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【暮らし】

オプション契約で利益 携帯電話トラブル

2010年5月20日

「無料」を強調するソフトバンクモバイルのパンフレットなど。仕組みを理解してから契約したい

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 ソフトバンクモバイルの携帯電話購入に際し、値引きの条件として勧められたオプション(追加)契約のトラブルを、四月十五日の生活面に掲載したところ、販売店関係者から「オプションをフル(全部)契約しないと、利益が出ない」との声が寄せられた。オプション契約の獲得に走る販売店の内幕を取材した。 (稲田雅文)

 「ソフトバンクの営業担当者は、店に来るたび『フルオプ(フルオプション)でお願いします』とプレッシャーをかけてくる」。東海地方で販売店長を務める男性はこう証言する。

 フルオプションとは、通話料割引サービスの「Wホワイト」や、「パケットし放題」など、オプション契約を組み合わせたセットのこと。男性の店では、七つの契約をセットにしていて、月額料金は最低でも計四千六百十五円になる。

 ソフトバンクの携帯を購入したときのお金の流れは複雑だ=図。

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 利用者は二十四カ月の割賦契約をソフトバンクと結んで携帯電話本体を購入。月々の利用料とともに分割払いする。同社は、この分割支払金を毎月の利用料のうちの通話料やオプション料などから値引きするサービスで、買いやすさをアピールする。

 月々の分割支払金の額は同社が機種ごとに決めている。例えば、二千九百八十円に設定されていれば、二十四カ月分の七万一千五百二十円が、携帯電話の販売店への卸売価格となる。販売店はこの価格に「頭金」と称する手数料を上乗せして販売し利益を得る仕組みだ。

 しかし実際には、多くの店が「頭金ゼロ円」と表示して安さをアピールしているのが現状。男性店長も「競争もあり、同じようにゼロ円にするしかない」と語る。こうした中、収益の柱になるのは、契約増などを目的に同社がさまざまな条件で販売店に支払うインセンティブ(奨励金)だ。契約したオプション数が増えれば、販売店に払われる奨励金も増額される。

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 奨励金を決める仕組みは複雑で販売店の規模によっても変わる。ソフトバンク側は契約から六カ月間、一カ月単位で各オプション契約が解約されていないかをチェックし、金額を決めているという。売った客一人一人を、より多くのオプションに加入させ、より長い期間契約してもらうことが奨励金を増やし、利益増につながるわけだ。

 店員は、月ごとの回線契約件数などの成績で管理される。その一つが獲得した契約に占める「フルオプション率」。契約三カ月後のオプション残存率という数字もあるという。営業担当者は一人一人の数字を把握し、目標を定める。

 男性店長も成績を上げるため、客に「オプションをこれだけ契約すれば、頭金がゼロになる」とフルオプションを前提に話を進める。「お年寄りなどメール配信サービスが必要ないと思われる人でも、営業成績のために契約を勧めることがあり、良心がとがめる」

 読者のトラブルで目立ったのは、機種変更などの際、「このオプションを付けると安くなる」「オプションに加入しなければならない」などと店員に言われて必要ないサービスを期間限定で契約し、解除し忘れた情報メールの通信料が膨らんだケースだ。ソフトバンクの携帯をめぐるトラブルが多発しているのには、こうした販売システムが背景にありそうだ。

 同社広報部は「オプションを契約させないと、販売店の利益が出ないという構造ではない。当社がオプション契約を強制することは一切ない」としている。

 

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