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【経済】

税の公平性 『所得再分配』強化を

2010年5月25日 紙面から

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 ギリシャの財政危機をきっかけに、日本でも借金頼みの財政運営に危機感が高まっている。政府の主要閣僚から、消費税増税に前向きな発言も相次いでいる。

 二〇一〇年度一般会計当初予算は、税収(三十七兆円)を上回る国債(四十四兆円)を発行する事態に陥った。高齢化による社会保障費の自然増やマニフェスト関連事業の大盤振る舞いで歳出は増大。逆に税収は落ち込んだためだ。歳出の無駄削減と並び、歳入構造の見直しは待ったなしだ。

 その歳入の柱となる三つの基幹税では、所得税と法人税の落ち込みが目立つ。所得税はピークだった一九九一年度(二十六兆円)からほぼ半減。消費税導入などとセットで減税が繰り返されてきたことが大きい。法人税は景気に左右されやすく、二〇〇八年秋の金融危機以降の影響が響いた。

 これに対し、税収が比較的安定しているのが消費税。税率は同様の付加価値税を導入する欧州各国より低く「増税余地がある」との見方につながっている。ただ、消費税は低所得者ほど負担割合が高まる「逆進性」の問題がある。税率の高い諸外国では、食料品など生活必需品には軽減税率を適用し、配慮している。

 所得税は高所得者にかかる最高税率が下げられたままとなっているなど、格差を和らげる「所得再分配」の機能が低下している。歳入見直しの際には、税の最大原則である公平性を回復するなど、税に対する信頼を取り戻すための視点が欠かせない。 (白石亘)

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法人税引き下げ

 日本の法人税の実効税率(地方税の法人住民税などと合わせ40.69%)は、米国と並び先進国で最高水準。企業の国際競争力を高めるには、引き下げは不可欠との声は強い。

 ただ、特定業界を優遇する「租税特別措置」の恩恵を受ける企業も多く、また企業が負担する社会保険料と法人税の合計では国際的に高水準ではないとのデータもある。消費増税が取りざたされる一方で、企業だけに減税を認めるのが妥当か、冷静な議論が必要だ。

 

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