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ガバナンス・国を動かす:第4部・つまずきの後に/1(その2止) 失敗教訓に

 <1面からつづく>

 ◇鳩山内閣、失敗教訓に 首相官邸・内閣の一体性、首相が就任直後に着手 「議員全員参加」与党との関係整理も

 菅直人首相は就任以来、(1)首相官邸の一体性(2)内閣の一体性(3)民主党議員の全員参加--の3点を強調している。いずれも鳩山前内閣では不十分だったと認識していることの裏返しだ。

 「菅さんの副総理室が首相補佐官室に化けた」。菅内閣発足後、首相官邸では一気に部屋の入れ替え作業が進められた。鳩山内閣の補佐官室は5階の首相執務室とは別の階にあったが、菅氏が副総理時代に使っていた5階の部屋に移された。政治家チームである4人の補佐官と官僚主体の首相秘書官6人を一体化させることで、首相の補佐体制を強化する狙いがある。

 補佐官の一人は「鳩山内閣では秘書官室が壁になって風通しが悪かった。総理をまじえた補佐官会議は3月にやっと実現したほどだ」と振り返る。補佐官室には民主党の枝野幸男幹事長の机も用意される予定だ。

 昨年10月末、民主党内の会合で「霞が関なんて大ばか」と発言した菅氏だが、官僚を排除した統治システムの確立に必ずしも自信があったわけではない。

 衆院解散が秒読み段階に入っていた昨年6月、菅氏は当時無所属の江田憲司衆院議員(現みんなの党幹事長)に連絡し、自民党を離党した渡辺喜美元行革担当相(現同党代表)と鳩山由紀夫民主党代表をまじえた4者の会談を求めた。

 東京タワーに近い料理屋が会談の場所だった。菅氏は単刀直入に切り出した。

 「民主党にも官僚出身の議員がいるが、5、6年で役所を辞めた若い連中が多い。官僚組織と伍(ご)していける人材は限られている。官邸主導の政治を実現するために、お二人の力を貸していただきたい」

 民主党入りの要請だった。菅氏は江田氏が衆院選に立候補する前にも東京の自宅に招いて「一緒にやろう」と口説いている。

 新党結成の準備に入っていた渡辺、江田両氏は断った。「脱官僚の理念は一緒だが、官公労の支援を受けた民主党に本当の行革ができるとは思えない」。7月の東京都議選で民主党が圧勝すると、話は立ち消えになった。

 強気の陰に隠れていた菅氏の不安は的中した。首相就任直後から「官僚の皆さんこそがプロフェッショナル」と持ち上げる菅氏の発言を聞きながら、内閣府の幹部職員は「政治主導を履き違えると痛い目に遭うことが分かったんだろう」と感想を漏らした。

 内閣と与党の関係を整理し直すことも、菅政権の課題だ。

 鳩山前首相は「政策決定の政府・与党一元化」を大義名分に、小沢一郎前幹事長が提案した党政調会の廃止を受け入れた。しかし、鳩山氏が選挙や国会対策の党務を小沢氏に全面委任したために、党は内閣が手を出せない小沢氏の「独立王国」となった。

 政府の役職に就いていない民主党議員の多くは、政策に関与する機会は限られ、事実上、法案の採決要員になる。小沢チルドレンと呼ばれた当選1回の議員たちは、10人ずつの教育班に分かれ、小沢氏側近らによる管理下に置かれた。

 小沢氏が中枢から去り、菅首相は閣僚兼務の形で党政調会長を復活させた。ただ、政府提出法案に党がどう関与するかの制度設計はこれからだ。

 民主党は統治モデルを再構築しなければならない。=つづく

毎日新聞 2010年6月14日 東京朝刊

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