臨時理事会終了後、引き揚げる琴光喜関の師匠の佐渡ケ嶽親方=15日午後3時22分、東京都墨田区の国技館、山本裕之撮影
臨時理事会終了後、大勢の報道陣に囲まれる琴光喜関の師匠の佐渡ケ嶽親方=15日午後3時22分、東京都墨田区の国技館、山本裕之撮影
「手間のかからない金づる」――。大相撲の大関琴光喜関らが手を染めていた野球賭博は、暴力団の資金源の一つとされる。以前は興行に直接かかわるなど、暴力団は相撲界と縁が深かったが、今はほとんど表に出ない。正体を隠したまま、力士と親密な関係を築く場合もあるという。
■商談や遊びの場
野球賭博は「大した手間もかけず1シーズンで数億円稼げる金づる」と関東の暴力団関係者はいう。野球の盛んな広島が発祥地といい、その後全国に広がった。「角界にも顧客はいる」とこの関係者は明かす。
そもそも大相撲は、かつて暴力団の有力な資金源のひとつだった。山口組は昭和初期から、浪曲や歌謡曲などの芸能とともに大相撲の興行に力を入れていた、と警察の内部資料にある。
警察の取り締まりで、暴力団が直接興行を取り仕切るケースは激減したが、地方巡業などには間接的にかかわっているという。興行の期間中にトラブルが起きないよう「用心棒」役を担うなどして「力士との接点ができた」と関東の暴力団関係者は話す。
ひいきの力士を接待して飲み食いさせ「祝儀」名目で多額の現金を渡す。力士を応援する会社経営者が居合わせることも多く「興行がカネにならなくても、接待で知り合う社長らに話を持ち掛け、カネを引っ張る算段をする」と、この関係者は明かす。
別の暴力団関係者は「本場所は組幹部の社交場だった」と言う。ある場所の特別席は、特定暴力団幹部の「指定席」として知られていた。「維持員席」とみられるが、この関係者は「入手の経緯は知らない」と言葉を濁す。
テレビ中継に映ることで、刑務所に服役中の仲間の組員を励ます狙いもある一方、同席する別組織の組幹部との商談や遊びの場でもある。土俵上の取組を賭けの対象にすることもあり、1回の取組で数百万円が飛び交うという。