ローカルニュース

片山楊谷の屏風絵発見 鳥取の旧家に秘蔵

2010年06月01日

 江戸時代後期の画家で鳥取藩士の片山楊谷(1760〜1801年)の屏風(びょうぶ)絵「猛虎図」が、鳥取市内の旧家から31日までに見つかった。一触即発の虎同士の興奮と緊張感を描き、極彩色と精密な表現が見事な六曲一双の大作で、その存在は全く知られていなかった。専門家は「23歳ごろに描いた初期の代表作」と評価している。

片山楊谷の屏風絵を見る大井住職。3頭の虎は躍動感にあふれ、23歳ごろの青年作家の若々しい情熱を伝えている=31日、鳥取市鹿野町鹿野の雲龍寺

 「猛虎図」は、同市鹿野町鹿野の雲龍寺住職、大井大摂さんが旧家から5月に入手。絵の依頼主や制作の過程などは不明で旧家に長く秘蔵されてきた。

 右双に雄と雌の虎2頭を、左双に雄の虎1頭を配置。雌を奪おうと今にも飛び掛からんばかりの左双の雄と、そうはさせじと対抗する右双の雄が、中央を挟んで眼光鋭くにらみ合い、直後の壮絶な死闘を想像させる。

 2頭の雄は全身が総毛立ち、興奮のものすごさを表現。猛々(たけだけ)しい体毛やひげが「楊谷の毛描き」といわれる技法で細かく念入りに描かれ、虎が画面から飛び出しそうな立体感がある。雌の虎は毛並みが穏やかで、雌らしさを表している。

 左双、右双それぞれ高さ1・7メートル、幅3・6メートルで合わせて7メートル以上にもなる大作。保存状態は良好で色彩も制作当時の美しさを残す。楊谷の作品は軸物がほとんどで、このような屏風の大作は珍しいという。

 楊谷が20〜23歳ごろに使った『瓊(たま)浦楊谷道監』という落款があり、このころの作品とみられる。

 大井さんは「23歳ごろにこれだけの大作を描くとは信じられない。楊谷の一番盛りの時代だったのでは。物まねの絵ではなく、楊谷そのものの絵になっている」と話す。

 写真鑑定した鳥取県立博物館の門脇博学芸員は「楊谷は後年になると虎の表情が固まるが、この屏風は表情を試行錯誤の中で描いており、若い時代の作品だろう。毛を1本1本丹念に描くのも初期の特徴。竹の表現も独創的でユニークな迫力ある作品。初期の代表作の一つだ」と評価している。

 同市東町2丁目の県立博物館では、楊谷や島田元旦(げんたん)の作品を集めた「因幡画壇の奇才 楊谷と元旦」展を20日まで開催している。

 片山 楊谷(かたやま・ようこく) 1760年、長崎生まれ。諸国を遍歴したあと鳥取に来て、鳥取池田家の分家・西館池田家のあるじで当時一流の文化人だった池田冠山に絵の才能を認められ、鳥取の片山家を継いだ。人物の髪や動物の毛を1本ずつ丁寧に描く「毛描き」は楊谷の特徴的な技法とされる。髪を伸ばして紫の糸でくくるなど特異な容姿で酒豪、豪放らいらくな性格だったという。但馬(兵庫県)の湯村温泉で入湯中に死去。



注目の情報
生活快適タウン情報紙うさぎの耳
地域の情報をお届けします! うさぎの耳WEB版
地域のお得な情報をあなたにお届けする「うさぎの耳」WEB版。グルメ情報から気になる医療の話、プレゼントコーナーまで盛りだくさん。最新紙面の中身をちょこっと覗いてみよう!