目が覚めたら異世界だったなんてことはなく、ただいつもの天井が目の前に広がっているだけ。
部屋には、服や下着が散乱していて散らかっている。もちろん、片付けをしようと思ったことは幾度もあったがそんな時に限って、携帯がけたたましく仕事の到来を告げ、邪魔をしてくれる。
よって片付かない。友人にも、いいかげん片付けろと何度も言われそのたびに片付けようと思うのだが、携帯がなる→仕事→片付かない。このループが続いている。
とりあえず部屋の空気を入れ替えるために部屋の窓を開け、部屋の奥にある冷蔵庫からミルクをとり出す。
いいかげん、二十歳すぎたのにミルクかよとよく友人に言われる。まったく自分は、これが好きなんだほっといてくれ。
とりあえず、部屋にあるテーブルの上にミルクの瓶をおいて顔を洗い、ネトッとした感じ(実際にはネトッとしているわけではなく気持ちの問題)いつもの状態に戻る。そして、ミルクを一気飲み。
「ぷっはーーー。」
これを友人の前でやると親父かとツッコまれるが、出るんだから仕方がない。そして、テーブルに放り出した煙草<ラッキーストライク>とジッポライターを取って、煙草に火をつける。
窓の淵に手を付きながら外を見る。空は、快晴、時折鳥たちが楽しそうに空を舞い、風が心地よい。ついでに、近くの塀があるのだがそこに近所の猫がこっちのミルクの瓶をみてものほしそうに
「にゃー。」
と一鳴き。そして、こちらに寄ってくる。とりあえず、どうするかと思案していると猫は、窓の淵に器用に座ってここが自分の定位置だ、早くミルクをよこせと言わんばかりにこっちを見た。
しょうがないのでミルクをもう一本冷蔵庫から出して小皿に移し猫の元へ置くと、すぐにミルクを飲み始めた。
ここで煙草をもう一本。
「お前は、気楽でいいよな。」
そう言って猫に微笑みかけると猫は、こっちをみて
「そうでもねえですよ姐さん。こっちにだってネコの社会ってのがあるんですぜ。」
そう言ってすぐにミルクをまた飲み始める煙草を思わず窓の外に落としてしまう。下に人がいようがどうだっていい。疲れてるんだもう一眠りしよう。(もう昼であったが)すぐにベットにもぐりこんで、目を閉じるとすぐに深い闇に意識が沈んでゆく。
再び覚醒するとすでに夕方。猫もいなくなっており、黄昏の夕日が目にしみる。冷蔵庫から三度ミルクを取り出して、戻ってくるとテーブルの上に一枚の紙が置いてあることに気づく。
その紙に書いてあったものみて愕然とする。紙には丁寧にお礼が書いてあった。しかも、筆で。そして、文末に見事な猫の手マークが押してありby“にゃん太”と名前まで書いてあった。
ここで本日三本目の煙草を取り出しジッポライターで火をつける。窓から夕日を眺めながら、溜息をひとつ。
「なんなんだ。」
と肩を落としひとりごちる。すると、携帯の着信ゴッドファーザー愛のテーマがなる。電話を取ると相手は、いつもの上司で仕事が入ったからすぐに処理してくれとの連絡。
すぐに散乱した私服の中からいつものやつをとって身にまとい、相棒のベレッタPx4二丁弾倉を確認して、腰のホルスターにしまう。今日も部屋の片づけができなかったなと思いつつ仕事に向う。