技術世界一でも国際市場の9割が海外メーカー
首相がトップセールスしないから世界一の新幹線・リニアが海外で売れない
(SAPIO 2010年5月26日号掲載) 2010年6月10日(木)配信
これが功を奏したこともあり、フランスに競り勝ち、日本の技術が採用された。新幹線の輸出は台湾に続く2例目となった。だが、日本は2つの大きなミスを犯した。
ひとつは、日本が受注できそうな情勢になると、政治家や財界人が競うようにして中国を訪問して売り込みを始めたことである。私が懸念した通り、ネット社会を中心に日本の新幹線を排斥せよという運動が起こった。日本の受注は覆されなかったものの、日本が技術協力し、一部の車両は日本製であるにもかかわらず、中国政府はそのことを国民に言えなくなった。その結果、いまだに大半の中国人は北京・天津間を走る高速鉄道の愛称「子弾頭」という車両は中国独自の技術によるものだと信じ込んでいる。国家プロジェクトへの売り込みにおいては、相手国の国民感情も考慮する必要がある。
もうひとつのミスは、車両を受注した川崎重工業が技術のブラックボックス化をしなかったことである。その結果、中国の車両メーカーが急速に力をつけ、今、アメリカ、ブラジルを始め世界中の市場で日本のライバルになりつつある。上海市郊外と上海国際空港を結ぶ路線のリニアモーターカーはドイツ製だが、中国の反発を受けながらも、ドイツは技術をブラックボックスにしたままである。そのようにして自国の技術を守っているのである。
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