技術世界一でも国際市場の9割が海外メーカー
首相がトップセールスしないから世界一の新幹線・リニアが海外で売れない
(SAPIO 2010年5月26日号掲載) 2010年6月10日(木)配信
ブラックボックスを売り
ライバルを作る愚
かつて私は、日中友好の象徴になると思い、中国に日本の新幹線を導入してもらうべく奔走したことがある。その時、日本の様々な弱点を感じた。
中国は94年、北京・上海間に高速鉄道を導入する計画を立てた。当初、日本は鉄道会社や車両メーカー、制御システムメーカー、信号機メーカーなどがそれぞれ個別に受注活動を行なっていた。かつての日本は池田勇人首相がフランスのド・ゴール大統領から「トランジスタのセールスマン」と揶揄されるほどトップセールスを行なっていたが、ロッキード事件のトラウマから影を潜めた。その結果、絶対有利と言われていた世界最大の中国三峡ダム(93年着工、09年竣工)建設で、日本企業はほとんど受注できなかった。
その反省から、私はまず、自分が理事長(当時)を務める日本財団が支援して日本企業の受注活動を強化すべく、運輸省(当時)に働きかけて鉄道関連企業が集まる「日中鉄道友好推進協議会」を設立した。その協議会を受け皿にして中国から鉄道技術者を受け入れて研修を施すなど地ならしを行なった。その上で、98年に竹下登元首相、平岩外四元経団連会長をリーダーとする一大使節団を組んで中国に乗り込んだ。この時、唐家璇外相(当時)から聞いた話が忘れられない。朱鎔基首相(当時)が訪欧してフランスのシラク大統領(当時)と会談した時、冒頭でこう言われたというのである。「高速鉄道と原発はフランスでお願いしますよ」。帰国後さっそく、小渕首相(当時)に働きかけ、その年に江沢民国家主席(当時)が来日した時、首相自ら日本の技術を売り込んでもらった。
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