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[18657] 【ネタ】暁の姫御子 (現実→ネギま!転生 原作知識なし 一応TS 百合)
Name: アスカ・なんとか◆b5dbe69c ID:685000c2
Date: 2010/05/27 10:39
前書き

始めまして、作者です。

 このSSは

・TS

・百合

・転生

・原作改変

・ご都合展開

・作者の自己満足

 等々があります。ダメな人はブラウザバック推奨。

 まぁ、いわゆる一つの平行世界ということでお茶を濁します。ご勘弁を。

 無問題な人は次を表示するよりどうぞ。

 感想ありがとうございます。参考にさせてもらいます。このSSは、唐突に終わりを迎えることがあるので、ご承知下さい。
 



[18657] 1話
Name: アスカ・なんとか◆b5dbe69c ID:685000c2
Date: 2010/06/13 22:18
 某年某月、麻帆良学園某所。



-----------------------------------------------------



 みなさんこんにちは。お姉ちゃん大好き、アスカです。
今日に至るまでに様々な出来事がありました。全部カットです。
 
 私には前世があります。正確には、前世のものと思われる記憶があります。真偽はともかく、多少は役に立ったので肯定的に捉えています。

 しかし今はそれ所ではありません。現在、隣の部屋で私の大好きなお姉ちゃん、アスナの記憶を封印しようとしているのです。麻帆良に来るまでにあった色々な事、とりわけガトーが逝ってしまったことが、アスナのトラウマになってしまいそうであり、それを危惧した周りの大人たち、特にタカミチが「全てを忘れて平穏な幸せを生きてほしい」みたいな感じで魔法世界に関するあれやこれやの記憶を封印することになったのです。もちろん私にも同様の処置が成されるでしょう。
大変好ましくない状況ですが、最低の悪手に思えないのも事実。「平穏な幸せ」は全面的に支持するし、私も欲しいです。とても欲しいです。
しかしながら、私たち双子の持つ事情を考えればそれはとても難しいことに思えます。遠くない未来、魔法に、そして危険に関わるようになってしまうでしょう。
そんな時に、全てを忘れてお姉ちゃんお姉ちゃん言ってるだけの私では、あっさり退場してしまうし、そうでなくてもアスナが怪我をしたりそれ以外に見舞われたりするのを防げないです。魔法に対抗するには、魔法が必要です。他の人に頼るだけでなく、私自身もアスナを護りたい。

 とは言うものの、これから起こる事を防ぐ手立てを知りません。
記憶の封印の手段について仮説を立ててみましょう。
記憶の封印て魔法でやるのかな?それってアスナに効くのだろうか。効いたとしても、全封印などということはないはず。だってそれは厳しすぎる。きっと、わりと細かい指定が可能なはず。でなければ危険だし。よし、一先ずその仮定で行こう。ご都合主義万歳。
では封印したい記憶とはどれか。んーーと、魔法関係は確実だし、であれば紅い翼の皆と会う前はもちろん、会ってからもその範囲だろう。特にガトー関連。
……全部じゃん。そもそも魔法世界出身だし。…え、とぉ。あっ、逆に封印しない記憶を指定するとか。
うん、わからん。
まぁ、これ以上はどうしようもないし、きっとこんな様なものだろう。そう信じよう。がんばれ私。

 さて、仮説(泣)が立ちました。
つまり、"人一人分の記憶をこれとこれ以外封印する"…みたいな。
かなり苦しいですが、これ以上どうしようもないのも事実です。
タカミチに私は嫌だと訴えても、たぶん悲しそうに「君たちの為なんだ」的なことを言うに決まってます。そういう覚悟で望んでいるでしょう。そんな人たちだからこそ、アスナはトラウマを負いそうなのですし。

 閑話休題

 この仮説通りであれば、私は対抗できるかもしれません。前世の記憶、つまり"人一人分の記憶"を盾にしてそれとさようならします。すると、あら不思議。周りには記憶封印が終わったように見えるのに、私ことアスカちゃんはバッチリ居残ります。素敵です。素晴らしいです。仮説の信憑性を除けば。
ただ、前提以外にも不安が一つ。
実際のところ、前世の記憶といっても、明確に別の人生ではありますが別の個人とは言えない気がしています。どちらも自分です。その上長い間ぼーーーっとしてたり、アスナにハグしたり、バカにバカって言ったりアホにアホっていったり、アスナにチューしたりしているうちに、自意識の境界が曖昧になり混ざってしまいました。"私"は"俺"であり"俺"は"私"でもあるのです。そう、今更ですが私は元男。手術したとかそういう事ではないです。名前はもう思い出せません。
そんな私も今では立派な幼女。
はい。要するに私の持っている記憶は"二人分"ではなく"一人分プラスα"という状態なのです。不安です。著しく不安です。


「あぁっ、どうしよぅ…」


やっぱダメかもしれない。


「…どうしたんですか、姫様」

「あ」


…タカミチ襲来。幾分お疲れ気味のご様子。一応首を横に。ふりふり。


「そう、ですか…」


暗いです。cryになりそうな勢いです。泣きたいのはこっちもだよ。タイムリミット、かな。


「…こちらへ、どうぞ」

「アスナは?」


封印処置についても知りたいけど、言わないでしょう。それを抜いても双子の片割れのこと。普通に心配です。


「別のお部屋で、お休みになっています」


まぁ、封印済みなんでしょう。身の安全についても、今更疑うこともない、かな。
タカミチに手を引かれて部屋を移る私。
あぁ、もう本当に時間がない。…覚悟を決めよう。やるしかない。他にできることもない。今から私は"俺"になる。"俺"の分の記憶を反芻して、"俺"という自意識を確立する。ついでに"俺"とのお別れも。

「…さぁ、ここへ立ってください」

部屋の中心に魔法陣、そこに立たされる"俺"。部屋には何人かの魔法使い。おかしな頭の学園長もいる。


「眼を閉じて…ください」


タカミチが言う。
…大丈夫、きっと上手くいく。ここに居るのは間違いなく"俺"だ。ならば、封印されるのも"俺"だ。自己暗示を掛けていく。確固たる"俺"を確立させる。
呪文が聞こえる。意味はよく分からない。
魔法を知らなかった"俺"。生まれて、生きて、生きて、そして死んだ。
何かが光って眩しい。
だいじょうぶ。封印てことは死ぬわけではないさ。
そう、ただいつまでかは分からないけど。
胸の辺りと、頭に違和感。
うん。


 さよーなら  あすか







[18657] 2話
Name: アスカ・なんとか◆b5dbe69c ID:685000c2
Date: 2010/06/13 22:18
カーテンの隙間から射す陽の光。顔に当たって、沈んでいた意識が浮かび上がってくる。


「ん」


重いまぶたを薄く開ける。


「ここ、は…」


どこだろう。家、先生の家、だ。せんせい…たかはた先生。高畑・T・タカミチ…タカ、ミチ。…?


「え、と」


どうして先生の家にいるんだっけ。
昨日は、……どこかで、何かをしたんだ。そう、それで先生についてきて…何か?何かってそれは、記憶。私の、記憶。
私。アスカ…アスカ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア。長い。長い? 何…あぁ、前世の感覚でか。ぜんせ、前の、生。前の世界。そうだ、まほーとせんそう。魔法世界、大戦。皆と、みんな…て誰…わかんない。とにかく、皆と私たち。私、アスカ、双子で妹。それとお姉ちゃん あすな アスナ   あ


「アスナッ!」


一息に上体を起こす。どこっ、アスナ!ぐるぐる。


「あぁ…」


同じベッドの隣に発見。ふーーーっと長く息を吐く。うっ。急に動きすぎて気持ち悪い、かも。とりあえずは。


「よかった…」


よね?うん。私の大好きなお姉ちゃん、私はアスナを護るために残ったのだ。‥ナニから残ったのかは、よくわかんないけど。とにかく、これで私のやりたいことがやれる、はず。
私のやりたいこと。幸せに生きる。アスナを護る。強くなる。
皆が言ったから。私が望むから。…危ない世界は、確かにあるから。



-----------------------------------------------------



みなさんおはようございます。お姉ちゃんを愛してる、アスカです。
実は、今日から明日香です。神楽坂 明日香。お姉ちゃんは、アスナ。今日からは、神楽坂 明日菜。いい名前だね。短くて、覚えやすくて可愛い。何より噛まないのが良い。別に私が噛むわけではない。ない。明日菜はもちろん噛まない。じゃあ誰が噛むのかというと、…あの、あれ。一般論的に、だよ。
うん。
とにもかくにも、只今学園長室に来ています。

高畑先生に連れられ、明日菜と二人。早朝のお散歩は、とても穏やかで。私の究極技法、「右手に明日菜、左手にお菓子、ほーしん!」放心。ぼへーーーーっ。まーべらす。行き先が、学園長室でなければ完璧でした。まぁ、この歳で、といっても今何歳かよくわかんないですが、幼女である今の段階で完璧を求めても仕方ないでしょう。
で。
えーと、明日菜。我が半身であるところの彼女。お姉ちゃんにとっての究極技法は、「右手にお菓子、左手に明日香、ほーしん!」で、あるのでしょう。その筈です。放心レベルは、私よりも上ですし。ま、今の彼女は「きゅーきょく、ぎほー?それは、甘いの?」てなもんですが。そんなあなたも、ベリーキュート。

なぁんて。
学園長(おじいちゃん)が話しているのを半分ほど聞き流しながら、幸せを反芻している私。
どうも、私たち姉妹は今後この麻帆良にある学校に通うことになるようです。へー。ん?


「「がっこー?」」


YES! 明日菜とユニゾンッ!
さすが双子。私の方の中身はだいぶオカシイ自覚はありますが、今までずーっと一緒にいたのです。そこそこ揃います。そこそこ。
がっこー、について高畑先生が説明しているのを傍目に、双子の神秘に思いを馳せる。
ふと、隣を見れば、無表情ながらも真面目に話を聞いている明日菜。抱きしめたい。じーっ。
やべっ。
明日菜に怒られた。つないでる手をきゅっ、て。きゅっ(遊ぶのは、あと)。
わかったよっ!これが終わったら遊びに行くんだねっ!
勝手な解釈だし、たぶん伝えたいことも微妙に違う。それはわかるけれど、あえて完全理解はしない。しようとしない。そのほうが楽しいから。
こくこく、ふんふん。
首振り、了解、みたいな。
どーやら、先生の家で暫くは暮らすようです。いーんでない?そこら辺は、何もわからないし。


「ふむ。まぁ、そんなもんじゃろ」


あ、終わりかな。おじいちゃんの話は、意味のないことばかりで長いから、ほとんど聞いてなかったよ。


「では、明日菜ちゃんはタカミチくんと先に行って少し待っててくれるかの?」

「ん」


よーし。帰ったら、いや、帰りながら明日菜と遊ぶぞー!


「明日香ちゃんは、わしともう少しお話じゃ」

「う、ん?」


え。なんで。このタイミングで二人を分ける意味がわかんない。いや。心当たりはあるけど。理屈じゃない、本能なんだ。明日菜と一緒がいい!


「ほら、明日菜君。すぐそこで座って待ってよう」

「え」


ちょ。待とうよ、そこは。


「あすか」


あ。明日菜が私を心配してる。無表情だけど。合わさったお互いの視線が、相手の身を案じていることを伝えている。無表情だけど。私は、少し頬が紅いかもしれないけど。


「…うん。だいじょーぶ」


何が大丈夫かはわかんないけど。きっと、たいしたことないよ。


「ん。まってる」

「うん」


ああ。だから私はあなたが大好きなんだ。苦手なくせに、そうやって言葉で伝えてくれる。やべ。顔が崩れる。にへっ。

バタン

行っちゃった。……。


「ふぉっふぉっふぉっ。大丈夫じゃよ。そんなに長いお話じゃないんじゃ」

「なに」


ぶすー。不機嫌アピール。皆にも、私のほうが表情が動くとは言われていました。本当は、もっと動くけど。動くはず。


「うむ。今朝のことなんじゃがの。タカミチくんから報告があったんじゃ」


今朝。先生。…おー。やっぱ、あれか。これはどうなんだろう。まずいのかな。案外、正直に嘘つけば平気だと思うんだけどな。矛盾してないよ。自分に正直に、相手に嘘を教える。そんな感じ。


「明日香ちゃんは、魔法が使えるのかの?」


そう。実は今朝、高畑先生に魔法バレした。いや、隠さなきゃいけないような気はしてたんだけど、そこの基準がよく分からなくて。もう少し勉強してからかなー。とか思ってたんです。

では今朝のこと。冒頭から少しして、私が一応落ち着いた辺りから。



-----------------------------------------------------



どうも、作者です。

まずは、感想について。

感謝、そして陳謝します。参考にさせてもらいます。

お話について。

見切り発車しました。先が見えてない。

実は、打ち切りフラグが立っていることを一つ。前書きの時点で。

TSについては、あってもなくても、になりましたが。てきとうに入れました。作者はTSが大好きです。

百合が大好きです。

日常ゆるゆる、とか書きたいです。話がのんびりになります。山なし、落ちなし。

ではこのへんで。

お読み下さりありがとうございました。




[18657] 3話
Name: アスカ・なんとか◆b5dbe69c ID:685000c2
Date: 2010/06/13 22:20
さて。
一度深呼吸して、アスナをハグハグして。もう一度深呼吸。
すー、はー。ぎゅ。すー、はー。
そして、体を起こして。アスナ分を補給して、すっかり蕩けそう、もとい、落ち着いた私。落ち着いたんだよ。興奮はしてない。してない。


「はふー」


幸せ吐息。荒い鼻息ではない。

何時くらいかな、今。アスナが起きるまで暇だ。起こすつもりはないし、二度寝する気もおきない。
そうだ。こんな時こそ権謀術数を張り巡らす、あるいは計画するための好機。
とはいえ、今の私では知っていることが少なすぎる。
えと。基本的に、「魔法は一般に秘するべき」とかそういうことだったはず。でも、魔法と一般の違いもいまいち分からないし、どこまで秘密なのかその基準も分からない。
そもそも私は魔法を知っているけど、魔法を使えるわけではない。少なくとも、私が知っている魔法は使えない。魔力とか、気とかが扱えるだけだ。
こう、体に纏ったり。一部に集めたり。
こねこね。ぐにぐに。
うーん。この状態って、魔法知らない人が見たらどうなるんだろう。一応、見えるといえば見えるわけだけど。魔力。気、は微妙。
よし。
分からないことは後回しだ。これは勉強してからだね。
次。
強くなる。幸せのため。アスナを護るため。アスナに護られるのもステキ。
今できるのは、魔力や気の制御だけ。でも、これが上手になるだけでもだいぶ強くなれる。ふん。
ずおー。
この状態。今の私でも、壁くらいなら壊せる。はず。
他の、魔法とか、闘い方だとかは誰かに教わるしかないかな。


「明日菜君、明日香君、起きてるかい。今日は、学園長…の……とこ………」

「あ」


あ。やっちゃった。只今私の周りでは、魔力と気がぐるぐるなってます。


「え…それ、魔力…それに気…?…明日香、くん…きみ、記憶が?」

「え?きおく?」


なに。そんなに頭の弱い子だと思われてるのかな。おかしいぞ。


「あれ?でも、それ」

「うん?あ、そう。魔力と気。あれ、高畑先生って魔法使い?」

「え!?いや…あれぇ??」


何だろう。とにかく、高畑先生は魔力と気を知っているみたい。先生、魔法教えてくれるかな。あ。


「ん…」

「アスナ。おはよう」


プリンセス御起床。よし、あなたのお胸にダーイ―――


「あ、あ、明日香君?その、魔法とか気とかは、あ、明日菜君には秘密に」

「ブ?どーして?」


秘密も何も、私ができることはアスナもできる。正直意味が分からない。


「いや…えーと。ほら…お菓子、あげるから」

「…本当?」


は?それは―――


「ホント!ホント!約束するよ!」

「わかった。やくそく」


―――吝かではない。甘いもの大好きです。


「うー。おはよう、あすか」

「うん。おはよう」


しかしどういうことだろう。アスナに秘密、だなんて。記憶…。少し、確かめてみよう。いや。アスナの頭が弱いとか、そういうことではなく。一応ね。一応。
先生とアスナが挨拶しているうちに、そそっと彼女に寄って。内緒話な小声で。


「アスナ。男は黙ってー?」

「なに?私、女、だよ」


必殺技ーて、あれ?…そんな、アスナ。そんなに頭が…


「ア、アレだよ、ほら。誰かは思い出せないけど、バカが言ってた」


頭をなでつつ。


「しらない。答えは?」

「あっ、そ、そっかー。わ、私も分からなくてさ。あはは」


そ、そんな!アスナ…。……いや?"知らない"?"思い出せない"ではなく?記憶、がない。先生も言ってた……記憶……あ。
記憶封印っ!
お、お、思い出したあぁぁあァァアッッ!!
危なっ!?そ、そうだった、そうだった。危ないよ、もっとしっかりやっとけよ!前世の私っ!なんだよ、私の記憶まで虫食いじゃないか。しかもかなり。その上、前世の記憶も少し残ってる。ほんの少し。
いやいや、先生に問い詰められる前に気づけて良かった。アスナ、起きてくれてありがとう。お姉ちゃんはやっぱり私を護ってくれるのね!
しかし、これではアスナに相談できない。彼女に知らせてしまったり、他の人に覚えていることを知られると、再び記憶封印されかねない。それはまずい。
い、今の状況は、高畑先生に私が「魔力」「気」「魔法使い」を知っていることがバレた。……だけ、と言えるのでは?それ以外は、記憶封印をした人たちが用意した状況と変わらないはず。誤魔化せるのでは…?というか、それ以外知らないと言えば、「魔力」と「気」と、あと「かんかほー」を知っているだけの一般人、で通せる。かも。
い、行けんじゃね?も、もうこれは、記憶封印をした人たち、たぶんそのことを知っているっぽい高畑先生たちの判断に乗っかろう!そ、そうしよう。
大丈夫。今までだって、わりと場に流されて生きてきたわけだし。いけるいける。頑張れ私。超頑張れ。
お。


「二人とも。朝ごはんができているよ」

「「はーい」」


とりあえずそんな感じで。アスナだって、言ってしまえば「使えるけど、知らない」状態だし。


「今日は、学園長の所に行くからね。」

「「んー」」


さあ。ご飯を食べよう。あ、お菓子ももらわなきゃ。



----------------------------------------------------



けんぼーじゅつすー(笑)
そして、今。学園長とお話タイム。「明日香ちゃんは、魔法が使えるのかの?」だって。あれ?ということは。


「おじいちゃんも魔法使いなの?」


高畑先生と。おそらく、そうなのだろう。あー。麻帆良ってそういう街、なのかな?


「ふぉ?いや、そうじゃな。そうなんじゃよ。わし、魔法使いなんじゃ。それで、明日香ちゃんもそうなのかの?」

「うーーーん」


知っているはずのくせに。楽しい頭のくせに。


「んん?そのお返事じゃ、ちょーっと、わかんないのじゃがの」

「あ、うん。私、魔法使えないよ」


これは本当。私的には。


「ふむ?しかし、魔力と気を知っておるのじゃろ?」


来た。ここが正念場。たぶん。


「うん。私は、魔力と気が使えるだけ。あと、これ」


  1      2        3     ダー
右手に気 左手に魔力 心を無にして 合成


「ふぉ!?か、咸卦法!?いや、これもそうじゃった。あ、明日香ちゃん?もう、OKじゃよ。」

「ん」


どうでしょう。


「うむ。他にはできないんじゃな?」

「うん」

「ふぉっふぉっふぉっ。それ以外に知っていることはあるかの?」

「んー。明日菜もできるよ」

「ふぉっふぉっふぉっ。そうじゃの。しかし、明日菜ちゃんはそれを忘れておるからのぅ」

「……頭が弱いから?」


ゴメンッッ!!明日菜っ!大丈夫!明日菜は賢い子だって私は知っているから!


「ぶふぉっ!?い、いや。ともかくじゃ。忘れている、と言うことが重要なのじゃよ」

「なんで?」


まぁ、そのための記憶封印だろう。


「さっきの、咸卦法なんじゃがの?失敗すると、爆発してしまうんじゃよ」

「え、うそ」


え?


「本当じゃ。じゃから、やり方を忘れてしまっている明日菜ちゃんがやろうとすると……」

「え、え?や、嫌だよ?あれ?」

「大丈夫じゃ。明日菜ちゃんは忘れておるのじゃからな。じゃから、明日菜ちゃんにも、他の皆にも、魔法の事は秘密じゃよ?」

「あ、うん。わかった」


あ、危ない。危うく我が半身を爆死させるところだったとは…!!


「うむ。良いお返事じゃ。では、もうよいぞ。明日菜ちゃんが待っておるしの」

「うん。あの、ありがとう。教えてくれて」

「ふぉっふぉっふぉっ。良いのじゃよ。当然のことじゃ」

「ん。じゃあね」


あー良かった。爆発させなくて。あと、やり過ごせた、のかな?
しかしこれからどうしよう。何か、魔法教えてー、とか言えない感じになっちゃったよ。ま、まぁできることをしていよう。今のところは。
とりあえずは。
明日菜をぎゅーっとしないと。
びっくりしたせいで、心臓がまだバクバクなってるよ。


「明日菜ーっ」


お話終わったよー。













































『咸卦法が使える一般人、ですか?』

『うむ。実際そんなようなもんじゃし、タカミチくんからも秘密にするよう言っておけば、まぁ大丈夫じゃろ』

『しかし、明日菜君には話してしまうのでは?』

『いや。明日菜ちゃんには絶対に話さん』

『なぜです?』

『咸卦法。失敗したら爆発すると教えたら、顔が真っ青になっておった』

『…信じたんですか?』

『間違いなく、じゃ。タカミチくんからもそれを言っておくんじゃぞ。それで完璧じゃ』

『学園長…………』



----------------------------------------------------



どうも、作者です。

感想ありがとうございます。ぶちこみました。

お話について。

基本的にご都合です。ゆるいです。

主人公はバカレッドの双子です。

正直、魔法の言葉です。

では、このへんで。

お読み下さりありがとうございました。








[18657] 4話
Name: アスカ・なんとか◆b5dbe69c ID:685000c2
Date: 2010/06/13 22:20
みなさんこんにちは。神楽坂のできる方、明日香です。
小学生やってます。

いろいろあって、数ヶ月、もしくは数年。まぁ、そこらへんの時間をあまり細かく明言してしまうと、イタダケナイことになると言う複雑な大人の事情があるらしいです。

とにかく、いくらか時間が経過して。

神楽坂のバカな方、明日菜について。
……これは他称であって、私に言わせれば"可愛い方"になるのですが。
そんな彼女も時間と共に、よく笑い、よく怒り、よく遊び、よく叫ぶようになりました。怒っているというよりは、照れているという感じですが。いわゆる一つの「ツンデレ」です。もう少しすれば、具体的には中学2年の3学期とかになれば、「ツンデレ・オブ・ツンデレ」になるでしょう。
ともだちも何人かできました。
金髪の委員長とか、京都弁のおっとりさんとか。
とてもいいことです。
毎日楽しそうに、幸せそうに暮らしています。

そして、どうも我が姉。高畑先生への好意が変わってきているようです。どっかのアホも「ラヴ臭が」とか言ってましたし。
とても…いい、こと……です…………ちっ。
まぁ、先生なら私も許せないこともないです。一応。きっと。

その高畑先生。
気がついたらいつの間にか、ダンディーなおじ様に進化していました。タバコが似合ってます。急に老けすぎです。
いや、タバコについては明日菜だったか私だったかが、お願いしたようなしていないような気がするのですが。
一応、私たち姉妹の保護者というか保護責任者というか。そんなような立場であるところの彼ですが、どうにも忙しいみたいでしょっちゅう出張とやらに行きます。
聞いてみたところ、どうも魔法関係らしいです。働き盛りなのはいいのですが、いない間明日菜が寂しがるので、いっそ怪我させてやろうとか思うこともあります。思うだけですが。嫉妬とかじゃないです。本当だよ?

ついでに私。
できる方とはいえ、体育でスーパーマンな以外ではテストで平均点をわずかに上回る程度です。きっと中学生になったら、平均点に届かなくなります。
おかしい。
前世の記憶とかあるのに。いらない記憶ばっかり残っていて、ほとんど消えちゃってるわけですけど。
まぁ、いいや。
魔法について。
この間高畑先生に「魔法教えてー」て言ったら、「うん。それ、むり」て言われました。
怒ろうとしたんだけど、よく見たら先生少し泣きそうになってて、おろおろしてたらその場に現れた明日菜に私が怒られました。
理不尽。
そんなような訳で、私の魔法とか気とかは制御技術ばっかり上達しています。大容量と精密さを兼ね備えています。速くて硬くて強い、素人戦士です。なんじゃそら。
他にもいろいろ考え中です。秘密ですが。



そんなこんなで、学校からの帰り道なう。
私と、明日菜と、木乃香の三人で歩いてます。
木乃香は寮暮らし。双子は高畑先生の家。
麻帆良の寮はなかなかに豪華で、よく明日菜と一緒に遊びに行きます。
そういえば。


「ちょっと前にさぁ、高畑先生が言ってたんだけど――」

「え!なになに!?」

「あははー。明日菜食い付きすぎやえー。」


ホントに。びっくりしちゃった。


「う、うるさいわね。で、明日香!先生なんて言ってたの?」

「うん。それがさ、「明日香君。キミ達ももうすぐ中学生だし、そろそろ寮で暮らすようにした方がいいんじゃないかな」というようなことを、ね」

「え!?」

「あ、ほんまにー?そしたら、ウチと一緒の部屋やったらええなぁ」

「あ、そっか。それ採用。木乃香と一緒の部屋とかいいなー」


そうしたら、毎日のご飯がとても楽しみになる。そして毎日料理を教わることができる。
木乃香は料理上手だし、教えるのも上手いと思う。私も彼女に師事するようになって、少しは料理できるようになったし。
いやー。夢が広がりんぐですなー。


「よよよ、よくないわよっ!いや、べ、別に木乃香と一緒の部屋が嫌なんじゃなくて!たた、高畑先生と、その…あれよ…」

「あー。センセのことやねー。うーん。そーやなぁ、確かに離れてまうのはなぁ」


ぬぬぬ……。このおませさんめ。いや、そろそろそういう年齢でもあるのかな。
くそぅ、私的には先生はお父さんとかお兄さんとか、そんな感じなのに。明日菜はどこで道を間違えたのか。いやいや、私は明日菜のことなら応援するよ?こればっかりは本当に。
ん、待てよ…。


「でもさ、明日菜。よく考えてみてよ」

「な、何よ」

「中学生にもなって異性と一つ屋根の下。それって、もう家族みたいなものじゃない?」

「か、家族!?それって、ふ、ふふふふ、ふう――」

「「いやいやいやいや」」

「あれ?」

「ちがうちがう。いろいろ飛ばしてもうてるよー」

「そうじゃなくて。私が言ってるのは、お父さんと娘とか、お兄ちゃんと妹みたいな家族だよ」


まったく明日菜はイノシシさんだなー。こんな風になるなんて、思ってもみなかったよ。そんなあなたもプリティー。


「な、なんだ。その家族か。いやでも、私がなりたいのはお嫁さんであって……て!なな、何言わせんのよっ!!」

「…明日菜が自分で言ったんやえー。でも、ほうかー。住む家が別々になるっていうんは、ええかも知れへんねー」

「で、でも、一緒にいられる時間が減っちゃうじゃない」

「大丈夫。中等部なら高畑先生の授業もあるし、なんだったら家まで遊びに行けばいいよ」

「うふふ。独身男性の家に遊びに行く女子とか、アヤシイ響きやねぇ。なんや、ドキドキしてきたえー」

「うわ、本当だ。だ、だいじょうぶ。その時は、私ちゃんとお留守番する…から……」


いや、監視ぐらいは必要か?うん、必要だろう。
明日菜のためにも二人きりにするのは仕方ないとはいえ、何があるか分からないもんね。邪魔するわけじゃないし。しないってば。


「ほ、本当?で、でもなぁ……。あ、そしたら私も料理とかした方がいいかな。二人みたいに」

「いや、それは大丈夫」


そう、大丈夫。なぜなら。


「そこらへんは、将来的にも私がお世話するから」

「うわ、なんやこの意気込み」


おだまり。これは大事なことなんだよ。
明日菜のことは応援するけれど。明日菜の幸せは、私の幸せだけれども。それでも、譲れないものというのがあるのです。


「え、えー?でも、先生に喜んでもらいたいし、私がお世話したいし…」

「その気持ちは分かるし、すごい大事だけども。そんなことしたら私が明日菜と一緒にいられないじゃんかっ!」


そう!これこそが私の至上命題っ!
なにも24時間365日一緒にいたいわけではない。今だって、例えば木乃香のお料理教室は私一人で受けてるし。他にも姉妹で別々の用事があったりとか、学校の行事とか、結構離れる機会っていうのはそこら中に転がっているもの。
それでもっ!
もし、明日菜が料理スキルを手に入れ。通い妻としての適正を獲得してしまったら!そんなの私には耐えられ――


「は?そんなことないでしょ。普通に一緒にいることになるわよ。双子なんだし」

「ですよねー!いやいや、明日菜ならそういってくれると思ってたっ!私も明日菜のこと、大好きだよっ!」

「は!?べ、別にそんなこと言ってないでしょ!何言っちゃってんのよ!!」

「ふふふ。二人は仲良しさんやなー」

「あはははーっ!うん。でも私たち木乃香のことも大好きだよ!」

「おおきに。ウチも二人のこと大好きやえー。」

「ちょっとちょっとっ!ふふ、二人してなに言ってんのよ!いや、そりゃ嫌いじゃないけど……」

「そうだ!私が明日菜に料理教えるよっ。あ、そしたら木乃香今日お邪魔してもいい?」

「もちろん、ええよー」

「……え?いや、教わるなら私も木乃香に教わるわよ。そのほうが確実だし」

「うふふ。ウチはどっちでもええよー」

「やだ!私が明日菜に教えたいっ!」

「なに子供みたいなこと言ってんのよ!私だって、より上手な人に教わりたいわよ!!」

「なー。それで、今日はどないするん?」

「ふふふ。確かに我が姉の言うことも尤もだよ。しかし!私のほうが木乃香よりも明日菜のことをより深く知っているのは明らか!
 つまり!私のほうが、より明日菜の先生として相応しいのだよっ!!」

「な、なるほど!!そいうことだったのね!!」

「そう!!!私はいつだって明日菜のためを思って言っているの!!!だから信じてっ!!!私が明日菜を立派な料理人にしてあげるからっ!!」

「わかったわ!!!私、あんたを信じて待ってるっ!!!!」

「明日菜っ!!!!」

「明日香っ!!!!」


ああっ!!これぞ美しき姉妹愛!!私たちはずっと一緒。これからも二人、お互いを支えあって――


「「痛いっ!!」」

「なー、もう少し静かにしよなー?」

「「ハイ、スイマセンデシタ」」


木乃香さん。金槌ツッコミはホントに勘弁してください。スゴイ音した。しかも二刀流。双子二人が泣いています。


「なー。それで、今日はどないするん?」

「「ハイ、オジャマサセテイタダキマス」」

「ほんなら、お買い物していこなー」

「「ハイ、オトモサセテイタダキマス」」


そんな、初等部生の夏の日。



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どうも、作者です。

感想ありがとうございます。

お話について。

一言。作者が変態なので、作中の人物が変態に見えてもそれは全面的に作者のせいです。陳謝。

投稿ペースについて。

ごらんの有様です。時間をかけても長くなりはしません。

ていうか、時間かけてもいません。土下座。

ではこのへんで。

お読み下さりありがとうございました。







[18657] 5話
Name: アスカ・なんとか◆b5dbe69c ID:685000c2
Date: 2010/06/13 22:21
みなさんこんにちは。高畑さん家の家事担当、明日香です。
今日は雪広邸にお泊りすることになりました。
それというのも昼間、明日菜とあやかでいつも通り口論(たまに戦闘)という名のじゃれあいをして遊んでいたのですが、何をどうしてそうなったかは知りませんが気がついたら「では一度私の実家にご招待いたしますわっ!」「上等よ!そういうことなら明日は休日だし、早速今日ご招待されてやるわよっ!」となっていました。
わからない。
何故、国語の授業の話からそうなったのか。
とにもかくにも、私は近くで二人の友情を聞き流していたのですが、お宅訪問の流れをバッチリ聞き取り「私も行く!」と叫ぶに至りました。
しかしながらその後も続く口論に、これは私一人では危ないぞ、ということに気付き。そばにいたこのかを巻き込みました。
他にも何人か誘ったのですが、皆都合がつかず。ていうかこれ以上増えると書ききr

もとい。
現在4人で移動中。移動はもちろん黒くて大きくて硬いやつ。車ですね、分かります。
そんな車内での会話の中心はやはり、明日菜とあやか。これもやっぱり何がどうしてそうなったのか分かりませんが、お互いの好みについてややケンカ腰で話しています。


「ふん!オジコンのあなたに言われたくありませんわ!」

「なな、何よ!あんたこそショタコンのくせに!」

「うふふ。なんや、どっちもどっちな気ぃがするえ。明日香はそんなんないんか?」

「いやー、私はそんな変な嗜好は持ち合わせてないかな」

「ちょっと!シスコンのあなたにも言われる筋合いはなくってよ!」

「なにさ。シスコンのどこが悪いんだ!私が明日菜を好きなことにおかしいところなど何もないっ!」


そうさ!シスコンを誇りこそすれ悪く言われる必要なんかこれっぽっちもないね!
ていうか何でこっちにまで飛び火するのさ。……あれ。このかがこっちに振ったからじゃね?…ストッパー、のはずじゃ…。
ま、まぁいいや。


「なにを開き直っていますの!それでしたら私だって、可愛い男の子を愛でることの何がおかしいのですか!」

「ちょ、ちょっと明日香。あ、あんまりそういう……はぁ?あやか、あんた何言ってんの?それなら私だって、高畑先生のことを、その、すー、すすすす 好きなことのなにがおかしいのよ!」

「あはは。皆して開き直ってもうてるよ。三人とも、アレみたいやえ?」

「「「アレって何よ!!」」」

「あははははっ」


まったく。このかはまったく。
それにしても、あやかのこれは過去のことがトラウマみたいになっているのが基のはず。元からじゃない、よね。
明日菜にしたってそうだ。そうのはず。思い出せなくなってるけど、そんなような過去が基になっている。
では、私は?
私も過去のトラウマ的な理由なのだろうか。でも家族を好きなのは普通のことだ。周りにいる皆だって、私ほどじゃなくても自分の家族のことが大好きだし。…裕菜は同士だけど。
いや。
よーく考えてみればそうなのかもしれない。
昔は周りにいた人間の内、心を許せたのは明日菜だけだったし。その明日菜にしたって、会えるのはたまにだけ。そんな環境じゃ、双子の片割れに依存気味になるのも分かろうというもの。
うん。
ま、トラウマだろうがなんだろうが、今私が明日菜のことを好きなことには変わりないし。過去のことなんか関係ないよ。
あれ?
それじゃあ、同じ環境にいた明日菜がシスコンになってないのは何でだろう…………?いやいや。明日菜はツンデレの恥ずかしがりだから、表に出さないだけで本当はシスコンのはず。そうでないにしても、家族として、またはそれ以上に少し依存気味くらいに好きでいてくれているはず。はず。
だって。冷静に考えれば、私くらいいつも「好き好き大好きー」と言ってこられたら鬱陶しいもの。……自分に傷つけられた……。
とにかく!
私と明日菜はラブラブなんだよ!あ、やべ。体温あがっちった。

そうこうしている内になにやら巨大なお家が。
え、これ?


「ようこそ。我が家へ」

「「でかっ」」

「ほほー。おっきいなぁ」


本当に大きい。家屋があの、あれ。学校の体育館くらい。


「ふふん。それにしてもそちらのお二人。特にアレな方。もう少し品というものをお持ちになってはいかがかしら」

「なによ。せっかく私があんたを褒めてやるような心持ちになってたのに」

「あなたに褒めてなどもらわなくて結構ですわ!そもそも――」


明日菜。そこで反応したら自分でアレなことを認めちゃうことになるよ。言わないけど。
そうだ。このかにもう一度よく言っておかなくちゃ。


「このかこのか。学校でも言ったと思うけどさ、私一人じゃあの二人のじゃれあいを止められないんだよ」

「あー、そんなん言うてたなぁ。うん。それで、どないしたらええの?」

「うん、つまりさ。私とこのかの二人で、明日菜とあやかのボケにツッコミを入れるんだよ!」

「なるほど。ウチらがツッコミ、あっちの二人がボケ。そういう役回りで二人を抑えてこぉ言うわけやね?」

「そういうこと。やっぱり、ボケに対しては――」

「「誰がボケよ!?」ですの!?」

「明日菜といいんちょがボケやぁて。明日香が」

「ちょ、このか!?」


だからこのかさん、何で煽るようなことを…


「そもそも明日香さん。あなたこそボケなのではなくて?」

「そうよ!明日香だってどっちかと言えばボケよ。私と双子なんだし」

「うふふ。まぁ、ウチはツッコミで決定やね」


失礼な。そしてお姉ちゃん。双子は理由にはならないし、なったら自分もボケだと認める発言に…。
あとこのか。金槌はやめてってば。

























そんなこんなで星空瞬く時間帯。
あの後、あれやこれや遊びまわりました。基本的にはボケ二人が元気に騒いで、ツッコミ二人がうふふあはは、てしていました。断固として二人ずつです。


「いやー。それにしてもアレは傑作だったよね」

「あー、あれなぁ。確かにアレは傑作やったな」

「まぁ、確かに。アレは傑作でしたわ」

「まぁね。私もアレは傑作だったと思うわ」


そんな感じでほんわかしてます。もうすぐご飯だし、その後は何するのかな。ゲームとかかな?


「さて。お湯の準備が整ったようですし、お夕食の前に一緒に頂きましょうか」

「わっ、ホント?あの大きい方よね?うわ、なんかドキドキしてきたわ、私」

「ええなぁ。皆でお風呂とか、お泊りの醍醐味やねー」

「え゛…」


忘れてた……このかの言う通り、お泊りといえば一緒にお風呂だよ。いや、他にももちろんあるけれども。えっと、こういう時はどうすればいいんだっけ……。あ、あの日とか。いやバカか。まだ来てないよ。バレバレだよ。


「どうしたんですの?明日香さん。具合でも悪いんですの?」

「え、そ、そう!ちょ、ちょっとおなかが…」

「うそ、大丈夫?そんなに悪いんなら先に休む?」


あぁ!明日菜の愛で私の良心がっ!


「いやいやー、そんなことないと思うえ。さっきまであない元気やったし。そもそも、明日香が体調崩したら明日菜が気づかないはずないやろ?」


こぉぉのぉぉかぁぁっ!!
もう本当に今日のこのかはダメだなっ!余計なことばっかり言って。二人でしっかりツッコミとしてやってこうって言ったのに!まったく、これだから関西人は!あ、これは偏見か。
では。
まったく、これだから近衛の人は!


「そ、それもそうね。じゃあどうしたのよ明日香?」

「…まさか…お風呂が嫌、などとは言いませんわよね?」

「んー、それもどうやろなー。ウチんとこ遊びに来たときは一応入っとったし。何かと理由つけて一人で。なぁ、明日菜。家ではお風呂、一緒に入ってるんか?」

「ちょっとこのか!?ホントなに今日!お願いだからもう静かにしててっ!」


信じらんない!なにこいつ!何がしたいんだよ。……いや、何もないのか?ちっ!頭の切れる天然とか、最悪だなっ!!人選ミスったね!まったく。


「え?いや、それは当然…あれ?言われてみると私、明日香と一緒にお風呂入ったことないかも……?」

「へぇ?それはそれは。シスコンの明日香さんが明日菜さんとお風呂に入ったことがない、と。どのような理由があるのでしょうねぇ?」

「うふふ。おなかがたるんでもうてるー、とかやったら一緒に入るんは恥ずかしい、言うのはわかるえ?」

「ちがっ!た、たるんでなんかないよ!見られる分には全然問題ないよ!あ、いや、だから……」


つまり見るのが恥ずかしい。いたたまれない。でもそんなこと言ったらおかしいわけで…私たちは女同士だし、姉妹だし。
なんだこれ。
たぶん、よく分かんないけど前世のせい。この感じでは前世は男だったのだろう。1話を見れば分かる。なんのこっちゃ。


「それなら、いい機会ですし、一緒に入ってしまいましょう。明日菜さん、そちらをお願いいたしますわ」

「そうね。ほら、行こう?明日香。でも、何で今まで一緒に入ったことないんだろう」

「ウチが知っとる限りでは、料理がーとか掃除がーとか片付けがーとか言うて時間ずらしてたえ?うわ、明日香、顔真っ赤やよー?」

「いや、だから、ちょ、離して!明日菜、あやか!?」


何だこのハイスペック。二人してまったく抜け出せない。
ダメだ、こうなったら……どうしよう。はっ!そうだ!もうこれはサッと入って、パッと出てくるしかない!そして交差する瞬間に目を瞑れば完璧だ!そうと決まれば…


「わかったっ、入る!い、一緒にね!ほ、ほら。お先っ!」

「「「早っ」」」


スポポーンと一気に服を脱ぎ。浴室へ突撃。引き戸を開いた先には――


「で、でかい……」


一家庭に備えるレベルを超えているでしょこれ。あ、大きいほうとか言ってたっけ。中までは見なかったからなぁ。
正面奥の壁は一面ガラス張り。そこに沿うように八畳ほどの長方形の浴槽。洗い場はその倍ほどの広さ。まさに、大浴場と呼ぶに相応しい。窓から見える景色もステキ。
…ハッ!
のんびり眺めている場合じゃなかった!びっくりしてついやってしまった。
まぁいい。今のでこの浴室内はほぼ把握した。よし!急いで洗って、そしたらもう出よう!
うおー!


「くそっ、髪長い。切ろうかなー?でも切ったら明日菜とおそろいにできないし…」

「うわー!無駄にでっかいわねっ。あ、明日香早いわよー」

「無駄とはなんですの、無駄とは。この浴室は――」

「あれ!?もも、もう来ちゃったの!?」

「あはは。何言うてんの明日香ー。一緒に入りに来たんやし当然やえ?」


バカな!私の完璧な計画が!こんなタイミングで来られたら、目瞑りっぱなしになってしまう!な、何がいけなったんだ……


「明日香ー、ウチが背中流したるえ?」

「あ!そ、それわたしがやりたいん…だけど……」

「――そもそも我が家に――」

「あ!あ、え。いいいや、だいじょーぶ!ほ、ほら!今、洗い終わるから!!」


ズバババッ。全速力で体をウォッシュ。気とか使ったかもしれない。全身ヒリヒリする。


「うわ!速いなー、明日菜もあんなんできるー?」

「ん、んー。私もあそこまではできない、と思う」

「じゃ、じゃあ、お先です…」

「――未来に翔ける…あら、明日香さん。もうお入りに?しっかりと洗いましたの?」

「それがなー、なんやすごい速さで洗っててほとんど泡しか見えなかったえ?」

「なんですのそれ。相変わらず意味の分からない行動を……」

「私もとっとと洗っちゃおー」


……て、シーッッット!!!湯船に入っちゃたよ!あ、いいお湯。…でなくて!
なんだこれなんだこれなんだこれ。
し、失敗した!いや、見られている状況で湯船に入らず出るというのは、よく考えたら無理か?ま、まぁいい。結果オーライだよ。問題はこの後どうするか、ということ。幸いにしてここまでで得た視覚情報は、湯につかる時のふちの確認のみ。ここからなら、一切目を開くことなく浴室を脱出することも可能だ!
後はタイミング。
いつならば不自然ではないか。……やはりここは入れ替わりの時しかないだろう。「失礼」「あ、じゃあ私お先に」みたいな。さっき似たようなやり取りした気もするけど置いておく。
よし、今度こそ完璧だよ。落ち着いて実行すれば何も問題はない。大丈夫、私はやればできる子。
ほら、どうやら三人とも湯船に向かってきているみたい。深呼吸して…。


「失礼いたしますわ」

「あ、じy、いひゃん!」

「うわー、明日香も肌綺麗やなー。それにたるみとは違うええ感じの弾力が…」

「このかだって十分綺麗でしょ。それにしても広いわね。4人で入っても全然余裕じゃない。ていうか何してんのよ。あれ、でもホント何かしらこの感触…」

「あ、ちょ、や、む無理無理!ふ、二人とも離れてよ!こんなに広っ、いん!か、らはっ、は、くすぐったいよっ!」

「ちょっと何してますの二人とも。あら、本当。何でしょうか、この、プニプニというか、グニグニというか…」


そら筋肉だよバカヤロウ共!
強くなりたいならトレーニングは欠かせない、ということで。私は明日菜と体型は一緒だけど、体重は結構重くなってる。
て、そうじゃなくて!


「ね、ちょっと、まじ、あは、あはははははっ!ひゃ、ひゃめへ!むり、も、あんっ!」

「うふふふ。なんやウチ、ちょうドキドキしてきたえ」

「わ、私も、なんかイケナイ事してるみたいな気が…」

「ふ、二人とも何を言っていますの?ま、まぁ私も少し胸の高鳴りが…」


な、何。どこ行っちゃってんの!?だからお風呂一緒なんて嫌だったんだ!……あれ、こんな理由だったっけ。
と、とにかく!もーやばい。い、意識が――


「お、お姉ひゃん――も、らめぇ――」

「あ、あれ!?明日香!?だ、大丈夫っ!?」

「え?ど、どうしちゃったんですの!?どうすればいいんですの!?誰かっ、誰か来てくださいませーっ!!」

「あははは、全身真っ赤っかやね。これは、明日香のぼせてるなぁ。うふふ、明日香も結構アホやねー」


……キコエテルヨコノヤロウ……



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どうも、作者です。
感想ありがとうございます。励みになります。
後書きって毎回書く必要ないよなー、と思いましたので、次回からそのようにします。
このかについて。
「木乃香」と変換するのが大変すぎて今回から「このか」に。今後もそのような人物が出てくると思います。
お話について。
明日菜のフラグですが、明日香と矢印が双方向になったとたんXXXになる気しかしません。作者はXXXは書けないのでしばらくパスです。
あと、ごめん。「らめぇ」て言わせたかったんだ。
会話だけで話を構成したい。楽だから。当然短くなる。
ではこのへんで。
お読み下さりありがとうございました。



[18657] 6話
Name: アスカ・なんとか◆b5dbe69c ID:685000c2
Date: 2010/05/25 11:03
みなさんこんにちは。麻帆良の最後の常識、千雨です。小学生です。

今日は最近できた、といっても月単位で時間が経ってるけど、まぁとにかく、新しくできた友達について考えていきたいと思います。

で。
先に私の自己紹介を一言ですると、「常識の尊さを知っている人」となる。
もちろん他の人に自己紹介するときにそんなことを言ったら非常識なので、そういう時は無難に当たり障りなく普通の自己紹介をやっている。

そして件の友達。彼女に始めてあった時、イコール彼女が始めてこの学校にきた時の自己紹介が以下。


「神楽坂明日香です。好きなものは明日菜。嫌いなものは明日菜の敵。よろしくです」


きつい。
明日菜というのは彼女の双子の姉で、その自己紹介と比べれば愛想はいいものの近づき難さは同等かそれ以上。愛想がいいのに近づき難いという、言葉にすると矛盾する状態を地でいくその振る舞い。私はこのとき、こいつとは関わることはないな、と確信していた。

が。
どういうわけか最近、彼女と私は友達と呼べるほどに関わりあっている。まぁ、どうっていうか、彼女の方から話しかけてきたのがきっかけだけど。
しかしながら彼女。話してみれば割と常識的。姉のほうと比べるといくらか落ち着きもあるし、勉強もできる。容姿が少し珍しいけど、一応常識の範囲内だしこの際それくらいの見た目はどうでもいい。
どうでもいい、で済ませられないのがその運動能力。姉妹揃って超人的とも言える身体能力を発揮してくれる。正直困る。でももっと困るのは、そんな彼女を私は結構嫌いではない、ということ。
しかしながら第一印象はアレだし、そのファーストインパクトから時間が経っていることを踏まえて、この間聞いてみました。


「なぁ、今、自己紹介するとしたらどんな感じ?」

「んー?んと……。神楽坂明日香です。好きなものは明日菜と明日菜の大切な人と甘いもの。嫌いなものは……今は、特に……あ、明日菜の身の危険!…で、急に何?そういえば――」


だとさ。
うん。

とにかく、私は彼女と友達になった。

彼女、友達はそこそこいるように見える。でもその友達は彼女の姉の友達とイコールだ。そしてその関係を言葉にすれば、「姉の友達は、妹の友達」となる。
しかし私は違う。
といっても、私と神楽坂(姉)が友達ではないということはなく、今ではすっかり友達してる。
要するに、私は明日香と先に仲良くなったということだ。
初めはこのことに何の違和感も感じなかったけど、仲良くなり時間も経つと徐々に先に述べた言葉が見えてきて。
私は少し、そのことが気になるようになった。

























今日も彼女は、姉の元を離れてふらっとこちらにやってきた。……変な懐かれかたをしているような感じ。あぁ、気になる。もういっそ聞いてみてしまおう。


「なぁ、神楽坂。聞きたいことがあるんだけど」

「んー?」


仲良くなると愛想が悪くなるってどうなんだよ。ま、こいつの愛想のいい状態ってのは何か壁を感じるわけだけど。でも、猫かぶっててもそうでなくても姉関係の本音は駄々漏れってのは……いや、いいか。


「なーに?」

「あ、いや。なんて言うか、お前が仲いい奴って姉のほうの仲いい奴だろ?」

「え、んー。そうかな?」

「そうなの」

「うー?」

「…例えばだ。無駄に世話焼きの奴とか、無駄に天然な奴とか、無駄に行動力ある奴とか…」

「あー、なるほど。でもそんなこと言ったら千雨は無駄に普通の奴、になるけど」

「何が無駄だっ!普通に無駄もくそもあるかっ!!」


まったく失礼な奴だな!それならてめぇはアレだ。無駄にシスコン。…意味分からんし。


「ていうか!話の焦点はそこじゃねぇんだよっ!」

「でもさ――」

「でもじゃねぇ!そうじゃなくてっ!…つまり、私はお前と先に近づいたよなって話だよ」


一瞬で話が脱線するのは、むしろこいつの方が多いよな。てか、こいつが私のとこに来なければもう少し平穏な学校生活が送れるんだけどな……。


「あー、確かにそうだけどさ。それがどうかしたの?」

「だからな?私の知っている限りでは、お前の方が先に―なんていうのは私だけなんだ。今後どうなるかは知らんけど」

「ふんふん」

「で!……それで…な、何でお前は私に、その………話しかけようと思ったんだ?」


くそっ。こういう話、というかあまり深く人と関わるのは疲れる。大体なんで私がここまで言ってやらなきゃなんねぇんだ。てめぇももう少し考えて喋れよ。まぁ、聞こうとしたのは私だけど。


「ん、なんとなく」

「は?」

「だから、なんとなくだよ。なんとなく仲良くなれそうかな、て」

「…なんだそれ。適当かよ」


…なんだよ。別に何でもよかったってことかよ。


「はぁ…いや、わかった。もう――」

「それ以上の理由を強いてあげるならー……明日菜に似てるから、かな」

「はぁ?アレに似てるぅ!?」

「アレってなんだよ!失礼だなっ!ていうか何でそんな嫌そうなんだよ!重ね重ね失礼だなっ!!」

「あ、いや。わるい…でも」


それはちょっとなぁ…。だって神楽坂のバカな方、だもんなぁ。
いや、本人にしたら褒めてるのかもしれないけどさ。ちょっと伝わんねぇよなぁ。


「言っとくけど中身じゃなくて、見た目の話だからね」

「見た目?…どこが。いや、マジで」


何言っちゃってんの?
いやいや、マジに。


「ふっふっふっ。ちょっとそのメガネを貸してごらん」

「…まぁ、いいけど。すぐ返せよ…ほら」


本気で言ってんのか、こいつ?
作者が見分けれてないとかでなく?
…もとい。
冗談とかでなく?
まぁメガネがあれば見分けるくらいは……あれ?


「ぬっふっふっ。どうだい千雨君。メガネをかけて目つきを悪くした私。見覚えがあるんじゃないかな?…鏡とかで」

「お、お、おぉ!わりと似てる、かも。いやいや、全然気づかなかったよ!」


あれ、結構似てるかもしれない。これはつまり、神楽坂(姉)にも似てるということになるよな。
でも私、学校でメガネはずさないんだけどな。
いつ気づいたんだろ?


「ふははは!そうだろうそうだろう!私の明日菜センサーを甘く見てもらっては困るっ!!」

「え?」


……何センサーだって?…嫌だ、何かこいつと友達でいることに言い知れない危機感が…。


「だから、明日菜センサー。もしくは明日菜レーダー」

「・・・それは?」

「ふふん。もちろん明日菜を捕捉するための機能だよっ!」


あ、ダメだこいつ。もうどうしようもない。
いくつか他称があるけど、今日からこいつは「神楽坂のアブナイ方」だな。もしくは変態。


「…………………」

「あ、なんだよー感激して声も出ないの?」

「そ、うだな。ははは…」


感激ではなく、ドン引き。


「んん?ホントにー?あ!言っとくけど私が千雨に話しかけようと思ったのは、本当になんとなくだからね!」

「いや、もうまったく分からねぇよ」


目の前の人がオカシイということ以外は。


「つまりー、千雨が千雨だから。なんとなく仲良くなれそうかな、て」

「……そう、かよ」


なんだよ…急に恥ずかしいこというなよ。そんなだからバカと一括りにされるんだよ。
まったく。


「あれ。言ってることが分かんなくなってきた。まぁいいや。それより今日のお昼さぁ――」


……まったく。

























「そういえば、この間パソコンいじってたらさ」

「なんだよ」

「私の明日菜探知機が反応してさ」

「へぇ…?」

「ネットアイドルってやつでさ」

「……うん」

「ちう、て人なんだけど。千雨知らない?」

「いいい、いや知らないなぁ!」

「そっかー。ぽいんだけどなー」

「!!!」


ここここの、無駄にシスコンめっ!!!










[18657] 閑話の1
Name: アスカ・なんとか◆b5dbe69c ID:685000c2
Date: 2010/05/25 12:07
有言実行してはみたけどあまりのダメさに絶望。な、おまけ




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ある日……


「魔法教えて!」

「うむ、ダメじゃ」

「な、なんで!?」

「ふむ。まぁ、わし自身忙しい、というのもあるのじゃがの。それ以上にのう……」

「な、なに?あ、わ、私ちゃんと秘密にできるよ?」

「ほーう?」

「あ!信じてない!ちゃ、ちゃんとできるよっ!だから――」

「明日菜ちゃんにも、かの?」

「え!あ、えと、だ、大丈夫だいじょーぶ!あは、あははは…」

「信用ならんのう……。うむ、ダメじゃ」

「えー!大丈夫だってばー!ちゃんと人がいる時は使わないからっ!」

「明日菜ちゃんがいる時は?」

「う、うん。だから、それは……」

「うむ、ダメじゃ」

「もー、けち。まったく、高畑先生も教えてくれないし……」

「ふぉっふぉっふぉっ。タカミチくんにも聞いてみたのかの?」

「うん。昨日、朝ごはん食べた後に聞いてみたんだけど……」

「ダメ、と言われたんじゃの?」

「そう。それで、なんでー!て聞いてみようと思ったんだけど……よく見たら、なんか泣きそうになってて……。ちょっとかわいそうになったから聞かないことにしたの。それで、おじいちゃんに頼もうと思って今日来たんだけど…」

「そ、そうじゃったのか…。まぁ、タカミチくんに関しては、そっとしておいてあげてくれんかの?」

「うん…?……わかった」

「うむ、ありがとうの。彼もいろいろ大変なんじゃよ…」

「ふーん。あ、そうだ。教えるのが無理なら、何か本とかないかな?自分で勉強できるような」

「ふむ。いや、それもダメじゃの」

「えー?ちゃんと、持ち出したりとかしないよ?」

「うむ。その約束は守れるのじゃろうがの。しかし、自分で勉強、といっても結局明日菜ちゃんと一緒じゃろ?」

「そ、そんなことないよー!も、もう、部屋から出さないよ!げんじゅーな保管だよ!」

「そもそも、明日香ちゃんと明日菜ちゃんは一緒の部屋じゃろ?」

「う…」

「うむ、ダメじゃの」

「うーーーっ!」

「かわいく唸ってもダメじゃ」

「ふ、ふんだっ!いいもんね!こ、このソラマメ頭ああああぁぁぁぁァーーー……」

「………………あまり、そういう暴言は感心せんの。あ、もう聞こえんか……」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三人称を練習しようとしたけどなんとなくアレなことは分かっていた。ので、おまけの2



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ONE DAY……

高畑さん家の双子の部屋。
今は明日香が一人でなにやら呟きながら変な踊りをしている。


「…黄昏の姫御子…んー。
 黄昏よりも昏きもの 血のな――」


おっと。
メダなパニではなく、魔法の練習をしているようだ。
魔法といっても、彼女は魔法の何たるかを知らないので単純に魔力操作の練習をしているだけだが。
呟きはきっとノリ。

しかし、そんなふざけた詠唱を聞きとがめた人がいた。


「明日香。なに?また漫画?」

「明日菜!違うよ、小説のほうだよ」

「知らないわよ」


明日菜。明日香のお姉ちゃん。
彼女には魔法は秘密のはずだけど、明日香はその境界線がアヤフヤ。多少開き直っている。


「魔王を倒すんだよ?」

「いやいいけど。それより、いつそんなの見てるの?そんな時間ない気がするんだけど」

「あ、あははは!け、結構暇あるよ!?い、いつの間にかだよ!」


明日香は前世持ちである。無駄な記憶ばかり残っているので、よくアホに見える。お姉ちゃんは、私がしっかりしないと、とか思っている。






この二人。
ここ、麻帆良で暮らし始めてからしばらく経つと、随分と明るくなった。
バカを露呈したと見る人もいる。事情を知らない人は、ほとんどそう。

友達も少なからずできたし、元気に遊びまわっている。


「あ、明日菜!今日の夕飯さ、デザートに少しケーキ作ってみようと思うんだ」

「え!本当?でも材料あるの?」

「うん。あ、ないんだよ。だからさ、一緒に買いに行こう?」

「あ、行く行く!待って、準備するから!」


二人の友達はそのほとんどが共通の友達であるし、妹は姉にべったりなので級友らと遊ぶときはほぼ二人一緒である。
双子なだけあって二人の見た目はそっくりであるし、髪型もおそろいだ。


「私もまだだから、急がなくていいよ。ケーキ、どれくらい作る?」

「えーと。こ、これくらい?」

「あははは!この、食いしんぼ姉めっ」

「なな、何よ!明日香だって甘いの好きでしょ!?」


普通ならなかなか見分けがつかないのだが、二人の周りにいる人たちは彼女らを間違えない。

明るくなったとは言え、二人でいるときの方がより自然体でいられるのは、まぁ当然だろう。

姉は妹のことが好きだから、他の人といるときよりも若干素直だし。

妹は姉のことが好きで、明日菜のそばにいるとほんのりと頬が紅い。


「よし。行くわよ明日香。いざ、ケーキへ!」

「あ、待ってよ!急がなくていいって言ったのに。このいやしんぼ姉め」

「何言ってんのよ。あんたこそ、そんな大きなカバン持っちゃって。この、この…食いしんぼ妹め」

「……うん。いや、材料って結構かさばるんだよ!別にそんなに大きくは…」


曰く。

ツンデレのほうが明日菜。

シスコンのほうが明日香。

わりと酷いと思われる。でも、後者の方は自覚もあるし開き直ってるから誰も遠慮しない。

それをそばで聞いてる前者は、その場で即ツンデレる。決して認めないけど。


「「行ってきまーす!」」


そんな二人のある日の、黄昏時。








[18657] 7話
Name: アスカ・なんとか◆b5dbe69c ID:685000c2
Date: 2010/05/29 10:17
みなさんおはようございます。神楽坂の一人部屋の方、明日香です。中学生になりました。

細かいタイミングの明言は避けるとして、私と明日菜は高畑先生の家を出て寮暮らしを始めました。

明日菜はこのかと同室。

私は一人部屋。

学園長のひげを引っこ抜きに行こうとしたら、明日菜とこのかに止められました。なぜ。

今は、如何に誰にも知られずに奴のひげを引っこ抜くかを思案しています。

とにかく。
私たちは中学生になりました。
クラスが分かれました。
明日菜はA組。私はB組。
じじぃの首の上のソラマメを剥いてやろうとしたら、友達皆に止められました。でも振り切りました。
しかし、学園長室のドアを破壊したところで高畑先生に止められて断念しました。どうして。

今は、如何に衆目にさらしながら奴のソラマメを剥くかを思案しています。

それは置いといて。
私は引っ切り無しにA組に遊びに行きます。
この間は、「あれ、何で出てくの?授業始まるよ?」とA組の人に言われました。

B組の人はなかなか落ち着きがあります。皆仲もいいし、半分A組にいるような私も問題なく馴染めています。
それに比べてA組は酷い。
とても愉快な人たちがとても騒がしく生息しています。
しかし、そんな中に私は見つけてしまいました。
鳴滝風香、史伽姉妹。
双子で同じクラス。姉妹で同室。
ソラマメを■しに行こうとしたけど、誰にも止められませんでした。
だけど、学園長室を破壊したところでターゲットが出かけていていないことを知りました。おのれ。

今は、暗黒面に堕ちないよう明日菜に慰めてもらっています。もしくは監視。

まぁ。
それで、私は鳴滝姉妹に接触を試みたのですが。これが二人ともとても楽しい人で。
姉の風香は元気ないたずらっ子。
妹の史伽は姉と比べれば大人しいいたずらっ子。
そんな二人と私は今では仲良し。A組で姉妹と同室の長瀬楓とも仲良くなりつつ、いろいろ教わりつつ。あ、楓は秘密にしているようだけどどう見ても忍者。
そこらへんは、千雨と一緒に不審な目を向けている。
さらに、いたずら好きの同士であるらしい春日美空とも仲良くなりつつ。美空はものぐさシスターでした。

今は、風香、史伽、美空の協力の下、如何にエグイ罠を仕掛けられるか検討中。もちろん、学園長室に。

うん。
そういえばこの学校、というかこの町というか、とにかくここでは誰もが何らかの部活動や研究会に所属することが義務付けられている。といってもその活動内容や規模、むしろ全てにおいてほぼ自由なので選択肢は多い。

そんなわけで我が姉は美術部一択。なぜなら顧問が高畑先生だから。
そうなると私も美術部一択。明日菜がいるから。

というのは表向きで、実はもう一つ地下活動の非公認クラブに所属している。ていうか私が創始者。
その名も、「神楽坂明日菜を見守る会」という。私が会長。会員は副会長が一人いるだけ。会員数二人。
一応顧問もいるけど、非公認なので関係ない。
活動内容は、明日菜の動向を見守る事とそれを報告しあう事。活動場所や活動時間は決まっておらず、会員が出会えばその場で報告会となる。
副会長は有能だけど度々いなくなるから困る。
まぁ、これについては追々。

そんなこんなで今日の部活動。あっと美術室。
今日のテーマは花瓶に活けられたお花さん。
明日菜は高畑先生がいなくても真面目にやるし、私は明日菜がいれば真面目にやる。つまり二人とも取り組みは真面目。私は、同時に見守る会の活動もこなしているわけだけど。

しかしこの姉妹まるで美術力がない。
私は本当は姉を書きたいのだけど、酷いことになるので我慢している。


「うーむ、難しい。てか動いてないかな?あの花」

「え、うそ!…あ゛。いつの間にか向きがずれちゃってるわ」

「ねぇ明日菜。もう少しモデルを見ながら書いたほうがいいと思うよ?」

「そ、それもそうね。でも難しいのよ、これ」


まったく持ってその通り。二人とも花瓶なのか壷なのか、花なのか鼻なのか分からない絵になっている。

ちなみに私は左利き。サウスポー。
明日菜が右利きだからお揃いがよかったんだけど、気がついた時には手遅れだった。右も使えるように訓練中である。
ついでに明日菜にも左が使えるように訓練してもらっている。一緒にお揃いにするためなのだが、彼女にはてきとうに理由をでっち上げてやってもらっている。
まぁ二人とも並外れた運動神経を持っているので、他の人よりも逆手逆足は使えていたし、訓練を始めてからはどんどん両利き染みてきている。両手が使えることと、手先の器用さはまったく別だということが、現在進行形で証明されているけど。
でも、実は。
お揃いがどうとかよりも、二人で何かを一緒にやるというのが楽しくて仕方ない。えへへ。


「そーいえば、明日菜。今日部屋行っていい?」

「うん。別にいいけど」


別に色っぽい話ではない。このかもいるし。
今日は、このか先生によるお料理教室なのだ。生徒は私だけ。明日菜は料理はあきらめたらしい。
ついでに私は一人部屋になってから、ますます主婦力が上昇している。目指せ明日菜のお嫁さん。そして明日菜は私の嫁。


「このかは何て?」

「あ、えーと。材料買いに行くから5時に校門、だって」

「今日は何作るって?」

「うーん、お店で材料見て決めるんじゃないかな」


何がいいかな。お肉が安ければ肉じゃがとか、新じゃがで。豚肉なら豚汁とかいいかも。あぁ、でもそんなに時間かけられないしシンプルに焼き魚とかの方がいいかも。


「ね、ねぇ、明日香?」

「なーに」

「ちゅ、中間テストってどうだった?」

「あー、あれね。ダメダメ。全滅だった!」

「そ、そっか!なるほどねー!」

「なにさ。そう言う明日菜はどうだったのさ」

「え!?いや、わ、私は…そう!私もちょっとダメだったわ!」

「なーんだ。そっかー」


ううむ。これはもう遺伝ですな。


「あーあ!せめて平均点に届けばなー!このままだと真っ赤になっちゃうよ」

「え!!あれ、私もう真っ赤なのに……」

「ねー明日菜、期末は一緒に勉強しよ?…て、どうしたの?何か言った?」

「あ!ううん!なんでもない!き、期末ね!一緒にね!ついでに誰かに教わったほうがいいかしら!」


確かに。それもこのか先生にお願いしてみようかな。
ていうか怪しいぞ我が姉。そういえば、小学校のときから散々だったからなぁ…。
よし、見守る会副会長と連絡を取ろう。大体、双子にそうそう隠し事ができると思わないことだね。


「あ!またあの花動いてるよ。ねぇ、もう窓……閉めたら暑いんだよね…どうしよ」

「え゛、うそ。またずれちゃってるわ」

「………ねぇ、明日菜」

「なに?あーもうダメかしらこれ」

「ダメっていうか、あの…モデルだけじゃなくて、手元もよく見たほうがいいと思うよ?」

「え?」

「ピカソみたくなってるよ。絵」

「絵?えぇ絵ええぇぇ!!?」

「一輪挿しなのに花束みたいな、もしくは大量に花弁があるみたいな……」

「いいい、いつのまに!?な、何がいけなかったのかしら」

「いや、何って言うか……ね、明日菜。二人で無機物画からやり直そっか」


そうしよう。静物画なのは当然として、もっと単純なカタチのもので練習しないと。ボールとか。


「ねぇ、明日香」

「なーに」

「あんたのも、なんか…どれが茎なのかどれが花弁なのかそもそも植物なのか分からなくなってるわよ」


………芸術は、爆発だ。









[18657] 8話
Name: アスカ・なんとか◆b5dbe69c ID:685000c2
Date: 2010/06/13 22:22
みなさんこんにちは。遠恋中(違)の明日香です。

――離れている時間が、二人の絆をより深く、より強くしてくれる――

と、そう信じています。
まぁ、クラスが分かれて寮の部屋も別になったって話ですけど。部屋が分かれても、かなりの頻度でお泊まりしているので実質ほとんど同室みたいなものなのですが。

クラスについて。
B組については特に言うこともないのですが、気になるのはA組。個性豊かというか、色物集団というか。
中でも特に気になるのが、鳴滝風香、史伽姉妹。双子で同じクラスで同室だから。それ以上の理由はないけれど、これ以上なんていらない。どういうことだ学園長。殺意の波動に目覚めそうだぜ。
二人とはもう友達です。

気になるとかなんとか言ってるけど、もちろん私の頭と心の真ん中には常に明日菜がいるわけですけど。

それを踏まえて次に目を引く人。エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。そして彼女と仲良しの絡繰茶々丸。
ふと見ると二人とも大体一緒にいます。エヴァちゃんの方はたまに、もしくはよく、サボっているようだけど茶々丸の方は真面目に学業に勤しんでいるように見えます。

二人とも囲碁部と茶道部に所属しており、見た目に沿わない和風です。
見た目に沿わない、というのも、エヴァちゃんは西洋人形と見紛うばかりの可愛さ(サイズ的にも容姿的にも)だし、いや130cmはあるだろうけどぎゅってしたくて仕方ないんです。
茶々丸の方は…あれは……ロボ。たぶん。いやいや、見た目の話だけどね?美人だからありだと思います。可愛いは正義。

ともあれ、気になるなら話しかけよう!ということでチャレンジしてみました。

あえなく撃沈。

エヴァちゃんは見た目に反して、その口から出てくる言葉は辛辣。その上妙に達観していると言うか、なんと言うか。素っ気なく冷たくあしらわれてしまいました。

茶々丸は…あれは……ロボ。たぶん。いやいや、えーと、美人だからありだと思います。うん。まぁ、最初はちょっと驚いたけど付き合おうとしていれば、彼女のいいところも見えてきてまったく気にならなくなりました。

千雨に確認したところ、やはり茶々丸はロボに見えるとのこと。
長谷川千雨という人間は常識を愛しており、自分の生活に非常識が入ってくることを嫌っています。
その反面、というかだからこそ不可思議に対して他の人よりも敏感になっています。
ということで、茶々丸はロボ説が有力なものとなりました。そういえば彼女は、超包子で働く傍ら超鈴音と葉加瀬聡美の天才コンビと何やらしている様子。
まぁいいや。

とにかく、素っ気ない態度をとってはいるけど話しかければ答えてはくれる。
しつこくアタックを続ければ仲良くなれるのでは?ということで、今日も突撃っ!

























「しつこい」


一蹴。
さすがに泣きそうなんだけど。何も悪いことしてないのに無償に何かに謝りたくなってくるんですけど。
ちなみに只今昼休み。人のいない場所のベンチに向かうエヴァ茶々コンビ。それを追う私。
あれ、何か本当にイケナイ事している気になってきた。

せっかく明日菜との昼食をパスしてきたのに。これはもう、怒ってしまってもいいかも分からんねっ!


「なんだよう。そんなに冷たくしなくてもいいだろー。あ、そういえば二人のお弁当って茶々丸が作ってるんでしょ?」

「はい、そうです。あ、マスター危な――」

「ふびゃっ!」

「「・・・・・・」」


小さな段差に足を引っ掛けて転ぶエヴァちゃん。
あー、茶々丸はエヴァちゃんをマスターと呼ぶ。なんでも、「私はマスターの従者ですから」だそうだ。従者ってなんだ。メイドか。美人メイドとかエヴァちゃんもやるな!


「うぅ、このクソ段差め!」


口が悪い。最初に知ったときは見た目とのギャップに心底驚いた。


「大丈夫ですか、マスター」

「あ、あはははは。もう、エヴァちゃんは可愛いなぁー」


バシバシと肩を叩、こうとしたら――


――ビシッ――


「「あ」」

「……お?」


あ、が幼女とロボの主従コンビ。お、が私。
いやいや、なんだこれ?肩を叩く前に何かに手を叩かれた感じだ…。でも何も見えない。そう、まるで。


「クソッ、何で魔法障壁が…貴様!どんな叩き方するつもりだったんだ!」

「まほう?」

「マスター。口がすべってます」

「うるさいぞ茶々丸!余計な突っ込みは要らん!」


まるで、魔法、のような。


「……ねぇ、エヴァちゃん。魔法しょーへきって何?障壁…バリア的な?」

「ふん、知らんな。寝ぼけているんじゃないか神楽坂明日香。あと、ちゃんて言うなと言ってるだろ!」

「マスター。苦しいです」

「黙ってろボケロボ!お前最近、本当アレだな!?」


どういうことなんだろう。この二人は魔法を知っているのだろうか。知っているとして、何者なのだろうか。私はどうするべきなのだろうか。


「あの、エヴァちゃんは魔法使い、なの?」

「ふん!だったらどうだと言うのだ」

「え?」

「私が魔法使いだったとして、何が言いたい。どうしたいと言うのだ神楽坂明日香」

「えっと…」


私がどうしたいか?…私のしたいこと……――


「ちっ。おい、茶々丸。飯だ」

「はい、マスター。しかしよろしいのですか?」

「いいも何もない。大体、毎日毎日しつこいんだよ」

「大人気ないですね」

「貴様…このアホロボがッ!」

「わ、私!!…わたし…私に魔法を教えてください!!」

「…はぁぁぁ?」


私のしたいことは昔から変わらない。
明日菜と一緒にいたい。明日菜を護りたい。明日菜と……。


「私、魔法を知ってます。あ、使えはしないんですけど。あと、魔法世界を知っています。知ってるだけですけど。それで、私強くなりたいんです。お願いします!魔法を教えてください!」

「ふん、分からんな。まったく分からん。何故貴様が魔法を知っているのかも、何故魔法世界を知っているのかも、何故強くなりたいのかも、全部分からん。そんな願いなど聞く気もしないな」

「あ、わ、私、魔力とか気とかが扱えるんです。扱えるだけですけど。それで、高畑先生と学園長が魔法を知っているみたいだったから聞いてみたんです。だから、魔法とか魔法世界とかのことを知っています」


半分くらい嘘だけど。魔法とかは、記憶が吹っ飛んでるけど元から知っていたし。
……私たち双子のことはできるだけ秘密にしておきたい。それが先生の判断でもあるし、私自身もそう思う。今のところは。


「あのお二人も口が軽いようです」

「そのようだな」


うん。ゴメン先生。何か株が下がっちゃったよ。


「それで、でも、話してもらっただけだから魔法は使えないんです。だけど、知っているから、それがなんとなく危ないものだというのは分かるんです。だから、強くなりたいんです。明日菜を護りたいから、明日菜が大好きだから!!」

「お前こんなところでシスコン宣言するなよ」

「マスター、明日香さんはシスコンを誇っているのでそのツッコミは無意味かと」

「ちょっと!そこじゃないでしょ!?すごい長語りしちゃったのに何その冷めたリアクションッ!?」


最悪だよ!そんなテンションに差があると、今になってすごい恥ずかしくなってきたんだけど!


「いや、わるい。思った以上に熱いシャウトが返ってきたもんだから」

「…ちょっともう本当にそういう反応はヤメテクダサイ。……もう!それでっ!魔法を教えてくださいって話なんだけど!」

「ああ、そうか。…そうだな、魔力と気が扱えると言ったな。どの程度やれるんだ?」

「あ、うん。こんなん」


ぐるぐるー。毎日の訓練の成果。ほとんど遊びみたいになっているような、いないような、だけど。
あと、寮で一人部屋に暮らすようになってから、正確には学園長室を破壊してから、部屋に結界を張ってもらった上、訓練にもさらに力を入れるようになったし、より破壊力は上昇してるはず。まぁ強制的に張られたんだけど。他の人の迷惑にならないようにって。結果オーライ。


「ほう?なかなか……。茶々丸の相手をさせるのもいいか……」

「黒いです。マスター」

「当然だ」

「あとこんなん」


  咸  卦  法  どりゃっ

あ、地面にヒビ入っちった。てへっ☆


「……咸卦法も使えるのか。貴様、何者だ」

「咸卦法が使える一般人。てことになってる、はず」

「ふん、まぁいい。隠し事があるのはいいことだ」


なんだそれ。どんな中学生だよ。
いや、事ここに至ってエヴァちゃんや茶々丸が普通の中学生のはずがないんだけどさ。
それにしたって、擦れすぎている気がするけど。


「そうだな、いいだろう。貴様の願い、叶えてやる。ただし、条件がある」

「うわぁ!ありがとうエヴァちゃん!」

「…条件があると言っているだろう」

「そんなの当然だよ!」


教えてもらうのに何か対価を払うのは普通だろう。モノが魔法ともなればどんな条件かは分からないけど、できるだけのことはしようと思う。
今まで散々、と言っても二人だけだけど、再三頼んできたのに結局魔法を教わることはできなかったし。


「…で、だ。その条件はだな。まずはそう、私の言うことには絶対服従だ。いいな?」

「うん。教わってる時はね」

「常にだ!何だその図々しさは!」

「えー!だって普段は友達のほうがいいじゃん!で、教わるときは、先生と教え子って感じで。ね?」

「……まぁ、いい。それと、もう一つだ」

「マスター、顔が赤いです」

「もう一つだ」

「「照れてますね」」


うふふ。茶々丸に口調を似せたら、見事にユニゾン!
サムズアップを送ったら、控えめながらもちゃんと返してくれた。あぁ、彼女とは気が合いそうだ。てか既に合い始めている。
エヴァちゃんが何か喚いているけど全無視。私の姉もそうだからすぐ分かる。照れ隠しに怒った感じになるのだ。
つまりエヴァちゃんもツンデレ。金髪ツンデレ幼女。何それ素敵。


「ね、エヴァちゃん。もう一つって?」

「――の限り・・・!あ、ああ、そうだったな。…ゴホン。もう一つの条件、まぁ絶対服従なんだから言う必要もないんだが一応な。後で泣かれても面倒だからな」

「「ごくり」」

「ムカつくからやめろ。…もう一つは、だ。


――貴様の、血を寄越せ――」


「・・・・・・」

「待て。何だその反応は」

「い、いやぁ。ちょ、ちょっと待ってね?」


それは、ちょっと…。可愛いは正義とか言っては見たものの、人には限界と言うものがあるわけで。私にはハードルが高すぎるかなぁ、なんて。
その見た目でそんな趣味って……あれ、行けるか?……いやいやいやいや。無理だわ。残念だけど。


「違う。貴様が何を考えているかは知らんが、勘違いをしている。ここは恐れ慄くのが正解だ」

「い、いや、確かに恐ろしいといえなくもないけど…」

「だから違う!」

「マスター、説明しないと伝わらないと思います」


何が違うというのだろう。説明なんて、むしろ詳しくとか聞きたくないんですけど。


「そ、それもそれもそうだな。よく聞け神楽坂明日香」

「できれば遠慮を…」

「聞けッ!…つまりだ、私は吸血鬼なのだ。それもただの吸血鬼ではない。600年を生き、太陽の下を歩いても問題ないし、十字架やにんにくもまったく平気な存在。吸血鬼の真祖なのだ!」

「…え、とぉ…」

「なんなんだ!さっきから貴様のその反応はッ!!おいっ茶々丸!このバカを何とかしろ!!」


いやぁ、なのだ!とか言われましても。
なんだろう。「うわー、エヴァちゃんは吸血鬼だったんだねー!お姉ちゃん怖いなー!」とか返したほうがいいんだろうか。……やめておこう。言わない優しさ、てあると思うんだ。


「はい、マスター。いいですか明日香さん。マスターはその所業を恐れられ『闇の福音』ダーク・エヴァンジェルや『人形使い』ドール・マスターなどの多くの二つ名で呼ばれているのです」

「な、なんだってー!」

「何故それで信じるんだ!!?」

「マスター。明日香さんは素直な人です。そして、明日菜さんと双子でもあります」

「そ、そうか。そうだったな…」


何かとても失礼なことを言われた気がするけど。
ともかく。
エ、エヴァちゃんはそんなにすごい人だったのか!いや、吸血鬼?とにかく、そんなかっこいい二つ名がいくつも付くなんて!とても中学生とは思えない!あ、600年生きてるんだっけ。あれ、じゃあ――

「ねぇ、何でそんな凄いエヴァちゃんは今更中学生やってるの?」

「…あぁ。簡単なことだ。私に掛けられた呪いのせいだよ」

「のろい?それって魔法?」

「一応魔法だ。術式の構成も込められた魔力もデタラメだがな」

「ふーん」


何であれ、それが魔法であるなら。私と明日菜の二人でなら消せると思うけど。
……今はまだ秘密、かな。後でお礼にサプライズ、とか。
いや、まぁ双子の秘密を隠している間は無理かな。


「まぁ、そういうこともあるさ。私は悪い魔法使い、だからな。その私に教わるんだ。せいぜい貴様も覚悟しておくんだな」

「はーい」

「…ちっ」


何だかんだ言ってエヴァちゃんは優しい人みたい。そんな忠告してくれちゃうくらいには。ツンデレだけど。


「あ、そうだ。私もう一つお願いがあるんだけど」

「…なんだ。言ってみろ。耳に入れるだけならしてやろう」

「うん。魔法のこととかさ、明日菜には秘密にしてね?」

「…なぜだ?そういえばあいつも貴様と双子なのだから使えるのだろう。何故秘密にする?」

「それがさ。確かに明日菜は私とほぼ同じことができるんだけど、明日菜はそのことを覚えてないから使えないんだよね。そして学園長はそのことを知っているし、秘密にすることを望んでる」

「ふん?じじぃの孫と同室にするくらいだから何かあるとは思っていたが……。ん、いいだろう。その願いも叶えてやる。後ろ暗いことがある奴は好きだぞ、私は」

「あはは。ありがとう、エヴァちゃん。それで、お礼ってわけじゃないんだけど。エヴァちゃんにとっていい話かもしれないことが一つ」

「何だ?」


エヴァちゃんと学園長がお互いのことを知っているのは確定的に明らかだし、なら無理やり中学生やらされているエヴァちゃんが相手をあまりよく思ってないということが予想される。
と、言うことでこんなお話。


「私が魔法を教わることを知ったら、学園長は困った顔をする。と思う」

「よし。じじぃのところへ行くぞ」

「マスター、昼食はどうなさいますか」

「ん、よし。食ったらじじぃのとこだ」

「あはははは」


異常に可愛い。今のエヴァちゃんに600年の生は感じない。良かった、少しでも喜んでもらえて。
うん。


「あ、私も一緒に食べるよ!」

「はい。ご一緒しましょう」

「おい、茶々丸!茶を出せ」

「あははは」


あぁ。今日がいい天気でよかった。
明日菜に秘密が増えちゃったけど、きっとそのうち明日菜のためになれるはず。
そのときに向けて、まずは。


「「「いただきます」」」


ご飯を食べよう。



----------------------------------------------------



どうも、作者です。
感想ありがとうございます。大変励みになります。ドキドキしながら読ませて頂いてます。
お話について。
クラスわけ。悩みましたが別れてもらいました。
いくつか理由は考えてありますが、そのうちポロっと出ます。出てこないものも伏線ということはありません。
今後の展開について。
もちろんご都合展開です。
ではこの辺で。
お読み下さりありがとうございました。







[18657] 9話
Name: アスカ・なんとか◆b5dbe69c ID:685000c2
Date: 2010/06/13 22:24
みなさんおはようございます。明日香です。
べ、別にネタ切れとかじゃないんだからね!

それはともかく、朝です。太陽がまだ見えていません。
そんな時間に何をやっているかと言うと、まぁアルバイトなんですが。

寮暮らしを機に、明日菜がアルバイトを始めると言い出しました。何でも生活費くらいは自分で稼ぎたい、ということらしいです。
元々は、生活費といっても高畑先生の家に居候していたし、学費は学園長が出してくれています。
二人とも気にしなくていいとは言ってくれているのですが、どうも明日菜は学費も含めて少しずつでも返していきたいと考えているようです。もちろん、明日菜が返すつもりでいるのは"借り"ではなく"恩"なので、じいさんと先生には受け取ってもらいます。受け取らせています。

私としては気にしないで良いと言うのなら一切気にするつもりもなかったのですが、いやもちろん感謝はしているしできる限りの恩返しはしようとは思っているけど、それは金銭的な話ではなく、さらに言えば今すぐどうとかではなくもっと大人になってから、つまり一般的な親孝行とは何か的なそういうレベルの話であって、そもそも…………。

失礼、姉の純粋さとの差に動揺しました。

とにかく、私は今のうちから何かをするつもりは特になかったのですが、明日菜が「私、出来る事からやっていくわ」と静かに宣誓し、その素敵さに感動した私も「当然私もやるよ!」と誓うに至り、二人でアルバイトをしようということになりました。
ちなみに双方とも誓った対象は神楽坂明日菜。一方は自分自身に誓い、もう一方は自分の半身に誓い。何もおかしくはないのにその場にいたこのかに「何で明日香が言うと何でもかんでもシスコンぽく聞こえるんやろ」といわれました。
何を当然のことを。

うん。
で、明日菜は新聞配達をすると言うので、じゃあ私は何しようかと思ったのですが、というか言ったのですが、姉に「え?明日香もやるでしょ?新聞配達」と言われ、正直朝は弱いので無理だと思っていたのですが「もももちろんっ!やります!」と快諾。同時に彼女の手を握り締めて。無意識だったけど、抱きつかなかっただけ褒めてほしい。
自分で褒めておきました。

というわけで姉妹でおそろいのバイト。担当地区が違うので一緒に走り回るわけではないけど。でも一緒。例えば今日の朝。


「「おはよー」」

「おはよー」

「「行ってきまーす」」


こんな感じに。間はこのか。
あ、たまたま今日は二人の部屋にお泊まりしていただけです。たまたま。
 
 
 
 
 
 
 
そんなこんなでバイトも終わり、毎朝の如く学校まで爆走し。
そう、爆走。
私と明日菜はとても、とてもとても足が速いのです。このかはローラーブレードで並走。と言っても周り中爆走状態なのですが。あの手この手で。
で。
只今授業中なわけですが、まぁとくに言うこともないです。明日菜もいないし。うちのクラスは特に問題もなく日々を過ごしていますし。

問題と言えば補習。
私はそんなことで時間をとられるのは断固拒否なので、頑張って回避しています。
が、その私の頑張る理由であるところの明日菜は度々補習を受けてしまっています。ま、姉のクラスの担任は高畑先生なので明日菜は喜んで補習に参加するのですが。実力で。

まーまー、何か行事でもなければ授業についてはごく普通とのコメントで事足りるでしょう。B組は。
A組は知らん。
いや知っているけども、さすがのあのクラスも普通の授業中は一応普通。一応。騒がしいけど。
 
 
 
 
 
 
 
ということで時間は過ぎ昼休み。昼食。
私と明日菜とこのかは基本的にこのかの手作り弁当。バイトが休みの時などは私の手作りで。
あるいは、食堂で食券を買ってみたり。
面子としてはまぁごちゃごちゃと。この3人とあやかとか。基本的には寮で同室同士が多い。
え?いや私はほらあれだし。ね。


「む。今日もバッチリ決まってますな。このか先生」

「うむ。当然や」

「ねー、明日香。さっちゃんとかに教えてもらったりはしないの?彼女お料理研究会だし」

「もちろんお世話になってるよ?肉まん的な意味で」


さっちゃん。四葉五月、A組。お料理研究会所属。そして超包子店員。
五月といるとほんわかした気分になります。彼女とも料理関係やらなんやらで友達になれました。


「肉まんて……いや、確かにそうだけど。売り歩き的な意味で」

「でしょ」

「いいんちょは料理できるん?」

「当然ですわ。料理と言わず一通りの家事は完璧ですわ」

「さすが。お嬢様は基本スペックが違うよね」

「もちろんですわ。どこかのガサツ女とは違っていてよ!」

「だ、誰がガサツ女よ!」


毎度のことながら我が姉よ。そこで反応すると自らガサツであると認めることに。………もう今更か。
とにかく。


「そうだよ、明日菜はガサツなんかじゃないよ。元気が溢れてるだけだよ!それに家事なんか出来なくてもいいの。だって私がやるからっ!!」

「ちょっと明日香…それは、その……」

「フォローになってへんね」

「アホですわ」


だって私の夢はお嫁さん。誰のとは言わないけど。


「いや、明日菜のやろ。今更やえ」

「心を読まれたッ!!?」


な ぜ だ !
 
 
 
 
 
 
 
そんな感じで部活の時間。今日のテーマは籠に入った果物。
バナナやりんごなどいくつかの果物が重なって入っている。はっきり言って難しい。全部りんごみたいになりそうだ。


「た、高畑先生。こ、これ何かコツとかないですか?ちょっと難しくって………」

「そうだね……とりあえずはやっぱり、よく見る事だね。それから――」


今日は顧問の高畑先生もいる。珍しく。
何か先生は麻帆良全体を見回って警備員だか指導員だかの仕事もしているので、なかなか美術部には顔を出せないようだ。
その上謎の出張。十中八九魔法関係だと思うけど。
私としては度々いなくなるのはいただけないところだ。明日菜が寂しがるし。

とまぁそんな珍しくも顧問同席の中、私は照れ明日菜に幸せを感じつつりんごを量産。
明日菜は積極的に先生に質問、少しでも多く彼と話をしようと奮闘中。


……………………………………………………………………。


うん。
いやいやいや。
真面目に美術やろうとしたら当然こうなりますよ?
他の美術部員だっているし、そりゃ喋りながらやったりとか、ただの雑談とかもあるけど。
むしろ、顧問がいたらこうでしょーよ。

ということで、私は誰も注意を払わないのをいいことにモデルと明日菜へ視線が半々。スケッチは酷いことに。


「あーぁー」

「?どうしたの明日香」

「んーと………」


これはダメだな。本当にりんごだらけだ。
籠はそこそこ上手く描けたんだけどなぁ。
どーしよ。どーしたら?
明日菜に…聞いても無理っぽいし、先生に……いや!ここで聞かずに後で明日菜に聞いて、次回明日菜から先生への質問のネタにしてもらおう!


「………いや、難しいね。これ」

「確かにね…。あ、私先生にアドバイスもらったわよ?明日香にも教えてあげるっ」

「あはっ、ありがとう明日菜っ。…あれ、そういえば先生が何か描いてるのって見たことないよね?」

「ん、そういえばそうよね。…………先生?」

「あ、あははは………」


何故目を逸らす英語教師。
もしくは、武闘派魔法使い(エヴァちゃん情報)。
そーいえばこの学校、先生も何かしらの部活や研究会の顧問になることが義務付けられているけど……そういうことなのだろうか高畑先生。
……………いや、触れないでおこう。見て見ぬふりをする優しさ。あると思います。
 
 
 
 
 
 
 
さて放課後。部活後。
私が望んだことでありつつも不本意ながら、訳分かんないけどとにかく、最近は明日菜と一緒に帰ってない。まぁ正確には一緒に帰るのと半々くらいだけど。主観的に。
別に平気だけど。四六時中一緒にいるわけじゃないし。ちゃんと一緒にいる時間もあるし。寂しくないし。泣いてないし。ないもん。
理由は簡単で、エヴァちゃん家に行って魔法のお勉強と戦い方のお勉強をしているから。

大体1日2時間から4時間くらい。
間に茶々丸作、もしくは共作か私作の晩ご飯を食べて。あるいは寮でご飯を食べてから。

魔法は理論から勉強中。おかげで学校のテストの点が落ちた。
もとい。
私は遠距離攻撃と回復技能を持った後方支援型を希望している。近接は気とかあるし。まぁ適正しだいだけど。
その適正と言うのも魔法にはいくつか種類があって、まぁそんなのは当たり前で、要するに種類と言うか性質と言うか元素と言うか、RPGよろしくな火の魔法やら風の魔法やらがあるらしい。
で、人によってその得意な属性というのがあるとのこと。

エヴァちゃんは氷と闇。無駄に悪っぽい。

私は光と火が相性良いっぽい。どーなのこれ。
でも、某カッシュ氏のようにシャウトできるかもしれないと思うとテンションあがる。あれ?近接技じゃね?
ま、回復と言えば光か水だし。行けんじゃね?
と思って聞いてみたら、どうも回復魔法って言うのはそういうことではないらしい。てか、光も火も破壊属性の方が向いてるって。なんじゃそら。

そもそも魔法というのは自らの魔力で周りの精霊に干渉して、属性ごとの何らかの現象を起こしたりすることらしい。他にもいろいろやれるみたいだけど。
それで肝心の回復魔法はと言うと、これがどうやら精霊がどうとか言うよりは肉体やその他への干渉力が何やらとか、まぁ要するに魔力の資質しだい。
つまり、簡単なものなら誰にでも使えるけど高位のものを使うには生まれ持った資質か、馬鹿魔力を注ぎ込むしかないとのこと。

うん、これって魔法以外のいろんなことにも言える理屈だし、ある程度使えるらしいのでほっとした。

と、そんなときにエヴァちゃんがぽろっと「その点、近衛木乃香は魔力の量、資質共に抜群のようだがな」とこぼしてくれた。
うむ。さすがはじじぃのお孫さん、そして明日菜と同室。どれくらい凄いのかは教えてくれなかったけど、私は思った。


あれ、このかに魔法バレしてエヴァちゃんに鍛えてもらったほうが早くね?


と。
いや、どうしてもヒーラーがほしいと言うわけでもないし、要検討の方向で。

そして何よりも気になったのが、ぱくてぃおー。仮契約。………………………気になる。

ゴホン。
他にも体術として、なぜかエヴァちゃんが知っている、しかも達人級の(と思われる)腕前の合気柔術を教わっている。
これなら明日菜にも護身用として教えれる、と思ったけど性格的に合わないことに気付き断念。我が半身は相手に合わせる、というタイプではないだろう。
私もどちらかと言うと明日菜タイプなのだけど、後の先を取る合気は結構相性がよかったようで。

明日菜タイプって語感、良いなぁ・・・・・・。

後は気を運用して実戦訓練、と称した茶々丸の機動訓練を。
そう、茶々丸は魔法と科学を利用したスーパーロボットだったのだ!
まじで。
とりあえず、超テンション上がったことを記しておく。

訓練なのに実戦。なぜならとても痛いから。とても。
…ついでに治癒魔法の実践訓練をしていると言えばより伝わるかも。こちらは実践。

さらにさらに、気になったので聞いてみた。


「ねー、エヴァちゃん。この、始動キーって言うのは何でもいいの?意味を持たせたりとかは?」

「あぁ、それは何でも良いんだ。意味を持たせようが持たせまいが、自由だ。要は言いやすく、適度に短く、後はフィーリングだな」

「ふーん。じゃあさ、アスナ・ダイスキ、とか1・2・3・5・7・9・11とかは?」

「バカか貴様。急ぐ必要はないしそもそもまだ貴様には始動キーなんぞ早い。バカなのか貴様?…………と言うか後ろの数字はどういうつもりだ。バカだな貴様」


3回もバカって言われた。これは酷い。







そんなわけで、帰って明日菜に慰めてもらうべく寮の自室でシャワー中。

他の人の裸を見てしまうのは恥ずかしいし忍びないけど、自分のであれば平気。あたりまえだけど。たとえ見た目はほぼ明日菜でも。
あ、やべ。

ゲフン。
とにかく今日も、いつも通りだけどいつもと違う、そんな普通の一日だった。

明日菜分が足りない。
いや、しっかり補給しているんだけど。描写的に。
おっと。

とりあえずシャワー浴び終わったら、今日もたまたまお泊まりに行こうかな。たまたま。
 
 
 
◆◇
 
 
 
麻帆良学園中等部女子寮643号室。
神楽坂明日菜・近衛木乃香の部屋。
が、この部屋の中は3人がデフォルト。
神楽坂明日香。明日菜の双子の妹である。
寮内で明日香に会おうとする人は、この部屋を訪ねる。


「ただいまー」


枕持参である。もう、お邪魔しますですらない。
一応私物を置いていかない程度のけじめをつけている。と、本人は思っている。


「お帰りー。じゃあ、そろそろ寝ますか」

「あー、もうそんな時間なん?ほんならもうお休みやね」


最近は、明日香の訪問(帰宅)を機に就寝、と言うのがお決まり。双子は早朝からアルバイトをしているのでそこそこ早く床に付く。21時くらい。


「あの、明日菜……。今日も、一緒に…寝ていい……かな」

「なんやのその毎度の無駄な照れ」


まったくもってその通り。つかソファ-で寝ろよってなもんである。
まぁ、さすがに彼女も毎回一緒と言うことはない。稀に一人で寝ることもある。ごく稀に。
とはいえ、夏の暑い時期はソファーだったり布団持参だったりの方が多かったが。


「む、無駄ってなんだよ!ここで了解を取るのはけじめなんだよ」

「そ、そうよ!私たちもう中学生だしね!部屋だって別だし、確認は必要よ。確認は」


そういうことらしい。
そして姉のほうも断ることはないのだが。
これが他の人もいたら話は違うかもしれない。A組の委員長とか。


「はいはい。ほんならおやすみ、明日菜、明日香」

「「おやすみ、このか」」


それぞれのベッドへ。

はふぅ
と双子の妹。少し色めいたため息。姉はそれがくすぐったいのか身じろぎ。
かといってお喋りはしない。そんなことをすれば翌日の朝、死を見る事になるからだ。3人ともそれは十分理解している。人間は学ぶものである。何回かやらかせば。

それに3人とも結構疲れている。
いまどきの女子中学生は忙しいのだ。わりと。


「おやすみ、明日菜」

「うん。おやすみ、明日香」


そんな日常。








[18657] 閑話の2
Name: アスカ・なんとか◆b5dbe69c ID:685000c2
Date: 2010/06/06 19:53
幕間的な7.5話



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麻帆良学園本校女子中等部学園長室。

その扉を今、この部屋の主、近衛近右衛門が開いていた。


「ふむ。何者かに侵入を許したようじゃの」


小さな呟きにはただの老人とは思えぬ警戒心が滲んでいる。もちろんこの部屋に侵入したと思われる者もそれは分かっているだろう。

監視の目もあるやも知れぬ、と、この学園の長は考える。万が一を考えれば魔法は使えぬな、とも。

そうなると、純粋な己の肉体のみでこの事態に対処しなければならない。しかし、ただの老人ではないこの人物に絶望はない。また、長年の経験により油断もない。

事態。
この、学園長室の扉を開けた先。一歩目を踏み出すはずの位置に見える紐。
なかなか頑丈そうではあるが、その分太く注意深いものであれば用意に発見できるであろう物。

気付かずに足をかければ転ぶのは免れない。
だが、気付いているのであれば逆にわざと足をかけ引き千切ってやりたくなる。
しかし………。


「フォフォ。ミスリード、じゃな」


関東魔法協会の会長である彼に油断はない。
頭上、室内の天井を見上げてみれば。
金ダライ。
どうやら、この紐を引くなり切るなりするとそれに連動して落ちてくる仕掛けらしい。

よく考えられている。
これ見よがしな足元の紐に意識を向けさせることで、頭上への注意を疎かにさせる。下手に紐に触れようものならダメージを受けるのは必至。


「じゃが、まだまだ甘いのぅ…」


しかし彼にとってはこの程度、何の障害にもなりはしない。

よっこらせ。

こんなところはただの老人だ。しかしながら普通を装うことで成せることもあるのは事実。

紐をまたいだ足を扉の前の床を彩るマットへと着ける。
マット。
一般家庭で言う玄関マットのようなそれは、紛れもなくごく普通のマットだ。
が、ただそこにおいてあるというだけで部屋の景観的な、又は風水的・魔法的・呪術的な意味を見出すことができる。

と。
そのマットへと足を着けた瞬間、彼の重心の乗った足はマットごと前方へと滑って行ってしまった。
マットの裏、板張りの床と接する面に――これは油だろうか――よく滑り且つ乾きにくい半固体状のものが塗られている。

漫画的に言えば「バナナの皮を踏んだ人」。

そのもの正に、と言った感じだがしかし彼は慌てない。さすがは歴戦の傑物。自分の裏をかいた人物への賞賛をすら胸に後ろにある足を引き寄せバランスをとる。

が、その時。
ついでにそこにあった紐も一緒に引き寄せてしまう。


「フォ?」


気付くも時既に遅し。
天井から、転倒を免れた彼の頭上へと金ダライ。


――ごいーんっ――


無駄に重い。
良くぞ仕掛けたと褒めてやりたくなるほどだ。
まぁ、被害にあった学園長の頭には大きなこぶが出来ているのだが。


「フォ…フォ……。よくぞこのワシを相手にやり遂げおったわい」


ただの強がり。
高評価であることに変わりはないが。

痛む頭を抑えつつ執務机へと向かう近衛学園長。
ふと見れば、執務机の縁。椅子側の一辺――椅子に座る際に手を付くであろう位置――にまきびしが敷き詰められている。まきびし?…うん、まきびし。


「またかの…」


若干うんざりしている。
そしてこのまきびし、退かそうにも何かで机にくっ付けられている。掴んで剥がすのは痛い。
頭上を見上げれば何が入っているかは分からないが、何かの仕掛け。椅子の後ろにそれに繋がっているであろう仕掛け。
先の教訓を生かし椅子の足元を調べてみるも特に何もなし。

息を一つ吐き。
肘掛に手をやり、椅子へと体重を掛ける。
彼は、とにかく少し休みたかった。
と。


――ボキッ――


尻の下、椅子の足から不幸の音が。

高級であり、重量感のあるその椅子も"回転椅子"と言うその属性のために足は一本であった。
そしてその足に斜めの切れ込み。
ちょうど壁側を上にし、机側を下にするように切断されている。そしてその円柱の中心に、仮の芯となっていたであろう何かの棒。
椅子の重量には耐えていたものの、その上に人一人分の重みが加わるとそれを支える気はないらしく、あっさりと折れた。


「フォ!?」


途端、後方へ傾く椅子。慌てて立ち上がろうとする老人。
しかし椅子のクッションから尻が離れない。
まきびしを机に固定しているものと同じであろう接着剤の効果だ。

結果そのまま転倒。先ほど出来たばかりのこぶを強打。涙目。
さらに椅子の後ろにあった仕掛けに引っかかり天井の仕掛けも作動。何かが落ちてくる。

仰向けに転がる彼の目に映ったもの。

大量のまきびし。


――アッー!――


その日、学園に哀れな老人の悲鳴が響いた。







翌日。

頭に包帯をぐるぐる巻きにした学園長を見て。

高笑いするもの 1
爆笑するもの  3
 
 
 
 
 
 
 
作戦完了

 暗黒面シスコン 暗黒卿アス

協力

 悪戯シスター スプリング・ビューティー

 甲賀忍群 トラップの風
       仕掛けの史

資材協力

 甲賀忍群 KAEDE

情報協力

 孫‐MAGO‐



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さらに短く8話裏



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お昼の明日菜このかあやか


「ん、明日香さんはどうされたんですの?」

「何かエヴァちゃんに用があるとかって。そっちでお昼食べるってさ」

「何や最近、よう話しかけてるえ」

「言われてみればそうですわね。何を話すのでしょうか…。これを機にエヴァンジェリンさんもクラスに馴染めればいいのですけど」

「確かにそうなったら良いとは思うけど。でもいいんちょ、明日香はB組よ?あ、これおいし」

「そんなことは承知していますわ。その上で言っているのです。しかし、中学生になってから貴女方姉妹は別行動が増えましたわね?何ですの、それ」

「うふふ。確かになぁ。あ、それ明日香が昨日作ったやつや」

「何よ?別に双子だからっていつまでもずっと一緒にいるわけじゃないわよ。そもそも元々そんなに一緒に行動してないわよ。…あの子の料理、最近一段と美味しくなってるわね」

「いやいやぁ。小学校の頃はもう四六時中べったりやったえ?料理だけやのうて、家事全般上達してるんやえ」

「そうですわよ。風香さんと史伽さんはあんなふうには見えませんわよ?やはり一人部屋になったからでしょうか」

「べ、別にべったりってことは無かったわよ。たぶん。…でも明日香ほとんど私たちの部屋にいるわよ?」

「ははぁ。無自覚なんや。あれだけ引っ付いとってこれなら、明日菜も結構…………」

「そうですわね…。まったく、ただでさえ親父趣味なのにその上……」

「え?な、何…何が?だって明日香、本当に私たちの部屋にいるのよ?このかも知ってるでしょ?」

「そうやねぇ。あ、明日菜がこうなんやし、明日香も実は……てことなんかな?」

「確かにそういうことも有りえますわね。表面化していないだけで…。…まったく、似てるのは見た目だけで十分ですのに」

「な、何の話よ。言っとくけど私、家事はダメダメよ」

「「それは知ってる」」

「なな、何よーーーっ!!」









[18657] 10話
Name: アスカ・なんとか◆b5dbe69c ID:685000c2
Date: 2010/06/13 22:25
みなさんおはようございます。明日香です。
2年B組出席番号8番です。

中学生生活もここまでいろいろありましたが、全部カットです。

今日は3学期某日。
様々なことに慣れて緩み気味ではありましたが、もうすぐ最高学年ということで皆気を引き締めて登校しています。
ウソです。
麻帆良は基本的にはエスカレーター式なので緊張感のかけらも無いです。

それはそうとして、なにやら本日は我が姉、明日菜とその同室で学園長の孫でもあるこのかがその学園長に呼ばれており、朝一で学園長室に赴かなければならないとのこと。
私自身はお呼びではないようなのですが、じいさんの言うことなので無視。普通に同席するつもりです。

………つもりだったのですが、少々出遅れました。少ーーしだけ寝過ごして、さらに自室に荷物を取りに行き、その際前述の理由から二人が先に出る旨を聞き。私はそれに快く返事をしました。決して二人に置いて行かれたわけではなく。決して。

と言うわけで私、神楽坂明日香。ごく普通の女子中学生。しいて他の人と違うところがあるとすれば、それは………今現在、自力で時速40㎞を超えているところかな。

おふざけはともかくとして、ほんの少し人間離れしたスピードで走ったおかけでもう学校が見えてきました。

この速さで走っても二人には追いつきません。
電車も理由の一つですし、そもそも明日菜もこれくらいで走ることが出来ます。このかはローラーブレードを使いますし。

と、思っていたのですが。
どうも、正門前に見えるは私の愛しいお姉ちゃん。隣にこのかも見えます。
ああっ!私を待っていてくれたのねっ!!明日香うれしいッ!

……………………あれ。よく見たら明日菜が児童虐待しとる。別に私を待っていたわけではないのかな。いや、別に今更この程度では泣かないよ。いやいや、別に落ち込んでも無いよ。ただちょっと期待しちゃった分テンションが低くなったように見えるだけで。だけだよ。

それにしても何して遊んでんのかな。明日菜はガキンチョは嫌いなはずなんだけど。あ、だからアイアンクローしてるのかな?しかし、見ず知らずの少年にアイアンクローかますなんて。明日菜が暴走しちゃってるのか、少年が失礼だったのか……。あぁ、向こうから高畑先生も来てる。とにかく状況が分からないし、このかに聞い――


――はくちんっ――

――ズバァッ――

――ブチッ――

――殺ッ――


じゃなくて、――さっ!――

状況は分からないままだけど、あの少年が明日菜の服を吹き飛ばしたのだけは分かった。
あれは、確か武装解除とか言う魔法だ。吹き飛んだだけだからたぶん風の。私は使えない。
結構便利そうだな、と思って火の武装解除は覚えたんだけど。……こんなセクハラ魔法だったとは。

そんなことより。

私は明日菜の毛糸のパンツ――あれはたぶんくまのやつ――を目にした瞬間、とっさに瞬動術で明日菜の背後に移動。抜きも完璧。これならエヴァちゃん先生もGOODと言うだろう。…言わないか。
瞬動術って言うのは、要するに縮地とか言われる移動術の奥義。まるで地面が縮んだかのように移動する様からこの名がついた、のかな。ぶっちゃけ瞬間移動。体術で。
で。
移動しつつ、鞄から今日使う予定だった体育のジャージ(上)を取り出し、面倒だからとチャックを半分ほど閉めたままだったそれを瞬動から抜けると同時に明日菜に頭からがばぁっと。ちなみに放った鞄は高畑先生の顔面へ。ミンナ!


「な!?…ぁぷ!…へ!?」

「明日菜っ!大丈夫!?こんな格好になっちゃって!」

「あれ?明日香いつの間に?ん~、毛糸の、までは分かったんやけどあれは何やったかな…。くまか、ぶたか……」

「わ、わ、同じ顔?あ、双子さんですか?えと、おはようございます?」

「や、やあ。おはよう明日香君。はい、これキミの鞄だろ?」


ちっ。普通に受け止められた。まぁ、そっちに飛んでったのは偶然ですけどね。殺意があったとしても。

ていうか、少し冷静になってみると気になることがいくつか。
武装解除って言ったって魔法には変わりない筈なのに、明日菜に効くんだな、てのが一つ。姉の完全魔法無効化能力は幻術とかは効くけど、攻撃魔法の類は一切効かない筈なのに。
この魔法は攻撃魔法じゃないのかな。解除って言うくらいだし。あんなにダメージ(精神的・社会的)が高いのに。

…それよりも何よりも気になるのはこっち。


「で、少年?・・・どういうつもりなのかな・・・?」


明日菜と手をつないで利き手でリフトアップ。前任者に倣ってアイアンクローで。


「あ、え?へ?何、これ…あ、明日香?」

「い、わ、あわわわ、あ、また…ふぁ――ハックション!」


しーん。

ふぅははー!明日菜と私にかかれば幻術だろうが脱がせ魔法だろうが物の数ではないわーっ!


「ちょ、明日香君落ち着いて。彼はネギ・スプリングフィールド先生で、まぁ詳しくは学園長室で、ね」

「もー。双子やからって、こんなんまで同じことせんでもええのに」


先生はなんか言ってるし、このかはこんな時もこのかだし。よく考えたら、明日菜の目の前で児童虐待をするのは良くない、かな。


「…分かりました。スイマセンデシタスプリングフィールドセンセイ。…明日菜、怪我とかない?ほら下のジャージも」

「あ、ありがとう。あれ、ていうかこれあんたの?いつの間に…」


受け取った鞄から下のジャージも明日菜に渡す。

さて。
何をどれだけ詳しく話して下さるのか……。
 
 
 
 
 
 
 
「学園長先生!!いったいどういうことなんですか!?」

「まあまあ明日菜ちゃんや。…なるほど、修業のために日本で学校の先生を…」


フォフォ。
じゃねえよ。…じゃないですよ。

何かいろいろ言ってる。
2-A担任だとか、このかの婿にとか。婿は関係ない上に事あるごとに言ってるし。

てか。
際どい言葉も出ちゃってんですけど。修業とか。

もうこれは間違いない。
さっきの魔法といい、不思議クラスA組担任といい、子供といい。
最初は学園長もついにボケたか、と思っていたけど。じじいの嫌がらせかとも思っていたけど。

これは、そう。
彼は魔法使いで、魔法使い的理由で麻帆良に来た。
と、いう訳ですな。
もしくは、彼の親も魔法使いで、だから魔法が使えて。それでいて天才少年で、親の方針で教職に就くことに。
とも考えられるかな。
………………どっちか分からないや。どっちも違うかも。いや、でも他にあるとすれば……迷子?いやいやいや。そんなバカな。ていうかそもそも――


「そうそう、もう一つ。このか、明日菜ちゃん、しばらくはネギくんをお前たちの部屋に泊めてもらえんかの。まだ住むとこ決まっとらんのじゃよ」

「げ」

「え゛…」

「ええよ」


                                    え?


「もうっ、何から何まで学園長ーーっ!」

「フォフォ」

「かわえーよ、この子」

「ガキは嫌いなん……あれ、明日香?どうしたのさっきから」

「あ、うん。なんでもないよ。大丈夫」

「そういえば明日香。ここに来たときからなんや静かやったえ?今も明日香的にはなかなかな話しやったはずやのに…キレてへんの?」

「キレてないよ?私をキレさしたら大したもんだよ。……うん。平気。ほら、もう行かないと。私は、少し学園長と話があるから」

「ん、んー、まぁ分かったけど。B組の先生に怒られても知らないわよ」

「え?そちらの方はクラス違うんですか?」

「そうやえ。…あんまり見たことない怒り方やな…」

「しずなくん」

「はい。では、行きましょうか皆さん」


がやがや。
4人部屋を出て行って残ったのは学園長と、話の間空気だった私と高畑先生。…先生居たんだ…。あ、廊下で待ってたのか。それで入れ替わりで入ってきた、とか。


「さて。明日香ちゃんはこの場には呼んでないはずなんじゃが。とはいえ、来るだろうとは思っておったがの。フォフォフォ。で、話とは何じゃろうの?」

「いや、学園長。それが明日香君はネギ君の――」

「いいです、高畑先生。私が話します。……学園長、ネギ・スプリングフィールド先生は魔法使い、ですね?」

「フォフォ。何の――」

「ですね?会長」

「・・・・・・フォフォ」

「ですよね?このかのおじいちゃん」

「ちょ、それはなしじゃよ明日香ちゃん――」

「では説明を」


こっちは現場を見ての確信があるし、エヴァちゃん経由の情報もあるし、じじいの泣き所も知っている。

というわけで、ご説明タイム。

ふーん。
何やら子供先生は魔法学校を卒業し、その後の修業としてここに来たらしい。うん、そんなことだろうと思ってた。自信を持って思ってた。間違いない。

それにしたって10歳児に先生とか、え?数えで10?じゃ、9歳じゃん。いや、8歳の可能性も。
まぁ、満年齢はともかくとして、いくら天才でも情緒的な成長を考えればお互いのためにならないような気もする。魔法学校も奇抜なことをするなぁ。麻帆良ほど変人が集まっている所は他にないと思っていたけど、結構いる所にはいるのかな。

うん、そんなことはどうでもいいんだけど。それより何より。


「――と。まぁ要するにネギ君の魔法を見てしまってですね」

「そのことはもう、どうでも良いです。そんなことよりも言いたいことが。……なんで小っちゃい先生が二人の部屋に泊まるんですか。私ではなく。むしろ、私を二人と同室にして空いた私の部屋で一人暮らしでもさせればいいんですよ。そうするべきです。知ってますか?"男女七つにして同衾せず"って言うらしいですよ」

「フォ、フォフォ。そ、それを言うなら"席を同じにせず"じゃよ。まあ、今の時代には沿わぬの。それに同衾するわけでは――」

「沿わなかろうが何だろうがそういう言葉があるんですっ!それに席を一緒にすることよりも部屋を一緒にすることの方が問題ありまくりですよッ!!あーあ!これはもう、あまりのショックに私このかに魔法バレしちゃうなーっ!」


無理を通そうとするならそれなりの代償があることを教えてくれるわっ!


「じゃ、じゃからそれはなしじゃと――」

「明日菜にもバレバレしちゃうなーっ!」

「明日香君ッ!それは本当になしだ。君たちの事は僕と学園長しか――」

「やっぱり。…おかしいと思ってたんです。このかに魔法を隠す意味は分からないけど、じゃあそのこのかと同室の明日菜に隠す理由は?これに関しては、エヴァちゃんですら知らないって言ってました。…明日菜に隠しているんじゃなくて、"明日菜を隠して"いるんですね?ついでに私も」

「「あ」」

「ふん!甘いです。甘甘です。やっぱりそれは明日菜のマジックキャンセルのせいですね。それと私の――」

「明日香ちゃん。おぬしそれをどこで?まさか覚えておるのかの?」

「あ」


あ。


「…学園長。どうも明日香君の記憶の方は穴だらけになっているようですね」

「ふむ。明日香ちゃんも甘甘のようじゃの。さて、何を覚えておるのかの?」

「ふふふふふんだ!言うわけないじゃないですかっ!そもそも覚えてることの方が少ないんですよ!でも明日菜のこととついでに私自身のことは全部覚えてますけどねっ!!」


たぶん。
ていうか、私が明日菜のことを少しでも忘れてしまうはずがない。たとえ魔法でも。


「ふむ。まぁそれだけ分かれば十分じゃの」

「あ」


あ。

てかまたやっちゃったぁぁぁっ!!!

こんなだからこのかに「神楽坂のアホの方」て言われるんだよ!まったくっ!


「明日香君……キミは……」

「い、いいもん!これで私は諸刃の剣を手にしたわけだし。いや、最初から持ってたんだけど。…あ、あーあ!喋りたいなー!和美あたりに」


和美。朝倉和美。2-A。麻帆良のパパラッチ。
彼女に知られたらそれはイコール学園中に知られたことと同義である、と噂の人物。報道部所属。
ふふふ。これは悪辣な脅しですぜ。


「明日香君!」

「いや、いいんじゃタカミチくん。して、どうして欲しいのかの」


うははははっ!勝った!


「部屋とクラス」


これ以外にあろうはずがない。


「……ほ、本当にお姉ちゃんのことが大好きだね…。ていうか、カードの割りに要求が凄く軽い………」

「フォフォフォ。なるほどのう。しかしどうなんじゃろうタカミチくん。ネギくんの家事能力は」

「あ、まぁ彼はなかなか万能なんですが、いかんせん子供なので一人暮らしは厳しいかと」

「そこは一教師としてしっかりして頂かないとっ!」

「フォフォ。彼は教師である前に一子供じゃよ」


わ、私だって子供だもんっ!
ぐ、ま、まぁ私のほうが奴より大人なのは確かだし、ここは大人の分別と言うものを見せようか。


「う、う~~~!わ、わかりましたよっ!でもクラスの方は譲りませんよッ!!」

「フォフォフォ。もちろんじゃよ。しかしの、今学期はもう始まってしまっとるし、3年生になってからじゃな」

「ええええええっ!!?いいですよ学期途中でも!むしろ今からでも!」


ていうかもう行っちゃえばいいんじゃないかな。文字通り教室まで跳んで行くよ。よーし――


「落ち着いて明日香君。気が漏れてるよ。よーし、じゃないよ」

「フォフォ。明日香ちゃんを疑うわけじゃないんじゃがの。近くにいるとそうも言っていられなくなるかも知れんからの。保険じゃよ、明日香ちゃんのことを秘密にするための」

「えーーー?」

「もちろんこのかにも、他の皆にも秘密じゃ。おぬし達のことも、魔法のことも」

「多いです」

「フォ?」

「私はクラスの移動だけなのにおじいちゃんの要求は多すぎます!」

「う、うむ」

「いやでも、明日香君。これはね?」


こういうことは等価交換であるべきなのに!
私ばっかり折れてる気がしてきた。くっそー、誰かに言いつけてやりたい。と言ってもそんな話が出来るのはエヴァちゃんと茶々丸くらいしかいないんだけど。
…エヴァちゃんか…。よし。


「ま、まぁ私は大人ですから。寛容な心で了解しておきますよ。ただしっ、これは貸しですからね!でっかい貸しですからねッ!!」

「うむ。もちろんじゃよ」

「……明日香君…キミは……」

「でっかいでっかい貸しなんだからーーーーッ!!」

――ガンッ!――


捨て台詞を残して走り出す私。もちろん扉は破壊。
八つ当たりではない。泣いてもない。

そしてバッチリ遅刻した私。泣いてないったら。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
オマケ

放課後2-Aで子供先生歓迎会をやると言うのでお邪魔する私。
なんか明日菜とネギ先生がやってるけど、今はとりあえず置いといて。
そそっと。


「副会長。報告を」


本人にだけ聞こえるように。


「え、あ、いや、会長」

「報告をお願いします」

「う、は、はい。えー、ネギ君は明日菜君に魔法バレしたようです」

「ほう?それで?」

「それで、記憶を消して魔法のことを忘れさせようとしまして」

「・・・ほっほう?そ、それは魔法使い的には一般的なんですかね?」

「い、いやそれが、嫌な予感がしたものですから(脱衣的な意味で)、近くにいた僕が物音を立てて顔を出して、未然に防いでおきました」

「おお、副会長良くやってくれました。これからはお互い、今まで以上に活動に注意を払って行きましょうね」

「りょ、りょーかい」


なるほどなるほど。
もうバレたのか。私が知っていると言うことを相手が知らないという状況は結構使えるんじゃないな。
ふふふふふふふふ。


「なー、明日香も行くやろ…て、何笑っとるん?」

「あ、このか。なんでもないよ。あれ、明日菜は?」

「それがな?明日菜とネギ君で教室出て行ってん。それで、皆で見に行くえーて話なんよ」

「ほほーう?行からいでかっ」


なんならツブシに・・・・・・


「なー、高畑センセと何話しとったん?」

「うん。普通の雑談だよ」


有意義ではあったけどね。ふふふふふふ。


「ふーん。そかぁ。なぁ明日香、その笑い方気持ち悪いえ?」


失礼な。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
も一つオマケ

子供先生就任の翌日、朝。

前日の夜、彼を見張るために、そうあくまで見張るためであって決して明日菜に甘えたかったからではなく、643号室で就寝した私。

明日菜のベッドにお邪魔したわけだけど何かやけに狭い。前から後ろからぎゅ―ってなってるような気がする。
あぁ、明日菜だめだよ。私たち姉妹だよ…でも、明日菜が良いなら私…。

………………こ、この額に当たる感触は、まさか明日菜の、く、唇……?


「は、え、な何だ明日香か…」

「ん、んーぅ。あ、おはよう明日菜」

「うん、おはよう明日香」

「ね。こっちも」


言いつつ自分の唇を触る。


「な、ちょ、バカ!何言って…て!何であんたが私のベッドで寝てんのよーっネギ!」

「え?」

「えう?あ――」


どうやら後ろからの圧迫はネギ先生によるものだったらしい。迷惑な。
そしてこの少年、一人で寝られないシスコンだったようで。…見張りに来て正解だったねっ!


「てかもう5時じゃない!ほら起きて明日香!」

「え!うそっ、あ、待って!今行く!」


よし。


「「行ってくるねこのかーっ」」


やばいバイトがっ。

まぁ、普通に遅刻しました。おのれスプリングフィールド。
 
 
 
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どうも作者です。
感想、御指摘、感謝します。
お話について。
アンチにするつもりはまったくないのですが、明日香はお姉ちゃん第一主義なので、1.2巻あたりは怒ってばっかりになりそうな予感。
さらに作者は気の向くままに打鍵しているので、時々(結構)ノベライズみたいになるかもしれないです。あしからず。
ではこの辺で。
お読み下さりありがとうございました。










[18657] 11話
Name: アスカ・なんとか◆b5dbe69c ID:685000c2
Date: 2010/06/13 17:01
みなさんこんにちは。明日香です。

只今A組に潜入捜査をしにやってきております。探る対象はネギ先生。
まぁ就任二日目で探るも何もあったものではないのですが、今日は聞き込みを。


「つーことでどうよ、子供先生は」

「どうって何だよ。てかその"つーこと"は何に係ってるんだよ」


ちなみに対象の噂は二日目にして学園中でそこそこの話題になっている。これは某新聞記者さんによる情報。

今話を聞いているのは、A組常識部門代表の長谷川千雨。彼女に聞けば間違いないだろう、と思う。


「何ってつまり、授業とか担任ぶりとか…あるでしょ?」

「いや、あるけどその何じゃねぇよ。…ま、微妙だな。子供って時点ですでに非常識だけどさ。つかまだ二日目だし。教師っていう能力的な意味なら、まあまあなんじゃねえの。……んなことよりもさ、今日のそのネギ先生の授業中にお前の大好きなお姉ちゃんが急に脱ぎ始めてさ。あれどういうことだよ?」

「へぇ・・・・・・・・・」


あのワイセツ教師め。
狙ってやったなら■す。ラッキースケベなら縛って監禁する。防ぐのが難しいから。
うー、例の脱がせ魔法なら私が明日菜に抱きついていれば何とかなるのに……。え、いや触ってれば良いんだけど、ハグした方が幸せじゃん。もちろん皆が。もち。


「お、おい?どうした?」

「あ、うん。なんでもないよ。ねぇその時ってさ、ネギ先生くしゃみしなかった?」

「は?あー、まぁ確かしたような気もするけど…なんか意味あんのか?」

「やっぱりか……」

「やっぱりってどういう――」

――ネギ先生ーッ――

――明日菜さん助けてーっ――


ドドドドドっと。

何の騒ぎだよまったく。今対象の捕獲からの尋問計画の立案中だったのに。やっぱり夜に縛って連れ出すのがベストかな…。


「何騒いでんだあいつら…。おい、お前のお姉ちゃんも何かやってるぞ」

「んー?あぁ、いいよ。どうせ惚れ薬かなんかでしょ。明日菜には効いてないみたいだし、それならまぁ私は良いや」

「ほ、惚れ薬?お、おい、さっきから何なんだよ?止めろよ、そういう非常識持ち込むの」

「ふーん?まあ千雨なら4分の1くらい知ってるようなもんだし、教えて!て言うならその時に、ね?」


おかしいことに気付けるのはおかしい。
とエヴァちゃんに教えてもらったから分かったことだけど。
この学園都市にはそういうことを気付けなくする結界が張ってあるらしい。
そしてそれを無視しておかしいことに気付いてる千雨は、魔法的な才能が豊富なのだろうとのこと。いずれ知ることになるだろうし、だからこのクラスなのだろう。
ついでに言えば、あの小さい先生がいたらそう遠くないうちに知ることになると思うし。
なら、私が教えても問題はないと思う。口も堅い人だし。ふふふ。困る千雨が目に見えるようだよ。


「な、なんだよ…。ていうか、追いかけなくて良いのか?神楽坂姉、行っちまったぞ?」

「……ねえ、これ前にも誰かに言った気がするんだけど。私ってそんなに明日菜にべったりに見える?」

「見える」


即答とか。


「……あ、あのさ。気付いてないようだけど、私たちクラスが違うから1日の大半は別行動なんだよ?」

「…あれ?言われてみればそうだな……何でだ?」

「何でだはこっちのセリフだよっ!そりゃ私はシスコンだけど、四六時中ベタベタなオコチャマじゃないんだからねッ!!」


不思議に気付けても常識に気付けないなんて千雨も毒されてるねっ。これを伝えてやれば、彼女は悶絶必至だよ!
でもそうはしないのです。私はそんな八つ当たりをするようなオコチャマではないのですからっ!


「その発言がすでにオコチャマだよな」


聞こえない聞こえない。
 
 
 
 
 
 
 
で放課後。もう夜か。

エヴァちゃん邸で結界を張って茶々丸と実戦訓練中。
この訓練ももう結構続けてるなぁ。1年以上だもんなー。
半年を過ぎた頃からエヴァちゃんとタイマンだったりとかもやるようになり。正直泣きました。
茶々丸も茶々丸で今日に至るまでにガツンッガツンッと整備の度に性能アップを繰り返し、今では酷いことになってる。
そしてその性能アップは戦闘面だけではないからハカセ恐るべし。
今では茶々丸との家事談義に大輪が咲きます。あと家主の愚痴(に見せかけた惚気)とか。
と、あ――


「「いたっ」」


やられた!完全に決まったと思ったのに。体制を崩させての間合いの外からの攻撃にカウンターを合わせるなんて…!


「ロケットパンチはずるいよっ!」

「ずるくないです。私の武器の一つです」


くっそ、あのマッドサイエンティストめ。
ロマンが分かってるじゃないかっ……!!!


「喜んでいただけた様で何よりです」

「うん、素敵。あ、ねえエヴァちゃん。茶々丸に武装解除したらこの場合どうなるの?腕が飛んでくの?」

「…いや、どうだろうな。そんなことにはならんと思うが。ちょっとやってみろ」

「嫌だよ!あんな脱がせ魔法!茶々丸がかわいそうでしょ!てか、何なのあの子供先生っ。くしゃみで武装解除とかどういうつもり!?」


ホントどういうつもりなんだろうっ。
どんなつもりでも迷惑なことに変わりはないけどねっ!


「ああ、あれはな。単に魔力の制御が甘いだけだよ。未熟者なんだよ、ぼーやは」

「未熟者をこんなところに寄越すなっつーのっ!まったく。……あれ、そんな未熟者につき合わされてる割には、機嫌が良さ気だね?エヴァちゃん」

「ふん。貴様には、まぁあまり関係のないことだよ」


ほほーう?恋かな?
……ないか。600歳だしな。言わないけど。
何をするつもりなのかな?エヴァちゃんてば登校地獄――学校に強制的に通わせると言う恐ろしい例の呪い――だけじゃなくて、何やら魔力も封じられているらしいし。何が出来るのやら…。


「へー?どうりで。この間から献血の量が増えてると思ってたんだよ。レバー食べると口臭に気使うんだよ?」

「知らんわ!ていうか献血とか言うなッ!吸血だっ!!なんか良いことみたいに聞こえちゃうだろうがっ」

「口臭と、あとお部屋の消臭にこちらが効果的ですよ」

「あ、ありがとう茶々丸!」


あー茶々丸欲しいなぁ、家に来てくれないかなぁ。切実に。
あ、でもお嫁さんポジションが取られちゃうからダメか。あと茶々丸がいなくなるとエヴァちゃんが死んじゃうし。いやまじで。
茶々丸がいないと本当にダメなんだよ、このぐうたら吸血鬼。威厳のかけらもないです。


「貴様…よし。血を寄越せ。ボコボコにしてやるっ」

「え、待って今日満月じゃないしその魔力って溜めとくんじゃなかったの!?」

「五月蝿い!くそ、貴様なんぞ別荘の中なら粉微塵にしてくれるのに…」

「マスター」

「別荘?」

「うるさいっ!!貴様には秘密なんだよこの馬鹿者がッ!!」


理 不 尽 !
 
 
 
 
 
 
 
「ただいまー」


やってきたのはおなじみ明日菜このか部屋。そしてうぃずネギ先生。


「明日菜ーー子供のイタズラやろ。機嫌直してトイレから出てきいやーー」

「うえーーん!許して明日菜さーん!」

「うるさい黙れーっ!」

「……なにごと」


トイレに篭る明日菜。泣きつく子供。宥めるこのか。
うん。分からんな。


「あ、明日香お帰り。はぁ、もう寝なあかんね」

「うん、そうなんだけどこれは一体…」

「あ!明日…香、さん!えっと実は――」


かくかくしかじか。

なるほどのう。
風呂が嫌い、と。これはまぁいい。いやよくないけど。臭いのとか非常によろしくないけど。今はとりあえずいいや。
それよりも。
明日菜と風呂に入ったぁ?もちろん他の人とも入ったわけだけど。
明日菜の水着をぶち破ったぁぁ?しかも話を聞く限り魔法で。いや、手で破ってたら潰してたけど。何をとは言わない。ナニをとは。

で。
怒った明日菜は立て篭もり、と。
・・・こ、ここでキレたりしたらちょっと部屋が危ない。ガ・マ・ン!


「ねぇ、明日菜。私だよ」

「あ、明日香。おかえり」

「ただいま。ね、大丈夫だよ。誰も今更、明日菜の水着がはじけ飛んだ位じゃおかしく思わないって」


いやホント。
むしろ現時点でそれくらいのこと自力で出来る人も何人かいるみたいだし。


「そうかな…て、あんまりフォローになってないわよ、それ」

「そ、そう?と、とにかく、A組は変人ばっかなんだから気にするほどのことじゃないよ。それにネギ先生のお風呂なら、高畑先生に頼んだら良いよ」


しばらく出張もないだろうし。ネギ先生的理由で。


「え!?」

「なんで高畑先生なん?」

「え、あ、そうか。何でか知らないけどネギと高畑先生は知り合いなんだっけ」

「あー、確かにそんなことも言うてたな」

「でも、そんなことで高畑先生に…」

「大丈夫。私からお願いするからさ。それとも明日菜が言う?」

「えええええ、えーと!あ、明日香お願い……」


責任感の強いところも、それでいてしおらしいところも素敵です。


「うん。ね、先生。お風呂入りますよね?シャワーでも良いですけど。なんなら、高畑先生から故郷のお姉さんに連絡してもらっても良いですよ?。ネギ君が下宿先の女性にお風呂のことで迷惑を掛けている、とか」

「ああああああ、あ、えと!わ、分かりました!僕お風呂はタカミチにお世話になります!」


はい、よく出来ました。
まぁね。シスコンの気持ちは分かりますとも。どうも彼のお姉さんの方もブラコンの様だし。そういうことなら異性関係の恐ろしさとかも、ね。えへ。


「ほら、明日菜ももう出てきいやー。おやすみの時間やえ?」

「わ、わかったわよ」


はい一件落着ー。寝よ寝よ。


「ほんなら、もう寝るえー」

「「「はーい」」」


明日菜'Sベッドへゴッ!







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