菅内閣が発足した8日、自民党の安倍晋三、麻生太郎両元首相から「左翼政権」との攻撃が相次いだ。自民党は民主党を「労組依存」と批判してきたが、市民運動出身の菅直人氏の首相就任で「左」批判をエスカレートさせた。ただ、自民党内からは「そんな論争に国民は関心がない」(中堅)と冷めた声も出ている。
急先鋒(きゅうせんぽう)は安倍氏だ。8日の講演で、北朝鮮による拉致事件の実行犯とされる辛光洙(シン・グァンス)容疑者の釈放運動に菅氏が携わったとして「史上まれに見る陰湿な左翼政権」と主張。1999年の国旗国歌法成立に反対したことを取り上げ、「君が代、日の丸をおとしめてきた人物が首相になりおおせた」と述べた。
麻生氏も自民党の参院選候補予定者の事務所開きで「市民運動と言えば聞こえはいいが、これだけの左翼政権は初めてだ。(自民党との)対立軸がはっきりした」と述べた。二人の元首相らには保守層を固めることで、自民党再生の足がかりにしたいとの狙いもあるようだ。
ただ、自民党は前回07年の参院選で保守色の強い安倍政権が惨敗した。参院議員の1人は新政権批判について「争点設定が下手だ。生活の話をしないと」と手厳しい。
こうした中、谷垣禎一総裁は揺れている。7日には記者団に「内閣のメンバーを見ると非常に左翼的な政権になるのでは」と強調。だが、8日に「左」批判の真意を問われると「漠然たる印象で、今後どうなるかはよくみていきたい」と発言を後退させた。
一方、他の野党は突然のトップ交代劇を問題視。公明党の山口那津男代表は「脱小沢色を演出したが、政治とカネや普天間の問題は何も決着していない」と批判、共産党の市田忠義書記局長は「問題は反省と打開の方向が見られるかどうか。国会できちんとただすべきだ」と語った。