家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」問題で、農林水産省は15日、感染の疑いが確認された宮崎県都城市の農場から1キロ圏内にある農家の家畜を抽出し、遺伝子検査(PCR検査)と抗体検査を行った結果、すべて陰性だったと発表した。同省と県は12日、感染の早期発見のため、10農場の牛と1農場の豚から97検体を採取し調べていた。
検査結果が「シロ」で、国内最大級の畜産地帯の都城周辺に感染が急速に拡大する懸念は薄れたものの、山田正彦農相は「まだ予断を許さない状況。県内には感染の疑いがある家畜の殺処分と埋却が残っており、引き続き全力を尽くす」としている。
同市での発生を受け、同省は「新たな家畜の発症を待っていたら対応が後手に回る」(動物衛生課)として前倒しで検査を実施。陽性反応が出れば、一定区域内の全頭処分なども検討しなければならない状況だった。
一方、同省は15日、被害を受けた畜産農家への追加支援策を発表した。
殺処分を前提にワクチン接種した家畜については、奨励金として時価評価額を支給。さらに1日当たり120-1440円の飼料代などや、品種や月齢に応じて1万3千-19万3千円の経営再開支援金を交付する。
感染封じ込めのため、搬出制限区域内(発生地から半径10-20キロ圏)で家畜の早期出荷に応じた農家には、適齢前の出荷で価値が下がる分などを補てんする。例えば月齢12-28カ月の肉用肥育牛は固定額50万500円を支払う。24カ月以上の繁殖牛などは評価額と販売額の差額を補てんする。また、肉用肥育牛で1万9500円などの出荷促進支援金も別に支払う。
ワクチンを接種した農家が家畜共済に加入している場合、接種後の残り期間の掛け金を、返還する措置を決定した。
また、都城市周辺の大規模肉用牛肥育農場で、獣医師が立ち入り検査を実施することや、10キロ以内での農場でも聞き取り調査を行い、異常の有無を確認することを決めた。
=2010/06/16付 西日本新聞朝刊=