ちょっと記すのが遅れましたが、菅直人首相は10日、北朝鮮による拉致被害者の家族らと首相官邸で面会しました。これについて産経は11日付の2面で大きく取り上げ、社会部による本記のほか、政治部も「不透明な対北スタンス」という見出しの記事で、菅首相が北朝鮮についてどう考えているのか、今後どうするつもりなのかまだ見えてこない点を指摘しておきました。首相就任記者会見でけじめをつけられなかったので、北朝鮮工作員で拉致実行犯のシン・ガンス元死刑囚の件にも触れておきました。
私は、菅首相が就任3日目という早い時期に家族らと会ったこと自体は評価します。菅首相は本日は口蹄疫被害の現場である宮崎県に入りましたし、とにかくスローモーだと批判された鳩山前政権の轍を踏まないように、とにかく迅速さを心がけ、演出しているようです。それは別に悪いことではなく、評価していいと思っています。
ただ、この菅首相と家族らとのわずか15分間の面会は、いかにも内容が薄すぎました。産経は内容がないならないなりに、きちんと報じようと試みたわけですが、他紙を見ると、ベタ記事だったり極端に扱いが小さかったり、内容がないなりの取り上げ方だったようです。そこで本日は、面会後に中井拉致問題担当相が記者団に語ったことを紹介し、その補足にしたいと思います。
また、実は私はこの中井氏の言葉のいくつかの点に「そういうことでいいのか」と憤りを覚え、それについて記事を執筆した後輩の酒井充記者に「記事に盛り込み指摘しておくように」と指示した経緯もあるので、その意味でもこの場を利用してフォローしておきたいと考えたからでもあります。中井氏と記者団のやりとりは以下の通りです。
中井氏 (家族会の)みなさんから、(飯塚)会長からお話があって、菅総理から「変わらずに中井さんを拉致担当においてやるから」というお話があって、横田さんやら有本さんやら増元さんやら、それぞれご決意をいただきました。横田さんの奥さんがご自分の書かれた本やら自分の思いやら、「菅さんと仙谷さんはお読みになったことがないだろうから」と。「読んでくれ」ということでお渡しになっておられました。
極めて短時間でしたんで僕の方からまた拉致対策本部を近々開いて方針を決めて、家族会のみなさん全員とお目にかかるかどうか、そういった日取りができるかどうか段取りする。こういうことを申し上げておきました。ただ、選挙が近いですから、選挙目当てみたいにやるのもどうかと思って、きょう一応お越しいただくということですからお会いしたと。こういうことを申し上げて終わったということです。
で、増元さんが何か、安倍さんの元秘書の井上君の書いた新潮なんやら(新潮45)のあれ(手記)を出して、「こういうこともやらないで」と言い出したから、私は「それを出しちゃダメだ」と。「井上君がそういうのをしゃべるのは公務員法違反だ」と。「それより内閣にそういう書類を残して、伝えるということをせずに、自分の行為を手記で発表すると。これは公務員の守秘義務違反で訴えるという話があって、前の内閣の時も菅副総理以下、相談して、まあみんなでそこまですることはないだろうというので収めてやったんですね。そういうふうに、いろんな活動記録が伝わっていない。系統的にね。拉致対策本部として。そういうことが空白になっている」と言って、ちょっと僕がちょっとみなさんには申し上げておきましたが、みなさんはそこまで思いにならない。そんなことです。
記者 菅総理から決意は?
中井氏 これはもうずいぶん長い古い話を挙げて、「取り組んでやっていかなきゃならないと思っている」という話がありました。
記者 家族から(かつて菅氏が釈放嘆願書に署名した北朝鮮工作員で拉致実行犯の)シン・ガンスの話は?
中井氏 (いきなり表情がくもり、立ち去るようなそぶりをし出す)全然。それはもう、そんな話は。そんな話は。これはもう、前にも国会でやったっていうの。僕が。答弁をしました。家族の会の方も、もう十分、分かっていることですから。うん。
記者 拉致対策本部の会議は参院選の後?
中井氏 いや、拉致対策本部は参議院選の前にやります。国会が終わって、あるいは落ち着いたらね。やります。4人で。本部をやって、そして今まで通りの方針を確認して、そしてやります。
記者 それは総理も開くと言っているのか?
中井氏 それはこの間、一昨日、総理に確認とりましたから。はい。これは内閣で決めたことですから、やらないということを決めない限り本部はあるわけですから。これはもう普通通りやっていく。こういうことです。総理のお言葉でそれ以外に何か?
…(きょうは)特別目新しいのはありません。総理も間違えちゃいかんので、文書を読まれてましたから。役人が書いた文書ですから。普通の文書。普通の文書。僕らそんなん、真剣に聞いていない。へへへへ。
記者 外交の話は?
中井氏 そういうのは一切ない。みなさんのご労苦、お慰めして、一生懸命やるからという激励。「中井さんが適任だから、中井さんに引き継いでやってもらうということにしたから、そういう思いをくみ取っていただきたい」という言い方はしていらした。
記者 菅総理が拉致に関心がないという話もあるが?
中井氏 あの方々に聞いたら、菅さんが代表の時に一度民主党本部で会われたと言ってました。それから菅さんも僕らが拉致対策本部を民主党でやっているときにはいろんなところに引っ張り出されたり、行動で、つきあいでどの北朝鮮関係があったりすると、全部僕に断りを入れてくれてましたから。非常に気は遣っています。
記者 対話と圧力で臨むとかいう話は?
中井氏 そんなことはありません。そんなことは一切言っていません。明日は本会議で少しお言いになります。拉致のことを。
記者 所信表明で?
中井氏 所信表明の中に一言入れてもらいました(※所信表明の関連部分は「拉致問題については、国の責任において、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国に向けて全力を尽くします」)から。そういう状況であります。
…家族会の人たちは、何と言っても拉致問題の進展、解決のためには政府を頼るしかないわけです。ですので、本当はもっといろいろ言いたいことや、注文をつけたり批判したりしたいことがあっても、それをストレートにすると政府側がへそを曲げてかえって逆効果になるかもしれないので、じっと我慢している部分があるのでしょう。
それをいいことに…というやり方を政府がとらないように、できるだけ目を見開いて事態の推移を見ていこうと思います。拉致問題を風化させては決していけない。有権者の多くの優先的関心事項は経済だの別分野にあるとしても、私はピント外れと言われようともこの問題は問い続けようと考えています。
by yuuitirou
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