「PERSONA〜Magic World〜」
第1話 転生
コツ…
暗い夜道、一人リュックを担いだ青年の靴がなる。
うつむくと片目を隠すその特徴的な髪型を垂らしながら、
何故、自分が此処を歩いているのか解らないまま。
そして自分が誰だったのか。
そんなことも曖昧な中、真っ暗な道の中をまるで自分の領域を進むかのごとく何処かへと歩く。
「(ぼくはなにをしているんだ?)」
"彼"の目の前に、唐突に、この世のものなのかわからない、虚ろな青い扉が現れたのはそんな疑問が出てきた時だった。
"彼"はその扉を見て混乱した、その扉のあり方…それもあるだろう、だが、最も驚いたのは自分がこの扉を知っていると言うことだった。
そして…
"彼"は迷うことなく扉の取っ手に手を掛け、ゆっくりと開けた。
その青い扉の中には、いつまでも上がって行くエレベーターの中だった。
だが、普通と違うのはちょっとしたホテルのリビングほどの広さに、
中央にテーブルとソファ、そして椅子が置いてあること…
「おまちしておりました。」
そこまで思考した時、甲高いだがかなり年のいった男の声がする、中央のソファに座っている老人から発せられたもののようだ。
「またもこうしてお会いできるとは思っても見ませんでした。」
老人は"彼"のことを知っているようで、まるでなにか懐かしいものを見るようにそして確かめるように"彼"を見た。
そこで"彼"は自分が何者なのか,いかなる存在なのかを老人に尋ねる。
「貴方様の御名前…フム、わからないと。当然ですな、今貴方様の魂は少々奇特な事になっておりますので…。
今,貴方様の魂は"ある者達"の未練により拘束されています,本来はそのまま魂が開放されるのを待つのでしょうが,
貴方様の持つ特別な力がまたもやある一つの奇跡を起こされました。
それは"可能性の創造"よく自分の体を確認なさってください。それで一つの謎は解決するはずです。」
そして,そこで悟った,自分は"彼"ではなく"彼女"なのだと。
記憶にある自分の身長は170ほどしかし155ほどだろうか,とにかくかなり低くなっている。
スタイルは中の上といったとこか,髪は肩ほどまであり前髪は変わっていない…いや分け方が逆になっているようである。
色は変わっていないかなり青みがつよい黒…紺色といっていいだろう。
服装は"彼"が通っていた学園の冬用の女子制服のシャツ・スカートにエメラルドグリーンのカーディガンに黒のハイニーソックス、
そして、胸元には大きな赤いリボンとMP3レコーダーそれが今の自分であった。
「御名前はいかがいたしましょう?」
そういわれてふと気が付く、今の自分は名前がわからないのだ。
少し時間をおいて考え、出てきた名前
「山…羽…美鶴…山羽美鶴(やまは みつる)」
そんな名前が出てきた。
この名前はふと出てきた3人の大事な女性の名前を組み合わせたものだ。どうやら自分は相当な女たらしだったようだ。
「これは、以前貴方様に書いていただいた契約書…そして名前とは魂を定義する物、
貴方様がその名前を名乗るのでしたらもう一度この契約書にご署名を願えないでしょうか。」
美鶴は言われるまま、羽ペンをとり,その契約書へ確かに,自らの名乗った名前"山羽美鶴"と書き込んだ。
「確かに…これでもう一度契約はなされました、私共が求めるものはただ一つ、今後の自らの行動に責任を持っていただきます。
それがいかなる結末を迎えようとも……
それから私共から貴方様へお渡しいたす物があります,エリザベス。」
その言葉に応じて、老人の隣にひっそりと立っていた青い服の女性…"エリザベス"は、
自らの傍らに置いていたスポーツバッグを持ち上げ美鶴の目の前に置いた。
「これは貴方様が以前使われていた物の一部になります。」
美鶴は開けてもいいのかエリザベスに視線で確認すると、変に重いバッグを開けた。
中には…
手作りのチョーカー
どのメーカーのものとも違うイヤホン
バイクのキー
ガスの無い100円ライター
まだ青いうちにもがれた柿の木の実
編み人形のストラップ
スポーツテープ
少女漫画の短編集
携帯電話
自分のものとは違う、何かのコンクールの受賞通知
自分ではない誰かに当てられた、子供が書いたと思われる寄せ書き
ビーズで作られた指輪
何かの切れ端を集めて作られた和風な巾着袋
自分当てではない福祉団体からの感謝状
どこかのバーのネームプレート
車のキー
此処ではないどこかの商店街が作ったグルメキング認定書
ボロボロのノート
焼け焦げたネジ
黄色の布地に黒の縁取りのマフラー
"S,E,E,S"と文字の入った腕章
そして、弾が入らない銃が入っていた。
一見ただのガラクタの山だが、美鶴にはその一つ一つがかけがえの無い何かとのつながりを確かにさせていた。
薄れた記憶の中でこの中にあるものだけは何れも捨てることの出来ないものだと感じていた。
「さぁ、このエレベーターが何処に止まるかそれはわかりません。ただ、貴方様と言う存在がその世界の物語を少し変えてしまうことでしょう、
ですが、どのように変わるかは貴方様の行動に全て左右されます。"契約"の方お忘れなきように。」
「それでは、止まります。」
エリザベスの声と同時に視界は光であふれ、次の瞬間
目が見えるようになったときには、美鶴の目の前には電気の落ちた暗い橋がそびえていた。
「!??!?」
美鶴の脳内に何か、ノイズが走った映像が流れる。
暗い橋、煙を上げ膝をつく機械仕掛けの乙女、それを見て走り寄る白い自分と、それを見る黒い自分。
ノイズと情報が脳内を侵し、犯し、冒す。
全身から汗が噴出す、そして目の前の橋では赤髪の少年とツインテールの少女、
メイド服の少女と、空を飛ぶ闇を纏った金髪の少女が何事かを叫びながら争っていた。
そして起こる吹雪と突風。
風と雪がぶつかり、光が世界を満たす。
そのありようは過去の戦いを髣髴とさせた、
「(かこのたたかい?)」
自分は今何を思った?過去に自分もこのような戦いを行ったのか?
自問自答の中も状況は移っていく、暗闇に包まれていた橋が光を取り戻す。
その瞬間、美鶴の体に目に見えない、だが、確実にそこにある異物が纏わり付いたのだ。
それは大気のように当然のようにこの世に充満し、次の瞬間には美鶴自身違和感は勘違いだったかのように感じられた。
だが、それは間違いなくある"結界"、そしてその力は、打ち合いに敗れたのか一糸纏わぬ姿になった金髪の少女へと襲い掛かる。
「!きゃんっ!!!」
先ほどの戦いの際の恐ろしげな言動とは打って変わった可愛らしい声をあげ結界の雷に打たれ少女は落下していく。
「(どうする…助けるのか?…どうやって?)」
反射的に持ち出した弾の込められない銃
「(こんなもの…で…?どうしろ…と…)」
又も入るノイズ、それは戦いの記憶。
この世界には無いであろう"影時間""タルタロス""シャドウ"
「あぁ…ああああ!!」
恐怖と苦痛と安らぎと共に思い出されるもの、今回は今持つ銃の使い方、何故使っていたのかまで断片ではあるが思い出した。
そして少女はというと、先ほどまで戦っていた赤毛の少年に助けられたようである。
「喧嘩か何かだったの?でも派手な喧嘩もあったものね"風"や"氷"を…撒き散らす…」
美鶴に又も、ノイズが走りかかる、だがそれは思い出してはいけないものの気がしたため思い出すのは止めておいた。
「私は風や氷になにかトラウマでもあるの?でもこの体なら平気な事のような…」
そして、その時が来た。
後書き
どうも、ファーザムです。
ネギま!×P3!いかがでしたでしょうか。
P3・・・ペルソナシリーズは少々専門用語が多く,わからない単語も出てくると想いますが,そんな言葉はその都度説明が入りますのでご了承ください。
表現などのあいまいさ、誤字脱字などが多々あるでしょうが、楽しんでいただけたらとおもっています。
「ここの表現はおかしい」ということがありましたらご指摘いただけると嬉しいです。
次回はとうとうペルソナの召還です。
きたろー改め山羽美鶴はネギま!の世界でどう立ち回るのでしょうか?
実はまだ決まっていません!(ぉぃ)
それでは2話で会いましょう