技術世界一でも国際市場の9割が海外メーカー
首相がトップセールスしないから世界一の新幹線・リニアが海外で売れない
(SAPIO 2010年5月26日号掲載) 2010年6月10日(木)配信
文=笹川陽平(日本財団会長)
先のGW期間中、前原国交相が鉄道会社、車両メーカーの幹部を引き連れてアメリカ、ベトナムを歴訪し、官民一体で日本の高速鉄道技術を売り込んだ。だが、これまで国際市場の商戦では日本の出遅れが目立った。原因はどこにあるのか。かつて中国に日本の新幹線を導入させることに尽力し、その後も日本の高速鉄道ビジネスのあり方に提言を続けている日本財団会長の笹川陽平氏が政官財界に警鐘を鳴らす。
環境対策、景気刺激策として、今、先進国から途上国に至るまで世界各国で高速鉄道の建設計画が目白押しだ。いずれも巨大な国家プロジェクトである。
例えば中国は、2020年までに全土で総延長1万8000kmに及ぶ路線を建設する「四縦四横」計画を立てており、投資額は70兆円近くにも上る。アメリカは、31州で13路線、総延長1万3700kmを建設する計画を打ち出し、14年までに1兆2200億円余りを投資する。ブラジルは、15年までにリオデジャネイロ・サンパウロ・カンピーナス間の500kmに建設を計画し、その投資額は1兆8000億円。この他、ロシア、インド、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどにも巨大な計画がある。
そこで、鉄道先進国である日本、ドイツ、フランス、カナダだけでなく、新興の中国、韓国までが受注合戦に鎬を削っている。
鉄道の敷設、車両の製造といったハードに始まり、運行ノウハウといったソフトに至るまで、日本の技術は全体として見れば世界トップである。とりわけ、64年の開業以来、新幹線がいまだ事故によって1人の死亡者も出していないことが示すように安全性は抜群に高い。普通に考えれば日本が世界市場の5割以上を制してもおかしくない。
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