出版&新聞ビジネスの明日を考える:徹底した事前リサーチが鍵――デアゴスティーニの「パートワーク」ビジネス (2/2)
読者の中心は中高年男性
このような販売方法なので、当然、デアゴスティーニの雑誌は創刊号がもっともたくさん売れて、だんだん販売部数は下がっていく。だんだん買う人が少なくなっていった結果、採算ラインを割り、途中で販売を中止したシリーズもありそうなものだが、「これまで100タイトル以上出してきた中で、途中でやめた例はない。すべて完結している」(嶋田さん)とのことだった。
嶋田さんによれば、『戦国武将データファイル』のような雑誌だけのタイプ(通常価格500円前後)で、創刊号が30万〜40万部売れればヒット。歴史物やキャラクター物は特に人気で、コンスタントにヒット作が出ているという。最近では2008年に発売された『歴史のミステリー』が大ヒットで、創刊号が120万部、シリーズトータルで1000万部弱売れた。付録付きのタイプでは、クラシックCDを付録に付けた「ザ・クラシック・コレクション」が最大のヒットで、創刊号は200万部以上売れたという。
読者ターゲットの中心は、中高年男性だ。「私が手がけているのが歴史物中心ということもありますが、中高年の男性読者が多いです。ただ最近は歴史物の場合でも女性読者が増えています。もちろん、料理やビーズといったテーマなら女性読者が中心になります」
発売前のマーケティングリサーチがキモ
完結するまで約100冊、週刊であれば約2年の期間発行し続けることになるが、上述の通り途中で休刊になったことはない。また、ほとんどのタイトルは予測から大きく外れない数が売れるという。そのポイントは発売前のマーケティングリサーチにある、と嶋田さんはいう。
「どのタイトルも、創刊前に徹底的なマーケティングリサーチを行います。テーマや構成の決定に当たっては、事前にネットでリサーチをしたり、そのテーマに興味のある人を集めて座談会(形式のグループインタビュー)を行ったりしています。
創刊する前にまず一県で先行販売して数字を調べる、という点も、大きな特徴です。一般の雑誌だと、編集長が『こういうテーマで行く』と決めて進むことが多いと思いますが、デアゴスティーニは、非常にマーケティングオリエンテッドな会社なんですね。発売後も毎日数字を見ています」
電子書籍への展開は?
電子書籍への対応についても聞いてみた。「読者が中高年男性中心ということもあり、今すぐに(電子書籍を)発売するということはないですが、着々と準備はしています。電子書籍で販売することによって、これまでとは違う読者へ、ターゲットが広がる可能性がありますし、これまでに発売したコンテンツを持っているわけですから」
毎号買いそろえるというコンセプトなだけに、1号買い忘れただけで買い続けるモチベーションをなくしてしまう……ということもありそうだ。「書店で買うのが大変という方は、定期購読の申し込みをしていただければ自宅へ送料無料でお送りしています(編注:2号まとめて2週ごと)。ただ、今はネットがあるので、(デアゴスティーニのWebサイトにアクセスすることで)バックナンバーも買いやすくなったと思います」
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