横浜市緑区で1月、軽乗用車が居酒屋に突っ込み、男性客3人が死傷した事故。自動車運転過失致死傷と道交法違反(酒気帯び運転)の罪に問われた元保険代理業、小坂泰男被告(44)=大和市つきみ野2=に対し、横浜地裁は14日、懲役5年(求刑・懲役6年)の実刑判決を言い渡した。被害者の家族は「懲役年数が罪の重さと思ってほしくない」と飲酒運転の末の悲惨な事故に改めて憤った。
「取り返しのつかない結果を反省し、一生かけて償ってほしいい」。判決言い渡し後、吉田勝栄裁判官の説諭に、黒いスーツ姿の小坂被告は小さくうなずくだけだった。
公判で弁護側は「発熱した友人の子供を病院に連れていくため、頼まれて運転した」と情状酌量を求めた。
だが吉田裁判官は判決で、小坂被告がスナックなどで大量に飲酒し、軽乗用車を貸した友人の女(40)=道交法違反(車両提供)の罪で在宅起訴=の家に事故前に立ち寄り、女に酒を飲ませた点に触れ「無分別な行為がなければ女性自ら運転できたと考えられる」と悪質性を指摘。「事故後も被害者の救護に努めた様子はなく、飲酒検知の際も『飲んでいない』とうそをついた」と事故後の対応も非難した。
事故では居酒屋にいた同区白山1の会社員、野表(のおもて)茂男さん(当時55歳)が死亡し、同僚の菅井茂さん(57)ら2人も大けがをした。菅井さんは事故後約2カ月間、意識不明の状態が続いた。手術を10回以上行い、ようやくしゃべれるようになったが現在も病床にある。判決を聞いた家族は「父は一生、もとのように生活できないことを分かってほしい。しっかり償ってほしい」と話した。【高橋直純、山田麻未】
毎日新聞 2010年6月15日 地方版