中国「世界の工場」に幕 労働力不足と賃上げ ルイス転換点に (1/3ページ)

2010.6.14 05:00

中国にあるホンダの自動車用キー工場でストを行う従業員に職場に復帰するよう呼びかけるマネジャー(手前)=12日、広東省中山市(ブルームバーグ)

中国にあるホンダの自動車用キー工場でストを行う従業員に職場に復帰するよう呼びかけるマネジャー(手前)=12日、広東省中山市(ブルームバーグ)【拡大】

 中国が「世界の工場」としての役割と決別するときがやってきた。余剰労働力が減少していることに加え、賃金が上昇したことによって、外国企業が生産拠点を設置しても採算がとれなくなる分岐点を迎える見通しになった。経済学者らは、世界の工場役が今後、インドやベトナムに移るとみている。

 ◆印・ベトナムに移行

 安価で豊富な労働力で経済成長を成し遂げた中国が「ルイス転換点」と呼ばれる指標に近づいているとの見方が、経済学者らの間で広がっている。この転換点を超えると、その国で製造した製品は価格競争力を失うといわれる。

 元シティグループ・アジア担当チーフエコノミストの黄益平・北京大学教授(経済学)は「21世紀に入ってからの最初の10年を、中国が世界の工場として急速に台頭した時期とみれば、ルイス転換点を超えた後はその反対の展開となりうる」と指摘。今後世界のメーカーはインドやベトナムなど、労働力の安い国に目を向けるようになるとの見方を示した。

 モルガン・スタンレーが日本貿易振興機構(ジェトロ)のデータに基づき算出した上海の最低賃金は月額141ドル(約1万2900円)だったのに対し、インドのムンバイは77ドル、ベトナムのハノイは74ドルだった。

 ホンダの中国工場でのストや、台湾の鴻海精密工業の中国子会社である富士康国際(フォックスコン)での100%賃上げは、ルイス転換点にさしかかった兆しといわれている。

 

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