「羅生門」の公式上映に日本代表として出席した男性=浜野保樹さん提供
この男性が巨匠クロサワ? 1951年、イタリアのベネチア国際映画祭で黒沢明監督の「羅生門」が公式上映された際の写真が見つかった。
写真には、東洋人らしき男性が観客に囲まれ、握手する姿が写っている。東京大大学院の浜野保樹教授が、ローマの日本文化会館を通して映画祭の上部組織のベネチア・ビエンナーレ事務局に照会したところ、保管資料の中にあった。写真説明に「日本代表」と書かれているという。
「羅生門」は、この公式上映で評判を呼び、最高賞の金獅子賞を受賞。日本映画が国際舞台で注目される先駆けになった。ところが、監督ら関係者は誰も現地に行っていなかった。映画祭側がベネチアの街を探し回り、「替え玉」として東洋人らしき人物を見つけてきたという。
当時の日本では国際映画祭の価値が認識されていなかった。製作した大映の永田雅一社長は受賞の報に「グランプリ? それはいったい何かね」と答えたという。黒沢監督は、川釣りから帰宅して妻から聞かされた、と自伝「蝦蟇(がま)の油」に記している。
写真は、今秋刊行予定の「大系 黒澤明」別巻(講談社)に収録される。(石飛徳樹)