1キロ圏内で抗体検査 農水省委が方針

(2010年6月14日付)

 本県の口蹄疫問題で農林水産省は13日、動物衛生の専門家らによる牛豚等疾病小委員会を同省で開いた。ワクチン接種区域以外の都城市などで今後新たな発生があった場合、発生農場を中心に1キロ以内の農場で抗体検査を実施し、感染の有無を調べることでまとまった。また、これらの地区でのワクチン接種や予防的殺処分は協議されなかったものの、田原健委員長(前鹿児島県家畜畜産物衛生指導協会専務理事)は72時間以内に処分できないなど発生が処分のスピードを上回れば、検討の必要があるとの認識を示した。

 8人の委員のほか農水省の担当者らが出席し、非公開で実施。終了後、取材に応じた田原委員長によると、委員会では児湯地区で処分されていない疑似患畜など約3万頭の早期処分や、処分完了までは徹底した消毒によるまん延防止をあらためて求めた。

 都城、宮崎市などでの新たな同時多発については、人や車両の出入りなどの疫学情報収集、分析による早期解明の必要性を指摘。これらの地区での新たな発生時には、異常家畜の早期発見の観点から、発生農場の1キロ以内の大規模肉用牛経営農場で抗体検査を実施。移動制限区域(半径10キロ)内では家畜防疫員による立ち入り調査を実施することで合意した。詳細は今後、国と県で詰めるという。

 都城市などでのワクチン接種や予防的殺処分の必要性に関し、田原委員長は「協議の中では出なかった」と説明。いずれの地区でも迅速に埋却まで行われていることから、引き続き早期発見、早期処分が重要との認識を示した。その上で「感染スピードに負けない迅速なまん延防止措置のめどは72時間。72時間以内に措置できず、感染スピードに対応できないときにワクチンを実施すべきだろう」と述べた。

 また、被害が拡大した事実を踏まえ、小委員会の活動の評価を問われ、「川南地区で極めて被害が拡大したことは残念。診断まで速やかにできても、埋却地がなく、疑似患畜の処分に手間取ったことなどが大きな要因だろうと考えている」と答えるにとどまった。

【写真】新たな口蹄疫発生時の抗体検査の必要性などが指摘された牛豚等疾病小委員会=13日午後、農林水産省