養育費請求の調停で、父親は、虚偽の給与明細を出してきた
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弁護士河原崎弘
相談:虚偽の証拠
結婚していませんが、子供を生みました。父親は認知をしてくれましたが、養育費を払ってくれません。そこで、家裁へ調停申立てをしました。
彼(37歳)は、叔父の会社で働いており、年収7百万円前後の給料をもらっているのですが、裁判所に出してきた給与明細では、約280万円です。これは、虚偽の証拠です。
裁判所は、この書類を信用して養育費の金額を決めるのでしょうか。
彼の給料が280万円、私の年収が200万円なので、調停委員は、養育費は2万円(月)だと言い、私を説得しようとするのです。
回答:真実の究明
相手方が正しい給与明細を出さない場合は、通常、父親の年齢(この場合37歳の)の場合の統計上の
平均賃金を使います。相手が虚偽の証拠を提出した場合、真実の究明は難しいです。
裁判所が、虚偽であることを見抜けるかは大きな問題です。
家裁の調停では、調停委員2人と1人の裁判官が意見を言います。調停は話し合いです。虚偽内容の給与明細に基づく養育費の金額には応じなければいいのです。
調停が成立しない場合は、審判(裁判と同じような手続きです)に移行します。家裁の審判は1人の裁判官が決めます。
審判に不服がある場合は、高等裁判所に対して即時抗告をできます(書類は家庭裁判所に提出する)。高等裁判所では3人の裁判官が合議して決めますので、1人の場合より、合理的な結論になるといえます。
従って、あなたは、給与明細が虚偽の証拠であることを主張し、彼の年収に見合った養育費(月額7万円)を請求し、即時抗告することまで覚悟をすればよいのです。家裁の審判手続きでは、彼の勤務先に年収を照会する手続き(調査嘱託)もとれます。
即時抗告は、書面審理です。
だいたい、申立てをして4か月位で決定が出ます。高等裁判所で、家裁の審判が覆る割合は、正確にはわかりませんが、推測で、3割くらいでしょう
判例:養育費算定に賃金センサスを使った例
大阪高等裁判所平成16年5月19日決定
子の監護に関する処分(養育費請求)審判に対する即時抗告審において,幼児について認知審判が確定し,その確定の直後に養育費分担調停の申立てがされた場合には,民法784条の認知の遡及効の規定に従い,認知された幼児の出生時に遡って養育費の分担額を定めるのが相当であるとし,また,父は,その叔父が経営する会社で稼働しているところ,父が提出した給与支払明細書は,その就業先から受けている給与額を正しく記載したものとは考えられず,これにより父の収入を認定することは困難であるとして,給与支払明細書に基づいて収入額を認定し請求時からの養育費分担額を算定した原審判取り消し,幼児の出生時に遡って,賃金センサスにより推計した収入額を基に養育費分担額を定めた
登録 2008.8.13