中国「世界の工場」に幕 労働力不足と賃上げ ルイス転換点に (3/3ページ)

2010.6.14 05:00

中国にあるホンダの自動車用キー工場でストを行う従業員に職場に復帰するよう呼びかけるマネジャー(手前)=12日、広東省中山市(ブルームバーグ)

中国にあるホンダの自動車用キー工場でストを行う従業員に職場に復帰するよう呼びかけるマネジャー(手前)=12日、広東省中山市(ブルームバーグ)【拡大】

 ◆内陸部での求人増

 都市部の労働力不足には、中部と西部の発展が影響する。4兆元(約53兆円)規模の景気刺激策に支えられて建設ラッシュが進んだこと、銀行融資が過去最高を記録したことが、内陸部での就業機会を促進している。深セン市聚豊工芸品の営業部長は「内陸部での求人が増えたので、工員は妻子のもとを離れたがらない」と話した。

 国家統計局によると、中国沿岸部で働く人の数は、内陸部の賃金が上昇したことから、昨年880万人減少した。CICCの哈氏は沿岸部と内陸部の賃金格差が、5年前の15%から5%に縮小していると指摘した。

 国家統計局の盛来運・報道官は「沿岸部の賃金はさほど魅力的ではない。若い出稼ぎ労働者はよりよい労働条件と福利厚生を提供してくれる企業を求めている」と話した。(ブルームバーグ Kevin Hamlin)

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【用語解説】ルイス転換点

 1979年にノーベル経済学賞を受賞したイギリスの開発経済学者、アーサー・ルイスが提唱した概念で、農業部門の余剰労働力が底を突き、賃金増加、消費拡大、インフレ率上昇が進む時点を指す。ルイス転換点を超えると、製造業の競争力と成長のペースは落ちるといわれる。

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