置いてきぼりの旅である。世界の列車は急行や特急全盛。各駅停車という鈍行列車はその運行も減る一方だ。残り少ない鈍行に乗っても、待ち合わせばかり。次々に追い抜く速い列車を、指をくわえて眺めるしかない。しかし各駅停車の旅には、列車旅の楽しさが詰まっている。ゆっくりと流れる風景。素朴な物売りや暇そうな駅員の笑顔。そんな世界を味わいたくて、世界の鈍行列車に乗る旅に出ることにした。
1回目はお隣の韓国。しばらく前まで釜山とソウルを12時間かけて走る長距離鈍行列車があったが、すでに廃止。短い鈍行列車を乗り継いでいくしか方法がなくなってしまった。ネットで検索した時刻表を見ると、鈍行は朝と夕方にしか残されていない。まさに不遇の身。釜山に午後着いた僕らは、鈍行列車めざして釜山駅に向かった。
下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「格安エアラインで世界一周」(新潮文庫)。
中田浩資(なかた・ひろし)
1975年生まれ。97年から99年の北京滞在中、通信社の写真記者として報道写真に携わる。2004年からフリーランス。旅行、人物ルポを中心に雑誌、広告などで活動中。
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