十勝毎日新聞社ニュース
はやぶさ帰還「大きな成功」
13日夜、地球帰還を果たした独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ」。大気球放球実験のため大樹航空宇宙実験場(大樹町美成)を訪れているJAXAの研究者3人も、各プロジェクトチームの責任者などとして任務にかかわり、無事の帰還を喜んだ。3人は「チーム全員が小さな技術を積み重ね、大きな成功にたどり着いた」と話している。
「はやぶさ」のプロジェクトに携わった坂東さん、澤井さん、吉光さん(左から)。後方は大樹町での大気球実験で使用予定だったジェットエンジン
3人はいずれもJAXA宇宙科学研究所の澤井秀次郎さん(44)=准教授=と吉光徹雄さん(40)=同=、坂東信尚さん(33)=助教。澤井さんは、はやぶさが小惑星イトカワに安全に着陸するための「ターゲットマーカー」、吉光さんは着陸後に表面を自律的に移動し、写真撮影や温度測定をする「ミネルバ」のそれぞれ責任者。坂東さんは、はやぶさが地球へ戻る際の運用にかかわった。
はやぶさは、小惑星の表面から砂などの試料を地球に持ち帰る「サンプルリターン技術」の実証が主な目的。イオンエンジンによる惑星間航行や小惑星への自律航行などの技術を次々と実証した一方で、燃料漏れや通信途絶など「あきらめてしまうようなトラブル」(坂東さん)にも見舞われた。
ターゲットマーカーは直径約10センチの球形で3個搭載。はやぶさがイトカワに着陸する際、着陸地点に落とすことでガイドの役割を果たした。同マーカーの1つには149カ国88万人の署名が入っており、現在もイトカワの地表に残っているとみられる。
ミネルバは直径12センチ、高さ10センチ、重さ591グラムの正16角柱。放出される際の条件が悪く、イトカワへの着陸はできなかったものの、はやぶさの太陽電池パドルの撮影に成功。宇宙空間で、深宇宙探査機を外部から撮影した史上初の画像となった。
大気圏に突入し、輝きながら燃え尽きたはやぶさを、3人は14日朝、大樹町内の宿泊先でテレビのニュース番組などで見た。吉光さんは「終わりをはっきりと認識でき、次に向けて頑張ろうという気持ちになった」と語った。一連のプロジェクトの成果について、澤井さんは「世界初というのはお手本がないということ。可能かどうかすら分からない中で、実証実験を成功させた意義は大きい。また、低予算であきらめずに根気よく続けてきたことに日本らしさを感じた」と話している。