十勝毎日新聞社ニュース
十勝家畜保健衛生所・渡辺所長に聞く
「冷静に、できることに取り組んでほしい」と呼び掛ける渡辺所長
口蹄疫防疫−すべての関係者が役割徹底を 発生確認後1カ月となっても、終息の見通しが立たない宮崎県の口蹄(こうてい)疫。十勝・道内では現段階で発生していないが、2000年には本別町でも発生した経緯があり、十勝の農業団体などは早くから警戒態勢を敷き、防疫徹底を呼び掛けている。管内防疫の指導的役割を担う、北海道十勝家畜保健衛生所の渡辺卓俊所長に今回のウイルスの特徴や防疫に向けた心構えなどを聞いた。(聞き手・植木康則、関坂典生)
−10年前との違いは。
ウイルスの型は同じO型だが伝染力が強い。前回は少なくとも牛については伝染力が強くなかった。いろいろな想定をして対応しているが、それらをかいくぐって入ってきている。症状が非常にはっきりしているのも特徴。教科書通りの口蹄疫だ。
頭数が増えてきたのは潜伏期にあったものが発症してきたため。5月連休ころからほかへ伝染したと思われる。最初に設定した移動制限区域内から外に出ていないので封じ込めには成功していると思う。先に発生している韓国や台湾、中国と比べて日本は宮崎県がとても頑張っている。
−十勝の動きは。
10年前に経験していることで動きは速い。家畜共進会などが主催者判断で相次ぎ中止されている。管内農業関連10団体による家畜防疫対策本部が設置され、万一の際に不足する獣医師OBにも協力を呼び掛けている。各農家の対応にやや温度差が出ているので、そこを徹底するようお願いしている。陸上自衛隊第5旅団にも役割を確認してもらっており、大変心強い。発生に備え、危機感を募らせて取り組むのはよいことだ。
−家畜保健衛生所の対応は。
道内組織全体で6人を宮崎に応援派遣した。十勝からは備蓄していた電気屠(と)殺装置を宮崎に送った。地元対応では、関係機関の緊急連絡網を更新整備。発生後は資材を点検し、補充ルートなどは確認済みだ。防疫で使用する薬品は輸入物は調達できないが、ほかの消毒薬で対応は可能だ。
−農業者の対応は。
慎重に、冷静に−とお願いしていた。宮崎は「外に出さない」、私たちは「入れない」こと。すべての関係者が同じ気持ちで取り組まないといけない。小さなことでもよいので地道に静かに取り組んでいくことだ。うわさに惑わされず、自分のできることをやってほしい。万一入ってしまった場合は、早期発見が大事。今回は症状がはっきりしているので獣医師はもちろん、農家の人でも分かる。すぐに担当獣医師に連絡をしてプロの判断を仰いでほしい。農業団体から「韓国や中国に行った農家を集めて説明会を開催しては」との意見も寄せられたが、集めることが逆に危ない。1週間から10日間、家にじっとしてもらうことが最も良い。
−夏の観光シーズンを控え一般の人に呼び掛けを。
十勝の農家は10年前に経験しているので他地域と心配の度合いが違う。発生地区には行かないことを徹底してほしい。観光で訪れても、畜舎に入ることは控えてくれるとありがたい。人間には感染しないが人が菌を運ぶ可能性もある。10年前の本別では風評被害で畜産物はもちろん、野菜まで売れなくなった。自身のため、十勝の農家の安心のためにも守ってほしい。