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【社会】

はやぶさ帰還、宇宙探査に新領域 より遠い天体へ道開く

2010年6月14日 10時10分

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 ついに地球に帰還した探査機はやぶさ。小惑星からの試料採取に成功したかどうかはカプセルを開けるまで分からないが、世界で初めて小惑星への往復飛行を成し遂げたことで、日本の宇宙技術のレベルの高さを世界に示した。

 月以外の天体を調べて地球に戻った探査機は、太陽から放出された粒子を集めた「ジェネシス」と彗星(すいせい)のちりを回収した「スターダスト」の米国の2機だけ。ともに試料は持ち帰ったが天体には着陸はしていない。

 小惑星イトカワに舞い降りたはやぶさが地球に戻ったことで、日本は宇宙探査に新たな領域を開拓した。

 はやぶさは、本格的な惑星探査に必要なエンジン、航法、岩石採取などの技術に挑んだ。中でも、イオンエンジンが長い航行に耐えることを実証した意義は大きい。木星など、より遠い天体の探査に道を開く成果だ。

 科学プロジェクトとして、これまでにない盛り上がりも見せた。インターネット上には、はやぶさを応援するブログや掲示板が次々に出現。7年間の旅路を描いた映画が各地の科学館で上映され、多くの人が感激の涙を流した。

 相次ぐトラブルを乗り越えたドラマ性もあった。だが、ここまでの人気が出たのは、太陽系誕生の謎を追って冒険する姿が、人々の好奇心をかき立てたからではないか。未知の世界に挑む、という科学技術の本来の面白さをあらためて示した功績は大きい。

 日本初の人工衛星「おおすみ」が打ち上げられて40年。火星、月、小惑星と探査は広がってきた。はやぶさプロジェクト責任者の川口淳一郎・宇宙航空研究開発機構教授は「将来は探査機が太陽系を自由に行き来する『太陽系大航海時代』が来る」とみる。

 はやぶさで培った技術と経験をどう発展させるか。成果を次につなげる国としての戦略が求められる。 (科学部・榊原智康)

 【イトカワ】 地球と火星の周辺の軌道を回る小惑星。1998年、米マサチューセッツ工科大の研究チームが発見した。探査機はやぶさの探査目標に決まり、日本のロケット開発の父、故糸川英夫博士にちなんで命名された。はやぶさの観測で長さ約535メートル、幅200〜300メートルの落花生のような形であり、内部はがれきを寄せ集めたようにすかすかであることも判明した。数千万〜数億年前、大きな天体に別の天体が衝突し、壊れた破片が集まってできたとみられる。

(中日新聞)

 

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