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【から(韓)くに便り】ソウル支局長・黒田勝弘 学習効果は生かそう

2010.6.16 03:00

 鳩山由紀夫前首相にとって5月29、30日、韓国で開かれた日中韓3国首脳会談は首相として最後の外交舞台となった。この訪韓で日韓双方の外交当局者は大いに振り回された。会談の場所は本土から離れた済州島だったのに、鳩山氏が直前になって急に、韓国哨戒艦撃沈事件の戦死者たちを弔いたいと言い出したからだ。

 しかも最初は、艦隊司令部のある西海岸の平沢基地に行こうとした。しかし墓所は大田市の国立墓地と分かり、そちらとなった。専用機は済州島ではなくまずソウル近郊のVIP空港に降り、鳩山氏はそこから韓国政府差し回しのヘリコプターで大田に向かった。

 国立墓地の参拝風景は、日本の要人としては珍しく韓国マスコミで大きく報道され、好評だった。隣国での哨戒艦事件への強い関心は、「友愛」だけではすまない、この地域の安全保障や軍事問題への重大な関心を意味する。

 鳩山氏は首脳会談でも哨戒艦事件に触れ、「もし日本が同じような攻撃を受けたとしたら、韓国のように冷静で沈着な態度を保つことは難しかっただろう」と述べた。

 ところがこの発言について韓国大統領府が「自衛権発動が不可避だっただろうという趣旨の発言だった」と説明した。それが韓国マスコミでは「鳩山首相が自衛権発動も発言」と伝えられた。

 このニュースをテレビで見て「鳩山首相もずいぶん安保を勉強したなあ」と感心したのだが、後に日本側が「自衛権発動うんぬんは言ってないはず」と抗議したため、韓国側もそこは「なかった」と訂正した。

 しかし、鳩山氏は韓国側に「日本なら自衛権発動だ」と思わせるような発言をしたのだ。これは、いざとなれば軍事力でも国を守るという、「友愛」だけではない断固とした安保・国防意識の表れではないか。

 日中韓首脳会談の前に、米軍普天間飛行場問題は日米合意重視で元に戻った。鳩山氏は東アジアにおける沖縄米軍基地の必要性や、日米安保協力の重要性を語っている。その観点で沖縄や世論の理解を求めたいという構えだった。

 韓国での韓国軍戦死者慰霊というパフォーマンスは、東アジアの安全保障の現状を沖縄をはじめ世論に印象付ける、日本向けの説得工作の一環でもあったようだ。

 これは悪くない。まさに東アジアの現状はそうなんだから。

 鳩山氏は首相辞任表明のスピーチでは「日本の安全保障をいつまでも米軍に依存し続けるわけにはいかない」と述べている。「自分の国は自分で守るべきだ」という、文字通り自主防衛の必要性を強調しているのだ。

 これだと当然、「普通の国家」を目指しての憲法改正に向かわなければならない。在任8カ月の“学習効果”だろうか。せっかくその効果が出始めていたのだから、辞めたのは惜しい。

 鳩山氏は当初、「米国離れ」などから韓国の盧武鉉前大統領に似ているといわれた。しかし盧武鉉氏も“学習効果”のせいか、最後は米国とFTA(自由貿易協定)を結んで米韓関係修復に取り組んだ。支持勢力の反米・左派からは当然、非難されたが。

 それにしても日本の世論は性急すぎる。あれだけ支持しながら8カ月でもう「辞めろ」とは。これでは圧倒的支持という当初の「選択」が間違っていたことになる。世論には当然、その反省がなければならない。

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