イオンエンジン」の点火イメージ図=宇宙航空研究開発機構提供

 7年ぶりに地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」。数々の深刻なトラブルを乗り越え、回収カプセルの帰還という成果を支えたのが、NECの人工衛星技術だ。同社は今回の成功を機に、宇宙事業の展開に弾みをつけたい考えだ。

 NECは宇宙航空研究開発機構から、はやぶさの開発や製造、運用を100億円弱で請け負った。今回最大の成功は「イオンエンジン」と呼ばれる、新しいエンジンの信頼性が証明されたことだ。

 イオンエンジンは、キセノンを電気の力でイオン化し、高速で噴射して推進力を生み出す仕組み。従来の化学エンジンより効率が良いことはわかっていたが、今回、宇宙で超長時間航行ができることが実証された。

 今回の航行では、別に積んでいた化学エンジンから燃料が漏れ、はやぶさと地球の通信が不能になるトラブルが発生した。その結果、帰還が遅れ、イオンエンジンは「寿命」より長い時間、使われることになった。

 想定以上の使用でイオンエンジンは4基とも劣化が進み、十分に機能しなくなった。だが、遠隔操作で、あるエンジンの正常に動く部分と、別のエンジンの正常に動く部分を組み合わせ、1基分の推力を確保。回収カプセルの帰還につなげた。効率性だけでなく、危機脱出性の高さも証明する出来事だった。

 NECは今回の成果をてこに、宇宙開発事業を強化。米航空宇宙局(NASA)などに売り込みを図ってイオンエンジンの受注を増やし、今年度からの3年間で20億円の売り上げをめざす方針だ。

 NECは1956年から宇宙事業を手がける草分け。70年には日本初の人工衛星「おおすみ」を成功させた。気象衛星初代「ひまわり」もNEC製だ。01年には東芝と衛星事業を統合。昨年度は約500億円だった事業規模を、10年後に倍増させる目標を掲げる。

 ただ、世界を見渡すと日本のメーカーはまだまだだ。メーカーとして人工衛星を本格的に手がけるのは、国内ではNECと三菱電機の2社だけだ。世界シェアは、この2社を合わせても数%に過ぎず、ボーイング、ロッキード・マーチンなど米国勢に大きく水をあけられている。

 失敗のリスクが高い宇宙開発事業は実績重視の世界。国内勢が受注を増やすには、さらに成果を積み重ね、信用を高めていくほかない。(橋田正城)

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