国際価格の高騰が続く金の日本からの海外流出が鮮明になっている。今年1~3月の輸出量は前年同期比43%増の26.2トンとなり過去最高ペースに達した。中国、インドが外貨準備に占める金比率を高め、欧米の機関投資家が投資拡充に動いているのとは対照的。金は歴史的に国力の強い国に吸い寄せられてきただけに、金流出は日本の政治、経済の“地盤沈下”の表れとも言えそうだ。
金の純流出量、過去最高のペースで増加
「金は国家の盛衰を察知して動いてきた富の象徴。それが蓄積されず流出するのは日本の国力低下を示している」。ワールド・ゴールド・カウンシルの豊島逸夫日韓地域代表はこう指摘する。
今年1~3月の金の輸出量を単純に4倍すると105トン弱。過去最高だった08年の95.5トンを上回る計算。1~3月は輸入も5.8トンあるが、輸出から輸入を引いた純流出量は20.4トン。これも08、09年の四半期平均である15トン前後を上回る過去最高ペースだ。
金流出の背景には国際価格の高騰がある。指標のニューヨーク先物は1トロイオンス1200ドルを超え過去最高値水準にある。これを受けて国内の地金価格も27年ぶりの高値を付けたため、地金や金貨、金の宝飾品を財産として保有していた人が換金のため売っている。
大手地金商の田中貴金属工業(東京・千代田)は金地金の買い取り量が06年以降50トンを超える。池田収貴金属部長は「地金を売っている世代は50~60代中心。80年代の金ブームの時に買った世代が利益確定の売りに動いている」と分析する。日本人の手を離れた金は中国、インド、東南アジアなどに輸出されており、日本がアジアの供給源になっている格好だ。
経済の混乱期に増える金の海外流出
中国、インドは逆に金の流入が顕著。インドでは婚礼向けの宝飾需要が多く09年に340トンの金が輸入されたが、輸出はごくわずか。インド準備銀行は昨秋、国際通貨基金(IMF)から200トンの金を買い入れた。中国も外貨準備に占める金の比率を拡大。欧米もファンド筋を中心に信認低下が続くユーロやドルに代わる“通貨”として金を買い増している。
日本の歴史上、金流出が目立ったのは幕末の1850年代後半と昭和恐慌の1930年ごろ。幕末には日本の金の価値が銀比価で海外の3分の1であることに目を付けた欧米列強が安い銀と交換し大量の金を持ち去った。昭和恐慌の時は浜口雄幸内閣の金解禁による為替安定策がうまくいかず、円が高騰して金が流出した。いずれも経済が混乱し、日本の国力が低下した時期と重なる。
13世紀末、マルコ=ポーロの『東方見聞録』で金の豊富な“黄金の国”と紹介された日本。政治の混迷が続き、国内総生産(GDP)でまもなく中国に抜かれるかつての“黄金の国”が復活する日は来るのだろうか。(編集委員 浜部貴司)
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